第3サイクル

GM
サイクル2終了。次回はサイクル3からですね。えっ何をやるんだ?
GM
というわけで、本日は以上です。ありがとうございました!
彌祚杯童子
お疲れさまでした。
甘葛井五郎太
お疲れ様でーす
善知鳥 瑞楽
ありがとうございました
泳 蓬
おつかれさまでした……
GM
シノビガミ『神楽八十神追』
GM
二日目、やっていきましょう。
GM
よろしくお願いいたします。
善知鳥 瑞楽
よろしくお願いします。
泳 蓬
よろしくおねがいします。
甘葛井五郎太
よろしくお願いいたします
彌祚杯童子
よろしくお願いします
GM
GM
それでは、サイクル3からですね。行動される方は。
甘葛井五郎太
はい
GM
では他にいないので、いきましょう。
GM
GM
*メインフェイズ サイクル3 甘葛井五郎太
甘葛井五郎太
ドラマシーンを選択。
甘葛井五郎太
1d12 (1D12) > 12
甘葛井五郎太
闇に来ちゃった。
甘葛井五郎太
12:暗闇。明かりが届かぬ、果ての果て。
甘葛井五郎太
神器の秘密を調べるので、瑞楽さんの感情修正が欲しい。
善知鳥 瑞楽
かしこまりました。
甘葛井五郎太
2D6+1>=5 (判定:千里眼の術) (2D6+1>=5) > 6[3,3]+1 > 7 > 成功
GM
成功ですね。
GM
2と3にも情報が伝わります。
GM
貼り付けました。
甘葛井五郎太
闇の中でもなお明々と、光り輝く生大刀。
甘葛井五郎太
傾けても目を凝らしても、その姿と力は間違いなく神器のもの。
甘葛井五郎太
であると同時に。
甘葛井五郎太
「……まあ、どう見ても片割れだな」
GM
そう。それは完璧ではない。
GM
神器は『生大刀』と『生弓矢』で対。
GM
本来ならば、姫君がその一対を身に宿しているはず。
甘葛井五郎太
ふたつの神器はふたりの姫に分かれて封じられ。
甘葛井五郎太
ひとつはもはや、あの彌祚杯童子の手の中に。
甘葛井五郎太
対の神器を構えて『八十神』を斃すのが『八千矛』ならば──
甘葛井五郎太
もはやすでに、この身は『八千矛』とは言えない。
甘葛井五郎太
「あるいは」
甘葛井五郎太
輝く生大刀を軽く振って、井五郎太は瑞楽を振り返る。
甘葛井五郎太
「半分はまだ『八千矛』かもな」
善知鳥 瑞楽
「半ばを得るために……奪いに行きますか?」
善知鳥 瑞楽
ごく静かに。
甘葛井五郎太
「そうだなあ」
甘葛井五郎太
「今は向こうも、半分は『八千矛』なわけだ」
甘葛井五郎太
「俺は半分『八十神』で、向こうもそう」
甘葛井五郎太
「あんたと蓬どのは、半分の姫さまだな」
善知鳥 瑞楽
「ええ」
甘葛井五郎太
「このまま儀式に入って、勝った方が国作りをする──」
甘葛井五郎太
「って方が、公平な儀式だとは思うがね」
甘葛井五郎太
冗談めかして言って、首を竦める。
善知鳥 瑞楽
「公平」
甘葛井五郎太
「公平じゃまずいんだよなあ!」
善知鳥 瑞楽
「……私は今や、半ばしか姫ではないかもしれませんが」
善知鳥 瑞楽
「私の務めは変わっておりませんよ」
甘葛井五郎太
「分かっているさ、お姫さん」
GM
実体はそうではない。もとよりこれは、国の行く末を決める決闘ではなかった。
GM
