RL:GT
RL:GT
──ようこそ、”災厄の街”へ。
RL:GT
──ようこそ、”ニューロエイジ”へ。
RL:GT
RL:GT
世界は《加速》した。
RL:GT
オマエたちのいる世界の、ありえるかもしれない未来。
RL:GT
オマエたちのいない世界の、ありえないかもしれない未来。
RL:GT
地軸が歪み、世界が潰え、
RL:GT
大企業の光は濃く、
RL:GT
都市の闇は尚暗く。
RL:GT
ここは新星東京市。
RL:GT
昼と、夜と。人と、死と。 すべてが、この眠らない都市に集う。
RL:GT
人は、こう呼ぶ。
RL:GT
RL:GT
”トーキョーN◎VA”。
RL:GT
RL:GT
さぁ、運命の輪が回る。
RL:GT
RL:GT
RL:GT
RL:GT
■アクトトレーラー 「私を殺してください」と、 スコープに映る彼女は言った。 ”七色の恋人”イーリスは、この一年で大ブレイクしたアイドルだ。 個人配信からスタートしてじわじわとファンを増やし、 今では街中でその顔を見ない日はない。 ビルの壁に映る立体映像で、太陽のような笑みを浮かべる。 ウェブコンプレックスの配信で、恋人のように微笑む。 大人気のドラマ・シムで、大粒の涙をこぼす。 けれど、嘘だ。 それらの顔は、すべて嘘(R:ペルソナ)。 そうでなければ、 あんなにも辛そうな顔で、 その《Plz》(R:お願い)を口にはしないだろう。 だから君は、引き金を引き絞る。 その嘘と、悲劇の仮面を撃ち抜くために。 TOKYO N◎VA AXLERATION 「一生に一度の《プリーズ》」 運命の扉が、彼女にも開かれているのなら。
RL:GT
RL:GT
PC4:マネキン アクトコネ:”アルノルディィ” 推奨:【感情】 あなたはマネキンだ。眠らない街で夜の蝶となり、四季のない街で春をひさぐ、それが君の生き方だ。 ある時、同僚が死んだ。いい娘だったのに。いや、いい娘のように見えたのに。 君の手には、同僚と最後にあった日に渡された1枚の人格カードがある。 噂によれば、この人格カードが連続自殺事件の原因だとかなんだとか。 売人らしき相手の名も聞いた。アルノルディィ。ふざけた名前だ。 安心して仕事ができるように? 同僚の仇をうつ? 気まぐれに? ……理由はなんでも構わない。 マネキンにだって、自ら歩き出す足はついている。 PS:自分の生き様を貫く
真咲ユウキ
──化粧を落とし、服を脱がされ、何も言わずに横たわるその男の死体を見るまで、自分は完璧な『母』と暮らしていると思っていた。
真咲ユウキ
美しいマネキンであり、自分を生んだ母親だと思っていたそのひとが、そもそも女ですらなく女装した男であったと知ったのは、彼が客に刺されて死んだと聞かされた時だ。16の時だった。
真咲ユウキ
『母』は自分にとって叔父にあたる男。 本当の母は子供を置いて愛人と行方知れず。
真咲ユウキ
母親のいない子供を哀れと思ったのか、なにか別の理由があったのか、死んだ今となっては分からない。
真咲ユウキ
そうして自分も『母』と同じように、女の格好をして夜の街にいる。
真咲ユウキ
それが何故かも、うまくは説明できない。
真咲ユウキ
はっきりしているのは、自分にもこのマネキンの仮面がよくなじむこと。 マネキンを軽んじて使い捨ての道具のようにする奴や、ついでのように殺す奴を許せないということだ。
真咲ユウキ
PC4の真咲ユウキです。
真咲ユウキ
マネキン◎=ミストレス●=カブキ キーはミストレスです。
真咲ユウキ
女装をしてマネキンをやっています。
真咲ユウキ
こんなところか。
RL:GT
ユウキさんには、キーカード:ミストレスを配布します。
RL:GT
これはアクト中、いつでも好きな時に使用し、手札を一枚「JOKERとして使用」することができます。
RL:GT
さらに、手札を4枚引いてください。
RL:GT
ユウキさんはさらに、自分の【外界】と同じ数値の【報酬点】を手に入れます。
RL:GT
RL:GT
PC3:ニューロ アクトコネ:”てるてる坊主” 推奨:【理性】 ある日君のメールボックスに届いたメッセージ。 差出人は不明で、てるてる坊主のアイコンだけが表示されている。 メールには1プラチナムが添付されており、恐らくは君への依頼なのだろう。 ただ、内容は一文だけ。「イーリスを救ってほしい」と、ただそれだけしか書いていない。 理由も何も書いていない。君が引き受ける理由はない。 それでも、君は調査を始めた。好奇心か、報酬か、それとも…短いメッセージからどうしてか感じた、悲壮で必死な決意からか。 PS:依頼主の望みをかなえる
習志野千夏
いえ───ーい! ニューロ~!
習志野千夏
よくある中流家庭育ちの学生! 習志野千夏です。
習志野千夏
ちょっと変わったところがあるとするなら~天才ってところかな~。
習志野千夏
天才は盛りました。
習志野千夏
日々ネットに徘徊して遊ぶ毎日。特に退屈することもないかな~。
習志野千夏
セキュリティとか見てると、な~~んかわかっちゃうんだよね。
習志野千夏
ARのプラグインを作ると、なんか見えたりするんだけれど……これも多分きっと天才だからだと思う。
習志野千夏
そんな感じで楽しくやっていたら……。
習志野千夏
ニューロ◎=● マヤカシ キーはニューロ!
