甘葛井五郎太
6:木々。鬱蒼と生い茂る。どこまでも奥があり、深い闇へと招く。
甘葛井五郎太
飛ぶように駆けるその速度は次第に緩まり、後ろのあなたを振り返る。
甘葛井五郎太
腕を組んで生い茂る草葉を見上げている。
甘葛井五郎太
「いや、違うな……怒(いか)ってるわけじゃなくて……」
甘葛井五郎太
「あんたの邪魔をしたかもしれんと思ってな」
善知鳥 瑞楽
「この儀式における私のお役目というのは、八千矛に神器を与えること」
善知鳥 瑞楽
「八千矛と八十神の対峙には、むしろ」
善知鳥 瑞楽
「私がその真中に入るものではないかとも思いますが」
甘葛井五郎太
「知り合いなのだから、ちょっかいをかけられたら気が気ではあるまいよ」
善知鳥 瑞楽
「儀に関わりなければ、ただ、無事で、とだけ言えたのですが」
甘葛井五郎太
「『神器』を抱えているものがふたりか」
甘葛井五郎太
「観客どころか、『姫』がふたりいるわけだなあ」
甘葛井五郎太
「などと、言うわけでもないかもしれんな」
善知鳥 瑞楽
「神器のことは、私もまだ、よくは存じませんので」
善知鳥 瑞楽
「それは未だ、私の中に鎖されております」
甘葛井五郎太
「……あんたは、儀式のために育てられてきた『姫』だ」
甘葛井五郎太
「神器を宿しているという以上に、それは疑いようもない」
甘葛井五郎太
「もう一人が、あんたの知り合いとはなあ」
善知鳥 瑞楽
「……どうしてか蓬だったのかは、わかりませんが」
甘葛井五郎太
「いずれにしても、儀式はしなければいけない」
甘葛井五郎太
「俺もあんたも、そのために育てられ、……この時のために在る」
甘葛井五郎太
「…………と言ってもあんたは、そう言うのはないか」
甘葛井五郎太
「定められた儀式のままに、為すがままに──」
甘葛井五郎太
「あんたはただ流されてるままじゃないふうに見えるがね」
甘葛井五郎太
感情判定をし、アレの使用を宣言します。
GM
*祭具の効果により、感情判定を成功にします。
甘葛井五郎太
ET 感情表(5) > 憧憬(プラス)/劣等感(マイナス)
善知鳥 瑞楽
ET 感情表(1) > 共感(プラス)/不信(マイナス)
GM
*神器の封印が解かれ、甘葛井五郎太はこれを獲得。
GM
*神器の封印が解かれたため、善知鳥瑞楽の使命を甘葛井五郎太の使命に変更。
GM
*神器の封印が解かれたため、善知鳥瑞楽はすべての感情属性を取り直す。感情表の結果を見てから、変えないことを選んでもよい。
善知鳥 瑞楽
ET 感情表(6) > 狂信(プラス)/殺意(マイナス)
善知鳥 瑞楽
ET 感情表(6) > 狂信(プラス)/殺意(マイナス)
GM
*甘葛井五郎太の祭具は善知鳥瑞楽に手渡されたものとし、そして消滅。
甘葛井五郎太
「…………何とかの板ってのがあったな」
甘葛井五郎太
「それそれ。板にしがみついている相手を叩き落したとき、罪にはなるかどうかっていう……」
甘葛井五郎太
「この場合、あんたと蓬どのが同じ板にしがみついて今にも沈みそうなら……」
甘葛井五郎太
「あんただけに浮き輪を投げたのはこの俺だ」
甘葛井五郎太
「だからまあ、俺が責任を持つって話だな」
善知鳥 瑞楽
「お一人で持たれることもないでしょう」
甘葛井五郎太
「あんたと俺は、同じ船に乗ることになったらしい」
甘葛井五郎太
「……まあこの船、あの『八十神』に沈められるかもしれんがな」
甘葛井五郎太
「儀式中に蓬が助かる方法を捜すのは、なしではない」
甘葛井五郎太
「殺さなきゃいけないのは、あの『八十神』だけだからな」
善知鳥 瑞楽
「……此度はおそらく、今までの予定調和ほど上手くはいかないでしょう」
善知鳥 瑞楽
甘葛様に、彌祚杯様の秘密を譲渡します。
甘葛井五郎太
あの蓬の中にも、神器があるのだろう。
甘葛井五郎太
その形を井五郎太はすでに知っている。
甘葛井五郎太
「あるいは、自分の中で、何かを納得づけているのか」