起きたことを繰り返し演じることで、その威力を保つための神楽。
GM
公平ではない。はずだった。
甘葛井五郎太
「この儀式には人の世なるものがかかっている」
甘葛井五郎太
「戦いに見せかけた生贄の儀。であるからこそ……」
甘葛井五郎太
「本当の戦いまでに向こうさんの手に神器があるのは、看過できん、か」
善知鳥 瑞楽
「……でき得るならば」
甘葛井五郎太
「とはいえ、今もうお互いの手に神器があるんだぜ」
甘葛井五郎太
「封印が解かれて、使い方も分かっている」
甘葛井五郎太
「片割れでも神器は神器、僭主でも王は王だ」
甘葛井五郎太
「奪おうとするならば、神器の力を持ってせねばならんだろうよ」
善知鳥 瑞楽
「…………」
善知鳥 瑞楽
目を伏せ、やや、考えるような間。
甘葛井五郎太
「それに」
甘葛井五郎太
「『姫』が『八十神』に殴りかかるのは、儀式としてどうなんだ?」
善知鳥 瑞楽
「…………」
甘葛井五郎太
「まあ、実際戦いともなれば、あんたにも手伝ってもらうんだろうけどな」
善知鳥 瑞楽
「……『私』は、この儀に何も望みませんが」
善知鳥 瑞楽
「そも『姫君』は、八千矛に利するためにいるのでは?」
甘葛井五郎太
「無謀は八千矛を利するかって話さ、姫さん」
甘葛井五郎太
「俺があんたに無謀を説くのも変な話だけどな」
善知鳥 瑞楽
初めて、少し、困ったふうに。
甘葛井五郎太
「そうじゃないか? 神器を持った『八十神』に、姫君がひとりで向かおうってな、無謀じゃないか?」
善知鳥 瑞楽
「……そう、……かもしれません」
甘葛井五郎太
「な。」
甘葛井五郎太
「ま・実際……あの彌祚杯の手に神器の片割れがあるのはヤバいんだが」
善知鳥 瑞楽
「……ええ」
甘葛井五郎太
「…………言ったんだがな、会うなって」
甘葛井五郎太
「なあ、お姫さん。蓬どのと話さなくて大丈夫かい」
善知鳥 瑞楽
「……私は……」
善知鳥 瑞楽
「今更、何か」
善知鳥 瑞楽
「言っても、良いものでしょうか。私が」
甘葛井五郎太
「そんなふうに気にするくらいなら、行った方がいい」
甘葛井五郎太
「知らぬが仏という言葉もある、と蓬どのは言ったがな」
甘葛井五郎太
「それは、事実を受け止められん奴に限っての話だよ」
甘葛井五郎太
「あんたはそうじゃないと思う。俺は」
善知鳥 瑞楽
少し、黙り。
善知鳥 瑞楽
「……そうですね」
善知鳥 瑞楽
「この儀の、後に。悔いぬためには、……そうでしょうね」
甘葛井五郎太
「ああ、そうだ」
甘葛井五郎太
「戦いでない場所でこそ、話せることもあるだろうしな」
善知鳥 瑞楽
「……はい」
善知鳥 瑞楽
首肯し、それから、仄かに笑う。
善知鳥 瑞楽
「当代の八千矛が、甘葛様でようございました」
甘葛井五郎太
「俺も、あんたが姫でよかった」
甘葛井五郎太
「人の世を背負って、並んで戦うには、これ以上のお姫様はいないだろうよ」
善知鳥 瑞楽
「恐縮です」
甘葛井五郎太
「行くか。ここはチョット暗すぎる」
善知鳥 瑞楽
「はい」
善知鳥 瑞楽
「……参りましょう」
甘葛井五郎太
大刀を鞘に納めると、そこは全くの闇。
甘葛井五郎太
闇の中で男が動き、先導して駆け始めた。
善知鳥 瑞楽
それをひたりと追う。
GM
二つの神。二つの祭具。二つの神器。二つの姫。