RL:GT
ニューロのキーカードと、外界と同じ報酬点をあげましょう。
RL:GT
RL:GT
PC2:イヌ(BH機動捜査課) アクトコネ:”神の手(R:ゴッドハンド)”天原タイヨウ 推奨:【外界】 マネキンが死んだ。これで15件目。はっきりいって異常だ。 状況はいつも同じ。あるアイドルの人格カードを読み込んだマネキンが、客の前で突然自殺する。 人格データの名前は、いつも同じだ。”七色の恋人”イーリス……ここ1年で突如ブレイクした、大人気アイドル。 彼女のプロデューサーである天原氏は”神の手”と呼ばれる敏腕で、影響力も強い。 ついに事件解決の為、BHが全面協力することになった。 ……だがその命令が入らなかったとしても、君は独自に動いていたかもしれない。 現場に駆け付けた際に見た、マネキンたちのあの顔……悲痛と絶望に満ちた顔が、目に焼き付いて離れないから。 PS:連続自殺事件を解決する
大河内 ゲンジ
目指す姿は街を守る良い刑事。そんな姿はもはやおとぎ話。
大河内 ゲンジ
民間警察は下請け仕事で利権と非合法活動ばかり。ブラックハウンドでは公安の仕事ばかり。
大河内 ゲンジ
それでも良い刑事であるために、今日も下町を歩き回る。
大河内 ゲンジ
よれたワイシャツにスラックス。くたびれた外套というオールドスタイル。
大河内 ゲンジ
金棒のような特殊な番傘を持ち歩き、ガハハと笑う姿からチンピラやヤクザ達には“番傘のゲン”と呼ばれ恐れられている。
大河内 ゲンジ
というわけで198cm105kgの巨漢、52歳男!
大河内 ゲンジ
大河内 ゲンジ(おおこうち げんじ)だぁ!
大河内 ゲンジ
刑事の基本は足と根気、アナログを地でいくちょっとオールドタイプなイヌです。
大河内 ゲンジ
民間警備のSSSからBHへの転職組。SSS時代は“紅鬼”とか呼ばれて恐れられていたとか。
大河内 ゲンジ
空手をベースにした肉体での暴徒鎮圧(配慮表現)が得意です。
大河内 ゲンジ
その分サイバー方面は苦手。
大河内 ゲンジ
イヌ◎●/カブト/チャクラ キーはイヌです
RL:GT
キーカード:イヌと、外界と同じ報酬点をどうぞ。
RL:GT
そのスタイルではさぞかし金がなかろう
RL:GT
怯えな 貧乏に
RL:GT
RL:GT
PC1:カブトワリ(殺し屋) アクトコネ:”七色の恋人”イーリス 推奨:【感情】 君はプロフェッショナルだ。依頼されれば、誰でも殺す。たとえそれが、依頼人自身でも。 嵐の夜、ビルの屋上にひとり現れた依頼人を撃つ。外すはずはない。 そう、外したはずはなかった。確かに彼女…イーリスは倒れたのだ。 けれど翌日のライブ配信に、彼女は何事もなかったかのように出演していた。 彼女を、殺さなければならない。もう一度、今度こそ。 彼女の《プリーズ》は、まだ終わっていないのだから。 PS:イーリスの《Plz》を叶える
灰暮令夜
”星喰い”灰暮 令夜
灰暮令夜
生まれも、育ちも、環境も最悪だった。 俺が生まれてまもなく、両親はスラム街へ逃げるように転がり込んだらしい。
灰暮令夜
こんな最悪の環境で何故生きようとしたのか、死にたいと考えることは何度もあった。 それでも生を手放さなかったのは、腹違いではあれど俺を頼りにしてくれた…、するしかなかった妹がいたからだ。
灰暮令夜
そのたった一人の妹を犯そうとした父親を、俺は撃ち殺し… そこから殺し屋としての生活が始まった。
灰暮令夜
裏で”星喰い”と呼ばれる殺し屋。 依頼人と一線を引き、必要以上に介入してこないこともあり、訳ありな依頼がよく来る。
灰暮令夜
そして今夜も、引き金に指をかける。 「…依頼か?いいだろう、引き受ける」
灰暮令夜
依頼を引き受けたら、あとは引き金を引くだけといった感じのカブトワリです。
灰暮令夜
カブトワリ◎/カゲ●/カブキ キーはカゲです。
RL:GT
キーカード・カゲと外界と同じ報酬点をあげます。
RL:GT
さて、みなさん。まずはハンドアウトをご覧ください。
RL:GT
アクトコネ というものが記載されています。
RL:GT
これは<コネ>という技能として、このセッション中使用することができます。
RL:GT
どこかに書いておいてください。レベルは1Lv、スートは《推奨》とかかれているものになります。
RL:GT
変えたかったらかえてもいいけど。
RL:GT
RL:GT
▼キャスト間コネクション
RL:GT
PC1⇒PC2⇒PC3⇒PC4⇒PC1 という順番で
RL:GT
相手のコネを取得してください。
RL:GT
令夜さんがゲンジさんのコネをキャラクターシートにかく
RL:GT
という感じですね
RL:GT
これは「相手からどう思われているか」を示すデータなので
RL:GT
スートは相手に聞いてください。
RL:GT
理性:尊敬、実力を認めている など
RL:GT
感情:好悪の感情、気に入っている、いらだっているなど
RL:GT
生命:肉体関係、家族、恋愛関係、一族など
RL:GT
外界:ビジネスライクな関係
RL:GT
関係決まったら
RL:GT
ここに書いて行けよ!
