9:第五の扉 遥かな山河。どことも知れぬ『青髭公』の領土。空には血のような色の雲が掛かっている。
玄椎 貞女
夜明けが対話しにくるような澄んだ川が流れ、遠くには山が見える。
玄椎 貞女
それは『青髭公』の在りし日の思い出を映し出している。
玄椎 貞女
ひとつずつ、考えながら言葉を吐き出すプリシラに目をまたたかせる。
玄椎 貞女
返答を悩むでなく、プリシラのその様子から何か読み取ろうとした、
玄椎 貞女
そのために生まれる沈黙。視線が少女に注がれる。
プリシラ
胸に抱えるもののある娘には、その視線は、少々強すぎる。
玄椎 貞女
それを知ってか知らずか。視線はふっと逸らされた。
玄椎 貞女
「……我々には、もう少し話し合いが必要だ」
玄椎 貞女
「私たちは、この城で共に暮らすものどうしなのだから」
玄椎 貞女
そう言って貞女が指したのは、ここから少し歩く、小高い丘の上にある一本の樹だ。
玄椎 貞女
いつかあの木陰で、四人で行楽めいた真似をしたことがあった。
プリシラ
示された先へと視線を移し、納得したように小さく息を漏らす。
プリシラ
あの時はプリシラも、特別なランチョンマットなどを仕立てて。
プリシラ
そう、刺繍をしたのだ。トランプの刺繍。アリスとそれを彩るスートの刺繍を、四人分。
玄椎 貞女
もっとも、公爵家の中にはそれを良く思わぬ者もいるが。
プリシラ
アリス信仰を素直に受け入れ、救世主に尽くすことを栄誉として受け入れている。
玄椎 貞女
プリシラ以外の救世主たちは、その献身を受け入れてきた。
玄椎 貞女
貞女と夜明けは、同格の妻でありながらも。
玄椎 貞女
貞女は、揃いの四枚のランチョンマットをことに喜んだものだった。
玄椎 貞女
プリシラを先導し、樹へ向かっていく今も、
プリシラ
あのランチョンマットは服を着ることを好まない貞女に対する、プリシラの模索の一つでもあった。
玄椎 貞女
携えた黒い槌以外、身に着けるものは何もない。
プリシラ
だから、それが貞女に受け入れられ、喜ばれたことを。
プリシラ
この娘は一際に眩しい思い出として胸に抱いている。
玄椎 貞女
楽しい思い出であった行楽の記憶までもが、
玄椎 貞女
公の思い出を映し出す、山河の中に閉じ込められたよう。
プリシラ
どこか虚しさを抱えながらも、なぞるように同じ樹のそばへ腰をおろし。
玄椎 貞女
目を伏せて、この女も物思いに耽るように言葉をしばらく吐き出さない。
プリシラ
けれど、口火を切ったのは、末裔の娘のほうであった。
プリシラ
「きっと、ユディットさまと、同じだと思うのです」
プリシラ
「ユディットさまに、一番の隔意を抱きながら」
玄椎 貞女
夜明けの妻は、公からの愛で保たれている。
玄椎 貞女
夕暮れの妻である自分は、公の愛が作り上げた共同体を愛している。
玄椎 貞女
しかし、公に妻としての役割を越え、独占欲に満ちた燃えるような愛を抱いているのは、きっとこの娘であろう。
玄椎 貞女
それこそ、ユディットと張り合えるほどに。
玄椎 貞女
「だから、私はユディットのことも、愛そうとしているのだな」
玄椎 貞女
「ひととはそれぞれ、身勝手におのれの望みを抱かざるを得ない」
玄椎 貞女
「お前は末裔であるから、それを押し殺し、抑えるすべを学びすぎている」
プリシラ
「末裔なりに振る舞うことを、当然のこととして受け入れてまいりましたわ」
玄椎 貞女
「守るべきものとして扱ってしまってきたよ」
プリシラ
「ありがたく、喜ばしいこととも、思うておりましたもの」
プリシラ
「わたくし、夜明けの君さまに言われましたの」
プリシラ
「わたくしは末裔の身であれど、青髭公さまの妻なのだから」
玄椎 貞女
「あの男の語る愛は、内心を反映した真実だろう」
玄椎 貞女
「減じることもなく、失われることもない。今もなお」
玄椎 貞女
それを、自分が語ることが、この末裔の疵に触れることを分かりながら、
プリシラ
それを避けてなあなあに積み重ねてきた日々は、もう崩れ去りつつある。
