GM
一人。
一人。
GM
出会って、二人になる。
GM
そこに結び渡される絆は、どんな色をしているの? どんな歌を奏でるの?
GM
どうかその手を離さないで。
GM
Dead or AliCe
『They lived happily ever after.』
GM
それから、二人は、末永く――
GM
* * *
GM
血の花が咲いて、散る。
救世主
「ばっ……ばかな……!」
救世主
「異世界転生最強チート主人公のこの俺が……!」
GM
斃れたのは一人。
GM
立っているのは二人。
GM
救世主には常に、三十日ルールが付きまとい、裁判の義務がある。
GM
あなたたちは息の合った動きで、目の前の救世主を倒したのだった。
GM
懐を探れば、いくばくかの六ペンスコインが手に入るだろう。
GM
そして生殺与奪は、あなたたちの手に委ねられる。
ヤミー・ヤミー
「bon-appetit(召し上がれ)!」

男の背中から、カトラリーが生えている。
正面から貫かれたものだった。
GM
詰襟の黒い生地に、なおどす黒く血が滲む。
ウォーリ
「相手が悪かったですね」ヤミーの傍ら、それを感慨無く眺める。
ヤミー・ヤミー
猟奇の勝利だな。
GM
少年はそれなりに心の疵の力を使いこなしていたようだったが、あなたたちの敵ではなかった。
GM
もしかしたらこの堕落の国に落ちてきたばかりで、調子に乗っていたのかもしれない。
ウォーリ
頬の切り傷から滲んだ血を、手の甲で拭う。
ヤミー・ヤミー
「生きていれば喰うか喰われるか……今回は我々が喰う側だったらしい」
GM
街の通りには、それなりに人の行き交いがある。
GM
あなたたちの『裁判』を見物する末裔たちもいたが、決着がついたとみるや、ほとんど散っていた。
GM
堕落の国で、救世主のこのような戦いはありふれた──とまではいかないが、珍しくはない営みだ。
ヤミー・ヤミー
返り血を指で拭う。ぺろりと舐める。

「どうする? 喰うか?」
ウォーリ
「アンタが食いたいならどうぞ」
ウォーリ
そう言いながら、男の懐を改める。
六ペンスコインはもちろん、その他の金目のものを探して。
ヤミー・ヤミー
「左様で。
 なら、喉の乾きだけ潤しておこうかな」
GM
大したものは持っていない。仕立てのよいしっかりしたつくりのが学ランがいちばん上等だが、それも貫かれて血に塗れている。
ヤミー・ヤミー
臓器を引きずり出して掲げる。滴る血を顔に浴びる。
ヤミー・ヤミー
「まあ、こんなものか……」 ポイッ
GM
びしゃっ。
ウォーリ
紙切れに、光沢のある黒い板……使い様は分からないな。
使えなさそうなものは五臓六腑と同様に放り投げた。
GM
血だまり、喰い残しが、石畳に広がっている。
ウォーリ
「襤褸程度には使えるかもしれませんね」そう言って、男の上着を剥ぐ。
ヤミー・ヤミー
「悪いな。もっと丁寧に殺せばよかったかもしれん」
GM
まだ生暖かく、固まっていない死体からは、上着はするりと抜けた。
GM
凄惨な光景に怯える末裔はいれど、怒るものや責めるものはいない。
GM
ここに死体を放置していれば、まあだれかが片付けるだろう。景観に悪いので。
ウォーリ
「まあ、端から期待はしてませんからね」
ウォーリ
「少しはその腹も満たされましたか?」
ヤミー・ヤミー
「案じる必要などない。私は少食なんだぞ」
ウォーリ
「さいでしたか」
ウォーリ
特に信用していない眼差し。
ヤミー・ヤミー
「それに私は回数よりは体験を……(略)」
ウォーリ
適当な相槌。
GM
あなたたちがいつものやり取りが繰り広げられているところに、拍手の音が響く。
帽子屋の末裔
そちらへ目を向ければ、やや年嵩の帽子屋の末裔が立っているのが見える。
帽子屋の末裔
「いやあ、お二人ともお強い!」
ヤミー・ヤミー
「ふっ。まあ、ヤミー・ヤミーだからな」何の説明にもなっていない。
ウォーリ
「……」其方を見る。
帽子屋の末裔
血だまりを避けるようにしながら、あなたたちの方へ大股に近づいてきます。
帽子屋の末裔
「どうやら、そうとう腕に自信があるご様子」うんうんと頷いている。
ヤミー・ヤミー
「こっちのウォーリも結構やるやつだぞ!