灰暮令夜
令夜→ユウキ 【外界】
真咲ユウキ
コネ:灰暮令夜 【外界】
灰暮令夜
コネ:大河内ゲンジ 【理性】
習志野千夏
コネ:真咲ユウキ【感情】
大河内 ゲンジ
コネ:習志野千夏【理性】
習志野千夏
ゲンジに対しては、見逃してくれるの???? さっすが話がわかる~~~~えっあっ仕事を、アッハイ、します という感じです。
習志野千夏
才能をわかってくれる相手なので尊敬があり、理性です。
真咲ユウキ
マジの殺し屋なんだ。すごいね。でも今殺したいやつとかいないからもし頼みたくなったら言うわ。
RL:GT
営業とかしてんのかな
習志野千夏
デカいな~~~肉ばっかり食べてそうだな~~~~~~~って思ってます。
大河内 ゲンジ
ガハハ!
真咲ユウキ
勝手に令夜さんが名刺持ってることにしちゃったな
真咲ユウキ
カード的なものを
RL:GT
さぁてそれでは
大河内 ゲンジ
”星喰い”の腕は信用してます
灰暮令夜
勝手に名刺作られてそう
RL:GT
始めていこうかな
真咲ユウキ
やるぞ~
RL:GT
それでは、いきましょう。
大河内 ゲンジ
よろしくお願いします
RL:GT
──かくて、運命の扉が開かれる。
RL:GT
RL:GT
RL:GT
■OP:1
RL:GT
シーンカード:マネキン(正位置)/魅力的な異性との出会い
RL:GT
シーンプレイヤー:ゲンジ
RL:GT
大河内 ゲンジ
はい
”暴走課長”レイ
ここは、ブラックハウンド機動捜査課基地。
”暴走課長”レイ
トーキョーN◎VAの治安を守る、悪名高き”黄金の猟犬”の本拠地だ。
”暴走課長”レイ
その課長室に呼び出された君は、机に座ったまま頭を抱える年若き女課長──レイに出迎えられる。
”暴走課長”レイ
「ああ……大河内さん。すまんな、呼び出しちまって」
大河内 ゲンジ
「大河内ゲンジ、ただいま到着しやした」
大河内 ゲンジ
歳下上司のレイにきちんと敬礼。
”暴走課長”レイ
「ああ」 それに対して、どこかおざなりな敬礼を返して立ち上がる。
”暴走課長”レイ
かなり気がせいているようで、机の横に立てかけた日本刀にちらちらと目がいっている。
”暴走課長”レイ
本当は自分が行きたいのだ。
”暴走課長”レイ
「……頼みたいことがある。マネキンの連続自殺事件、知ってるか」
大河内 ゲンジ
「ええ、そりゃあ」
大河内 ゲンジ
「うちのまわりでもその話で持ち切りで」
”暴走課長”レイ
「ああ。話がはええ。 言いたいことは三つ」
”暴走課長”レイ
指を三本立てる。
”暴走課長”レイ
「つい2秒前、新しい犠牲者が出た。ウェットシティだ。行ってくれ」 指を一本折り。
”暴走課長”レイ
「お偉いさんから圧力がかかってる。ウェザープロダクションだ。なんとなく、きな臭い。気を付けろ」
”暴走課長”レイ
指を二本折って。そっと三本目。
”暴走課長”レイ
「……調査費用は3シルバー。これ以上でねぇ。質問は?」
”暴走課長”レイ
レイが手元のDAK端末を叩くと、あなたの口座に3シルバーが入金される。
”暴走課長”レイ
【報酬点3点を取得してください】
大河内 ゲンジ
「……内職でもした方がマシな金額なのはいつものこってっすねぇ」
大河内 ゲンジ
「まぁ任せといてくださいや」
”暴走課長”レイ
「わり~な。三合会の連中がアサクサでドンパチやっててな、俺はそっちいかなきゃいけねぇ」
”暴走課長”レイ
「頼むよ、大河内さん。……人が死んでんだ」
”暴走課長”レイ
レイはまっすぐな瞳で、あなたを見つめる。隊員時代から変わらない、鋭く、まっすぐな切っ先のような目。
大河内 ゲンジ
「そりゃあもう。ばっちりまかせといてくだせぇや」
大河内 ゲンジ
「ほっといたって俺がタダ働きで調べるところでしたから」
”暴走課長”レイ
「おいおい、過労死しないでくれよ。あんたがいなくなったら、うちの課はさらに人員不足になっちまう」
”暴走課長”レイ
レイはそう笑うと、あなたに資料の詰まったデータファイルを送信する。
大河内 ゲンジ
「課長ぉ~、鏡見ていってくだせぇ」
”暴走課長”レイ
「うるせぇよ。千早課長を見習って厚化粧してんだい、これでも」
”暴走課長”レイ
何もなければ、君は現場に向かうことになりシーンエンドだ。
”暴走課長”レイ
何かやること、聞くことは?