玄椎 貞女
だから疵に触れ、互いを傷つけ合おうとも、そういう話し合いをすると決めた。
プリシラ
「青髭公さまはわたくしを愛してくだすった」
玄椎 貞女
青髭公はこの生活に軋みを入れてまで、ユディットの愛に応えてきた。
玄椎 貞女
そこに加えて、プリシラまでもそれを望んだのであれば。困りはするだろう。
玄椎 貞女
「お前が望めは、お前の愛にどこまでも応えようとするだろう」
玄椎 貞女
ユディットに対しても、夜明けの妻に対しても、そして、自分に対しても。
プリシラ
「ユディットさまほどは、望めませんでしたわ」
玄椎 貞女
プリシラはそうして、公へ向けて歩み寄り、ひとときの愛を得た。
玄椎 貞女
ユディットはそれ以上を望み続けている。そして、苦しんでいる。
玄椎 貞女
分かってしまうから、求めきれないプリシラのことも、
玄椎 貞女
分からないで求めてしまうから、苦しむユディットのことも、
玄椎 貞女
すべての妻を同じだけ愛することはできない。
玄椎 貞女
こうして話をしてくれ、尽くしてくれたプリシラのほうが、
玄椎 貞女
余計にいとおしく見えるのは、致し方ないことだった。
プリシラ
「……青髭公さまとも。夜明けの君さまとも」
プリシラ
「貞女さまとも、わたくし、長くおりました」
プリシラ
「公爵家に生まれて、繕い物を好む変わり者。帽子屋の真似事ばかりしている愚かな娘」
プリシラ
「そんな爪弾きもののわたくしに良くしてくださったのは、お三方ぐらいのものですわ」
プリシラ
「わたくし、公を独り占めしたいのと同時に」
玄椎 貞女
「この世界で、生きていくうえで、叶うことというのは少ないものだ」
玄椎 貞女
「あまりにも少なすぎるのだから、望みすぎるということはない」
玄椎 貞女
「強く強く望まなければ、叶っていたはずのものすら、叶わなくなってしまうかもしれん」
プリシラ
「わたくし、望んでしまってもよいのでしょうか」
プリシラ
「ひとときであっても公の愛を独占したがる」
プリシラ
「そんな浅ましい娘でありましても、そのように望んでくださいますのね」
玄椎 貞女
「妻であるのだから、愛を独占したいと思うのは自然であるとさえ言える」
玄椎 貞女
「お前の愛する男を、お前を愛する男を見れば」
玄椎 貞女
「その愛のままならなさも、やはり分かるはずだ」
玄椎 貞女
「だから、そんな風に自分を傷つける言い方をしてみなくていい」
玄椎 貞女
「私はお前を愛しているし、お前たちとの生活を愛している」
玄椎 貞女
「私に対しては、口うるさいぐらいでいいんだよ」
玄椎 貞女
「昔のように、叱ってくれたっていいのだ」
プリシラ
「なんだか、楽しくなっていた節がございましたわ」
プリシラ
「この館では”教訓”なんて、他の誰にも垂れようがございませんでしたもの」
玄椎 貞女
「教訓を述べてくれることを、いつだって嬉しく思っていたよ」
プリシラ
「貞女さまの気の済んだら、脱ぎ捨ててくださいますか?」
プリシラ
*貞女の心の疵『露出狂』を才覚で舐めます。
プリシラ
2D6+3>=7 (2D6+3>=7) > 12[6,6]+3 > 15 > 成功
玄椎 貞女
「いつもより少し長く、着るのを頑張ってみよう」
玄椎 貞女
このようになる前。ほつれを取り繕い、踏み込まず、罅の入る前。
玄椎 貞女
あれらの時間は、否定することがどうしてもできないぐらいに素晴らしかった。
プリシラ
その罅を埋めることができたなら。
はかない幻想を、けれど今は信じて笑う。
プリシラ
「長く纏うてくださる方が、ずっとずっと、嬉しいのですからね!」
[ 玄椎 貞女 ] 露出狂 : 0 → 1
[ プリシラ ] フライパン : 0 → 1
GM
過去は変わらず。取り戻せるかどうかはわからずとも。
『青髭公』
1d12 シーン表 (1D12) > 1
1:第一の扉 拷問部屋。ここしばらく使われた形跡はないが、壁には血の跡が残っている。
