GM
さてはて
GM
皆様お揃いでしょうか。
えんじゅ
はいはーい!
赤光院 燦華
はあい。
noname
いまーす
ミネバリ
いますよ~
GM
はい
GM
ではみなさまお揃いのようなので
GM
シノビガミセッション『火神被殺』!
GM
始めていきましょう。
GM
よろしくお願いします!
えんじゅ
よろしくおねがいしまーす!
赤光院 燦華
よろしくおねがいします!
ミネバリ
よろしくお願いします
閏間開闢
おねがいしまーす!
GM
顔が出ない閏間開闢
GM
ミネバリくん色つけられますか
GM
◆今回予告
GM
――火神死なずして神産みの儀は成らず――

滅びを迎えんとした一族『不知火』。
再興のために彼らが挑んだのは神産みの儀。
しかし火の神死なずして、彼らは燐火となり消えた。

滅びた一族に遺されたのはただ一人の幼子。
育った子は決意する。再び神産みを行わん、と。

力の宿った神鏡『啼沢女』を手に、狙うは火神『迦具土』。
神を殺し、神を産み、火は新たな世界を啓くのか。

シノビガミ『火神被殺』

火神死すとき、新たなる神が産まれる。
GM
こういったシナリオです。
GM
神産みに挑んだ不知火の一族。
そのために火の神を殺そうとした彼らですが、その悲願は成らず。
残されたのはただ1人。
その子が育ち、一族の悲願成就のために、火神の力の源であろう宝珠・迦具土の持ち主を狙う。
という感じです。
GM
という感じで、ちゃくちゃくと
GM
PC紹介からやっていきましょう。
GM
よろしくお願いします。
GM
ではPC1から!
GM
■PC1 推奨:不知火
・使命:【PC2を殺す】
・導入:
不知火の生き残りとして、あなたが行うべきことは一族の再興である。
再興のため、必ず成し遂げなければならない儀『火神被殺』。
それは『宝珠・迦具土』をその身に宿すPC2を、この手で殺すことである。
一族に遺された『神鏡・啼沢女』を手に、あなたは誓いを立てた。
GM
キャラクターシートのURLを提示してから自己紹介をお願いします。
ミネバリ
はい、まずはキャラクターシート
https://character-sheets.appspot.com/shinobigami/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFwsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEYhZ291gMM
ミネバリ
名前はミネバリ。母さんに拾われたときには何も覚えていなくて名前も母さんからもらったよ。
ミネバリ
母さんと二人で山奥で暮らしてるけど、近くの村や里にある街にも行ったりしてるからある程度世の中には慣れてると思うんだよな。よくわかんないけど。
ミネバリ
あ、でも学校?はいってない。必要なことは母さんが教えてくれたし、俺も勝手に調べたりしてるからいらないでしょ?生きていくには。
ミネバリ
一族再興のためにやるべきことをやらないとね。
ミネバリ
こんなとこかな?
GM
はい、ありがとうございました。
GM
PC1の使命は【PC2を殺す】。
GM
やるべきこと、明確ですねえ! 頑張ってください。
GM
では次、PC2。
GM
■PC2 推奨:鞍馬神流
・使命:【宝珠・迦具土を守る】
・導入:
あなたは『宝珠・迦具土』を心臓に宿している。
あなたの死は『宝珠・迦具土』の破壊をも意味しているのだ。
『宝珠・迦具土』が破壊されれば、
世に力が溢れ新たな忍神が誕生することだろう。
それを防ぐのがあなたの使命だ。
GM
こういったHO。自己紹介お願いしまーす。
赤光院 燦華
キャラクターシート!
http://character-sheets.appspot.com/shinobigami/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFwsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEY4K2ExAMM
赤光院 燦華
名前は赤光院燦華(しゃっこういん-さんげ)。16歳。
赤光院 燦華
見ての通りかわいい女子高生だよ!
赤光院 燦華
ちょっといいとこの出なので、ちょっといいとこの学校通ってます。
赤光院 燦華
ただ、わたしの心臓、ちょっとね、やばくって。
だから、どんなときでも身を守れるようにって……
赤光院 燦華
だからわたしは、ステゴロ派!
赤光院 燦華
拳ひとつで戦ってくスタイルでこの年までやってきました。
赤光院 燦華
最近はなんかキナ臭い話もちらほら聞くけど……
赤光院 燦華
頑張って心臓、守っていくぞ!
赤光院 燦華
そんなかんじです!
GM
守るぞー! オー!
GM
ありがとうございました。
GM
というわけで使命、【宝珠・迦具土を守る】です。
GM
気合一発! がんばってくださいな。
GM
では次がPC3。
GM
■PC3 推奨:隠忍の血統
・使命:【PC1を助ける】
・導入:
全てが灰燼と帰した場所。
そこに倒れていた幼子『PC1』。
気まぐれか、必然か、君はその子を拾い、共に生きてきた。
その生活は楽しかった。これからも共にいよう。そう願っている。
えんじゅ
https://character-sheets.appspot.com/shinobigami/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFwsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEYpfzRugMM
えんじゅ
自己紹介って何すればいいんだ? 名前?
えんじゅ
ええと、えんじゅという!
えんじゅ
山で暮らしていて、野を駆けては獣を取り、山菜を採り、川に入って魚を取ったりしています。
えんじゅ
土着の妖怪です。今はなんかこどもを拾って育てている。
えんじゅ
過去のことはあまり気にせず、未来だけを見据えて生きているので、今楽しいことはこのミネバリを育てることです。
えんじゅ
ミネバリという名前はおれがつけて、たいがいのことはおれが教えた。
えんじゅ
ただ、ひとつだけおれが教えてないことがあって、それがあの……
えんじゅ
一族の悲願?