”暴走課長”レイ
ちなみにPC4のOPにあなたがでてくることになる。
大河内 ゲンジ
刑事なら現場で探るものですからOKです。
大河内 ゲンジ
「んじゃ、行ってまいります」
大河内 ゲンジ
敬礼し、部屋を出る。
”暴走課長”レイ
「おう。あ! パトカーはこないだ俺がぶっ壊しちまったから……あー。まぁいいか」
”暴走課長”レイ
”暴走課長”レイ
──シーンエンド
”暴走課長”レイ
”暴走課長”レイ
ゲンジさん以外は、1枚札を回してよい。
RL:GT
RL:GT
■OP:2
RL:GT
シーンカード:フェイト(正位置)/因果応報。なんらかのツケを払う。
RL:GT
シーンプレイヤー:習志野千夏
RL:GT
RL:GT
ここはあなたの仕事場か、家か…
RL:GT
とにかく、あなたの住処だ。
RL:GT
どんなところだろうか。
習志野千夏
家だね~空調の効いた部屋でだらだらしてます。
習志野千夏
アイスとか食いながらネット遊びしてます。
RL:GT
今日もウェブ・マトリクスには、無数の情報流(ストリーム)が流れている。
RL:GT
君はそれを光り輝く天の川のように視認しているかもしれないし、単なる0と1だという真実を掴んでいるかもしれない。
習志野千夏
コードのレビューサイトでボロカスにディスったりする日々です。
RL:GT
そんな日課を過ごしている君のもとに、情報流の中から一通、メールが流れ着く。瓶に詰められたメッセージのように。
習志野千夏
なんか来たな~と思って、一応ちゃんと『洗って』から開けます。
習志野千夏
最近なんか……なんかよくわかんないけど攻性プログラム送られることが多くて困ってます><
習志野千夏
誰かと間違えられてるよ~絶対
”てるてる坊主”
怪しげなウイルスも、ICE(保安ソフトウェア)の尻尾もついていない。
”てるてる坊主”
ただ……差出人のアドレスを追うことができない。
”てるてる坊主”
差出人は、ただ一言。【てるてる坊主】と。
習志野千夏
てるてる坊主~~???
習志野千夏
開けます。
”てるてる坊主”
開けた瞬間、君の口座に1プラチナムのキャッシュデータが入金される。
習志野千夏
??????
”てるてる坊主”
【10報酬点を取得してください】
習志野千夏
桁を数える。
習志野千夏
にゅっ、にゅ~ろ~??????
習志野千夏
「え!!!!!」
習志野千夏
思わず声がでて跳ね起きる。
習志野千夏
誰かと間違えられてるよ~絶対
習志野千夏
そう思いながら文面を辿る。
”てるてる坊主”
メッセージは、たった一行。
”てるてる坊主”
データにして、数KBもない。
”てるてる坊主”
”てるてる坊主”
『イーリスを救ってほしい』
”てるてる坊主”
”てるてる坊主”
イーリス。今流行しているアイドルだ。君も名前くらいは知っている。
習志野千夏
イーリス? イーリス。イーリスって言ったらあのあれ……しか思いつかないな~
習志野千夏
いやーまさかそんなあははは
習志野千夏
えー? え? 何? この? え?
”七色の恋人”イーリス
戸惑うあなた。ちょうど、あなたが開きっぱなしのニュース・サイトでは、イーリスのライブ映像が再生されていた。
”七色の恋人”イーリス
『”ハロー・イーリス”! あなたの笑顔が見えるよ!』
”七色の恋人”イーリス
弾けるような笑顔。 何を救えと言うのだろうか。
習志野千夏
あいかわらずかわいい。クラスでもネットでも彼女の話題でもちきりだ。
習志野千夏
いや~イタズラ……で送ってこないんだよなぁ1プラチナム。
習志野千夏
1プラチナムだよ? 何でも買えるよ? 何でもではないか。何でもではないな。
RL:GT
間違いなく、まじりっけなしの1プラチナム。人を一人殺してもらえるような金額だ。
習志野千夏
ていうか なんで 私???? え?????
習志野千夏
天才だからかな……???????
習志野千夏
……。
習志野千夏
何もしないってわけには、いかない、なー。
習志野千夏
な~?