GM
人の世と人ならざるものの世。
GM
一つを殺し、一つを生かす。
GM
GM
では、次に行動される方は。
善知鳥 瑞楽
はい。
GM
OK
GM
GM
*メインフェイズ サイクル3 善知鳥 瑞楽
善知鳥 瑞楽
2d6 (2D6) > 3[1,2] > 3
善知鳥 瑞楽
3:洞穴。些細な割れ目のような入り口だが、中は広い。完全な闇が滴る。
善知鳥 瑞楽
……振りましたが、別の所を選びますね。
善知鳥 瑞楽
2:墓標。儀式『神楽八十神追』で死んでいった隠忍たちを祀るものだ。
GM
どうぞ。
善知鳥 瑞楽
闇を抜けたところで、先を行っていた井五郎太に代わり、今は瑞楽が前へと出ている。
善知鳥 瑞楽
気配を辿る。
善知鳥 瑞楽
蓬の。ともにあるだろう神器の。そして、やはり、いないはずのない彌祚杯の。
彌祚杯童子
墓標の前に胡座をかき、その足に女の頭をのせて。
彌祚杯童子
あやすように髪をなでている。
泳 蓬
なかば伏すようにしてその膝に頭を預けて。
耳から垂れた血はもう止まっていたが、なお。
泳 蓬
髪に触れる手に身じろぎもせず。死んだように。
善知鳥 瑞楽
静寂を乱すことなく駆けていた足が止まり。敢えて、さり、と草を踏む。
善知鳥 瑞楽
見ずとも来訪をわかってはいるだろうが、自ら示すように。
甘葛井五郎太
尋常な様子ではない。
彌祚杯童子
「選ぶまもなく、選ばれ申したか」
泳 蓬
音を聞いてはじめて、ゆるく頭を上げた。
彌祚杯童子
「なれば私は前言の通り、ご覧の通り」
彌祚杯童子
「いただいて御座います」
善知鳥 瑞楽
「……貴方は、蓬に」
善知鳥 瑞楽
「選ばせましたね」
泳 蓬
「……瑞楽」
彌祚杯童子
微笑む。
泳 蓬
「もう」
泳 蓬
「私のことは、放っておいて」
善知鳥 瑞楽
「……何故?」
泳 蓬
「戻れない」
泳 蓬
「……こうなることを望んでしまったから」
彌祚杯童子
「げに恐ろしきは人の作りし呪(まじない)に御座います」
彌祚杯童子
「『羽喫鳴鏑』は私が望まずとも、その心を歪めたので御座いましょう」
甘葛井五郎太
「使っておいてよく言うぜ」
泳 蓬
立ち上がりもせず俯いたまま。
甘葛井五郎太
ため息をつく。……とはいえ、そもそも。
甘葛井五郎太
理解っていたはずなのだ。蓬どのは。
彌祚杯童子
「貴君が使われても同じこと。なれば、私の生命をもって応えるしかありますまい。」
善知鳥 瑞楽
「……八千矛と姫は、同じ国守の志のもと、互いの意志を添わすもの」
善知鳥 瑞楽
「『羽喫鳴鏑』はそのたすけ、その証にすぎない」
善知鳥 瑞楽
「貴方は歪めました」
泳 蓬
「瑞楽、やめて」
彌祚杯童子
「返す言葉も御座いません」
泳 蓬
「あなたは正しい、間違ってない、ずっと」
泳 蓬
「だから、私が”此方”にいるのは」
泳 蓬
「私が間違えただけ」
彌祚杯童子
髪を撫でる。
甘葛井五郎太
「そんなふうに言うなよ」
甘葛井五郎太
「選んだんだ、あんたは」
泳 蓬
「……ええ、その結果」
泳 蓬
「わかっております」
泳 蓬
「だからもう、何も言うのはやめて」
彌祚杯童子
「…………御前ども人は彼女に苦しみを与え、あげく子を孕む機能(ちから)さえ奪い去った」
彌祚杯童子