 利口だし、器用だし、反抗的だし……
 脂が乗っていないのが玉に瑕だが……」
ウォーリ
「勝手に紹介しないでください」
帽子屋の末裔
「すばらしい!」
帽子屋の末裔
腕を広げて大仰に。帽子屋の末裔はこのようにしておおむね適当である。
ウォーリ
「……オレたちに何か用でしょうか」
ヤミー・ヤミー
「ごめん……今度から一言ゆってからやるね」
帽子屋の末裔
「実はね、お二人の腕を見込んで頼みごとがあるのですよ」
ウォーリ
「そうしてください」そういう問題でもない気はする……。
ヤミー・ヤミー
「ほう、なんだ。亡者か、迷惑救世主か」
帽子屋の末裔
「たぶん迷惑救世主です」
ウォーリ
「ただ働きでなければ良いんですが」改めて、末裔へと向き直る。
ヤミー・ヤミー
たぶんかぁ~
帽子屋の末裔
「はい」
帽子屋の末裔
そう言って末裔は一つ指を立てる。
帽子屋の末裔
「ひとりで行くと帰ってこない」
帽子屋の末裔
「三人で行くと、やはり一人が帰ってこない」
帽子屋の末裔
三つ立てた指の一つを折り曲げる。
帽子屋の末裔
「二人で行くと──帰ってくることもあるのですが、一緒にいるところを見なくなる」
ヤミー・ヤミー
怪談がはじまったぞ。
帽子屋の末裔
「この街の北、プレスコット村で起こっていることでございます」
帽子屋の末裔
持って回った言い回しと大げさな身振り手振りを要約すると、こうです。
ウォーリ
「なんというか、半端な話ですね」
帽子屋の末裔
この街から三日ぐらいかかる距離にあるプレスコット村は、
帽子屋の末裔
堕落の国では珍しい奇麗な水が湧く、このあたり一帯の水源です。
帽子屋の末裔
けれど、そこに行った商人たちが、どうも戻ってこず、
帽子屋の末裔
水の運搬がはかどらず、この辺一帯の水が高騰しまくって困っている。
帽子屋の末裔
「……ということでして」
帽子屋の末裔
「何とかここはひとつ、お強いおふたりにこの事態を解決していただけないかと!」
ヤミー・ヤミー
「よし行こう!」即決
帽子屋の末裔
「すばらしい!」拍手。
ウォーリ
いつもながら決断が早いな。
ウォーリ
「報酬は?」
帽子屋の末裔
「わたくしには出せませんが、村の問題を解決したら商人なり村の住民なりが大感謝して大歓待してくれるんじゃないですかね」
帽子屋の末裔
帽子屋の末裔は無責任でお調子者である(個体差がある)
ヤミー・ヤミー
「水が良いということはすなわち食糧事情も良いということだ。太りチャンスだぞ」
帽子屋の末裔
「そうです!」話の流れを分かってなくても同意するところがある。
ヤミー・ヤミー
「問題を解決すれば、報酬で肉も野菜も食い放題に違いない」
ウォーリ
「アンタらなあ……」
ヤミー・ヤミー
「なに、期待していた報酬がなかったら、そのときは我々がその村を支配すればいいだけだ……」
ウォーリ
それはそうだが……。
帽子屋の末裔
うんうんと帽子屋の末裔も頷いている。
ヤミー・ヤミー
おれたちがネオ村長だ。
帽子屋の末裔
その意気ですぞ!