習志野千夏
適当にイーリスについて検索したり。動画を見たり。
習志野千夏
それから。
習志野千夏
オフにしていたニューラルウェア、クワッカーを入れ。
習志野千夏
目の奥の奥がチリチリするような感覚と共に、ネットの海に飛び込む。
習志野千夏
なんとなく、まあ、面白そうだから。
習志野千夏
そんな軽い気持ちで。
”七色の恋人”イーリス
”七色の恋人”イーリス
きらきら、きらきらと。 情報流の中で、その笑顔を垣間見て。
”七色の恋人”イーリス
RL:GT
──シーンエンド
RL:GT
RL:GT
千夏さん以外は!札を一枚回してよい。
RL:GT
RL:GT
■OP:3
RL:GT
シーンカード:マヤカシ(正位置)/毒。不確かな夢。不実な人間の罠。
RL:GT
シーンプレイヤー:真咲ユウキ
RL:GT
RL:GT
ここはあなたが務める店。
RL:GT
イエロー・エリアはウェットシティに存在する、マネキンたちの店だ。
RL:GT
時刻は夕方。
真咲ユウキ
店のバックヤード、更衣室でロッカーのドアを開けている。
真咲ユウキ
目立たないどこにでもいる男の服装から、夜の街の女の格好へ。
真咲ユウキ
もう何年もやっている慣れた着替えだ。
”ワンコイン”ランジュ
からん。
”ワンコイン”ランジュ
あなたのロッカーから、一枚の人格カードが零れ落ちた。
真咲ユウキ
「……」
”ワンコイン”ランジュ
なんだっただろうか。……そういえば一昨日、彼女から受け取ったものだ。
真咲ユウキ
メイク道具を取り出しかけていた手を止めて、人格カードを拾い上げる。
”ワンコイン”ランジュ
ランジュ。君の同僚。安い女。”ワンコイン”で夢を。
真咲ユウキ
裏表を確かめて、嘆息する。
真咲ユウキ
……とんだ形見になってしまった。
真咲ユウキ
渡されたときは、死ぬなんて想像していなかったから、何の感慨もなく受け取ったものを。
”ワンコイン”ランジュ
『マジでこれ出来がいいんだから。客のウケもいいしさ。あんたもやってみたら?』
”ワンコイン”ランジュ
『楽だよ。 楽は、いいことだよ』
”ワンコイン”ランジュ
そういって、彼女は笑った。
真咲ユウキ
『オレはそういうのやんないって、知ってんだろ』
真咲ユウキ
『求められてんのが違うからさ』
”ワンコイン”ランジュ
『知ってるよ~。ユウキはそう。けど、ペルソナだけで商売はできるからさ』
”ワンコイン”ランジュ
『辛くなったら使ってね。ね』
真咲ユウキ
『辛い?』
”ワンコイン”ランジュ
『辛くない?』
真咲ユウキ
『ああ──』
真咲ユウキ
『切り売りさせてんのはオレの方だからな』
真咲ユウキ
『でも、まあ、覚えとく』
”ワンコイン”ランジュ
『うん』
真咲ユウキ
『お前がそれでいいなら、いいことだよ』
”ワンコイン”ランジュ
『ふふ』 彼女は人格カードを唇に当てて、笑ったものだ。
”ワンコイン”ランジュ
『よくはないけど、わるくはないの──……』
”ワンコイン”ランジュ
真咲ユウキ
あの時、別のことを言っていたらどうだったろう?
真咲ユウキ
あり得ざることを考えて、眉根を寄せる。
真咲ユウキ
仕事に出なければならないのに、手は苛立たしげに人格カードを弄んだままだ。
RL:GT
その時、部屋のDAKが鳴った。
RL:GT
『おい、誰かいるか』
RL:GT
マネージャーだ。
真咲ユウキ
「あいよ」
真咲ユウキ
「客か? 悪い、もうちょっとで出れる」
RL:GT
『真咲か。いや、違う』
RL:GT
面倒臭そうな様子すら見せない。
RL:GT
ただ、たんたんと。
RL:GT
『猟犬だ。調査がしたいんだと』
RL:GT
『お前案内してくれないか。ランジュのパーソナル、知ってるだろ』
真咲ユウキ
「……」
真咲ユウキ
人格カードを弄ぶ手が止まる。
真咲ユウキ
「分かった」
RL:GT
人格カードには、ランジュの丸っこい文字でメモがしてある。「アルノルディ。連絡してみな。売ってくれるよ。あなたのランジュより」
真咲ユウキ
ばかみたいに怪しい名前。
真咲ユウキ
「楽できたって、死んじゃったらさ……」
真咲ユウキ
無意味な独り言だ。
真咲ユウキ
ポケットに突っ込んで、着替えぬままに更衣室の外に出た。
RL:GT
廊下に出ると、そこにはひとりのイヌがいた。
大河内 ゲンジ
「おお、俺ぁBHの大河内ゲンジってもんだ」
真咲ユウキ
でかいな。
真咲ユウキ
「…真咲っていいます。どーも」
大河内 ゲンジ
大柄な男はそう言いながら手帳をペラリ、バッヂを見せる。
真咲ユウキ
「ランジュのことについて聞きたいんだって」
真咲ユウキ
「……ちゃんと捜査してくれるんだ」
RL:GT
あちこちで被害が出ている。ランジュで15人目……嘘だ。本当はもっといる。”存在しない”ことになっているマネキンは、カウントすらされないから。
大河内 ゲンジ
「おう。まぁ俺は”お巡りさん”だからなぁ」
真咲ユウキ
「解決、できそうなの」
大河内 ゲンジ
「さぁてね。俺に今できるのは足を使って情報を集めるこった」
大河内 ゲンジ
「……解決できねえたぁいわねぇよ」
真咲ユウキ
「ランジュはさ」
真咲ユウキ
「死ぬような奴じゃなかったんだ」
真咲ユウキ
「いや、こういう言い方は変だけど」
真咲ユウキ
「マネキンとして、あんな死に方する奴じゃなかったよ」
真咲ユウキ