えんじゅ
おれはよくわかんないですけど……ミネバリがやるってゆってるので……
えんじゅ
がんばって手伝おうと思います。子供の喧嘩にばりばり介入します。
えんじゅ
倫理観はないです。よろしくお願いします。
GM
頼もしいですね。色んな意味で。
GM
というわけでPC3、使命は【PC1を助ける】。
えんじゅ
助けるぞ~!
GM
親パワーを見せるときだ!
GM
がんばってください。
GM
最後! PC4です。HOはえーと。
GM
■PC4 推奨:比良坂機関
・使命:【PC2を守る】
・導入:
PC2が物心ついた頃から、あなたはPC2をそばで支えてきた。
その胸に巣食った『宝珠・迦具土』。
これを守るのがあなたの使命。そう聞かされてきた。
そのためには、PC2をしっかりと守っていかなくては。
GM
こうですね。
GM
紹介お願いします。
閏間開闢
はいはい!どうやらワタクシの順番のようですね!
閏間開闢
名前が全部門構え!閏間開闢、うるまかいびゃくでございます!本日は名前だけでも覚えて帰ってくださいね~!
閏間開闢
私は『宝珠・迦具土』を宿す燦華様をお守りするため、比良坂機関から派遣された……(溜め)
閏間開闢
ボッッッッディーーーーーーガーーーードです!!
閏間開闢
朝6時にご自宅へ行き、夜0時に退勤する生活を送っています。なんと!12年も!!超!ブラックゥー!!
閏間開闢
まっ!守れとしか言われないので勤務時間は自己判断ですが!はっはははは!!
閏間開闢
他にどういう情報必要でしょうね? あ、趣味はギターと競馬とソシャゲ周回です! よろしくお願いしまーす!!
閏間開闢
そしてこちらが出し忘れていたキャラクターシート!!https://character-sheets.appspot.com/shinobigami/edit.html?key=ahVzfmNoYXJhY3Rlci1zaGVldHMtbXByFwsSDUNoYXJhY3RlckRhdGEYhKqpzQMM
GM
面白……
GM
はい。ありがとうございました。大権現男だよ……
GM
えー、PC4、使命は【PC2を守る】ですね。
閏間開闢
まもるぞ~!!
GM
>PC2が物心ついた頃から、あなたはPC2をそばで支えてきた。
GM
噛み締めてしまった。
閏間開闢
12年の重みがあります!!
GM
凄まじい重みを感じています。
GM
頑張ってくださいね!!!
閏間開闢
がんばります!!
GM
あ、コマも置いていただけると。
GM
そんで全員イニシアチブにPC番号-をつけてもらえると
GM
順番がいい感じになって、いいと思います。
GM
よし。
GM
はい、ではこの4人で
GM
今回『火神被殺』、やっていきたいと思います。
GM
よろしくおねがいします!
えんじゅ
よろしくおねがいしまーす!
赤光院 燦華
おねがいしまあす
ミネバリ
よろしくお願いします
閏間開闢
よろしくおねがいしまーす!!
GM
 
GM
では導入ですが、事前に告知したとおりの。
GM
1.PC3がPC1を拾うシーン
2.PC2とPC4が初めて出会うシーン

からの現在軸に飛び、

3.PC1がPC2を発見し、挑みかかるシーン

という3本立てでやっていこうと思います。
GM
分類としてはPC3の導入、PC4の導入、PC1&2の導入って感じ。
GM
バトルで導入を〆るホットスタートをやるぞい。
GM
ってことで、ミネバリとえんじゅ、どうでしょう。
GM
お願いできますか?
えんじゅ
はい!
ミネバリ
はぁい
えんじゅ
やるぞ~
GM
拾ってもらうぞ~
GM
ではやっていきましょ~
GM
 
GM
◆導入:えんじゅ
GM
――十年前。
GM
ぱちりと火の粉の爆ぜる音。
GM
焦土と化した荒れ野原に、乾いた風が吹き抜ける。
GM
不知火とかいう一族が、かつてはそこで暮らしていたらしい。
えんじゅ
見る影もない。
GM
全ては灰燼と帰した。
えんじゅ
唇をわずかに動かせば、口の中にあぶらの味。
GM
原型を留めているものといないもの。
GM
黒焦げに折り曲げられ、空へと伸ばされた指先が、
GM
ぼろりと崩れて無に帰る。
えんじゅ
焼けた人の脂が空気に漂い、焦げた匂いは香ばしくすらある。
えんじゅ
もはやすべては炭と灰の中、語るものはなく、気配もない。
GM
およそ命の息吹らしきものの感じられない、死の荒野。
えんじゅ
その中をぷらぷらと。
GM
その中に、
GM
けれど。
えんじゅ
散歩めいて歩いていたのを、ふと止める。
GM
同じ人の脂の香り。
GM
しかしまだ新鮮で、どこかやわらかい。
えんじゅ
「──おう」
GM
細い喉を通り抜ける、かすかわずかな呼吸の音。
えんじゅ
とっとっと、と。
えんじゅ
軽やかに歩む足の下で炭が崩れ灰が流れる。
GM
そこにあなたは姿を認める。
えんじゅ
「おう、おう、」
GM
今にも息絶えんとする、
GM
全身を火に炙られた、
GM
哀れで儚い人の子の姿を見る。
えんじゅ
死にゆくものを前にして、うっすらと目を細めた。
えんじゅ
気まぐれだったか、何だったか──
えんじゅ
腕を伸ばして、子供のような小さな体が、子供の小さな体を。
えんじゅ
赤子のように抱いた。その身体からも、
えんじゅ
ぼろぼろと灰が、炭が、そして今まさに、
えんじゅ
命が零れ落ちようとしているのを分かって、
えんじゅ
「そうさなあ」
えんじゅ
顔を覗き込む。
えんじゅ
褐色の指先が、その身体を確かめる。
瀕死の子供
「………う……あ」
瀕死の子供
火に焼かれ火傷でひきつれた口をかすかに動かす。
瀕死の子供
特に顔の火傷はひどい。
えんじゅ
鼻先を近づけた。その肉の焼けた良いにおいを嗅ぐ。
えんじゅ
「でも、夕餉には小さいな」
えんじゅ
顔を離して、けらけらと笑った。
えんじゅ
「ようし、では」
えんじゅ
「お前、もう少し大きくなるか」
瀕死の子供
「え………?」
瀕死の子供