「ご存知でありましたか」
善知鳥 瑞楽
「……ええ」
善知鳥 瑞楽
静かに頷く。
彌祚杯童子
「なれば、どうか彼女を責めぬよう」
彌祚杯童子
「お頼み申し上げます」
彌祚杯童子
「蓬」
彌祚杯童子
「私は席を外したほうがよろしいか」
泳 蓬
喉が鳴る。緩慢とした動きで彌祚杯を見て、小さく頷く。
彌祚杯童子
「今此処で、御前らが彼女の喉を斬る事は……」
善知鳥 瑞楽
「ございません」
彌祚杯童子
「で、あれば」
彌祚杯童子
女を立たせ、己は一足で高い枝の上に跳び上がる。
彌祚杯童子
「また、後程に」
善知鳥 瑞楽
「甘葛様」
彌祚杯童子
そうして木々の中へと消えた。
泳 蓬
拳を強く握りしめて、彌祚杯の気配が遠のくのを送る。
甘葛井五郎太
「ああ」
甘葛井五郎太
「ひとつ言っとくぜ、蓬どの」
甘葛井五郎太
「あんたの男の趣味、悪いよ」
甘葛井五郎太
軽く言って、木々の中に立ち消える。
善知鳥 瑞楽
その背をちらと見送って。
善知鳥 瑞楽
それから、蓬に向き直る。
泳 蓬
その視線を受ける。
泳 蓬
「同じことしか、言わないわ」
泳 蓬
「私のことは放っておいて。邪魔だというなら今斬って」
善知鳥 瑞楽
「それが、今の貴女の望みですか」
泳 蓬
「ええ」
泳 蓬
「やっと気づいたの」
泳 蓬
「私、……あなたがずっと、羨ましかった……」
善知鳥 瑞楽
「…………」
善知鳥 瑞楽
「私は……」
善知鳥 瑞楽
「どこかで、それを知っていました、蓬」
善知鳥 瑞楽
「けれど、それをほどくすべは、わからなかった」
泳 蓬
「わからなくて、あたりまえでしょう。やっかみだもの」
泳 蓬
「あなたがそうして、正しくて、優しくて、……私の望みを慮ってくれて」
泳 蓬
「それだけで、……こんなふうになっちゃうんだもの」
泳 蓬
「……だから、放っておいて」
善知鳥 瑞楽
「真実、放っておいてほしいのなら」
善知鳥 瑞楽
「貴女はそれだけ言い捨てて、八十神とともに行くべきでした」
善知鳥 瑞楽
「今、私たちが二人でいるのはどうしてですか」
善知鳥 瑞楽
「貴女は八十神の退席を問う言葉に頷いた」
善知鳥 瑞楽
「私と二人話して、貴女は」
善知鳥 瑞楽
「それで私が、貴女を放っておくと思いますか」
泳 蓬
「最後に、恨み言が言いたかっただけ」
泳 蓬
「どうせ私を選べないあなたに」
泳 蓬
「それをわかってほしかっただけ」
泳 蓬
「……たとえ彌祚杯様が八千矛を討てなかったとしても」
泳 蓬
「私は人の世に、戻るつもりはないの」
善知鳥 瑞楽
「……そう……」
善知鳥 瑞楽
「……では、貴女は」
善知鳥 瑞楽
「それで、私の心すべてが貴女から離れると思いますか」
泳 蓬
「思っていたら、もっと初めからこんなことはしていない」
泳 蓬
距離を詰める。手を伸ばす。その顔を、仮面を越して見る。
泳 蓬
「そうしてあなたがほんの少しでも傷ついてくれたら、……」
泳 蓬
「私、”此方”にきてよかったと、思えるわ」
善知鳥 瑞楽
「…………」
善知鳥 瑞楽
仮面の向こうの視線から、目は逸らさない。
善知鳥 瑞楽
伸ばされた手に、自ずから触れる。
善知鳥 瑞楽
そして、自分の方へと引いた。
善知鳥 瑞楽
締めるでなく、捕らえるでなく。
