ノイズ。
「チャーリー…聞こえていますか」
「参ったな、改めてこういうの吹き込むってなると、何を言ったらいいか分からなくなる」
「ああ、原稿はきちんと用意しているから心配しないで」
「チャーリー、これは君に宛てた言葉です。このテープを聞いているということは、君が生きていて、僕が死んでいるということだと思う」
「……よかった」
「心からそう思う。僕は仕事を果たした。だからあとは君も、自由に生きてください。僕のことは忘れてください。君は、それができる強い人だと思う。こんな言い方をすると、きっと君にまた叱られてしまうし、叱られることがもうできないんだろうなと思うと、悲しいけれど」
「でも、チャーリー、願はくは、元気で」
「さよなら」
ノイズ。
「馬鹿、コラ、いいって俺はよ、こう言うのは」
「あーっ、分かった。出てけ出てけ! ちゃんとやっとくから!」
「……」
「あー。」
「口座にいくらか金がある。飲み会に使え。飲むだろどうせ」
「……」
「俺にとって、家族はこのチームの野郎どもだ。要するに、最低の人生だ。へへ」
「だから。つまり、まあ。俺はさっさと抜けて、ハッピーだ。てめえらはいつまでもそこで苦しみやがれよ。ざまーみろ」
「……」
「ダリルの奴以外は聞くな」
「……おい、聞いてるか、ダリル」
「はあ!? 待てコラ聞いてんじゃねえよクズども! クソ底辺のゴミカスのXXXX……!!」
ノイズ。
「……」
スピーカーから、ただ静かな息遣いが聞こえてくる。
「ハイドラライダーは、こうやって、遺書を音声で吹き込む規則なんだよ。
と言っても、君にはまだ、言葉を残す相手も残すべき言葉もないか」
「ああ、心配しないで」
「ゆっくり覚えていけばいいことだよ。人間はこうやって、死んだ後に人に呪いを残すんだ。残像と同じだよ」
ぶつり、という音ともに、音声は途切れた。