『青髭公』
この城に住むようになってから、使ったことのない部屋はいくつもある。
『青髭公』
それでも、手を入れなければ部屋は痛むものだ。
『青髭公』
だから、こんな部屋も、順繰りに清掃はする。
GM
清掃は、日々の中に組み込まれていた。なにしろ、たまに、一気に、とはいかない。
夜明けの妻
夜明けの数少ない得意なことに、清掃があった。
夜明けの妻
何しろ水が潤沢にあって、流れのある女だったから、どんな汚れでも落とせた。
夜明けの妻
それでもこの部屋のように、残るものもある。
夜明けの妻
最初の頃はこの落ちぬ血痕に首を傾げ、部屋を水浸しにすることもあった。
夜明けの妻
しかしそれが公の城であるということを知ってからは、そのようにした。
夜明けの妻
なぜ血が付いているのかなどと、問い詰めたりはしない。
夜明けの妻
語るのであれば聞いたが、古く残ったものに、ただそのまま寄り添っている女だった。
夜明けの妻
夜明けがそのように寄り添う女になったのは、公が求めたものの形だったのかもしれない。
『青髭公』
まだ寄る辺もなかった男が、この国で見出した。
夜明けの妻
妻と仲良くするようにと言われれば、この女の心には無理の一つもなく従った。
『青髭公』
愛しているからこそ、この女は女足り得る。
夜明けの妻
あなたの愛の形に沿って、今この城にいる。
夜明けの妻
あなたが愛を捧げ、この川を受け止めている。
夜明けの妻
しかし、それを堰き止めるものが、やってきた。
夜明けの妻
しかしユディットは、その愛を全て欲しているのだ。
夜明けの妻
その愛が止まった時にどうなるか、それはこの女にもわからない。
夜明けの妻
掃き清めるように流れる水が、さ、と止まる。
夜明けの妻
もう二人の妻をしてみれば、このように変わらない事こそこの女の異常性がある。
『青髭公』
「……お前は、あまり、言葉にはしないが」
『青髭公』
「それでも、外のさまを、私は知っているし」
夜明けの妻
「わたくしを、気にかけてくださっていることを」
夜明けの妻
「旦那様の愛が無くならないのはわかっておりますのに」
『青髭公』
「私は、お前に……お前の求めるほどを、差し出せていないのだろう」
『青髭公』
「みな、多かれ少なかれ、求めることがあると、示す」
夜明けの妻
この女は、あなたに寄り添う。ただそこにある。
夜明けの妻
ユディットという石が落ちてきて変わった流れを、川自身がわかることはない。
夜明けの妻
「わたくしは、ただ旦那様の愛を求めてここにおります」
夜明けの妻
「だから、なにもかもを流さずに、ここにいられるのです」
夜明けの妻
「わたくしに、旦那様に寄り添うよろこびを教えたのは、あなた」
夜明けの妻
「わたくしは、あなた様以外の人に、かえられたくはないのです」
『青髭公』
そこに、人ならざるを知りながら愛を見出したのはこの男。
夜明けの妻
夜明けに見た濁流の中に、女人を見出した。
夜明けの妻
「皆に愛を注ごうとして、尽力されるあなた様は、変わっておりません」
夜明けの妻
「あなたはただ、わたくしたちを思い苦しんでおられる」
『青髭公』
「そしてその足りなさに、己の妻を苦しめている……」
夜明けの妻
「どうか苦しまないで、わたしたちの旦那様」
夜明けの妻
生贄を求める川の求めることは、人間にとっては少々苛烈だった。
夜明けの妻
そこにユディットもプリシラも、ぶつかることを知りながら、それでも愛するのがおまえであると。
夜明けの妻
この女はそうしてあなたに寄り添うことを、ずっと求めている。
夜明けの妻
どうか壊れずに、あなたの側に居させてほしいと願っている。
夜明けの妻
この女は何度でもあなたの手を取るが、その求めがあなたの手を砕くかもしれないことをわからない。
『青髭公』
「お前は、もしも私が、お前の側から失われたら」
夜明けの妻
流れ形を変える川が、それを拒絶している。
『青髭公』
「けれど、お前に愛を求めさせているのも、私なのかもしれない」
夜明けの妻