善知鳥 瑞楽
抱きしめる。
泳 蓬
「……っ」
善知鳥 瑞楽
「……置かれた場所にいるしかない私を」
善知鳥 瑞楽
「貴女が少しだけ、そうでない場所へ連れ出していた」
善知鳥 瑞楽
「私は今も」
善知鳥 瑞楽
「ここに立つ役目を捨てられはしない」
善知鳥 瑞楽
「貴女の言う通り、貴女を、選べない」
善知鳥 瑞楽
「私は何も望めない」
善知鳥 瑞楽
「けれど……」
善知鳥 瑞楽
「私をやっかんで、恨み言を言って、私に傷を残そうとして」
善知鳥 瑞楽
「そのためにでも、『私』に触れる貴女のことが」
善知鳥 瑞楽
「私は好きでしたよ」
泳 蓬
命の気配の薄い異界にあって、重ねられる生きた熱に呼吸を忘れる。
泳 蓬
内側へと潜り込んだ鬼の手よりもなお熱く、痛みをもって。
泳 蓬
「ばかな子」
泳 蓬
「どうして私は……」
泳 蓬
「あなたみたいなばかな子を、好きになっちゃったんだろう……?」
泳 蓬
「あなたにしあわせになってほしかったのに」
泳 蓬
「どうして……ちょっとだけ、我慢できなかったんだろうね……」
善知鳥 瑞楽
「…………」
善知鳥 瑞楽
「貴女のそんなところが、私をたすけていたし」
善知鳥 瑞楽
「……そんなところがあったから、今日、そうでなくなってしまった」
善知鳥 瑞楽
「どちらも、同じこと」
善知鳥 瑞楽
「だから、恨みません」
善知鳥 瑞楽
す、と身を離す。
善知鳥 瑞楽
感情判定します。人脈。
甘葛井五郎太
どこからともなく感情修正します
善知鳥 瑞楽
2D6+1>=5 (判定:人脈) (2D6+1>=5) > 9[4,5]+1 > 10 > 成功
善知鳥 瑞楽
ET 感情表(5) > 憧憬(プラス)/劣等感(マイナス)
泳 蓬
ET 感情表(2) > 友情(プラス)/怒り(マイナス)
善知鳥 瑞楽
憧憬を
泳 蓬
友情……………………………
GM
はい。
善知鳥 瑞楽
「……私は先刻、『貴女が人の世のものであるかぎり』と、言いましたね」
善知鳥 瑞楽
「けれど、私は……貴女が、蓬である限り」
善知鳥 瑞楽
「貴女の望みを思うでしょう」
泳 蓬
離れた身体が微かな風に吹かれて、熱を取り払っていく。
泳 蓬
「……あなたってほんとうに」
泳 蓬
「いやんなっちゃうくらい、いい子なんだから……」
泳 蓬
「…………ずっとうらんでやる……ずっと」
泳 蓬
「……」
泳 蓬
踵を返して背を向ける。
泳 蓬
「さよなら」
善知鳥 瑞楽
「……さよなら」
善知鳥 瑞楽
その背に、それ以上声は掛けなかった。
GM
神器を宿す、姫君の役割。
GM
生まれながらにそれを期待され、そしていまここに、役割を果すべく立っている。
GM
それでも、いままで生きてきた時間、積み重ねてきたすべてが、決して役割のためにあるわけではない。
GM
GM
次行動される方は。
彌祚杯童子
はい
GM
GM
*メインフェイズ サイクル3 彌祚杯童子
彌祚杯童子
5:集落。そのまま里の者の営みが残っており、細々と、しかし平穏な暮らしをしていたことが窺える。
彌祚杯童子
木々を渡り、女どもを背において。
彌祚杯童子
降り立つは集落の一角。
甘葛井五郎太
たれもいない集落の道端に、男が立っている。
甘葛井五郎太