朦朧とした意識の中で誰かの声が聞こえる。
えんじゅ
「人間というのは、どれぐらい背が伸びる?」
えんじゅ
「うん、決めた、決めたわえ」
えんじゅ
「もう少し大きくなってから食うとしよう!」
瀕死の子供
「………誰……?」
えんじゅ
意識もおぼろなあなたの耳に、楽しげな少女の声がするりと入り込んでくる。
えんじゅ
「おれか? おれは──」
えんじゅ
けれど、その言葉が聞こえる前に、あなたの意識は闇に落ちた。
えんじゅ
乾いた風が吹き渡る死の荒野。
えんじゅ
あやかしがひとり、少年を抱えて、鼻歌を歌いながら、
えんじゅ
そこにあったものに想いも馳せずに、上機嫌に立ち去ってゆく。
GM
揺らめく蜃気楼に、その姿が消えた。
GM
あとに残さるるは地を這う火のみ。
GM
それらもやがて、風と雨に掻き消されることだろう。
GM
GM
ありがとうございました。
GM
では次はPC4の導入ですね。
GM
開闢さんと燦華さんの初対面のシーン。
GM
普通に行くなら赤光院家に開闢さんが呼び出される感じになるかな……
GM
それで大丈夫ですか?
閏間開闢
大丈夫でーす!
GM
朗らか
GM
ではそのようにいきますか。
閏間開闢
お願いします!
GM
◆導入:閏間 開闢
GM
――十二年前。
GM
庭から鹿威しのかこんという音。
GM
鞍馬が名家、赤光院家の屋敷。
GM
その立派な門構えを潜った開闢は、
GM
そこで一人の幼い少女と引き合わされる。
GM
名は既に聞いている。赤光院燦華。
GM
厳しい顔をした男の隣に座る少女の護衛こそが、あなたに任せられた忍務だった。
GM
「閏間開闢」
GM
「……と、言ったか」
閏間開闢
「はい」
閏間開闢
比良坂機関から派遣された男には、少しばかり少年の面影が残る。
GM
まだ幼さの残る、けれど隣に座る少女に比べれば。
閏間開闢
その瞳はまっすぐに、二人の方に向けられていた。
GM
いかめしい表情のまま男はちらりと燦華を見遣り、
GM
けれどすぐに視線は開闢に戻る。
赤光院 燦華
こちらも、つんとした顔で開闢を見ている。
GM
赤光院の父はあまり燦華を気遣う様も見せぬまま、
GM
「忍務に関しては把握しているな」
閏間開闢
燦華に目線が合うと微笑んで
閏間開闢
すぐにその笑みを引っ込める。
閏間開闢
「問題ありません。上から全て指示されています。ご心配なら、機関の方に問い合わせる事をお勧めいたします」
閏間開闢
「もっとも、比良坂を信用できないというのであれば、私にできることはありませんが……」
GM
男は鼻を鳴らして、
GM
「いいだろう」
GM
「やり方は任せる。もとよりそのように話がついているからな」
GM
「君のやり方で、この燦華のことを守ってくれたまえ」
GM
それだけ言って、男は膝を上げる。
GM
「我々は忙しいのでな」
閏間開闢
「任せて下さい、仕事分は働きます」
GM
「……頼もしいことだ」
GM
ぼそりと呟くと、父は退去するその前に
GM
ちらりと燦華へと視線をやり。
GM
「では、燦華」
赤光院 燦華
「はい」
GM
「彼の言いつけを守るように」
GM
「お前の身体はそう簡単なものではないのだからな」
赤光院 燦華
「……はい、存じております」
GM
一度だけ頷くと、そのまま男は部屋を退去する。
GM
襖の閉められる音。
赤光院 燦華
手をついて頭を下げ、その背を送る。
GM
それを最後に、あとはまだ幼い二人が残される。
閏間開闢
静かに、閉じられた襖を見た。
閏間開闢
すぐに立ち上がって、燦華の側に膝を付く。
閏間開闢
「こんにちは」
赤光院 燦華
頭を上げたその視線が開闢に向く。
赤光院 燦華
「……こんにちは」
閏間開闢
「まだこんなに小さいのに、挨拶ができるんですね。」
閏間開闢
「いい娘さんだ」
赤光院 燦華
「もう四つになるのに、挨拶のできぬ子はおりません」
閏間開闢
「ははは、それはどうでしょうね。私ははずかしがり屋の子供だったので、なかなか挨拶ができませんでしたよ」
閏間開闢
「さて、先程お父上から話があったように、私が燦華様をお守りいたします」
赤光院 燦華
「はい」
閏間開闢
「常に言いつけを守れ、とは言いません。 アドバイスはいたしますが、全ての状況に対応できるマニュアルなどありませんからね」
閏間開闢
「私はあなたを守るために努力するので、燦華様も一緒に生き残るために頑張って欲しいと思います」
閏間開闢
「二人で協力していきましょう」
赤光院 燦華
「はい」
赤光院 燦華
「なるたけ手の掛からぬようにと言いつかっております」
閏間開闢
「手をかけてもいいんですよ。もちろん、かけなくてもいい」
閏間開闢
「あなたの選択は、全てあなたのものだ」
赤光院 燦華
「……はあ」
閏間開闢
「堅苦しくせず、楽しくやりましょうね、ってことです」
赤光院 燦華
「楽しく」
赤光院 燦華
「……そうですか」
赤光院 燦華
「では、よろしくお願いいたします」
閏間開闢
「はい、よろしくお願いいたします」
GM
かこん、ともう一度、軽やかな竹の音を聞いた。
GM
GM
ありがとうございました。
GM
◆導入:ミネバリ&赤光院 燦華
GM
では、それぞれ月日は流れ現代へ。
GM
ミネバリ。
ミネバリ
はい
GM
誰に教えられたのか、あなたは知っています。
GM
一族の悲願を叶えるためには『宝珠・迦具土』をその身に宿す者を殺さなければならないことを。
GM
そして燦華。
赤光院 燦華
はい。
GM
あなたは教えられ、知っています。
GM
あなたの心臓には『宝珠・迦具土』が宿っており、これを狙って、いつか必ず何者かがやってくることを。
GM
 
GM
というわけで、ミネバリと燦華が出会うシーンをやります。
GM
ミネバリさんの方がほとんど導入動けてないし、襲撃側だし
GM
そちらから描写してもらうのがいいかな……
GM
どういう感じに襲撃しますか? 下調べする? たまたま遭遇する?