善知鳥 瑞楽
「……できることを、考えておりますよ」
甘葛井五郎太
その透明な眼差しを、髪の奥の目が覗き込む。
GM
本来の神楽の演目であるならば、あとは八十神を討つのみ。
GM
故に、取りこぼされた誰かを想うのは、それは配役に強いられたものではない。
善知鳥 瑞楽
2d6 (2D6) > 5[1,4] > 5
善知鳥 瑞楽
5:集落。そのまま里の者の営みが残っており、細々と、しかし平穏な暮らしをしていたことが窺える。
善知鳥 瑞楽
果ての闇より、森を抜け。今は無人の里へと足を踏み入れる。
善知鳥 瑞楽
誰もいない家々の間をゆっくりと、しかし確かな足取りで。
善知鳥 瑞楽
ただひとつ察することのできる、人の気配の方へと。
泳 蓬
夜闇よりもなお暗く、冬枯れよりも生の気配のない、異界に落ちた集落に。
泳 蓬
取り残されたように、ぼんやりと青く暗い満月を仰ぎ見て。
甘葛井五郎太
呼びかける瑞楽の少し離れて後ろ、控えるように立っている。
泳 蓬
その佇まいにか、空気にか、あるいは何かの直感でーーわかる。
泳 蓬
「おめでとう。よかった。あとは、八千矛が勝つばかりですね」
泳 蓬
「望むことなんて。……貴女のしあわせ。そればかりですよ」
甘葛井五郎太
凝乎と二人のやり取りを見つめている。
善知鳥 瑞楽
「……私はこの場で、何を望むこともしません。できません」
泳 蓬
「……といっても、貴女のことだから変に気負ってしまうんだろうけど!」
善知鳥 瑞楽
「……貴女の望みを思うことはできるかもしれない。貴女が人の世のものであるかぎり」
善知鳥 瑞楽
「私は人の世のもののために、ここにおりますので」
泳 蓬
「私が人の世のものでなければ、迷わず切り捨てられる?」
善知鳥 瑞楽
「答えられないことで、私を試さないで」
甘葛井五郎太
瑞楽の背後にいるので、見えるのは蓬からだけかも知れない。
甘葛井五郎太
「つまり、言うべきか言わざるべきかの時」
甘葛井五郎太
「俺はいつも、言う方を選んでいる。忍びなのに」
泳 蓬
「乙女の話に首を突っ込まないでくださる?」
甘葛井五郎太
「あんたらがどうこうって話じゃあないぜ」
甘葛井五郎太
「俺の話だ。だから言おうかな、と、自分に気合を入れたところだ」
甘葛井五郎太
「あんたはこのままいくと、あの彌祚杯童子を助(す)けることになる」
GM
【PC3 秘密】
数千年にも及ぶ屈辱の末、ついに綻びが起きる。儀式に使用され消滅するはずだった祭具『羽喫鳴鏑』を先代の八十神がどうにか残し、今はあなたの手元にある。今回の異常はそれによって引き起こされたものだろう。このまたとない機会を無駄にするわけにはいかない。
あなたはプライズ 祭具『羽喫鳴鏑』を持つ。
GM
備考:このプライズに秘密はありません。読みは『はばみなりかぶら』です。
泳 蓬
「あの方の祭具を用いれば私に宿る神器の封印も解ける、と」
甘葛井五郎太
「知らんよりは、知っておいた方がいい。知るのは早い方が良いだろう」
善知鳥 瑞楽
「……今、貴女の内に鎖されているものについて」
泳 蓬
「大したことは存じません。おそらくはあなたのそれと、そう変わらないわ」
善知鳥 瑞楽
「……では、私はそれを確かめるべきですね」
泳 蓬
「そんなに真面目くさった顔で訊かなくても、教えますよ」
泳 蓬
神器の秘密を二人に渡します。全体公開かな。
GM
【神器『生弓矢』 秘密】
このプライズ『神器』の本当の名前は『生弓矢』だ。
このプライズは封印されているかぎり、戦果で奪うことはできない。
このプライズの封印が解かれたとき、このプライズが封印されていた者の使命は封印を解いた者の使命に書き換えられる。その際、このプライズが封印されていた者は、所持するすべての感情属性を再度決定し直す。
このプライズを所持(封印されている状態を除く)しているものは、クライマックスフェイズ、毎ラウンドに一度、遁甲符として使用できる。(使用してもこのプライズはなくならない)