「……店、案内するよ」
大河内 ゲンジ
「おう、よろしく頼むぜ」
真咲ユウキ
「ランジュがいた部屋はこっちだ。ついてきてくれ」
真咲ユウキ
言うと、先導して店の廊下を歩き始めた。
RL:GT
二人が歩く旅、狭い廊下の表面にホログラフの足跡が浮かぶ。ハートが踊り、蝶が舞う。
RL:GT
たどりついたのは、ランジュが客と共に入り
RL:GT
そして二度と出てこなかった部屋だ。
RL:GT
部屋の中に隠されたDAKを操作すれば、監視カメラの映像も見ることができる。
真咲ユウキ
少しためらってから足を踏み入れた。
RL:GT
部屋の中には、大きなベッドがひとつ。椅子がふたつ。テーブルがひとつ。
RL:GT
それらすべてに、てんてんと血が飛び散っている。
真咲ユウキ
内装は、ほかの部屋とそう変わらない。血を除いては。
大河内 ゲンジ
「……あんまり見てもいいもんじゃあねぇぞ?」
真咲ユウキ
「うちの店だ」
真咲ユウキ
「それに、知り合いの死体なら」
真咲ユウキ
「前にも見たことあるし」
真咲ユウキ
言いながら、DAKを操作し始めた。
RL:GT
DAKに残された記録映像。
RL:GT
彼女の最後を切り取ったサムネイルが、ちくり、と君の胸を刺した。
RL:GT
RL:GT
映像に映るランジュは、ランジュの顔をしていなかった。 彼女はサイバーウェアで、自分の体をある程度変化させることができるから。 そこにいたのは、イーリスの顔をしたマネキンだった。
”ワンコイン”ランジュ
ランジュは笑いながら、人格カードを手に持っている。
”ワンコイン”ランジュ
客の求めるペルソナを被るため、それを首筋のスロットに差し込んで。
”ワンコイン”ランジュ
弾けるような笑顔。
”ワンコイン”ランジュ
どこかだらっとした、半笑いのような、けれど君が見慣れたランジュの笑みから。
”ワンコイン”ランジュ
輝かしい、アイドルの、皆に求められる笑顔に塗り替わる。
”ワンコイン”ランジュ
『ハロー、イーリス! イーリスを選んでくれてありがとー!』
”ワンコイン”ランジュ
客は喜ぶ。
”ワンコイン”ランジュ
ランジュも笑顔だ。
”ワンコイン”ランジュ
そうして、客の手がランジュの肩を取ったその瞬間。
”ワンコイン”ランジュ
……”イーリス”の顔が歪む。
”ワンコイン”ランジュ
『……あ?』
”ワンコイン”ランジュ
『また』
”ワンコイン”ランジュ
『また?』
”ワンコイン”ランジュ
『あ』
”ワンコイン”ランジュ
『ああああああああ ああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ』
”ワンコイン”ランジュ
『アアアアアアアアアアアアアアッ!!!』
”ワンコイン”ランジュ
がん。
”ワンコイン”ランジュ
がん。がん。がん。がん。
”ワンコイン”ランジュ
がんがんがんがんがん。
”ワンコイン”ランジュ
突如として金切り声をあげたイーリスが、ベッドの縁に置いてあった灰皿を手に取り、
”ワンコイン”ランジュ
それを額に打ち付ける。
”ワンコイン”ランジュ
打ち付ける。
”ワンコイン”ランジュ
打ち付ける。
”ワンコイン”ランジュ
ぐしゃりぐしゃりとイーリスの顔が剥げて。
”ワンコイン”ランジュ
もう、ランジュに戻らない。
”ワンコイン”ランジュ
ただ、肉と血の花が咲いて。
”ワンコイン”ランジュ
顔面がぐしゃぐしゃになったマネキンが、ベッドの上にぱたりと倒れて。
”ワンコイン”ランジュ
あんなに喜んでいた客が逃げ出して。
”ワンコイン”ランジュ
”ワンコイン”ランジュ
映像は終わる。
”ワンコイン”ランジュ
大河内 ゲンジ
「……ひでぇな」
真咲ユウキ
「…………」
大河内 ゲンジ
資料で事前に知っていても気持ちのいいものではない。
真咲ユウキ
「……イーリスは、人気のペルソナでさ」
真咲ユウキ
「知ってんだろ。流行りだからさ」
真咲ユウキ
「この店でも、もちろん人気」
真咲ユウキ
少し考えてから、人格カードをポケットから取り出す。
真咲ユウキ
「これ」
大河内 ゲンジ
「人格カードか」
真咲ユウキ
「ランジュから渡された。楽だから、辛くなったら使えってさ」
RL:GT
ゲンジが見る限り、正規のメーカーのものではない。
真咲ユウキ
「アルノディィって売人から買ったんだって」
大河内 ゲンジ
「ああー……?見覚えねぇな、このメーカー」
真咲ユウキ
「そんなんいっぱいあるよ」
大河内 ゲンジ
「珍しいことじゃあねぇが、重要な手がかりだ」
RL:GT
のぞむなら、「チーム化」を宣言してもよい。チームとなったキャストは、常に同時に登場することができる。
真咲ユウキ
「……なあ、」
大河内 ゲンジ
「当然俺はこいつをありがたくいただいて捜査に出るわけだが」
大河内 ゲンジ
「おう」
大河内 ゲンジ
同時に口を開いた。
真咲ユウキ
「これ渡すから、ついてっていいか」
大河内 ゲンジ
「そいつを聞こうと思ってたところだよ」
真咲ユウキ
「こんな死に方する奴じゃなかったんだよ」
真咲ユウキ
「なんでこんな死に方しなきゃいけなかったのか……」
真咲ユウキ
「それが知りたい」
真咲ユウキ
言いながら、脳裏をわずか、マネキンとして死んだ叔父の死体がかすめる。
真咲ユウキ
叔父は、死んだとき、男の姿で死ねてまだましだったろうか?