ウォーリ
「分かりましたよ。コレが行くというならオレも従います」
ウォーリ
隣を顎で指す。
帽子屋の末裔
「ありがとうございます! この御礼はきっと商人や村人たちがしてくれるでしょう!」
GM
そういうわけで、あなたたちは一路プレスコット村へ向かうことになった。
GM
帽子屋の末裔に渡された簡素な地図を頼りに、北へ道なりに進み──
GM
途中野宿なども挟んで。
GM
三日目の昼頃には、進む道の足元がぬかるみ始める。
GM
ちょっと歩きづらい。
ヤミー・ヤミー
水源が近いか……
GM
遠目にも、建物の影が見えてくる。
GM
プレスコット村は、沼に囲まれたこのあたり一帯の水源。
ウォーリ
ヌチャヌチャ……
GM
周囲にもこのようにふんだんに水が湧き出している。この辺りは泥で、ちゃんと濾過せねば飲めたものではないが……
ヤミー・ヤミー
ピッチャピッチャ(泥をはねさせている)
ウォーリ
上着に泥が跳ねてくる……。
GM
学ランでガードだ。
GM
そのように悪路をさらに進んで、
ヤミー・ヤミー
お前の死は無駄ではなかった……
GM
村に着くころには、日もだいぶ傾いています。
ヤミー・ヤミー
「疲れたな……もう一歩も歩けない」ビチャ……ビチャ……
ウォーリ
「アンタが歩けなくなる前に着けて良かったですよ」
GM
商人たちがよく訪れることもあってか、村はそれなりの規模。
GM
村の入り口からまっすぐ伸びた中央通りから、家々にぽつぽつと明かりがともるのが見えます。
ヤミー・ヤミー
「うむ……お前におぶってもらわねばならないところだった」
GM
……ただ、村の規模からすると、人通りは妙にまばらで、少ないように見える。
ウォーリ
無茶なので泥の上を引き摺っていくことになろう。
ヤミー・ヤミー
そんな……。
ヤミー・ヤミー
「違和感のある場所だな……」
ウォーリ
村に足を踏み入れて、それを内から見回す。
GM
その少ない村人たちも、あなたたちと目が合うとス……と目を逸らして離れてゆく。
ウォーリ
「そうですね。思いの外活気がない、というか」
GM
ス……
ヤミー・ヤミー
「うむ……」
ウォーリ
余所余所しい村人を見送る。
GM
スス……
ヤミー・ヤミー
「どう考えてもおかしい……」
ヤミー・ヤミー
「この私が来たのに、住民が諸手を上げて歓迎しないのは……」
ウォーリ
「やっぱりあの帽子男、信用できないヤツだったな」
帽子屋の末裔
そんな~
ウォーリ
「ここから大感謝して大歓待、なんてあり得ますかね」
ヤミー・ヤミー
「ありえる。私はヤミー・ヤミーだからな」
ウォーリ
「本当、大した自信だもので……」
ヤミー・ヤミー
「ま……何にせよこの国では、面倒事は避けられん運命よ」
ヤミー・ヤミー
「どうせ避けられんのならば、こちらからぶち当たっていくしかあるまい」
ヤミー・ヤミー
特にあてもなくズンズンと通りを突き進んでいく。
ウォーリ
首を竦める。否定はしない。
ウォーリ
「その辺のヤツでも捕まえるしかないか……」
ウォーリ