ミネバリ
はい。たまたま遭遇する方がいいですね
GM
では日常からやってもらいますか。
ミネバリ
では珍しく母さんと二人で街へ降りてることにします
えんじゅ
おっ、出かけるか!
GM
珍しいですね
GM
どういう用事かな~ スリに来たんですか?
えんじゅ
スリ勝負するか!?
ミネバリ
街にしか売っていないものの買い物とかかな……
ミネバリ
化学肥料とか……
えんじゅ
そうしよう~。
GM
現代文明だ……
ミネバリ
日々学んでいます
えんじゅ
母はシャンプーってやつほしい。
GM
使うんだ……
ミネバリ
買おう
えんじゅ
あれめっちゃあわだつのですき
GM
季節は夏にしましょう。
GM
陽射しの照りつける夏。
GM
風はあの日と違って湿っている。
GM
その日、ミネバリとえんじゅは物資の調達に街へと降りていた。
えんじゅ
「ひとざとめっちゃあつい!」
ミネバリ
「蒸し暑いよね。同じ夏とは思えないな……」
えんじゅ
「木もないし、地面も土じゃなくてなんか硬いし、建物は何かピカピカしてるし…」
えんじゅ
「人間すごいな、こんな暑くして暮らせるんだな、修行か?」
ミネバリ
「建物の中は涼しいんだよ。氷室みたいで」
えんじゅ
「なるほど~」
えんじゅ
氷室に閉じ込められてひたすら氷を作り出すシノビを想像している。
ミネバリ
「俺もたまにしか降りてこないから知らないことの方が多いけど……母さんも街のことを知っておいた方がいいよ」
えんじゅ
「そうか~?」
えんじゅ
ミネバリと名付けたこの子供、今や息子同然のこの青年は、あの日からずいぶん背が伸びた。
えんじゅ
歩幅は広くなっているが、母は軽やかにその足取りについてくる。
えんじゅ
「母はずっと山で暮らしてきたから、山のことさえ分かっていれば……」
えんじゅ
「う~ん、でも、ミネバリが言うならそうかもな」
ミネバリ
「あの山だっていつどうなるかはわからないからさ」
えんじゅ
「……そうだなあ」
えんじゅ
「いつの間にか、ずいぶん人間も増えて……町も全然違うもんなあ」
ミネバリ
「母さんのいつの間にか、ってどれぐらいの話?」
えんじゅ
きょろきょろとあたりを見回すその姿は、まるきり田舎者の娘そのものだ。
えんじゅ
「数えてないなあ」
えんじゅ
「でもたぶん、お前が生まれるずっとずーっと前!」
えんじゅ
母はこのように、てきとうな物言いをする。
ミネバリ
「100年くらいかな……」
えんじゅ
「おそらく……」
えんじゅ
「ミネバリもそのころはこんなに小さかったもんな」
ミネバリ
「100年前だと影も形もないよ」
えんじゅ
「そうか~」
ミネバリ
「俺も村のやつらと来るまでは知らないことばかりだったけど、わかってくると面白いよ」
えんじゅ
「面白いか!」
ミネバリ
「なんか最近はすまーとほん?とかいうのが流行ってるらしい」
えんじゅ
どちらかと言うと、ミネバリが面白がっている、というところに反応して、パッと顔を向ける。
えんじゅ
「すまーとほん」
えんじゅ
「どんな本?」
えんじゅ
母も学んでいるので、最近の人間は巻物ではなく本を主に読んでいることを知っています。
ミネバリ
「なんか……これくらいの機械」

そういって小さく手で形をとる。
えんじゅ
「きかい」
えんじゅ
真似して小さく手で形をとった。
ミネバリ
「うん、なんか本が読める……らしい」
ミネバリ
ミネバリの知識も偏っていた
えんじゅ
「小さい本だなあ」
GM
すれ違う人間が持ってたりしますね。
GM
小さな機械を持って歩いている人間がちょこちょこいる。
ミネバリ
「ほら、みんなそれ見ながら歩いてる」
GM
画面を覗き込んだりなどもしている。不注意。
GM
こういう人間はスりやすい。
えんじゅ
「ああ~」
えんじゅ
「ははあ!」
えんじゅ
「町の人間は勉強熱心だなあ」
えんじゅ
「本を読みながら歩くんだなあ!」
ミネバリ
「熱心だよね。熱心過ぎて前はよくカモにしてたけど……」
えんじゅ
「うんうん。隙だらけだな」
ミネバリ
「あ、母さん」
えんじゅ
「ん?」
ミネバリ
声を潜める
ミネバリ
「スリはやっちゃいけないよ」
えんじゅ
「えっ」
えんじゅ
なぜ?という顔をする。
ミネバリ
「今は財布がなくなると本人以外も困るんだって」
えんじゅ
「ほ~」
ミネバリ