その疵からやってきた、人の身に余る愛に照らされたのがこの女だから。
夜明けの妻
流れる川が流れるのをやめるに足るものを見出した結果が、この女だった。
夜明けの妻
「わたくしは、どこにも行きたくありません」
夜明けの妻
「あなた様がそれに苦しんでいるのがわかります」
夜明けの妻
ずっと青髭公を見ていた女の心に、ふと浮かぶ。
夜明けの妻
公が自分だけではなく、プリシラにも、貞女にも、ユディットにも愛を注げなくなる日がくるのではないかという疑問。
『青髭公』
「もしも私が、お前たちを愛していることを変えられたら……」
『青髭公』
「苦しまずに済むようには、なるのかもしれない」
夜明けの妻
「けれど、それはもう、あなた様ではない……」
夜明けの妻
「そうなればわたくしは、泣いてしまうかもしれません」
『青髭公』
「私は、お前たちを愛しているこの私が、私だと」
夜明けの妻
「……もしもあなた様が、変わってしまったら」
『青髭公』
「お前とこうして語らうことも、お前に触れることも」
夜明けの妻
青髭公の頬に手を伸ばす。この時ばかりは女の体温が生まれる。あなたの愛に寄り添ってある。
『青髭公』
「お前が今、このようにして、ここにいることが」
夜明けの妻
「あなた様の愛で、わたくしはここに居る」
夜明けの妻
「愛のしあわせというものを、教えてくださったのはあなた」
『青髭公』
「……何かが、この城にある、目には見えないものが」
夜明けの妻
「わたくしの我儘は、あなた様にとって辛く苦しいものであるというのに」
夜明けの妻
「けれどわたくしは、求めることをやめられません」
夜明けの妻
「それがあなたを幸せにできるというのなら」
夜明けの妻
あなたがそうだから、産まれたのはわたし。
夜明けの妻
「あなた様が苦しんでいるのに、あなた様の愛を求めることをやめられません」
夜明けの妻
「どうかわたくしを、お側に置いていてほしいと」
『青髭公』
叶う限り。その言葉の裏に、叶えられないという拭い難い色を滲ませて。
『青髭公』
*夜明けの妻の『行雲流水』を愛で抉ります。
玄椎 貞女
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
[ 夜明けの妻 ] ティーセット : 1 → 0
玄椎 貞女
2d6+1+2>=7 愛判定 (2D6+1+2>=7) > 8[4,4]+1+2 > 11 > 成功
[ 玄椎 貞女 ] ヤリイカ : 1 → 0
[ 『青髭公』 ] ティーセット : 2 → 1
『青髭公』
2d6+2-3+2>=7 (2D6+2-3+2>=7) > 5[1,4]+2-3+2 > 6 > 失敗
[ 玄椎 貞女 ] HP : 20 → 19
玄椎 貞女
ふと、硬いものどうしのぶつかる音が響き渡った。
玄椎 貞女
視線を向けると、あっ、という顔をした貞女が拷問部屋の入り口に立っている。全裸で。
玄椎 貞女
「いや、今日の夕餉のことで、少し夜明けと話したかったのだが……」
玄椎 貞女
「すまん、話し込んでいたところだったか?」
玄椎 貞女
良いことだ……と抉れているので、思います。
夜明けの妻
「わたくしはやはり、旦那様のお側に居たいということを再確認しておりました」
夜明けの妻
「旦那様は、大変でしょうけど、それでも」
玄椎 貞女
公の愛がなければ、存在していられない女であるのは、貞女も分かっている。
夜明けの妻
「旦那様のよきようになればよいと、思っておりますの」
玄椎 貞女
けれど、夜明けの妻がそれを自覚しているのか。
玄椎 貞女
ほんとうにそうなのかは、分からないことであった。
玄椎 貞女
「我らの夫には、安らかなる気持ちであってほしい」
玄椎 貞女
と同時に、苦しむのはしゃあないやろという気持ちもあるが……
夜明けの妻
疵に触れられて、少なくともこの女にも解ったことがある。
自分はここに居たいということ、留まりたいということ。
それは川としての本性を抑えるほどの、人の身に余る愛。