泳 蓬
「なぜこれが私の中に鎖されたのかは知る由もないけれど」
泳 蓬
「これさえなければ、あなたのそんな顔を見なくてもよかったのにね」
泳 蓬
「貴女のしあわせを願っているというのは、ほんとうですよ」
善知鳥 瑞楽
こちらもまた、井五郎太を振り返り。さらにその背後へと、目を投げる。
善知鳥 瑞楽
歩んできた森の向こうにいるだろう、蓬の命を繋ぐかもしれない相手。
善知鳥 瑞楽
情報判定をします。彌祚杯様の居所を、調査術。
善知鳥 瑞楽
2D6+1>=5 (判定:調査術) (2D6+1>=5) > 11[5,6]+1 > 12 > 成功
善知鳥 瑞楽
沈黙は使いません。そのまま甘葛様に共有します。
善知鳥 瑞楽
「八十神に会いたいのなら、あちらへ」
善知鳥 瑞楽
すいと示す。しかし指先は仔細を伝えはしない。
甘葛井五郎太
「人の世に留まって、死ぬつもりもないのなら」
善知鳥 瑞楽
「蓬。私はやはりこの場では、貴女にも……何も望むことはありません」
泳 蓬
「どうかしら。なにかを望んでいるようで、他にないから縋りたくなっているだけかも」
泳 蓬
「……選択肢がないほうが、幸せなこともあるかもね」
甘葛井五郎太
「こちらの手を取る気があるなら、隠れててくれ」
GM
本来は、神話に起きた出来事を模し、そして儀式をより盤石にするためのもの。
GM
人の心は移ろいやすく、故に縛り付ける必要がある。
GM
数千年を重ねるための道理が裏返り、儀式を揺るがす。
GM
あるいは心が心であるがゆえに、怨讐を覆し得るのか。
泳 蓬
2d6 (2D6) > 6[2,4] > 6
GM
6:木々。鬱蒼と生い茂る。どこまでも奥があり、深い闇へと招く。
泳 蓬
瑞楽の示した方角へ足を向ける。
生活のあとがそこかしこに残る道を、足跡さえ残さぬように歩く。
泳 蓬
そうして草木を踏み分けて、隠忍の姿を探す。
彌祚杯童子
高い木々の上方、ほどほどに太い枝の付け根に腰掛け、幹に耳を当てている。
彌祚杯童子
「ご自身を卑下されるようなお言葉で御座いますね」
彌祚杯童子
「同じとされるのは心外で御座いますね」
彌祚杯童子
「私は里一の鬼、此度の儀式を任されし名誉ある爪弾き者です」
泳 蓬
「ふふ。……名誉があるのなら、そうですね。私とは違いますね」
泳 蓬
「国の濁りばかり呑んで、腹が腐った女とは」
泳 蓬
「いいえ。国のためにきちんと働いて参りましたよ」
泳 蓬
「邪のもの。魔のもの。さまざまな者と交わって」
泳 蓬
「ただ、あなたのご期待には添えないかもしれないとおわかりいただきたかっただけ」
彌祚杯童子
「呪なれば、打ち破れることもありましょう」
彌祚杯童子
「なぜ、御前がたは路を作りたがるのでしょう」
彌祚杯童子
「定めや運命と、そうよばれるものです」
泳 蓬
「……縛られていることが可笑しいですか?」
彌祚杯童子
「左右の草が踏み倒せないほど、強靭なのか……あるいは、見えておりませんのか」
泳 蓬
「路があると信じなければ歩けぬこともあるものです」
泳 蓬
「草を踏み倒すことは、皆が皆に出来ることではありませんわ」
彌祚杯童子
「御前とお話させていただきました後、『姫君』に」
泳 蓬
「私の中には、どちらとも感じる心があります」
彌祚杯童子
「…………と、言うわけにも参りますまい」
彌祚杯童子
「しかしながら、私にはこれの扱い方がわからぬのです」
泳 蓬
甘葛井五郎太の秘密を調査します。特技は【封術】。
泳 蓬
2D6>=5 (判定:封術) (2D6>=5) > 9[3,6] > 9 > 成功
GM
【PC1 秘密】
数千年、代々繰り返されてきたこの儀式。国守のためのみならず、あなたの代で果たし損ねるわけにはいかない。儀式の手順は熟知している。姫君に祭具『羽喫鳴鏑』を渡し神器『生大刀・生弓矢』の封印を解き、『八十神』を討つ。それだけだ。