「お金以外に入ってるものが多いらしいよ。なんかよくわからない……ほけんしょうとか」
えんじゅ
「ほけんしょう」知らない言葉だな……
ミネバリ
ミネバリもよくわからない
えんじゅ
「財布は盗まない方がいいのかあ」
ミネバリ
「現金だけぬけるならいいんじゃないかな」
えんじゅ
「それだ」
えんじゅ
「次からそうしよう」
えんじゅ
「あんまり恨まれるのはよくないからな」
ミネバリ
「でも盗みはよくないってさ。村のやつらも言ってた」
ミネバリ
「モメると面倒だし」
えんじゅ
「ばれないようにやればよくない?」
えんじゅ
母には倫理観がない。
ミネバリ
「いいとおもうけど、なんだかそういう決まりなんだって」
えんじゅ
「決まりかあ」
ミネバリ
社会規範や法律について、独学で学ぶにはなかなか難しい。
えんじゅ
「人間は相変わらず、変な決まりを作るのが好きだなあ」
えんじゅ
「これもよく分からん」と言いながら、青信号の時にちゃんと横断歩道を渡っている。
えんじゅ
白い部分だけ踏んでる。
ミネバリ
「でも便利なものもたくさん作ってるよ。今から買いに行く肥料だって」
ミネバリ
初めて街に下りた時の、様々な驚きを思い返す。
えんじゅ
「確かになあ。あの肥料、よく育つもんなあ」
ミネバリ
「そうそう、除虫剤だって……」
ミネバリ
そう言いながら言葉を止める。
GM
ぴり、と
GM
空気が張り詰めた。
えんじゅ
「あれはなあ、でも、虫をあんまり殺しすぎるのは……」
えんじゅ
気づかずに、話を続けている。
ミネバリ
いつの間にか隣に居たはずのミネバリはいない。
えんじゅ
とっとっと、と軽やかに横断歩道を渡り切って、振り返って。
えんじゅ
「あれ?」
えんじゅ
「ミネバリ?!」
えんじゅ
いらえはなかった。
GM
 
GM
夏の日。炎天下。
GM
夕暮れ時にはまだ早い。
閏間開闢
煙草に火を付け、ふっ、と煙を吐き出した。
閏間開闢
駅前の喫煙所。
閏間開闢
スーツの袖を押さえて腕時計を見る。そろそろ燦華の下校時間だ。
閏間開闢
12年間、何事もなく過ぎて行った。おそらくはこれからも変わらない。
閏間開闢
護衛は仕事がないのが一番だ。赤光院家にしてみればあまりいい気持ちはしないだろうが、忙しくて困るのはお互い様。
閏間開闢
スマホをいじる。育てているキャラクターの進化素材が足りない。
閏間開闢
時計をちら、と見る。まだ少し時間まで余裕がある。
閏間開闢
ある、はずだった。
赤光院 燦華
湿度のある風が髪に絡む。
赤光院 燦華
ゆるやかにはためく長い髪。
赤光院 燦華
よくある鞄、よくあるローファー。
赤光院 燦華
傍目には、ただ普通の女子高生にしか見えない、けれど。
赤光院 燦華
視線を感じる。常人にはわからないだろう、その、何を察知しているのかさだかではない何かを。
ミネバリ
雑踏の中を獲物を見つけた獣のように疾る。
ミネバリ
この距離からでもわかる。
追い求めていたものがこの先にある。
ミネバリ
視界が開ける。
その先には長い髪の女。
赤光院 燦華
そう。ここにある。
求めていたもの、宝珠、それを宿す心臓が。
赤光院 燦華
「おっ、とお……!?」
ミネバリ
走る勢いそのままに手刀を一閃切りつける。
ミネバリ
「………」
赤光院 燦華
振りかざした鞄で受ける。
やわい布が弾け飛ぶが、振った勢いに手刀が流れる。
ミネバリ
「見つけたぞ、迦具土……」
赤光院 燦華
「あ?」
ミネバリ
「そいつをよこせ」
赤光院 燦華
「はあん」
赤光院 燦華
「欲しがってるやつがいるのは知ってたけど」
赤光院 燦華
「案外若いな」
ミネバリ
「歳はそうかわらないほどだろ」
ミネバリ
「狙われているのを知っているくせにのんきな女だ」
赤光院 燦華
「あは」
赤光院 燦華
「あんたこそ、襲っておいて悠長におしゃべり?」
ミネバリ
「はははは!」
ミネバリ
「それもそうだ」
ミネバリ
言うが早いかまっすぐに距離を詰める。
赤光院 燦華
用をなさなくなった鞄を放り捨て、きりっと拳を握る。
ミネバリ
貫手はまっすぐ心の臓へとめがけて放たれる。
赤光院 燦華
裏拳がそれを横に払う。
赤光院 燦華
開いた胴に叩き込まれんとする膝蹴り。
ミネバリ
もう一方の腕を払い降ろすように受け止める。
ミネバリ
至近距離、女の前で大きく息を吸う。
ミネバリ
―――火の気配。
赤光院 燦華
それを察する。
