GM
トンネルの中を猛スピードで飛ばす馬車に乗りながら、ショチは叫んだ。
GM
その正体は、焼けた靴で死ぬまで踊らされたかつての白雪姫の女王である。
GM
今や彼女は、トンネル内の車に猛スピードで踊りながら並走する化け物『すばやさの亡者』へと成り果ててしまった。
GM
よくみるとムーンウォークのステップを踏んでいる。激しく腰を回しながらも顔の高さは一切ぶれる事もない。
すばやさの亡者
亡者はくるくると回転しながらディエスへと迫る。
ディエス
「はやい!!!!!はやすぎますよ!!!!!!」
ショチ
怯えながらも、祈り、ディエスへと触れる。その身が少し軽くなった。
ディエス
揺れる馬車から身を乗り出し、やあっと旗を振る!老婆の手を牽制牽制!
チトセ
病人をこんな揺らしていいと思ってるんですか?
ディエス
ババアの回転と馬車の振動が激しく打ち合う!
ディエス
この馬車がババアに抜かれたら……どうなってしまうのか!?
すばやさの亡者
勢いを止めず、ディエスを避けて回り込む形で馬車へと飛び移る。ロルドゥラの目前へと迫った。
チトセ
「やばくないですか? 死んでしまうのでは?」
ディエス
「あっ!!!!!!危ない!!!!」馬車の揺れに負けない爆声量。
チトセ
「あ~ 病室では考えられないような爆音が~」
すばやさの亡者
馬車の中で倒れ込む。頭を重心に置き、逆立ちして足を武器のように振り回す!
ロルドゥラ
なっ、なんだか分からないけどすごい勢いだ!
チトセ
胸を突き出し……なんかぽよぽよすると勢いよく風が吹いてババアの回転を相殺します。
ショチ
「ち……乳の力でババアの動きが止まったッ!」
ロルドゥラ
かぎづめが馬車の床をきしませ、亡者に向かう!
ロルドゥラ
大きく振りかぶって……動きが止まったババアに向かってキック!
ディエス
「ピッチャーナイスー!」ピッチャーではない。
すばやさの亡者
脚に触れた場所から血が噴き出し、倒れる。
すばやさの亡者
最期の力を振り絞り、亡者は馬車を引く馬へと手を向ける。
すばやさの亡者
反応をする間もなく、亡者の掌が輝いた。
すばやさの亡者
掌から放たれた光線━━否、光線状に圧縮された高密度のすばやさが、馬車を引く馬へと直撃する!
ショチ
「ううううう、おおおおおおおわわわわわわ!?」
GM
馬は御者を振り落とし、老化しながら目にもとまらぬ速さで走り出す。
GM
車両へと急激に負荷が掛かる。べきりと音を立てて馬車は前後に二分された。
ディエス
「ワッ!!!!!!」声も置いていく速度!
ディエス
「わああああ……ぁぁぁぁ……」ドップラー効果。
GM
暴走する馬車の中に二人。トンネルに置いていかれたディエスとチトセの姿はみるみるうちに小さくなっていく。
ショチ
ガタガタと揺れる馬車の中、ショチが悲鳴を上げる。
ショチ
何かに気付いて踏みとどまる。自分の足を見る。
ショチ
折れた馬車の床が、ショチの足を挟んでいた。
ロルドゥラ
一拍遅れてそれに気が付き、動きを止める。表情に迷いが浮かぶ。
ロルドゥラ
このままだと、飛び降りるどころではなくなってしまう。
ロルドゥラ
だが今から床を壊して、ショチを助けだせるか?
GM
今すぐにショチに手を貸せば、助かる「のかもしれない」。
ロルドゥラ
その衝撃で、馬車がバラバラにでもなったら、それこそ……
GM
しかし地面は勢いを増しながら、前から後ろへと流れ続けていく。
GM
迷えば迷うだけ、無事に降りられる可能性が減っていく。
ショチ
自分を置いていけ、とは言えず。助けてくれ、とも言えず。無言で口を開けたまま、ロルドゥラを見つめていた。
ロルドゥラ
飛び降りればただ地面に叩きつけられるだけ。
ロルドゥラ
息を吞む。さっきはためらわずに板を踏みこんでいた足が、前にも後ろにも行けずにその場で彷徨う。
ロルドゥラ
わずかに後ろに下がりすぎた足が、割れた床を踏み損ねる。バランスが崩れる。
ロルドゥラ
背中から落ちながら、こちらを見るショチの姿がスローモーションで遠ざかっていく。
ロルドゥラ
違う、私は、見捨てようとしたわけじゃ!