とりあえず、その後ろを恰も従者のようついて歩く。
GM
ズンズン。
GM
波が引くようにスス……スス……と去っていく村人たちの中。
ココ
ふと、あなたたちから逃げず、視線を返す少年がひとり。
ヤミー・ヤミー
第一村人だ。
ヤミー・ヤミー
(第一でもなんでもない)
ウォーリ
第n村人辺りでどうか。
ウォーリ
「……こんにちは」とりあえず挨拶から始めてみよう。
ココ
「……こんにちは!」
ヤミー・ヤミー
「こんにちは! 喰っちまうぞ~!(挨拶)」
ココ
「えっ!?」
ウォーリ
「こらこら」
ウォーリ
「そういう冗句です。お気になさらず」
ヤミー・ヤミー
「私達は救世主だ。この村についてちょっと話を聞きたいんだがいいかな?(泰然)」
ココ
何だ冗談かあ~。
ココ
「えっ、ええ~っと、はい!」
ヤミー・ヤミー
まあ、冗談ではないんだがな。
ココ
「お兄さんたち、ふたりで来たの?」
ウォーリ
「ええ。二人で」
ウォーリ
「この村が困ったことになっているから何とかしろと。
 そう頼まれたんです」
ココ
「困ったこと?」
ヤミー・ヤミー
「ここに来たものが戻らないとかいうじゃないか」
ウォーリ
頷く。
ココ
「えっ」
ヤミー・ヤミー
「何か悪辣な救世主が文字通り食い物にしているとか……」
ココ
「ええっ」
ヤミー・ヤミー
「そういうわかりやすい話はないのか?」
ココ
「ううん……聞いたことないなあ」
ヤミー・ヤミー
「んん~?」
ウォーリ
なんだ……自分の話か……。
ヤミー・ヤミー
ウォーリ
「それはおかしいですね」
ヤミー・ヤミー
「ここはプレスコット村であっているよな……?」
ココ
「うん」
ウォーリ
「…………」
ウォーリ
この村は奇妙だ。それは既に、自らの目で確認した通り。
ヤミー・ヤミー
「じゃあ私達を歓迎してくれないあの村人たちはなんだ……?」
ヤミー・ヤミー
「まるで何かに怯えていたようだったぞ」
ココ
「この村、けっこういつもこんな感じだよ」
ウォーリ
「ふむ……」
ウォーリ
「最近。この村で変わったことはありませんでしたか」
ココ
「ちょっと、来る人が前より減った、って聞いたかな」
ココ
「水の売り買いで持ってる村だから、困ってる~って」
ヤミー・ヤミー
「う~む?」わからん……
ココ
「お兄さんたち、悪い救世主を捜しに来たの? いつまでいるの?」
ウォーリ
いつまでか……。
ウォーリ
隣を見る。
ヤミー・ヤミー
「そんな計画的なことは考えられんな……」
ウォーリ
「まあ……滞在できそうであれば、
 暫く様子を見ても良いかもしれないですね」
ヤミー・ヤミー
「まあ、幸いえ~と、二十日は余裕ある。つまり、一日から二十日はいられるな……」
アバウトすぎる
ヤミー・ヤミー
「この村がうまいもの喰わせてくれるなら二十日ぐらいいてもいいな」
ウォーリ
次の救世主を探す必要もある。留まる日数としては適当だろう。
ココ
「あ、じゃあ、僕の家に来たらどうかな」
ココ
「この村、泊まるところがないんだ」
ヤミー・ヤミー
それなんかおかしくないか?