赤光院 燦華
触れた部分を打ち払い、蹴り上げるような鋭いロンダートで距離を取る。
赤光院 燦華
たあん、と高い靴音。
ミネバリ
直前まで居た場所を勢いよく吹き出された業火が襲った。
ミネバリ
ボボッ、と口の端から残り火を噴きだす。
赤光院 燦華
「髪が焦げたらどうしてくれんの?」
赤光院 燦華
熱の名残に笑う。
ミネバリ
「よく伝って燃えただろうな」
赤光院 燦華
「髪は女の命なんだってよ?」
ミネバリ
「命をとりにきているんだから間違いではないだろう」
赤光院 燦華
「冗談通じねえやつ」
ミネバリ
「冗談ではすまないからな」
赤光院 燦華
「モテねえタイプ~」
ミネバリ
「必要ないだろ」
赤光院 燦華
「あっはっは!」
ミネバリ
そう言いながら縁石を2つ3つ引き抜く。
ミネバリ
投石。と言っても手のひら大の縁石である。
ミネバリ
時間差で残りも投げつける。
赤光院 燦華
避けない。真っ向から拳で受ける。
赤光院 燦華
忍の膂力で投げつけられた石の塊を、忍の拳が砕き割る。
ミネバリ
「ほぉ……」
ミネバリ
感心とも嘆息ともとれる声。
ミネバリ
「逃げないのか?」
赤光院 燦華
「逃げても逃してくれないでしょ?」
赤光院 燦華
「なら」
赤光院 燦華
「やりあうしかないなあ!」
赤光院 燦華
今度はこちらが先んじて動く。滑るような低い動き。
ミネバリ
「そうか、追わなくていいのは好都合だ」
ミネバリ
向かってくる女に構える。
赤光院 燦華
足元を刈りにいく一閃……が、跳ね上がって顎先を狙う。
ミネバリ
スウェーバックのように上半身だけで躱す。
赤光院 燦華
その足先が、そのまま逆巻きに振り下ろされる。
ミネバリ
変則的な足の動きにすばやく反応して腕で受け止める。
赤光院 燦華
「小器用~」
赤光院 燦華
煽るように言って、そのままみしみしと圧を掛けていく。
ミネバリ
「こっちのセリフだ」
ミネバリ
そう言いながら腕を返すと足首を掴み
ミネバリ
叩きつけるように横なぎに投げ飛ばす
赤光院 燦華
足首から手が離れると、空中で身体を一捻り半。
壁に足からぶつかって、膝で衝撃を殺しきり。そのままさらに一回転して地に下りる。
ミネバリ
「大した身のこなしだな」
赤光院 燦華
「ふふん」
赤光院 燦華
「一応は忍の端くれなもので?」
ミネバリ
「忍びとしてはあたりまえか」
ミネバリ
そう言いながら大きく拳を振りかぶる。
ミネバリ
力を込めて壁の前にいる女へ叩きつけるように振りぬく。
赤光院 燦華
今度は、するん、と避けた。翻る髪一筋触らせない完璧な回避。
ミネバリ
振りぬかれた拳が背後のコンクリートを打ち砕く。
ミネバリ
腕を引き抜き眉をしかめる。
ミネバリ
「……いい加減死んでくれ」
赤光院 燦華
「や~だね~」
ミネバリ
「俺だってあまり街を破壊したくはないんだ」
赤光院 燦華
「わたしが避けたやつはともかく、縁石引っこ抜いておいて言うかあ?」
ミネバリ
「手ごろな物がないだろう」
ミネバリ
「手裏剣など持ち合わせてはいない」
赤光院 燦華
「わーお。どこ住み?忍社会で生きていけてる?」
ミネバリ
「山だ。お前よりずっと忍として生きている」
赤光院 燦華
「あはっ、そんなこと言って、奇襲に失敗してるくせに~」
ミネバリ
「仕方がない。経験がないからな」
ミネバリ
「人間は野山の獣とは違う」
赤光院 燦華
楽しげに笑う。
ミネバリ
「だが逃げないというのなら……今ここで仕留めるべきだな」
ミネバリ
そういうと獣のように身を低く構える。
赤光院 燦華
ぐっと拳を溜めて。
赤光院 燦華
「……来い!」
ミネバリ
地を蹴る。
赤光院 燦華
片足を引いて待ち受ける。
えんじゅ
立ち並ぶビルは、人を探しながら渡るには少し高い。
えんじゅ
だから雑踏の合間を縫って、ときおりこうして飛び上がりながら探すしかない。
えんじゅ
少女が人の頭より高く跳びながら駆ける。
えんじゅ
異様な光景だが、それに目を止めるものはいない。
えんじゅ
忍びとして高速移動に乗った以上は、えんじゅを認識することは常人には叶わない。
えんじゅ
息子の気配は、完全に失せたわけではなかった。
えんじゅ
それはそうだ。息子が自分を置いて山に帰ったりするわけはない。
えんじゅ
乏しい気配をたどって、街を疾走する。けれど、
えんじゅ
これはなんだろう?