真咲ユウキ
ランジュは?
真咲ユウキ
まっすぐにゲンジを見つめている。
大河内 ゲンジ
「おう、構わねぇぜ。どうせ人手も金も足りねえんだ。それに……」
大河内 ゲンジ
「人間、心の整理ってのは自分が納得しなきゃあなんねぇ。そんで兄ちゃんは納得してない」
大河内 ゲンジ
「まぁ何かあったら俺が守ってやっからよ」
真咲ユウキ
「頼もしいな」
大河内 ゲンジ
「おう、この体はただでけぇわけじゃねえってことよ」
真咲ユウキ
「でも、捜査ならオレの方がちょっと役に立つかもしれないぜ」
真咲ユウキ
「あんた、怖がられるだろ」
大河内 ゲンジ
「あぁ~ん?んなこたぁねぇぜ」
大河内 ゲンジ
嘘である
真咲ユウキ
鼻で笑った。
真咲ユウキ
「ちょっと待ってて、着替えてくる」
真咲ユウキ
言って、返事も聞かず大股に部屋を出ていく。
大河内 ゲンジ
懐からヤニを取り出し火をつける。
大河内 ゲンジ
一服。
……数分後。
<
真咲ユウキ
真咲ユウキ
ゲンジの前に現れたのは、青年ではなく赤いドレスに身を包んだ女だった。
大河内 ゲンジ
「……おぉ?」
大河内 ゲンジ
「そのカッコでいくのか」
真咲ユウキ
「仕事着なんだ」
真咲ユウキ
「マネキンの弔い合戦だ。マネキンのかっこで行くに決まってんだろ」
大河内 ゲンジ
「がはは!かっこいいねぇ。気に入ったぜ」
真咲ユウキ
「行こう、おまわりさん」
大河内 ゲンジ
「あいよ」
大河内 ゲンジ
「まぁこういうのに詳しいやつには一人心当たりがあらぁ」
RL:GT
大河内 ゲンジ
というわけでチーム化」を
大河内 ゲンジ
宣言しておきますね
RL:GT
OKです
RL:GT
いつの間にか、外は雨が降り出していた。
RL:GT
ランジュではないだろう。
RL:GT
もう彼女は、涙を流せない。
RL:GT
RL:GT
──シーンエンド
RL:GT
RL:GT
令夜さんと千夏さんは札を回してよい。
RL:GT
RL:GT
■OP:4
RL:GT
シーンカード:エトランゼ(逆位置)/困惑、去るもの、遠くにあるもの
RL:GT
シーンプレイヤー:令夜
RL:GT
灰暮令夜
───黄色にくすんだ空気、胃を押し上げるような悪臭、思考をかき乱すような雑音、肌を蝕むようなべたつき。
灰暮令夜
───黒にぼやけ、半分が赤に染まった視界。
灰暮令夜
───醜い肌を晒した大柄な”ゴミ”の背中、それに押しつぶされて言葉にならない悲鳴をあげる小さな身体。
灰暮令夜
───その”ゴミ”に照準の合った今や骨董品とも言える古ぼけた銃、それを握る自分の手。
灰暮令夜
───心臓が全身を掻き乱すように暴れ、それを増長させるように呼吸は乱れる。
灰暮令夜
───口の端から漏れる液体は吸う息に混じり、砂利と鉄の味が口の中に広がる。
灰暮令夜
───右腕にかかる粘ついた重みと、引き金に触れた人差し指の冷たさ。
灰暮令夜
───視界がぶれる。暗くなる。そして…
灰暮令夜
目を開ければ、そこは屋上だった。
灰暮令夜
「そろそろか…」
灰暮令夜
慣れた手つきで、腰にぶら下がっている銃に手を伸ばす。
灰暮令夜
すでに形を保っているのがやっと、そんな風に見える骨董品の銃。
灰暮令夜
片手でグリップを握り、ぐらつく引き金に指をかける。
灰暮令夜
───あの頃に比べると、ずいぶんと…
灰暮令夜
「軽くなったもんだ…」
灰暮令夜
ぽつりと、そう零しながらその古ぼけた銃をホルスターへと仕舞う。
”七色の恋人”イーリス
”七色の恋人”イーリス
『私を殺してください。時間になったら、屋上に一人で出ますから』
”七色の恋人”イーリス
”七色の恋人”イーリス
彼女から、そんな依頼が来たのは昨日のことだ。
”七色の恋人”イーリス
報酬は、半分が前払い。もう半分が、殺した瞬間に君に入金されるという。
”七色の恋人”イーリス
その依頼には、何重にも証明がかけられていて……君が見る限りは、確かに、イーリス本人からの依頼だった。
”七色の恋人”イーリス
かくして、君は今、ある建物の屋上を狙撃することができる、ビルの屋上にいる。
灰暮令夜
何人も、この手で撃ち抜いてきたが。 依頼人が自らを殺してほしい、というものは初めてだった。
灰暮令夜
だが関係ない。 それが俺に来た依頼ならば、ただ引き金を引くだけ。
”七色の恋人”イーリス
ビルでは今、イーリスが所属する芸能プロダクション『ウェザープロダクション』の主催するパーティが開かれている。
”七色の恋人”イーリス
防弾仕様の窓からは、ちらりちらりとエグゼクやカリスマ、そしてマネキンたちの姿が見える。
”七色の恋人”イーリス
……そうしていると。
”七色の恋人”イーリス
がちゃり。