ココ
「沼で囲まれてるから、建物を増やしてるヨユウがないんだって」
ヤミー・ヤミー
「水を求めに来る商人はどうしてるんだ……? 野宿か……?」
ココ
「仲がいい人の家に泊めてもらってるみたいだよ」
ココ
「だから、商人の人たちはたくさんくるけど、みんな知り合いなんだ」
ヤミー・ヤミー
「なるほどなぁ~」納得
ウォーリ
「でしたら、有難くお言葉に甘えましょうか」
ヤミー・ヤミー
「うむ」
ココ
「うまいもの…はわかんないけど、おいしい水ならあるよ」
ココ
そう言うと、少年はあなたたちを手招きする。
ヤミー・ヤミー
わ~
ウォーリ
一番後ろになってついていく……
ヤミー・ヤミー
ドラクエ歩行
ココ
ザッザッザ…
ココ
小さな家にあなたたちを招く。
ヤミー・ヤミー
「よし、我が家だと思ってくつろぐがいい。ウォーリよ」
ウォーリ
「アンタの家じゃないでしょう」
ウォーリ
お邪魔します。
ココ
テーブルに何脚かの椅子のある、台所と一体となったリビングがすぐに目の前。
ヤミー・ヤミー
「それはどうかな……?」
ココ
椅子を引いて、どうぞどうぞと席を進めると、水を杯に入れて持ってくる。
ヤミー・ヤミー
わ~い
ウォーリ
「間違っても“アレ”、食わないでくださいよ」
ヤミー・ヤミー
「私はいつも正しいことしかしないが……?」
ウォーリ
「ありがとうございます。丁度喉が渇いていたので」
ココ
家の奥の方には寝室。ベッドはないが、寝れる場所はありそうだ。
ココ
「えへへ、よかった」
ウォーリ
杯を受け取る。
ヤミー・ヤミー
ごくごく。先に飲む。
ココ
にこにこしながら、それを見つめている。
ヤミー・ヤミー
「こんなに透き通った水は久しぶりだな~」
GM
堕落の国では本当に珍しい、きれいな水だ。
ウォーリ
今のところはそこまで間違ってないな……とか思いながら自分も飲む。
GM
長旅で泥の中を歩き、それなりに疲れているせいもあるだろう。美味しく感じる。
ココ
「すごいでしょう。この村の名物だからね」
ヤミー・ヤミー
「うむ、血液がサラサラになっていくのを感じる……
 お前は飲まんのか?」
ココ
「お客さまより先に飲むわけにはいかないもの」
ウォーリ
ただでさえ希少な水。
さぞ儲けているのだろうなあと横で勘定を始めている。
ココ
と言いつつ、水差しから注いだ水に口をつける。
ウォーリ
そうして、室内を見回す。
ウォーリ
「此処には一人で?」
ココ
「……うん。今はひとり」
ココ
「でも大丈夫、寂しくないよ」
ココ
「お兄さんたち、しばらくいるんでしょう?」
ヤミー・ヤミー
「うむ。水もうまいしな」
ウォーリ
今は……か。
ヤミー・ヤミー
「怪現象の原因も、そう慌てて探す必要もあるまい……」
ウォーリ
「……そうですね」頷いて応じる。
ウォーリ
「ついでに少しでも、アンタの気晴らしになればいいですが」少年を指して。
ココ
「へへ」
ウォーリ
「オレの事はウォーリと呼んでください」
ヤミー・ヤミー
私はなんと……ヤミー・ヤミーだ。
ココ
「ウォーリ」
ココ
「ボクはココ。よろしくね」
ココ
ヤミー・ヤミーかあ~
ココ
「悪い救世主のこと、ほかの人にも聞くんだったら、もうちょっと遅くなってから酒場に行くといいよ」
ヤミー・ヤミー
情報収集と言えば酒場だな~
ココ
「あそこには、水を売る人も来たりするし」
ウォーリ
「それなら、件の聞き込みにも丁度良さそうですね」
GM
──などと、話していると。
ヤミー・ヤミー
お?