整えられた砂の道、目にとめた枯れ枝を一つ拾って、手慰みに手折る。
甘葛井五郎太
「…………」
甘葛井五郎太
「あっ」
彌祚杯童子
「そこにいらっしゃいましたか」
甘葛井五郎太
「ああ、ここにいた」
甘葛井五郎太
「向こうは昔っからの知り合いだからな、積もる話もあると思ってよ」
甘葛井五郎太
折った枝は、真っ二つ。一つずつを持って道端に落とし、指先についた砂を払う。
彌祚杯童子
足の爪先で引っ掻くように土を踏み。
彌祚杯童子
「貴君が」
彌祚杯童子
「己の理のために女を不意打ちするような男ではないとは、考えておりました」
甘葛井五郎太
「俺の相手は彌祚杯童子、あんただよ」
甘葛井五郎太
「今やどっちが『八千矛』でどっちが『八十神』か分かったもんじゃあないが……」
甘葛井五郎太
「儀式は儀式で、俺とあんたが神器を持ってる」
甘葛井五郎太
「まさかあの蓬どのに渡していたりしないだろ? 神器」
彌祚杯童子
「ええ。我が弓はこの手に」
彌祚杯童子
「しかして、己が武器は祖先より受け継がれし二振りの刀。神器はその神気をもって貴君を苛むでしょう。」
甘葛井五郎太
「こんなものが二つもあったら、そりゃあ『八千矛』は連戦連勝であったことだろうな」
甘葛井五郎太
「俺の力は……」
甘葛井五郎太
「……まあいいか、俺の力は鬼の力だ」
彌祚杯童子
「ほう」
甘葛井五郎太
「鬼狩るために鬼になる。音に聞こえし魔王流ってな」
甘葛井五郎太
「隠忍の血を入れた俺が、『八千矛』というのもおかしな話」
甘葛井五郎太
「神器が二つに分かれたは、俺のせいかとも思ったが……」
甘葛井五郎太
「どうも、お互い様だったようだな」
彌祚杯童子
「貴君が鬼の血を引くというのであれば」
彌祚杯童子
「彌祚杯童子の名を冠する者として、一層負けるわけにはいきませぬね」
甘葛井五郎太
「それはこちらも同じことだ。
 鬼を殺すために研鑽してきた俺が、鬼に負けるわけにはいかんだろう」
甘葛井五郎太
「とはいえ俺は……鬼の血を引くと言っても……その性は人だって言われたがね」
甘葛井五郎太
「だから『八千矛』役にもなれると」
甘葛井五郎太
「屁理屈にも思えるが……」
彌祚杯童子
「儀式を執り行う者が言うのなればそうなのでしょう」
彌祚杯童子
「石を小判と称せば小判となるのが儀式というもの」
彌祚杯童子
「貴君が『八千矛』で、私が『八十神』と呪をかけられたのならば」
彌祚杯童子
「この場において、その役割はゆるぎますまい」
甘葛井五郎太
「あんたが勝てば、人の世は終わり、新しいシノビガミが生まれる」
甘葛井五郎太
「俺が勝てば、世界は今と同じまま。次の儀式に引き継ぐ次の祭具は、人の手によって作られるだけで、隠忍の手には残らない」
彌祚杯童子
「ええ、そうなるでしょう」
甘葛井五郎太
「しかし、あんたはどうだい」
彌祚杯童子
「私ですか」
甘葛井五郎太
「姿かたちではなく、生まれ育ちでなく」
甘葛井五郎太
「俺の本性が人というなら、なるほど人という気もする」
甘葛井五郎太
「しかし、一方で──」
甘葛井五郎太
「俺の姿かたちは本当は、もっと鬼に近い」
甘葛井五郎太
「あんたはそれからすると、ひどく人に見えるから」
甘葛井五郎太
「不安にゃならねえか、と思ってな」