玄椎 貞女
「だから、お前が楽であるに越したことはない」
『青髭公』
「……ああ。私も、お前たちを愛している」
玄椎 貞女
だがその愛に、我々が集ったのはまた事実。
玄椎 貞女
「愛を確認したところで、夕餉の相談のために、厨房に来てもらっても構わんか」
『青髭公』
「……ああ。……行っておいで。また夕餉に」
夜明けの妻
寄り添う女ではあったが、青髭公の横に留まりたいと駄々をこねる女ではなかった。
夜明けの妻
公に頭を下げると足音も無く、さらさらと流れるように貞女に伴って去って行く。
GM
それだけで満たされるものと、そうでないものと。
GM
水も時も流れていくのに、愛はそこに留まっている。
玄椎 貞女
先ほどの会話の流れから、夜明けの妻と連れ厨房しようかと思います。
玄椎 貞女
そういえばあの古くなっていたフライパンは、結局穴が開いたのかな……
玄椎 貞女
見当たらない。プリシラがうまいこと処分したのだろうか。
プリシラ
だめになったものが厨房にあっても邪魔なだけですの。
夜明けの妻
この生活より先にかのフライパンがダメになってしまいましたわ
玄椎 貞女
まあ、いなくなったフライパンのことより今日の料理だな……
玄椎 貞女
「というわけで、我が国には出汁を取る、という文化があるのは前にも言った通りだが……」
夜明けの妻
ちょっとわかります。動物は水に漬けておくとなんかなるためです。
玄椎 貞女
「乾物などを煮込んで、そこから出た煮汁を料理に用いるわけだ」
夜明けの妻
「だからあの椎茸の亡者を天日干ししていたのですね」
玄椎 貞女
「うむ。天日干しと言うてもいつも曇天だから、そこそこ苦労はしたが……」
夜明けの妻
清水で戻された亡者茸と、なかなかの色合いの元清水。
玄椎 貞女
「これを煮立てるのだが、なにせ亡者茸であるから、灰汁がすごそう」
玄椎 貞女
「そこで、お前の力で何とか灰汁だけ取り除いたりできまいかと……」
玄椎 貞女
撥ねると熱いし、料理の煮汁はちょっと汚いから……
玄椎 貞女
「お前が公の愛で持っているのは知っていたが、改めて聞くと不思議な気がするよ」
玄椎 貞女
「ひとところに留まらず流れるがお前の性」
玄椎 貞女
「だが、確かにお前は、公に会ってからは、この城の中をめぐることがほとんどで」
夜明けの妻
「ええ、わたくしにしてはとても長く……」
夜明けの妻
「留まりたい、と思うことすら、初めてのことでした」
玄椎 貞女
「お前ほど大きな存在の、その心を変えてしまうほどの愛──」
玄椎 貞女
「あの男の持つ愛は、それはもう間違いのないものなのだろうな」
玄椎 貞女
いや、本当に、だからこそ始末に負えないのだが……
玄椎 貞女
「……だからと言って、愛おしくないわけではない」
玄椎 貞女
「だが、お前が留まりたいと言ってくれることは」
玄椎 貞女
「私も嬉しいし、プリシラも喜ぶだろうよ」
玄椎 貞女
「あの娘は、ただ一人になりたいと言いながらも、我々のことも愛してくれている」
玄椎 貞女
「もちろん、公に対するそれには及ばないが」
夜明けの妻
「旦那様が愛されているからという、だけではなく……」
夜明けの妻
「旦那様が喜ぶから貞女たちに居てほしいという気持ちがないわけではないのですが」
夜明けの妻
「それとは、また別に。あなたたちが居ることを良いと思うわたくしがいる事にも気づきました」
玄椎 貞女
「……私もまた、お前のことも、プリシラのことも……家族のように思い、大切に思っている、から」
玄椎 貞女
「元のように、助け合って暮らしていきたいものだ」
夜明けの妻
「そのために、旦那様には頑張ってもらいませんと」
玄椎 貞女
「そうだな。そして、我々も相応に、頑張らねばなるまい」
玄椎 貞女
「ケツを叩く必要があるのならそうしよう」
玄椎 貞女
「そうとも……こうして、夕餉を作るのと同じな」
玄椎 貞女
*という感じで、ユディット以外の妻たちの心はひとつ……聖遺物調達を試みようと思います。