GM
ふと、あなたたちの鼻先に、甘いにおいが香る。
GM
と同時に、抗いがたい強烈な眠気が襲った。
ヤミー・ヤミー
眠りの雲じゃん……。
GM
意識がどんどん遠のいていく。
ヤミー・ヤミー
バッタ~ン
GM
意識が……どんどん……遠のいていく……
ウォーリ
その匂いがもたらす効果に気づいた頃には遅い。
ウォーリ
意識が遠のいていく……
GM
そうして意識が最後にふつりと途切れる直前、
ココ
「……これで、ふたりの絆は永遠だよ……」
GM
そう聞こえたが最後、すべてが闇に落ちる。
GM
* * *
GM
あなたたちは夢を見る。
GM
おぼろげな、現実と区別のつかないような、あわいのなか。
GM
ココの首につけられた首輪に、黒いもやが纏わっている。
GM
* * *
GM
静寂。
GM
水の流れる音がどこかで聞こえる。
GM
あなたたちは目を覚ます。
GM
場所は変わらず、村の小さな家の中。
GM
ただし、ココの姿はない。
GM
辺りはすっかり闇に落ち、家の外から明かりがわずかに漏れる。
ヤミー・ヤミー
ムク…
ウォーリ
──身動ぎをする。
ヤミー・ヤミー
ゆさゆさしちゃお
ウォーリ
「……ん」
ヤミー・ヤミー
起きないと食べちゃうぞ~。
ヤミー・ヤミー
起きても食べるけど……。
ウォーリ
眉間に皴を寄せ、瞬きをする。
ウォーリ
勝手に食べられてなくて良かった。
ヤミー・ヤミー
食べるときは、一言いうぞ。
ウォーリ
「……。オレ、いつの間に寝てました?」
ウォーリ
まあそれなら……(良くはない)
ヤミー・ヤミー
「お互い同時に眠ってしまっていたようだな……」
ウォーリ
「ふむ……」
ヤミー・ヤミー
「おそらく、疵の力だろう」
ウォーリ
自らの格好を改める。どこか変わったところが無いかと。
GM
特に変わったところはない。
GM
コインが取られているとか、そのようなこともないようだ。
ウォーリ
「疵の力? 救世主の仕業ということですか?」
ウォーリ
「オレはてっきり……」
ヤミー・ヤミー
「まあ、少なくとも、ただの末裔風情にはこんなことはできまい……」
ウォーリ
「……」持ち物が変わりないことを確認すれば、溜息を吐く。
ウォーリ
「それは……そうですね」
ヤミー・ヤミー
「しかし、眠らせて、傷つけるでもなく、捕らえるでもないか……」
ウォーリ
「妙ですね」
ウォーリ
「……ココは?」
ヤミー・ヤミー
「私が目覚めたときにはもういなかった」
ウォーリ
顔をもたげる。そうして探せど、やはり姿はない。
ウォーリ
「……………なんというか」
ウォーリ
「まあまあ、面倒なことに巻き込まれた気がしてきました」
ヤミー・ヤミー
「しかたないさ。避けられぬ運命よ」
ヤミー・ヤミー
「ここでこうしていても、始まらんな。
 ココを探すとしようか……」
立ち上がる。
ウォーリ
「そうですね」
ウォーリ
追って地に足をつけ、よれたコートの皴を伸ばした。
ウォーリ
家の戸へ足先を向ける。
GM
家の外へ出ると、ふたたびあなたたちは違和感を覚える。
GM
どれぐらい眠っていたのかは分からないが、日はすでにとっぷりと暮れ、
GM
村人たちはとっくに寝ていてもおかしくないのに、通りは明るい。
GM
家々には明かりがともり、通りには村に着いた時と同じ程度に人通りがある。
GM
そして、もうひとつ。
GM
家から出たあなたたちに、一斉に人々の視線が向いた。
ヤミー・ヤミー
おー?
ウォーリ
「……どういう風の吹き回しでしょう」
ウォーリ
視線に、居心地悪そうに身を竦める。
白兎の末裔
その中から一人。
白兎の末裔
白兎の末裔が、あなたたちに近づいてくる。
ヤミー・ヤミー
「なんだ? サインか?」
一歩前に。
白兎の末裔
「……おふたりですか?」
白兎の末裔
囁くような問いかけ。
ウォーリ
「もうちょっと警戒してください」
ヤミー・ヤミー
「3人や1人に見えるか?」
ウォーリ
軽く引き留めるよう、ヤミーの服の裾を掴んだ。
ヤミー・ヤミー
「警戒しているよ」
ヤミー・ヤミー
ウォーリと白兎の間に立っている。
ウォーリ
「…………」聞いているのかいないのか。そのままで末裔の方を見る。
白兎の末裔
「おふたりとも、まだ眠ってらっしゃらないのですね」
白兎の末裔
「……救世主で、いらっしゃいますよね?」
ヤミー・ヤミー
「だとしたらどうする。
 歓迎会でも開いてくれるか?」
白兎の末裔
「……『ふたりでひとつの人生』」
ウォーリ
「それは……符丁か何かですか?」
白兎の末裔
「はい。あの救世主が言っていることです」
白兎の末裔
「おふたりにも恐らく、『ハッピーマリッジ』の呪いがかかっています」
白兎の末裔
説明しよう。
ヤミー・ヤミー
なんだそれ? うまいのか?
