GM
そこに結び渡される絆は、どんな色をしているの? どんな歌を奏でるの?
GM
Dead or AliCe
『They lived happily ever after.』
救世主
「異世界転生最強チート主人公のこの俺が……!」
GM
救世主には常に、三十日ルールが付きまとい、裁判の義務がある。
GM
あなたたちは息の合った動きで、目の前の救世主を倒したのだった。
GM
懐を探れば、いくばくかの六ペンスコインが手に入るだろう。
GM
そして生殺与奪は、あなたたちの手に委ねられる。
ヤミー・ヤミー
「bon-appetit(召し上がれ)!」
男の背中から、カトラリーが生えている。
正面から貫かれたものだった。
ウォーリ
「相手が悪かったですね」ヤミーの傍ら、それを感慨無く眺める。
GM
少年はそれなりに心の疵の力を使いこなしていたようだったが、あなたたちの敵ではなかった。
GM
もしかしたらこの堕落の国に落ちてきたばかりで、調子に乗っていたのかもしれない。
ウォーリ
頬の切り傷から滲んだ血を、手の甲で拭う。
ヤミー・ヤミー
「生きていれば喰うか喰われるか……今回は我々が喰う側だったらしい」
GM
街の通りには、それなりに人の行き交いがある。
GM
あなたたちの『裁判』を見物する末裔たちもいたが、決着がついたとみるや、ほとんど散っていた。
GM
堕落の国で、救世主のこのような戦いはありふれた──とまではいかないが、珍しくはない営みだ。
ヤミー・ヤミー
返り血を指で拭う。ぺろりと舐める。
「どうする? 喰うか?」
ウォーリ
そう言いながら、男の懐を改める。
六ペンスコインはもちろん、その他の金目のものを探して。
ヤミー・ヤミー
「左様で。
なら、喉の乾きだけ潤しておこうかな」
GM
大したものは持っていない。仕立てのよいしっかりしたつくりのが学ランがいちばん上等だが、それも貫かれて血に塗れている。
ヤミー・ヤミー
臓器を引きずり出して掲げる。滴る血を顔に浴びる。
ヤミー・ヤミー
「まあ、こんなものか……」 ポイッ
ウォーリ
紙切れに、光沢のある黒い板……使い様は分からないな。
使えなさそうなものは五臓六腑と同様に放り投げた。
ウォーリ
「襤褸程度には使えるかもしれませんね」そう言って、男の上着を剥ぐ。
ヤミー・ヤミー
「悪いな。もっと丁寧に殺せばよかったかもしれん」
GM
まだ生暖かく、固まっていない死体からは、上着はするりと抜けた。
GM
凄惨な光景に怯える末裔はいれど、怒るものや責めるものはいない。
GM
ここに死体を放置していれば、まあだれかが片付けるだろう。景観に悪いので。
ヤミー・ヤミー
「案じる必要などない。私は少食なんだぞ」
ヤミー・ヤミー
「それに私は回数よりは体験を……(略)」
GM
あなたたちがいつものやり取りが繰り広げられているところに、拍手の音が響く。
帽子屋の末裔
そちらへ目を向ければ、やや年嵩の帽子屋の末裔が立っているのが見える。
ヤミー・ヤミー
「ふっ。まあ、ヤミー・ヤミーだからな」何の説明にもなっていない。
帽子屋の末裔
血だまりを避けるようにしながら、あなたたちの方へ大股に近づいてきます。
帽子屋の末裔
「どうやら、そうとう腕に自信があるご様子」うんうんと頷いている。
ヤミー・ヤミー
「こっちのウォーリも結構やるやつだぞ!