玄椎 貞女
2d6+3-2>=7 猟奇判定 (2D6+3-2>=7) > 6[4,2]+3-2 > 7 > 成功
[ 玄椎 貞女 ] アリスの証言 : 0 → 1
夜明けの妻
「ああ、でも、張り切りすぎないように、しないとなりませんね……」
夜明けの妻
いずれ起きることを思い、窓の外に目を向けて頬に手を添えた。
夜明けの妻
近くの村の末裔から流れが早すぎるという苦情が来ました。
玄椎 貞女
まあ……人間も落ち着こうとしても、ストレス源がいなくならない限り胃炎になったりするしな……
玄椎 貞女
夜明けの妻は胃炎にならないぶん、濁流になるのだろう。
玄椎 貞女
まあ、それはあの男に治水を頑張ってもらうとして……
玄椎 貞女
「うむ、灰汁も取れて雑味のないように出来上がっている」
玄椎 貞女
「これならば如何様にも使えるだろう。醤油がないのはやはり残念だが……」
玄椎 貞女
そんな感じで、夜明けの妻に手伝ってもらいつつ、夕餉の準備をするのだった。
『青髭公』
1d12 シーン表 (1D12) > 9
9:第五の扉 遥かな山河。どことも知れぬ『青髭公』の領土。空には血のような色の雲が掛かっている。
『青髭公』
これがいつの日の記憶の象形かは、定かでない。
『青髭公』
ただ、気づけばこの扉の奥は「こう」であった。
『青髭公』
いつか帰ると思っていたのは、もう遠い過去のよう。
『青髭公』
ここに今あるものが、すでに、この男をこの国に繋いでいる。
夜明けの妻
小高い丘の上、赤い空を背に女が一人立っている。
夜明けの妻
あの時と違うのは、今はこの場は濁流に包まれていないということ。
夜明けの妻
漂う水の香は堕落の国にあってなお清らかで、今は砂の匂いも運ばずにいる。
夜明けの妻
さら、と水の流れる音を伴ってあなたの側に。
夜明けの妻
あの時取った手はまだ冷たく、水そのもので、しかしすぐに女の肌の温度になったという。
夜明けの妻
その温度は、今もこうしておんなのものとしてあなたの手のなかにある。
『青髭公』
熱くもなく、冷たくもなく。やわらかな温度だ。
夜明けの妻
遠くにあれば曖昧な輪郭を持つ女は、近くで見ればしっかりと人間のようにすら見える。
夜明けの妻
ただその容姿の端々に、人ならざる名残があるだけ。
『青髭公』
「いつか帰ると思っていた、その頃を思い出す」
『青髭公』
「ああ。……実り多い地、というわけではなかった。山は鋭く、川は激しく……」
『青髭公』
「……治めるのが私でなければ、もっと、何か」
『青髭公』
「良きようになったのかもしれないと、思うこともあった」
夜明けの妻
人間の統治がどのような具合であるか、それを察する事が……人であったなら出来たのかもしれないが。
夜明けの妻
自然が豊かであることは、良いように思える。そのぐらいの判断しかない。
夜明けの妻
だとすれば人間の統治というものはすごいものなのだが……
『青髭公』
「この雲も、第四の扉の庭園も……どうしてか、血を思わせる。そればかりは、私も理由を知らない」
夜明けの妻
人間の事は分からねど、この世界に来て救世主の心の形というものは程々に知る機会があった。
夜明けの妻
「あなた様に治められているこの城は、近くのあの村を含め……よい場所だったと思います」
夜明けの妻
今は少し、皆様乱れておりますが、と付け加える。
『青髭公』
「そうかな。……私は至らない。いつも……」
『青髭公』
「お前は、私のもとに留まりたいと言ってくれる」
『青髭公』
「お前にとっては、よくないことだったのではないかとも、思う……」
『青髭公』
「……間違っているのかも、しれないから」
玄椎 貞女
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
玄椎 貞女
2d6+1>=7 愛判定 (2D6+1>=7) > 7[6,1]+1 > 8 > 成功
[ プリシラ ] ヤリイカ : 1 → 0