彌祚杯童子
「古来、我ら『鬼』の祖先は森から生まれたと伝わっております」
彌祚杯童子
「人とよく似た姿をしていた」
彌祚杯童子
「我らが本性は自然」
彌祚杯童子
「あるがままにあり、求めるままに求め、死する」
彌祚杯童子
「…………しかし、そうで御座いますね。人の血も西方の鬼の血も多く取り込んで参りました。」
彌祚杯童子
「いずれ産まれくる我が子の牙を……」
彌祚杯童子
「落とされたくない心から、この儀式を覆さんとする私は」
彌祚杯童子
「確かに、人でもあるのかも知れませぬ」
甘葛井五郎太
「……この国じゃ」
甘葛井五郎太
「狼は消えて、犬は残った」
甘葛井五郎太
「犬は森に分け入っても野良犬だ。狼には戻れない」
甘葛井五郎太
「だから死ねとも言えねえけどな」
彌祚杯童子
「我らは家畜ではありません」
彌祚杯童子
「囲い込んだは狼であったと知りましょう」
甘葛井五郎太
「犬の中で狼にいちばん近いのは、柴犬らしいぜ」
彌祚杯童子
「柴犬ですか」
甘葛井五郎太
「おう」
甘葛井五郎太
「覚えておくといい、彌祚杯童子」
甘葛井五郎太
「あんたは牙を抜き、人らしくあれと強いられながら、鬼として殺される」
甘葛井五郎太
「だが、きっとあんたのあるがままは、もはや鬼ではない」
甘葛井五郎太
「俺もそれを覚えておくぜ」
彌祚杯童子
「確かに、覚えておきましょう」
彌祚杯童子
「されど……」
彌祚杯童子
「人として、最後の仇として」
彌祚杯童子
「殺されるのは貴君で御座いますれば」
彌祚杯童子
「私も、かの人が人の儀に遣られし鬼の血族であったことを、確かに覚えておきましょう」
甘葛井五郎太
「へ」
甘葛井五郎太
笑って首を竦めた。
彌祚杯童子
「お名前をお聞かせ願えますか」
甘葛井五郎太
「甘葛の井五郎太だ」
彌祚杯童子
「確かに」
甘葛井五郎太
「勝つぜ、俺は」
彌祚杯童子
「勝者はどちらかでしかありえません」
彌祚杯童子
「なればこそ」
彌祚杯童子
「私は貴君を殺し、勝者となる」
彌祚杯童子
「その血で祝杯をあげましょう」
甘葛井五郎太
「ごめんだね」
彌祚杯童子
「ふふ」
彌祚杯童子
「さて……そろそろ蓬を迎えに行かねばなりませぬ」
彌祚杯童子
「次に見える時は、刀を交えることになりましょうな」
甘葛井五郎太
「ああ」
彌祚杯童子
ざ、と土を踏む。
彌祚杯童子
赤い人ならざる足が遠ざかっていく。
甘葛井五郎太
ふう、と小さく息を吐き、自分も地を蹴る。
彌祚杯童子
泳蓬に対して感情判定、判定特技は異形化。
GM
判定をどうぞ。
彌祚杯童子
2D6>=5 (判定:異形化) (2D6>=5) > 9[3,6] > 9 > 成功
彌祚杯童子
気配を頼りに蓬の姿を探す。
彌祚杯童子
その足は獣のように軽やかに地面を駆ける。
泳 蓬
瑞楽と別れたまま、墓標の前に。
彌祚杯童子
「蓬」
泳 蓬
「……話は済みました」
泳 蓬
「いつでも」
泳 蓬
振り向くこともせず、闇に沈む墓標を眺めながら。
彌祚杯童子
手をのばす。
彌祚杯童子
伸ばした指は赤く染まり、爪は尖っている。
彌祚杯童子
「鬼の末裔として、御前の心を歪めしものとして」
彌祚杯童子
「私は御前に報いよう」
泳 蓬
「……報いてなどくださらなくて結構です」
