調停者
運命を変えることのできたものたちの身には、あのような事件は起こらない。因果は変わったのです。
調停者
一方、シオンはその存在を跡形もなく消しました。
調停者
いなくなったことを、クヌートだけが知っている。
調停者
あるいは、遠い国の、別の時代の、出会ったこともない人たちが。
ED①花見川隆史
マリナ
ホールケーキを囲んで、クラッカーを鳴らすマリナ。
花見川隆史
「うわ……っ、こんな毎年派手にやらなくたっていいのに」
花見川隆史
「こうなってしまうと、他人とかどうでもよくなっちゃうんだ」
花見川隆史
「嫌われないように、嫌われないように、うまくやってたんだ」
花見川隆史
暖かい。柔らかい。呼吸して、心臓が動いていて。
マリナ
どんなに辛かったとしても、ここに大切な人がこうして目の前にいて、生きている。
花見川隆史
僕はシオンがいなくなったのを、黒松さんが僕の未来を壊さないでいてくれたのを、
花見川隆史
クヌートさんに生半可な事を言って傷つけたのを、調停者さんに手が届かなかったのを、
花見川隆史
この結末を勝ち取るために行ったことだという事にした。
ED②黒松比折牟
黒松比折牟
なぜレオの声が聞こえるのか、頭の中にあるこの記憶は何か。
レオ
明らかに、測定結果とにらみ合いながら食べていたせいだ。
黒松比折牟
「変なところにこぼしていないだろうな?」
レオ
「そもそもストックがなさすぎるのが問題なんだよな!」
黒松比折牟
「まったくだ。下着ぐらい、通販でいくらでも買えばいいだろう」
黒松比折牟
そこではたと気づく。そういえば、自分も確か、いま履いている下着が最後だ。
黒松比折牟
「スープ臭い人間の横で実験はしたくない。
ランドリーに行くなら付き合ってやらんこともないぞ」
レオ
「めんどくせ~。あとでちゃんとバレないようにしておかないとな」
レオ
それをいえば寝袋の持ち込みだって近年の情勢からすると許容されていないはず。
黒松比折牟
そんなことは素知らぬ顔で、我々はこんな年齢になってもこんな時間になるまで泊まり込みをしている。
黒松比折牟
「掃除は手伝わんからな。モップからスープがにおわないようにしておけよ」
黒松比折牟
天才である理由がなかった。生きている理由もなかった。
黒松比折牟
そうして何事もなかったかのように、日々が続いていくのだ。
黒松比折牟
──自分が消すことを選んだ人間と、それを大切に思っていた人間を置き去りにして。
レオ
何も知らない。知るよしもない。起きなかった未来を知ることはない。
レオ
もし夢で見たとして、それをありえた未来だとどうして信じられよう。
黒松比折牟
何も知らないでいてくれることを憎らしく思うし、安堵もする。
黒松比折牟
この男にすべてを知られ、どんな反応をされても。
黒松比折牟
そう考えると、冷たい暗黒がひやりと背に忍び寄る思いがするからだ。
レオ
「仮説通りの結果が取れた。上出来だな。今回の調整で当面はやっていこうと思う」
黒松比折牟
そうして話も思考も、休憩を終えた後に再開する仕事のことに飛んでいく。
黒松比折牟
少なすぎると思っても、それ以上のものを支払うことはできないのだった。
ED③クヌート・ペルレ
GM
キャンプに乾いた風が吹く。外に止められたTOYOTAのピックアップトラックに砂が当たり、からから、ぱらぱら、と音を立てる。
クヌート・ペルレ
銃の手入れの方法も。行き交うトラックのエンジン音も。
GM
いようがいまいが変わらないのなら、いるもいないも同じなのだろうか。
クヌート・ペルレ
あのガキを拾ったことも、過ごした時間も、もうおれの中にしかない。
クヌート・ペルレ
戦線に、シオンのぶんの穴が空くこともない。
クヌート・ペルレ
戦友を失ったことはいくらでもある。
クヌート・ペルレ
どれだけ、どんなことを思っていても、関係ない。
GM
助けた現地民が、翌日になって風に攫われるがごとく殺されることもある。
GM
そうなるとわかっていたなら、助けたことは無駄だっただろうか。
クヌート・ペルレ
そうではないと、信じなければならない。
クヌート・ペルレ
まだ生きているのは、まだ続けているのは、
クヌート・ペルレ
責任、と。あの日言ったことを思い出した。
クヌート・ペルレ
拾って。育てて。……おれが、銃を持たせた。
GM
傭兵でなければ、そもそも死ぬこともなければ、テロリズムに傾倒することもなかったかもしれない。
*
*
GM
みんなルート確定して、しみったれた感じになってからのエンジンの入り方のほうが普段の味ってかんじでしたね!!!
黒松比折牟
しみったれたほうがロールが手馴れている人間たち。
GM
このメンバー、多分ベストエンドになるよりこっちのほうが実力出るよ。
《エンディング:D》
「捩れた棒状の歯車」を破壊した場合のエンディングです。
すべての歯車が支えを失ったようにバラバラと落下し、藍色の歯車の上に転がります。調停者はその様子を興味深げに眺めていますが……「煌めく青い歯車」が藍色の歯車を突き破った。
瞬間、口から一音を発して固まります。藍色の歯車は砕け散り、PCたちは虚空へと落下し̶̶気がつくと、どこか見覚えのある場所に横たわっています。周囲を見れば、若返ったPCたち(年齢設定によっては幼い子供であるかもしれません)と、人間の赤ん坊ほどの大きさになった調停者がいます。それは調停者にとっても予想外の事態であるらしく、激しい困惑と焦りが見て取れます。どうやら、そこは十数年以上前の世界。三人のPCが、過去、偶然にも交錯したある日のある日時にまで落とされてしまったようです。
今はまだ、あらゆる事件の始まる前。PCたちは異空間で得た知識を武器に、管理者権限を失ってただのマスコットとなった調停者を引き連れ、待ち受ける運命を変えるべく奮闘することになります。
黒松比折牟
これもっと過酷で悲壮なEDだと思ったらこんな感じなんだ。
GM
みるきーさんはマスコットに並々ならぬ感情があるから興奮する。
GM
いやー、おもしろかったな。どうもありがとうございました。