利口だし、器用だし、反抗的だし……
脂が乗っていないのが玉に瑕だが……」
帽子屋の末裔
腕を広げて大仰に。帽子屋の末裔はこのようにしておおむね適当である。
ヤミー・ヤミー
「ごめん……今度から一言ゆってからやるね」
帽子屋の末裔
「実はね、お二人の腕を見込んで頼みごとがあるのですよ」
ウォーリ
「そうしてください」そういう問題でもない気はする……。
ヤミー・ヤミー
「ほう、なんだ。亡者か、迷惑救世主か」
ウォーリ
「ただ働きでなければ良いんですが」改めて、末裔へと向き直る。
帽子屋の末裔
「三人で行くと、やはり一人が帰ってこない」
帽子屋の末裔
「二人で行くと──帰ってくることもあるのですが、一緒にいるところを見なくなる」
帽子屋の末裔
「この街の北、プレスコット村で起こっていることでございます」
帽子屋の末裔
持って回った言い回しと大げさな身振り手振りを要約すると、こうです。
帽子屋の末裔
この街から三日ぐらいかかる距離にあるプレスコット村は、
帽子屋の末裔
堕落の国では珍しい奇麗な水が湧く、このあたり一帯の水源です。
帽子屋の末裔
けれど、そこに行った商人たちが、どうも戻ってこず、
帽子屋の末裔
水の運搬がはかどらず、この辺一帯の水が高騰しまくって困っている。
帽子屋の末裔
「何とかここはひとつ、お強いおふたりにこの事態を解決していただけないかと!」
帽子屋の末裔
「わたくしには出せませんが、村の問題を解決したら商人なり村の住民なりが大感謝して大歓待してくれるんじゃないですかね」
帽子屋の末裔
帽子屋の末裔は無責任でお調子者である(個体差がある)
ヤミー・ヤミー
「水が良いということはすなわち食糧事情も良いということだ。太りチャンスだぞ」
帽子屋の末裔
「そうです!」話の流れを分かってなくても同意するところがある。
ヤミー・ヤミー
「問題を解決すれば、報酬で肉も野菜も食い放題に違いない」
ヤミー・ヤミー
「なに、期待していた報酬がなかったら、そのときは我々がその村を支配すればいいだけだ……」
帽子屋の末裔
うんうんと帽子屋の末裔も頷いている。
ウォーリ
「分かりましたよ。コレが行くというならオレも従います」
帽子屋の末裔
「ありがとうございます! この御礼はきっと商人や村人たちがしてくれるでしょう!」
GM
そういうわけで、あなたたちは一路プレスコット村へ向かうことになった。
GM
帽子屋の末裔に渡された簡素な地図を頼りに、北へ道なりに進み──
GM
三日目の昼頃には、進む道の足元がぬかるみ始める。
GM
プレスコット村は、沼に囲まれたこのあたり一帯の水源。
GM
周囲にもこのようにふんだんに水が湧き出している。この辺りは泥で、ちゃんと濾過せねば飲めたものではないが……
ヤミー・ヤミー
ピッチャピッチャ(泥をはねさせている)
ヤミー・ヤミー
「疲れたな……もう一歩も歩けない」ビチャ……ビチャ……
ウォーリ
「アンタが歩けなくなる前に着けて良かったですよ」
GM
商人たちがよく訪れることもあってか、村はそれなりの規模。
GM
村の入り口からまっすぐ伸びた中央通りから、家々にぽつぽつと明かりがともるのが見えます。
ヤミー・ヤミー
「うむ……お前におぶってもらわねばならないところだった」
GM
……ただ、村の規模からすると、人通りは妙にまばらで、少ないように見える。
ウォーリ
無茶なので泥の上を引き摺っていくことになろう。
ウォーリ
村に足を踏み入れて、それを内から見回す。
GM
その少ない村人たちも、あなたたちと目が合うとス……と目を逸らして離れてゆく。
ウォーリ
「そうですね。思いの外活気がない、というか」
ヤミー・ヤミー
「この私が来たのに、住民が諸手を上げて歓迎しないのは……」
ウォーリ
「やっぱりあの帽子男、信用できないヤツだったな」
ウォーリ
「ここから大感謝して大歓待、なんてあり得ますかね」
ヤミー・ヤミー
「ありえる。私はヤミー・ヤミーだからな」
ヤミー・ヤミー
「ま……何にせよこの国では、面倒事は避けられん運命よ」
ヤミー・ヤミー
「どうせ避けられんのならば、こちらからぶち当たっていくしかあるまい」
ヤミー・ヤミー
特にあてもなくズンズンと通りを突き進んでいく。
ウォーリ
「その辺のヤツでも捕まえるしかないか……」
ウォーリ