泳 蓬
「あなたが私を己がものとするのなら、したのなら」
泳 蓬
「あなたの心のままに振るえばいい」
彌祚杯童子
「奇なることを」
泳 蓬
伸ばされる手から逃れるように振り返る。
彌祚杯童子
白い装束を外す。
彌祚杯童子
「我がものなれば、その身を慮るのは当然のことで御座いましょう」
彌祚杯童子
額から伸びたる朱き角
彌祚杯童子
赤みを帯びた浅黒い肌
泳 蓬
背がざわつく。
泳 蓬
「…………」
彌祚杯童子
首に勾玉と金属の装飾を下げている。
泳 蓬
斃すべき魔と教えられてきたそれと変わりのない。
泳 蓬
「報いるとは」
泳 蓬
「どうやって」
彌祚杯童子
「御前の心をいただいた」
彌祚杯童子
「なれば」
彌祚杯童子
「私の心を捧げましょう」
泳 蓬
「捧げるといわれて受け取れるものであれば、元より欲したりはしないのですよ」
泳 蓬
「無粋な人」
彌祚杯童子
「誠実ではあろうと思いますよ」
泳 蓬
「あなたがどれだけ私に誠実にいてくださっても」
泳 蓬
「私は道を間違えたと、そう思ってしまったことに変わりはありません」
泳 蓬
「私こそ、あなたの誠意に報いることはない」
彌祚杯童子
「…………」
泳 蓬
「私に宿っていた神器はもはやあなたのものです」
泳 蓬
「私の役割はもう」
泳 蓬
「あとははけるだけ」
泳 蓬
「そうではありませんか?」
彌祚杯童子
「姫」
彌祚杯童子
「御前は『姫』私が……」
彌祚杯童子
「私がその手に得し。美しき『姫』だ」
彌祚杯童子
ET 感情表(6) > 狂信(プラス)/殺意(マイナス)
彌祚杯童子
狂信で
泳 蓬
ET 感情表(3) > 愛情(プラス)/妬み(マイナス)
泳 蓬
……………………
泳 蓬
……………愛情…………
GM
はい。
泳 蓬
ずっと。
泳 蓬
ずっと、その一言だけが。
泳 蓬
「………………………」
泳 蓬
「……彌祚杯様」
泳 蓬
「私は、おろかで、卑賎で、うつくしくもありません」
泳 蓬
「心根だって捻じ曲がっていて」
泳 蓬
「唯一の友達のしあわせも願えない」
泳 蓬
「それでも?」
彌祚杯童子
「その言葉だけで」
彌祚杯童子
「貴方の心の深き場所に、美しい花が咲いていらっしゃることは」
彌祚杯童子
「十分知りえましょうな」
彌祚杯童子
「私はその花を枯らさぬよう努めましょう」
泳 蓬
ぎり、唇を引きむすんで俯く。
泳 蓬
「……違うと言っても、聞いてはくださらないのですね」
泳 蓬
「ひどいひと、ほんとうに、ほんとうにひどい……」
泳 蓬
「あなたがために、違えた道です」
泳 蓬
「お供いたしましょう。果てまで」
彌祚杯童子
「蓬」
彌祚杯童子
「御前を愛そう。永久に」
泳 蓬
冷えた身体が望まざるとふたたび温む。
泳 蓬
どんなに否定しても、拒んでも、たしかに。
泳 蓬
胸の奥に血の花が咲いている。
GM
数千年の怨讐が結実し、歪んだ儀式。
GM
あるはずのない祭具、あるはずのない女。
GM
あるはずのない邂逅。それ故に、あるはずのない――。
GM
GM
では、最後は泳蓬さんの手番となりますが。
泳 蓬
手番を放棄します。
GM
承知しました。
GM
それではメインフェイズはサイクル3を終え、クライマックスフェイズへ入ります。