白兎の末裔
この村には『ココ』という名前の救世主がおり、ほうぼうにこの呪いをかけて回っているらしい。
ウォーリ
ハッピーマリッジ。
白兎の末裔
この呪いを受けると、『二人でひとつの人生』が強制される。
白兎の末裔
具体的に言うと、片方が目覚めているとき、もう片方は必ず眠りにつくという状態になる。
白兎の末裔
そして、片方が死ぬと、もう一方も眠りに落ちて死ぬ。
白兎の末裔
三人で来た場合は、一人が眠りに落ちたままになり、残りの二人がその状態に。
白兎の末裔
一人で来ると眠りに落ちて二度と起きることはなく、そのまま死ぬ。
白兎の末裔
「……ただし今はまだ『ハッピーマリッジ』の呪いは発動していません」
白兎の末裔
「次にどちらかが眠りにつくと、呪いが発動します」
白兎の末裔
「このことを、あの救世主は『結婚前夜』と呼んでいるようです」
白兎の末裔
つまり、今ここにこうして起きている村人たちは、もう片方を眠らされて夜起きざるを得なくなっている人々です。
ウォーリ
「…………………」
白兎の末裔
この村で恋人、友人、兄弟姉妹など、なんらかの絆で結ばれた二人は、みな『ハッピーマリッジ』の影響下にあるとのこと。
ヤミー・ヤミー
「なんてしゃらくさい呪いなんだ……」
ウォーリ
握っていた服をパッと離した。
ヤミー・ヤミー
「つまり……
 次に眠る前に奴を見つけ出してブッ裁判すればよいということだな」
白兎の末裔
「……そうです」
ウォーリ
「さっきの言葉を訂正します。
 本当に、至極面倒なことに巻き込まれましたね」
ヤミー・ヤミー
「まあでも、やることといえばいつもどおりシンプルだろう」
ウォーリ
「そうとはいえ……猶予もあまりないでしょう」
ウォーリ
「二十日とか言ってる場合じゃなくなりましたね」
ウォーリ
クソデカ溜息。
ヤミー・ヤミー
「まったくだな。
 急に結婚しろとか言われても困る」
ウォーリ
咳き込む。
ウォーリ
「それは物の例えでしょうが……」
ヤミー・ヤミー
「やり口が雑なんだよな……」
ヤミー・ヤミー
「衣装とか会場とか料理とか用意してくれれば
 ちょっとぐらいは乗ってやろうという気になったものを」
ウォーリ
「──まあ!」大げさな咳払い。
ウォーリ
「オレも、とっとと、早いうちに裁判を仕掛けるのには同意です」
ヤミー・ヤミー
咳多いね……体調悪いのかな?
ヤミー・ヤミー
「なら、もうこんなところでくっちゃべっていてもしょうがないな」
白兎の末裔
白兎の末裔はぺこりと頭を下げた。
ヤミー・ヤミー
「行くぞ! やつに何事も段取りが大事だということを教えてやろう」
ヤミー・ヤミー
どたどたどたと走っていく。どこかに。
ウォーリ
「それは教えなくていいよ……」
ウォーリ
末裔には礼を述べてから、小走りでその背を追った。
GM
時は真夜中。タイムリミットは眠るまで。
GM
ふたりの『結婚前夜』──
GM
お茶会が始まる。