あなたはプライズ 祭具『羽喫鳴鏑』を持つ。
祭具『羽喫鳴鏑』は感情判定の際に使用を宣言することで、相手に渡すことが出来る。そうしたとき、対象が神器を所持しているならばその封印を解き、獲得することができる。この際、感情判定は判定なしに成功となり、このプライズは消滅する。
泳 蓬
「……本来ならばひとりの”姫”に宿るところを」
泳 蓬
「どういうわけだかはわかりかねますが、……たとえば、あなたが祭具を手にしているから、とか」
泳 蓬
「そのような理由で、別れてしまったのでしょう」
彌祚杯童子
「であれば、御前には先代……ひいては我々鬼を恨む道理がある」
彌祚杯童子
「私めに差し出せるはこの『鏑矢』ほど、もしくは……」
泳 蓬
口にしようとした言葉が、上手く出てこない。
泳 蓬
あの子にしあわせに、と。それだけが望みなのだと。
泳 蓬
そのためならば自分が死ぬことを恐れてなどはいないのだとーー
GM
生まれ方を選ぶことはできなくとも、生き方を選ぶことはできる。
GM
しかし――己の心の有り様は、はたして選べるものだろうか。
彌祚杯童子
5:集落。そのまま里の者の営みが残っており、細々と、しかし平穏な暮らしをしていたことが窺える。
彌祚杯童子
木の上から降り立つと、先導するように歩く。
彌祚杯童子
舗装されていない地面を歩くには最適の厚い皮膚を有する足。
彌祚杯童子
「掟に縛られ、自由には出来ませぬが……生きることは『許されて』御座います」
彌祚杯童子
「向こうには歴代『八十神』を祀る墓標も御座います」
彌祚杯童子
「子供のうちに生え変わった牙を削られ、このような……人の暮らしを強いられている」
泳 蓬
「鬼が鬼としてあるように生きれば、人の世は損なわれますね」
泳 蓬
「いずれ同じことを繰り返すことになるのではなくて?」
彌祚杯童子
「接吻を交わし、寝屋をともにし、その身を我が心に受け入れましょう」
彌祚杯童子
感情判定をし、『羽喫鳴鏑』を使用します。
GM
*祭具『羽喫鳴鏑』の効果により、感情判定を成功にします。
彌祚杯童子
ET 感情表(1) > 共感(プラス)/不信(マイナス)
泳 蓬
ET 感情表(1) > 共感(プラス)/不信(マイナス)
GM
*神器『生弓矢』の封印が解かれ、彌祚杯童子はこれを獲得。
GM
*神器の封印が解かれたため、泳蓬の使命を彌祚杯童子の使命『八千矛を討ち、世界を変える』に変更。
GM
*神器の封印が解かれたため、泳蓬はすべての感情属性を取り直す。感情表の結果を見てから、変えないことを選んでもよい。
泳 蓬
ET 感情表(2) > 友情(プラス)/怒り(マイナス)
彌祚杯童子
「神器も、その醜き身体も……私のものだ」
GM
*彌祚杯童子の祭具『羽喫鳴鏑』は泳蓬に手渡されたものとし、そして消滅。
彌祚杯童子
嫌な音を立てることもなく、吸い込まれるように。
彌祚杯童子
人と変わらぬ手が、滑らかに体内に潜っていく。
泳 蓬
痛みのないまま、肉を分けるように入り込む手の熱に息を呑む。
彌祚杯童子
ずぷりずぷりと、月のような弓を引き出していく。
泳 蓬
今まで得た肉体のどんな感覚よりーー忌まわしいとすら思えるほどの。
泳 蓬
選ばされる。選ぶのではなく、選ばれるのでもなく。
彌祚杯童子
「御前の命はこの彌祚杯童子がいただき申した」
泳 蓬
奥から湧き上がる、血よりも熱く粘ついた怒りと恨みが。
彌祚杯童子
人の身体の内から産まれし神器の全容がその姿を表す。
泳 蓬
己の意思に関わらず彌祚杯の言葉に呼応して。
泳 蓬
肩で息をしながら見上げた彌祚杯の手に、ーー神器。
彌祚杯童子
「立派な子を授かってくださり、感謝いたしますよ」
彌祚杯童子
話す口の内側には、未だ真っ赤な血が残っていた。
泳 蓬
己の胎に呪い殺した、鬼の種が齎したように思えた。
GM
心を支配し、宿命を齎し、来たるべき戦いの為に。