《死神》デス・サーティーン
「終わった……のか……」
《死神》デス・サーティーン
地に横たわる、サメの体を見る。
《死神》デス・サーティーン
そしてその腹部にある、見慣れた顔を。
《死神》デス・サーティーン
「結局、サメというのはなんだったんだろうな」
《死神》デス・サーティーン
身構える。サメはまだ死んでいなかったというのか?
早乙女アリス
よたよたと近寄り、無防備に覗き込む。
クリストファー・アリス
「サオトメくん! ……気を付けたまえ!」
早乙女アリス
ぽう、と。翼が光る。
腹部の顔へ光が集ってゆく。
《死神》デス・サーティーン
「お前……生きて、いるのか……?」
早乙女アリス
「よかった……!よかったね、サーティーンくん」
虎符衛主
「なんとか……なっ!
でも、全然動けねぇー! 出してくれよ~!サーティーンー!」
《死神》デス・サーティーン
「ふん、世話の焼ける……。 クリストファー、手伝ってもらえるか?」
虎符衛主
「知らないおっちゃん~! ありがと~!」
GM
そして、サメの中から引きずり出される……一命をとりとめた状態の、少年と少女。
クリストファー・アリス
自分が刺し貫いた父をちらと見ただけにとどめ、救出に専念する。
虎符衛主
「ふ~!死ぬかと思った~! ありがとうな、みんな!」
アリス?
よろめき、咳込みながら、言葉をどうにか発する。
アリス?
「……どうやってかは、わからないけど。サメに食べられる瞬間、おじさまが護ってくれたの」
アリス?
「心の疵の力だったのかな……でも、きっと守れたのは私と衛主君だけだった」
虎符衛主
「宇宙のおっちゃんは、ずっと俺たちを守ってくれてたんだ」
クリストファー・アリス
地球に棄てられ、宇宙で暮らす人々のための旗印となった父。
虎符衛主
「おっちゃん、言ってたぜ。 自分にも息子と娘がいるって」
クリストファー・アリス
家族を顧みずに運動にのめり込んでいった父を怨みもした──だが、その誰かを守りたいという願いは、確かに正しいものではあった。
クリストファー・アリス
そうでなければ、自分はその志を継ぎなどしなかったのだ。
クリストファー・アリス
「……君たちが助かってよかった」
クリストファー・アリス
「私も、父を誇りに思えるよ」
虎符衛主
「俺も……宇宙のおっちゃんのこと好きだったぜ」
早乙女アリス
「……すてきなお父さんだったんですね」
早乙女アリス
「ふふ……わたしたち、勝っちゃった」
アリス?
サメに食べられていた間の事は、まるで夢を見ているような感覚だった。
アリス?
だが表象としてとりわけ多く使用されたアリス……早乙女亜里子は、そこで交わされた会話をおぼろげながら覚えている。
早乙女アリス
あなたを助けられてよかった。
衛主くんも助かってよかった。
早乙女アリス
クリストファーさんに、サーティーンくんに会えてよかった。
《死神》デス・サーティーン
仲間2人と、助け出された2人を見て、微かに微笑む。
《死神》デス・サーティーン
様々なことはあったが、皆無事だ。 これは奇跡と呼んで差し支えない、かもしれない。
虎符衛主
「あの女の子……もしかして、彼女ォ~?」
《死神》デス・サーティーン
「そんな訳があるか。 お前と一緒にするな」
虎符衛主
「いや~、俺別に亜里子ちゃんとデキてないんだよな~」
《死神》デス・サーティーン
「いいのか。 くいんに怒られるぞ」
虎符衛主
「わ~っ! くいんには黙っててくれよ~!」
《死神》デス・サーティーン
「ふっ、ふふ……はは」
GM
────こうして、月より現れた脅威によって齎さられた動乱は一つの決着を見る事になる。
GM
だが、未だ堕落の国の救済が為された訳ではない。救世主と末裔、そして救世主同士の対立は火種を残している。
GM
それでも、全ての決着が付かなくとも、屍が積み上げられていようとも。
GM
────それはきっと、奇跡と呼んでも差し支えのない事だろう。
GM
DoA「Shark or Alice」 完。
GM
壁画に見守られ、壊れたメカ・シャークが転がるばかりの暗い空間。
GM
埃が払われず、中身が見えないままだった培養槽のうち一つに……