[ 『青髭公』 ] ティーセット : 1 → 0
『青髭公』
2d6+2-4+2>=7 (2D6+2-4+2>=7) > 11[5,6]+2-4+2 > 11 > 成功
[ 玄椎 貞女 ] HP : 19 → 18
夜明けの妻
「愛し方に、間違うということがあるのですか?」
夜明けの妻
「あなた様は、間違ってなどいません……」
夜明けの妻
この城の皆は今傷ついて、軋んでいるというのに。
夜明けの妻
自分が歪められたなどとつゆにも思わない女が、あなたの手を弱々しく握っている。
夜明けの妻
「わたくしを、わたくしの手を取ったのが……」
夜明けの妻
縋るようにじっと見つめる。城の外の川が荒れ狂う。
夜明けの妻
あるところにおおきなおおきな川があった。
夜明けの妻
ちいさな川ではあったがよく暴れ、近くの村を幾度も困らせた。
夜明けの妻
困り果てた村の住民は、川に捧げ物をして祈りをささげ、どうか水をおさめてくれと願います。
夜明けの妻
そうして川は願いを聞き入れたかのように雨を受け止め、村を流すのをやめました。
夜明けの妻
しかし捧げ物がない年には暴れる、そのような川が──
ある日消滅しました。
夜明けの妻
そしてまたある日、堕落の国にそれはそれは珍しい水が……それも濁流でやってきました。最初は喜んだ周辺のものでしたが、村を流されれば喜んでもいられません。
夜明けの妻
ある日通りがかった青髭公は末裔に懇願され、救世主のしわざとされる荒れ狂う瀑布に立ち向かいました。
夜明けの妻
どういう事が起きたのかは公と夜明けの妻にしかわからない事ですが──とにかく水はぴたりと止んで、末裔の村を流すのをやめたのです。
夜明けの妻
そう、青髭公は愛という供物を捧げることで、暴れる水を留めたのです。
夜明けの妻
(ここに夜明けを背に立つ女を見上げる青髭公のスチル)
夜明けの妻
愛を供物として受け取っていた荒れ狂う川は、その供物が間違っていたと言われて……どうすればいいのかわからなくなってしまいました。
夜明けの妻
……公は、荒れ狂うのを止めよ、とこの川に言ったわけではありません。
夜明けの妻
「わたくしは、あなた様の愛がよかったのに」
夜明けの妻
「間違っているなんて、おっしゃらないで……」
[ 夜明けの妻 ] 誓い : 1 → 0
『青髭公』
「それでも取り消せない私を、どうか、許しておくれ」
夜明けの妻
愛という捧げ物を無くした川が荒れ狂っているから。
夜明けの妻
「わたくしは、ただの川だった。あなた様に見出されたからここにいる……」
夜明けの妻
「だからというわけではありません。わたくしは、それでも……」
夜明けの妻
「それでもあなた様をお慕い申しております」
夜明けの妻
「たとえあなた様がわたくしの愛に苦しもうとも……」
夜明けの妻
「それでもわたくしは、やめたくないのです。あなた様を愛することを……」
『青髭公』
「……夜明け。お前は、それで、辛くはないか」
夜明けの妻
「苦しくて、張り裂けて、今にも流れ出してしまいそう」
夜明けの妻
「けれど……あなた様を失えば、二度と戻らない」
夜明けの妻
「わたくしには、その方がよっぽどつらい」
夜明けの妻
「あなた様の居ない日々を、考えられません!」
夜明けの妻
考えるだけで、わたくしはこのように荒れ狂ってしまいます。
『青髭公』
この女が声を大きくするところを、ほとんど初めて聞く。
『青髭公』
水の流れの荒れることはあれ、この、女のかたちの口から。
夜明けの妻
堕落の国に堕ちた川の底に燦めく六ペンス硬貨から生まれたもの。女の心。異常性。
夜明けの妻
ただの荒れ狂う川であれば、あなたを慮る事なくただ愛を差し出させていればよかった。
夜明けの妻
でも今は、あなたを苦しめたくないと思っている。
『青髭公』
この男もまた、形は違えど同じように。あなたを苦しめたくない。
夜明けの妻
「あなた様の望むことを、わたくしたちに、思うことを、あなた様の口から……」
夜明けの妻
