#15 誰もいない店

 時計の針は進んでいる。
 どうしようもなく進んでいく。
 決して止めることも、巻き戻すこともできはしない。
 あいつが前に進んでいくことを、俺は止めることができない。
 でも、俺はここにいる。
 ここにいて、あいつに会いたいと思っている。
 その妄執が、俺とあの若造とを分けた境界線であるのだとしたら、それならば。
 …いや、きっと、奴には二度と会うことはないだろう。
 俺も前に進もう。
 閉ざされた扉に背を向けて。


 店の扉には『CLOSED』と書かれた札が下がっている。