えんじゅ
ミネバリの気配がなにか、いつもと違う気がする。
えんじゅ
早く、見つけなければいけない気がする。
閏間開闢
常人には認識できない疾さで駆ける忍。
閏間開闢
しかし同じ忍にしてみれば。
閏間開闢
空を切り、旋風のような回し蹴りがえんじゅを襲う。
えんじゅ
「!」
えんじゅ
まっすぐに息子の方へ向かって駆けていたあやかし。
えんじゅ
一瞬反応が遅れ、蹴りを受けて地に落ちる。
えんじゅ
見た目通りに軽い手応えは、しかしいささか軽すぎる。
えんじゅ
空中で咄嗟に受けて、ごろごろと転がりながら蹴りの主を探した。
えんじゅ
「なんだ!」
閏間開闢
す、と上体を起こし、乱れた髪を手で直す。
えんじゅ
「だれだ!?」
閏間開闢
「いや~~、いやいやすみません。手荒な真似をしてしまいまして!」
えんじゅ
獣のように頭を低くし、四足で身を伏せたまま、笑う男を睨みあげる。
閏間開闢
「いえね、ちょっとタイミングがタイミングだったもので慌ててしまったんですが……」
えんじゅ
「……?」
閏間開闢
はっはっは、と笑って一度肩を竦めて。
閏間開闢
「……迦具土の心臓にお心当たり、ありますでしょうか?」
えんじゅ
「!」
えんじゅ
表情の変化はあからさまだ。
えんじゅ
「ミネバリ!」
閏間開闢
「おや~~~おやおやおや」
えんじゅ
叫んで、あなたに背を向けて息子の気配の方へ向かおうとする。
えんじゅ
それは、あなたの護衛対象がいる方向に他ならない。
閏間開闢
あやかしを止めはしない。もう1人いるらしい。
えんじゅ
脇目もふらず、背中にほとんど意識も向けずに駆けてゆく。
閏間開闢
燦華の無事を確認したい。対応はそれからでいい。
閏間開闢
駆けつけた時には死体しか残っていませんでした、では話にならない。
閏間開闢
もっとも、そう簡単に殺されてくれるような大人しい娘ではないが。
閏間開闢
えんじゅの後を追い、駆ける。
閏間開闢
(しかし……)
閏間開闢
随分と慌てた様子のあやかしの背中を見つめる。
閏間開闢
(仲間、にしては随分と肩入れしているようだ)
えんじゅ
あなたのことなど目に入らないといった様子だ。
えんじゅ
ましらのように跳びながら、いまや戦いの気配明らかな方角へと。
閏間開闢
目の前を走るこれが、己の敵であることは明らかだ。
閏間開闢
であれば、油断してくれている内にできることはやっておいてもいい。
閏間開闢
袖口から苦無を取り出し、腕を振る。
閏間開闢
体のどこかに当たればいい、というような投擲。
えんじゅ
「何だ!」
えんじゅ
それは、少女の体に当たる──はずであったが、
えんじゅ
この炎天下に首に巻いた黒布が生き物のように動き、包んで落とす。
閏間開闢
「ほっほーう!」
えんじゅ
高速機動から苦無だけが落ち、カランとアスファルトの上に落ちる。
閏間開闢
「あなた、やりますね~!」
えんじゅ
「邪魔をする気かお前!」
閏間開闢
「いやそりゃそうでしょう。そりゃそうじゃないですか?」
えんじゅ
「そりゃそうなのか!?」
閏間開闢
「まぁ邪魔をせずに、一回目的地に行ってもいいですよ」
えんじゅ
振り返りながらも速度はほとんど緩まず、後ろ向きに駆ける。
えんじゅ
「おまえそのカッコ比良坂だろ! 汚い! さすが比良坂きたない!」
閏間開闢
「あ、ご紹介が遅れました。わたくし宝珠・迦具土を守るために比良坂機関から派遣されてきました、閏間開闢です」
閏間開闢
「名刺いります?」
えんじゅ
「いらない!」
閏間開闢
同様に速度は落とさず並走しつつ、足を引っかけようとする。
えんじゅ
「あ~!」
えんじゅ
突き出された足を躱して、一段高く跳び上がる。
えんじゅ
だが、わずかに減速し、抗議の声が上がる。
えんじゅ
「このっ、もう!」
閏間開闢
「ほ~ら汚い汚い比良坂ですよ~」
閏間開闢
「ベロベロバ~」
えんじゅ
「ああーっ!」
えんじゅ
怒りの声を上げて、笑う顔へ向けて拳が振るわれる。
えんじゅ
少女の細腕。
閏間開闢
飛び上がって躱す。そのまま速度を落とさないよう壁を蹴る。
閏間開闢
少女に見えても、何も安心できることはない。外見情報は外見情報でしかない。
えんじゅ
拳は壁にぶち当たり、発泡スチロールか何かのように砕く。
閏間開闢
情報は操作できる。
えんじゅ
「避けるな!」
閏間開闢
「キャッ、つよ~い!こわ~い!」
えんじゅ
「お前めっちゃ腹立つ!」
閏間開闢
「な~んかそう言われること多いんですよね~。なんでだと思います?」
えんじゅ
「うあーっ!」
えんじゅ
「絶対殴る!」
えんじゅ
がらがらと崩れるコンクリートを後目に、再び閏間に向かっていく。
閏間開闢
「殴りながらでいいので聞いて欲しいんですが~」
攻撃を躱してゆく。少女の華奢な腕が建物を破壊する。
えんじゅ
その膂力が見た目と違って破壊的でも、その身体は小さく、腕や脚は短い。
えんじゅ
あなたにとっては避けるのはごく容易いだろう。
えんじゅ
「お前の話なんか聞かないが!?」
閏間開闢
背後をちらと振り返り、破壊の足跡に苦笑する。
えんじゅ
と言いながら、返事はしている。聞いている証拠である。
閏間開闢
「まぁまぁ。悪い話ではありませんって」
閏間開闢
「さっき言っていたミネバリというのは、誰ですか?」
えんじゅ
「嘘だ! 比良坂嘘ばっかりつくからな!」
えんじゅ
「教えない!」
えんじゅ
「お前にはぜーったい教えない!」
閏間開闢
「そんな~」
閏間開闢
「何か誤解していて、実は味方だったりするかもしれませんよ~?」
えんじゅ
「…………」
えんじゅ
「ない!」
閏間開闢
「いいんですか?もし本当に誤解だとしたら……」
閏間開闢
「あなたの一時的な感情で、『ミネバリ』の敵が増えるかもしれない」
えんじゅ
「えっ」
えんじゅ
「それは」
えんじゅ
「えっと」
えんじゅ
拳が止まる。
閏間開闢
「ま、私はどっちでもいいんですけど~。怪我はしないに越したことないじゃないですか?」
えんじゅ
「あーうー」
閏間開闢
「私は!どっちでもいいんで~すけ~どね~!!」
えんじゅ
「お前嫌い!!!!!」
えんじゅ
素直な感情が出た。
閏間開闢
「どうしてか嫌われがちです!!」
えんじゅ
「あああーっ! あーっ!」
えんじゅ
雄たけびを上げながらも、殴るのを躊躇っている。
えんじゅ
でもちょっとまってください……
えんじゅ
おれを蹴って苦無投げて、足引っかけようとしたのは……
えんじゅ
こいつでは?!