「どうすればあなた様は苦しまずにいられますか」
夜明けの妻
「人の身に叶わぬ愛を抱くのが、あなた……」
夜明けの妻
「優しくて、愛が広すぎて、深すぎて……」
夜明けの妻
「あなたは川でも山でもないのに、かれらのように人を愛してしまう」
夜明けの妻
「わたくしは、そんなあなたを愛しています……」
夜明けの妻
「わかっていた、わかっていたのです……」
夜明けの妻
「あなた様は誰も歪めることなんて望んでいない……」
夜明けの妻
「……あなた様を含め、皆には心がございます」
夜明けの妻
「……それが、ぶつかることを。お許しください」
夜明けの妻
「わたくしたちには、きっとそれが必要だから……」
夜明けの妻
*青髭公の『閉ざされた心』を愛で舐めます
夜明けの妻
2d6+3>=7 (2D6+3>=7) > 6[2,4]+3 > 9 > 成功
『青髭公』
「……私は、自分の身に余ることをしている」
『青髭公』
「だが、愛しているのは本当だ。お前が、そう、認めてくれる通りに……」
夜明けの妻
「あなた様の愛も、苦悩も……あなた様から伝わってくるのです」
夜明けの妻
「それでも、わたくしの力及ばず……いいえ、皆の力が足りなかった」
夜明けの妻
「いいえ、……これが、エゴというもの……」
夜明けの妻
「皆、あなた様を愛しておられる。四者四様に」
夜明けの妻
ユディットはどうなのかわからないのですが……
夜明けの妻
「夫婦というものは、喧嘩というものをするそうです」
夜明けの妻
「人間というものはそうやってわだかまりを解消するのでしょう」
夜明けの妻
「あなた様が愛を見出すかぎり、いつかは避けられぬこと」
夜明けの妻
「ですから、どうかそのように思い詰めないで」
夜明けの妻
「わたくしの力は癒やしの力。あなた様が一番解っていらっしゃるはず……」
[ 『青髭公』 ] 閉ざされた心 : 0 → 1
夜明けの妻
「あなた様の事だけ考えています……いいえ、正しくありませんね。あなた様が妻を連れてくるたびに、彼女たちの事も」
夜明けの妻
「あなた様には及びませんし、わたくしもあなた様以外を愛するのは不慣れですが」
『青髭公』
「お前がお前としてここにいて、みなを愛してくれる」
夜明けの妻
本当は皆あなた様の愛を一番に求めていますよ、とは皆が解っていることなので言わない。ただ微笑む。
『青髭公』
その微笑みを、見出して。そして側にいた。側に留めた。
夜明けの妻
流れるのを止め、足を止め、一人の人を見つめた。
夜明けの妻
ずっと流れて、留まるはずのないものが集まって心が出来た。
夜明けの妻
その愛には、水が流れるのを止めてしまうほどの力があった。
『青髭公』
留まり得ぬものを、留めるような。人の身には余る、山河の如き愛。
『青髭公』
時にそれを溢れさせ、持て余し、今もすべてを軋ませながら。
夜明けの妻
その愛を、愛のために手放していいとすら一度は思わせながら。
『青髭公』
受け止めようとする。この手で叶う限りに。
夜明けの妻
あなたの手の中に、腕の中に収まり続ける。
夜明けの妻
あなたの愛を忘れて遠ざかって、ただの川にならなくていい。
『青髭公』
*夜明けの妻の『行雲流水』を愛で舐めます
『青髭公』
2d6+2>=7 (2D6+2>=7) > 10[6,4]+2 > 12 > 成功
『青髭公』
触れたままだった指先に、そっと力を込める。
夜明けの妻
「あ……」あなたの指先に返る、人の弾力。
[ 夜明けの妻 ] 行雲流水 : 0 → 1
夜明けの妻
「初めてのお願いが、このような事になるのは、申し訳ないのですが」
夜明けの妻
「きっと、ユディットにも。必要なことです」
夜明けの妻
それはいつの間にか、この領域の川と同じように穏やかに。
GM
水は流れ、時は流れ、行きつく果てに愛があり、そして愛ゆえに留まるものがあり。
GM
それが行き止まりなのか、まだ行ける先があるのか……
GM
以上で、お茶会が終了。これより、裁判に移ります。