とりあえず、その後ろを恰も従者のようついて歩く。
GM
波が引くようにスス……スス……と去っていく村人たちの中。
ココ
ふと、あなたたちから逃げず、視線を返す少年がひとり。
ウォーリ
「……こんにちは」とりあえず挨拶から始めてみよう。
ヤミー・ヤミー
「こんにちは! 喰っちまうぞ~!(挨拶)」
ヤミー・ヤミー
「私達は救世主だ。この村についてちょっと話を聞きたいんだがいいかな?(泰然)」
ウォーリ
「この村が困ったことになっているから何とかしろと。
そう頼まれたんです」
ヤミー・ヤミー
「ここに来たものが戻らないとかいうじゃないか」
ヤミー・ヤミー
「何か悪辣な救世主が文字通り食い物にしているとか……」
ヤミー・ヤミー
「そういうわかりやすい話はないのか?」
ヤミー・ヤミー
「ここはプレスコット村であっているよな……?」
ウォーリ
この村は奇妙だ。それは既に、自らの目で確認した通り。
ヤミー・ヤミー
「じゃあ私達を歓迎してくれないあの村人たちはなんだ……?」
ヤミー・ヤミー
「まるで何かに怯えていたようだったぞ」
ウォーリ
「最近。この村で変わったことはありませんでしたか」
ココ
「ちょっと、来る人が前より減った、って聞いたかな」
ココ
「水の売り買いで持ってる村だから、困ってる~って」
ココ
「お兄さんたち、悪い救世主を捜しに来たの? いつまでいるの?」
ヤミー・ヤミー
「そんな計画的なことは考えられんな……」
ウォーリ
「まあ……滞在できそうであれば、
暫く様子を見ても良いかもしれないですね」
ヤミー・ヤミー
「まあ、幸いえ~と、二十日は余裕ある。つまり、一日から二十日はいられるな……」
アバウトすぎる
ヤミー・ヤミー
「この村がうまいもの喰わせてくれるなら二十日ぐらいいてもいいな」
ウォーリ
次の救世主を探す必要もある。留まる日数としては適当だろう。
ココ
「沼で囲まれてるから、建物を増やしてるヨユウがないんだって」
ヤミー・ヤミー
「水を求めに来る商人はどうしてるんだ……? 野宿か……?」
ココ
「仲がいい人の家に泊めてもらってるみたいだよ」
ココ
「だから、商人の人たちはたくさんくるけど、みんな知り合いなんだ」
ウォーリ
「でしたら、有難くお言葉に甘えましょうか」
ココ
「うまいもの…はわかんないけど、おいしい水ならあるよ」
ヤミー・ヤミー
「よし、我が家だと思ってくつろぐがいい。ウォーリよ」
ココ
テーブルに何脚かの椅子のある、台所と一体となったリビングがすぐに目の前。
ココ
椅子を引いて、どうぞどうぞと席を進めると、水を杯に入れて持ってくる。
ウォーリ
「間違っても“アレ”、食わないでくださいよ」
ヤミー・ヤミー
「私はいつも正しいことしかしないが……?」
ウォーリ
「ありがとうございます。丁度喉が渇いていたので」
ココ
家の奥の方には寝室。ベッドはないが、寝れる場所はありそうだ。
ヤミー・ヤミー
「こんなに透き通った水は久しぶりだな~」
ウォーリ
今のところはそこまで間違ってないな……とか思いながら自分も飲む。
GM
長旅で泥の中を歩き、それなりに疲れているせいもあるだろう。美味しく感じる。
ヤミー・ヤミー
「うむ、血液がサラサラになっていくのを感じる……
お前は飲まんのか?」
ココ
「お客さまより先に飲むわけにはいかないもの」
ウォーリ
ただでさえ希少な水。
さぞ儲けているのだろうなあと横で勘定を始めている。
ココ
と言いつつ、水差しから注いだ水に口をつける。
ヤミー・ヤミー
「怪現象の原因も、そう慌てて探す必要もあるまい……」
ウォーリ
「ついでに少しでも、アンタの気晴らしになればいいですが」少年を指して。
ココ
「悪い救世主のこと、ほかの人にも聞くんだったら、もうちょっと遅くなってから酒場に行くといいよ」
ウォーリ
「それなら、件の聞き込みにも丁度良さそうですね」
GM
ふと、あなたたちの鼻先に、甘いにおいが香る。
ウォーリ
その匂いがもたらす効果に気づいた頃には遅い。
GM
おぼろげな、現実と区別のつかないような、あわいのなか。
GM
ココの首につけられた首輪に、黒いもやが纏わっている。
GM
辺りはすっかり闇に落ち、家の外から明かりがわずかに漏れる。
ヤミー・ヤミー
「お互い同時に眠ってしまっていたようだな……」