閏間開闢
「いや~、今の所私、あなたと『ミネバリ』について何も知らないので? 敵か味方か判断付けられないんですよ~」
えんじゅ
拳を握り直す。
えんじゅ
「ミネバリはおれの息子だ!」
閏間開闢
「ほー、息子」
閏間開闢
「ずいぶんと心配されているようですねぇ」
えんじゅ
「いきなりいなくなって……」
えんじゅ
「街におれをひとりにして……」
えんじゅ
「だからなんかあったんだ!」
閏間開闢
「おお……、それは一大事ですね……」
えんじゅ
「だから、ミネバリを助けないといけないの!」
えんじゅ
「邪魔するな!」
閏間開闢
「ミネバリさんが迦具土を狙っているのなら、迦具土の宿主の所に行ったのでしょう」
閏間開闢
「私はその宿主を知っていますが~……聞きたい?」
えんじゅ
「別にいい!」
えんじゅ
「今行くから分かるもん!」
閏間開闢
「え~?弱点とかもわかるかもしれないのに~」
えんじゅ
「弱点!?」
閏間開闢
「そうそう、こういう時にこういう癖があるから、こういう攻撃に弱いとかそういう」
えんじゅ
「お前何なんだ!? 教えてくれるのか!?」
閏間開闢
「ぜーったい教えな~~~い!」
閏間開闢
ピースピース
えんじゅ
「あああああーっ!」
えんじゅ
殴りかかる。
閏間開闢
軽いステップで身を逸し、腕を掴む。勢いを利用して振り回す。まるでダンスを踊るように。
閏間開闢
ステップ、ステップ。ワンツー、ワンツー。
えんじゅ
軽い身体は遠心力に従って、勢いよく振り回される。
えんじゅ
山暮らしのあやかしに、ダンスのステップが踏めるはずもない。
閏間開闢
「話をしましょうよ。私はあなたとミネバリの話が聞きたい」
えんじゅ
振り回されるまま、ぐるぐると回る。
閏間開闢
片手を離して、遠心力のままにポーズ。
えんじゅ
「お前なんかに教えるわけあるか! さっきからずっとおちょくって!」
閏間開闢
今えんじゅの体を縛っているのは片手だけだ。
えんじゅ
ぶんっと自ら身体を振るって、腕を基点に相手を振り飛ばす。
閏間開闢
「あ~れ~!」
閏間開闢
吹き飛ぶ。
えんじゅ
人間離れした膂力がそれを可能にする。
えんじゅ
「お前めんどくさい! お前はあとだ!」
閏間開闢
静かに着地する。が、先程からの交錯で、この男にえんじゅほどの腕力がないことは分かるだろう。
閏間開闢
捨て置いても、さほど驚異にはならないと思わせる顔。
えんじゅ
力もなく、邪魔をしてくる相手の目的が、こちらを苛立たせて情報を引き出すつもりというのはさすがに分かってきた。
えんじゅ
もう構うものか、という顔で、再びあなたに背を向けて駆けていく。
えんじゅ
いずれにせよ、もう気配はほど近い。
閏間開闢
「いけずですねぇ~」
えんじゅ
ひときわ強く地を蹴って、少女は空へ跳び上がる。
閏間開闢
そうは言うものの、ここまで来れば情報を引き出すよりも燦華の安否の方が気にかかる。
閏間開闢
少女と共に跳ぶ。
えんじゅ
ミネバリの姿を探すその目が、
えんじゅ
眼下の破壊を捉えた。
閏間開闢
「……燦華様!」
えんじゅ
「ミネバリ!」
閏間開闢
「……燦華様!」
えんじゅ
「ミネバリーッ!」
えんじゅ
黒い布が二つの尾のようにはためきながら、少女が落ちてくる。
閏間開闢
わずかに遅れて、スーツ姿の男。
えんじゅ
ちょうど二人の間、ミネバリの進行方向に。
ミネバリ
「母さん!?」
えんじゅ
「大丈夫か! ミネバリ!」
閏間開闢
音のない着地。
閏間開闢
そのまま掠めるように、燦華を抱きかかえる。
赤光院 燦華
「げっ、開闢」
ミネバリ
獣のような姿勢を起こし母を受け止める。
閏間開闢
返事も返さずに、駆ける。
えんじゅ
「怪我はないか、平気か!」
ミネバリ
「大丈夫、大丈夫だよ」
えんじゅ
受け止められたまま、べたべたと息子の身体を触る。
ミネバリ
「母さんこそなんであんなところから」
えんじゅ
「あっ」
閏間開闢
ビルの合間を抜け、二人の忍を遥か後方へ。
えんじゅ
ずいぶん小さくなった比良坂の男の背を見て、声を上げた。
えんじゅ
「あいつ! 速い!」
ミネバリ
「あっ!おい!」
えんじゅ
「あいつー!」
えんじゅ
抱きかかえられたまま指をさしているが、時すでに遅し。
えんじゅ
見送るしかないのであった。
GM
空には傾いた太陽が、彼らの影を長く伸ばす。
GM
その影の片方が、
GM
より背の高い影だけが、
GM
陽炎のように僅かにゆらめいた。