”七色の恋人”イーリス
屋上の窓が、開いた。
”七色の恋人”イーリス
”七色の恋人”イーリス
それはまぎれもなく、”七色の恋人”イーリス。
”七色の恋人”イーリス
一分で10プラチナムを稼ぎ出すという、ニューロエイジの姫君。
”七色の恋人”イーリス
夜のアーコロジーの光を反射してきらきらと光るエメラルドの髪が、びゅうとふく風に揺れている。
”七色の恋人”イーリス
彼女は、ぐるりと周囲を見渡すと。
”七色の恋人”イーリス
君を見た。
灰暮令夜
それを確認し、隣に立てかけてあった身長ほどあるライフル銃に手をかける。
”七色の恋人”イーリス
彼女は、君を見ている。
”七色の恋人”イーリス
君を見たまま。
”七色の恋人”イーリス
とん、と。
灰暮令夜
瞳と頭部神経に接続されたサイバーウェアを起動し、 時刻、光、風向き、匂い、雲行き…それらを同時に確認する。
”七色の恋人”イーリス
自分の左胸を指さして、笑った。
”七色の恋人”イーリス
──彼女の唇が、動く。
”七色の恋人”イーリス
君の強化された聴覚は。
灰暮令夜
スコープ覗く。そこには標的となる少女が確認できる。
”七色の恋人”イーリス
その声を、ビル風の中でも明確に聴きとった。
”七色の恋人”イーリス
「ねえ、いるんでしょ。”カブトワリ”さん」
”七色の恋人”イーリス
「『私を殺して』」
”七色の恋人”イーリス
「《お願い》」
”七色の恋人”イーリス
”七色の恋人”イーリス
《Plz!》
”七色の恋人”イーリス
灰暮令夜
それには、少し眉をひそめる。
灰暮令夜
マントの胸ポケットに手を伸ばし、少女がつけるようなハートの装飾がついたヘアピンに触れる。
灰暮令夜
すでに錆びつき色褪せたそれを抜き取り、地面に置く。
灰暮令夜
───人を撃ち殺すのは簡単だ 息を吸い、止める。口の中に雨の味が広がる。
”七色の恋人”イーリス
びゅうびゅうと、風が吹く。けれど、なぜだろう。イーリスの周囲だけは、切り取られたように雨が吹いていない。
”七色の恋人”イーリス
それはまるで、スポットライト。
”七色の恋人”イーリス
彼女の最後のステージを見ているのは、君だけだ。
灰暮令夜
───心を置き去りにして、ただ引き金を引けばいい
灰暮令夜
───それで、”終わる”
”七色の恋人”イーリス
くるくると、エメラルドの髪が回る。
”七色の恋人”イーリス
風に巻かれて。
”七色の恋人”イーリス
嬉しそうに。
”七色の恋人”イーリス
今からくるその時を、待ちわびるように。
”七色の恋人”イーリス
──笑顔だ。
灰暮令夜
その笑顔が合図だと言うように、引き金を引く。
灰暮令夜
屋上で、銃声が響く。
”七色の恋人”イーリス
アイドルも、血の色は赤だ。
”七色の恋人”イーリス
ぱん、と咲いた血の花が、屋上を染めていく。
”七色の恋人”イーリス
イーリスの体は、ゆっくりと倒れて。
灰暮令夜
それをじっと見つめるが…
灰暮令夜
すぐに立ち上がり、ライフルを背負う。
灰暮令夜
死亡の確認はしない。
灰暮令夜
どうせ成否に関係なく、この場を後にするつもりなのだから。
灰暮令夜
置いていたヘアピンを拾い、胸に差し直す。
”七色の恋人”イーリス
君の口座には、1ゴールドが振り込まれている。成功報酬だ。
”七色の恋人”イーリス
【報酬点5点を入手してください】
灰暮令夜
背後から聞こえる、悲鳴と叫びを聞き流しながら…屋上の扉に手をかける。
”七色の恋人”イーリス
そうして、その依頼は終わった。
”七色の恋人”イーリス
彼女の死を、ニュースが報じるだろう。
”七色の恋人”イーリス
世界が少しだけ変わるだろう。
”七色の恋人”イーリス
そう思って、朝のニュースを見た君は。
”七色の恋人”イーリス
”七色の恋人”イーリス
『──ハロー、イーリス! あなたの笑顔が、ここから見えるよ!』
”七色の恋人”イーリス
”七色の恋人”イーリス
朝のライブ番組で。
”七色の恋人”イーリス
何も変わらない笑顔を浮かべる、イーリスの姿を見た。
灰暮令夜
「………」
”七色の恋人”イーリス
間違いなく、生放送だ。リアルで、生身でそこに出演している。
灰暮令夜
「…これは」 少し首を傾げる
灰暮令夜
「そうか、まだ…終わってないということか…」 そう呟くと、マントを翻してその場を後にする
”七色の恋人”イーリス
そう。何故かはわからないが。
”七色の恋人”イーリス
”七色の恋人”イーリス
彼女の《お願い》は、まだ終わっていない。
”七色の恋人”イーリス
RL:GT
──シーンエンド
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