ウォーリ
自らの格好を改める。どこか変わったところが無いかと。
GM
コインが取られているとか、そのようなこともないようだ。
ウォーリ
「疵の力? 救世主の仕業ということですか?」
ヤミー・ヤミー
「まあ、少なくとも、ただの末裔風情にはこんなことはできまい……」
ウォーリ
「……」持ち物が変わりないことを確認すれば、溜息を吐く。
ヤミー・ヤミー
「しかし、眠らせて、傷つけるでもなく、捕らえるでもないか……」
ヤミー・ヤミー
「私が目覚めたときにはもういなかった」
ウォーリ
顔をもたげる。そうして探せど、やはり姿はない。
ウォーリ
「まあまあ、面倒なことに巻き込まれた気がしてきました」
ヤミー・ヤミー
「しかたないさ。避けられぬ運命よ」
ヤミー・ヤミー
「ここでこうしていても、始まらんな。
ココを探すとしようか……」
立ち上がる。
ウォーリ
追って地に足をつけ、よれたコートの皴を伸ばした。
GM
家の外へ出ると、ふたたびあなたたちは違和感を覚える。
GM
どれぐらい眠っていたのかは分からないが、日はすでにとっぷりと暮れ、
GM
村人たちはとっくに寝ていてもおかしくないのに、通りは明るい。
GM
家々には明かりがともり、通りには村に着いた時と同じ程度に人通りがある。
GM
家から出たあなたたちに、一斉に人々の視線が向いた。
白兎の末裔
白兎の末裔が、あなたたちに近づいてくる。
ヤミー・ヤミー
「なんだ? サインか?」
一歩前に。
ウォーリ
軽く引き留めるよう、ヤミーの服の裾を掴んだ。
ウォーリ
「…………」聞いているのかいないのか。そのままで末裔の方を見る。
白兎の末裔
「おふたりとも、まだ眠ってらっしゃらないのですね」
白兎の末裔
「……救世主で、いらっしゃいますよね?」
ヤミー・ヤミー
「だとしたらどうする。
歓迎会でも開いてくれるか?」
白兎の末裔
「はい。あの救世主が言っていることです」
白兎の末裔
「おふたりにも恐らく、『ハッピーマリッジ』の呪いがかかっています」
白兎の末裔
この村には『ココ』という名前の救世主がおり、ほうぼうにこの呪いをかけて回っているらしい。
白兎の末裔
この呪いを受けると、『二人でひとつの人生』が強制される。
白兎の末裔
具体的に言うと、片方が目覚めているとき、もう片方は必ず眠りにつくという状態になる。
白兎の末裔
そして、片方が死ぬと、もう一方も眠りに落ちて死ぬ。
白兎の末裔
三人で来た場合は、一人が眠りに落ちたままになり、残りの二人がその状態に。
白兎の末裔
一人で来ると眠りに落ちて二度と起きることはなく、そのまま死ぬ。
白兎の末裔
「……ただし今はまだ『ハッピーマリッジ』の呪いは発動していません」
白兎の末裔
「次にどちらかが眠りにつくと、呪いが発動します」
白兎の末裔
「このことを、あの救世主は『結婚前夜』と呼んでいるようです」
白兎の末裔
つまり、今ここにこうして起きている村人たちは、もう片方を眠らされて夜起きざるを得なくなっている人々です。
白兎の末裔
この村で恋人、友人、兄弟姉妹など、なんらかの絆で結ばれた二人は、みな『ハッピーマリッジ』の影響下にあるとのこと。
ヤミー・ヤミー
「なんてしゃらくさい呪いなんだ……」
ヤミー・ヤミー
「つまり……
次に眠る前に奴を見つけ出してブッ裁判すればよいということだな」
ウォーリ
「さっきの言葉を訂正します。
本当に、至極面倒なことに巻き込まれましたね」
ヤミー・ヤミー
「まあでも、やることといえばいつもどおりシンプルだろう」
ウォーリ
「そうとはいえ……猶予もあまりないでしょう」
ウォーリ
「二十日とか言ってる場合じゃなくなりましたね」
ヤミー・ヤミー
「まったくだな。
急に結婚しろとか言われても困る」
ヤミー・ヤミー
「衣装とか会場とか料理とか用意してくれれば
ちょっとぐらいは乗ってやろうという気になったものを」
ウォーリ
「オレも、とっとと、早いうちに裁判を仕掛けるのには同意です」
ヤミー・ヤミー
「なら、もうこんなところでくっちゃべっていてもしょうがないな」
ヤミー・ヤミー
「行くぞ! やつに何事も段取りが大事だということを教えてやろう」
ヤミー・ヤミー
どたどたどたと走っていく。どこかに。
ウォーリ
末裔には礼を述べてから、小走りでその背を追った。