ロルドゥラ
言い訳が空しく頭の中で響く間に、ロルドゥラは地面へ転がりながら叩きつけられる。
ロルドゥラ
荒野の砂埃にまみれながら、身を起こす。
ロルドゥラ
──躊躇わずにショチを助けていたら、こんなことにはならなかったのでは?
GM
長い長い山岳地帯を抜けて、ようやく目的地が目に入る。
GM
あれからショチを探し、チトセが掴んできた情報によって居場所に当たりをつけて向かい。
GM
なだらかな坂道の下に目に入ったのは、小さな集落だった。
チトセ
セックスネットワークで頑張って探しました。
ディエス
「見えましたよ!!!」集落に届かんばかりの大声。
ロルドゥラ
「ほっ、ほんとだね……」急な大声にびくついている。
チトセ
男とセックスした他の女を探して、その女が寝た男を探してそいつと寝たりした。
チトセ
そうやってどんどん広げていきました。セックスの輪を。
ロルドゥラ
「あ、あそこにほんとに、ショチがいるのかな……」
チトセ
「あそこで巨乳の超可愛い派手な女とセックスしたって情報がありまして」
ディエス
セックスはよくわかりませんが、ショチっぽい見た目と言うならきっとショチなんでしょう!
GM
時期も身体的特徴もショチと一致する。そしてこの集落は、あの馬車が向かった方角だ。
ディエス
「セックスってすごいですね!じゃあさっそく行きましょう!!」
ディエス
「すいませーーん!!」末裔に向かって遠くから大声!
ディエス
遠くでちょうどよかったぐらいなのでまあまあ駆け寄る距離がある。けどディエスも駆け寄ってるからなんてことはないぜ。
ディエス
「はい!!!!!僕はトランプ兵の末裔ですけどあちらの2人は!!!」
ディエス
やや遠くから小走りにやってくる二人を指差し。
チトセ
「どうも~かわい子ちゃんたち 救世主ですよ~」
ちびのモリー
「つたえなきゃ、つたえなきゃ、ショチさまに!」
ディエス
「みなさーん!ショチ様がいるって!」大ジャンプ。クソデカボイス。
ちびのモリー
「よんでくるわ!」 走り去っていく。
のっぽのマカ
「……救世主さま、ショチさまのお知り合いなの?」
ディエス
「そうです!仲間です!」救世主ではないけど答えます。
チトセ
「そうですよ~、ずっと探してたんですよお」
のっぽのマカ
「じゃあ、ようやく会えるのね! それってとっても幸せなことだわ!」
のっぽのマカ
「少し待っててね。ショチさまは旅の救世主さまをおもてなしするのが大好きなの!」
ちびのモリー
先ほど去った少女が戻る。その隣に、見知った人物を連れて。
ショチ
「うわ……うわっ……うわ~……マジか……」
ロルドゥラ
身の置き所をなくしておろおろしている。
チトセ
「再会を喜んだりしないんですかあ~? 生きてたんですよ? この私が」
ショチ
「……ついてこいよ。せっかく来たんだ。手伝ってけ」
ショチ
「おう、当たり前だろ! このショチさまが簡単に死んでたまるかっての!」
GM
花壇にはマリーゴールドの造花が並び、建物にはパペルピカドが吊るされている。小さな集落ながら、彩鮮やかで華やかな雰囲気だ。
ロルドゥラ
ショチに謝らなくては、と思うのだが、言い出せないまま、三人から少し遅れて後ろをついていく。
チトセ
手術のとき乗せられる金属のアレよりは冷たくなくてよかったな。
ショチ
「ちょうどこれから食材の補充をするとこだったんだよ」
ショチ
「ま、例のアレだ。亡者だ。準備だけは出来てても、オレ一人じゃどうにもならん」
ショチ
「だから救世主待ちをしてたわけだ。まさかお前らが来るとは思わなかったけどな」
ディエス
「はい!探してましたから!会えてよかったな~!」
チトセ
「あ、今巷で流行りのゴーストペッパーですか? あのすごい美味しい亡者」
チトセ
「このあたりで色々……してるときに伺いました」
ディエス
ロルドゥラを『なんかいつもより控えめになってるな~感動の再会なのにな~』って顔をして覗き込みまくっている。
ディエス
「チトセさまがセックス?を頑張ったらしいです!」すごいですね!
ショチ
「なるほどな~、なるほどな~、その情報のネットワークでなあ」
ショチ
「んじゃ、話は早いな。そう、お相手は唐辛子の亡者ゴーストペッパーだ」
ショチ
「見るだけで目は染みるし汗はダラダラ垂れてくる。肌にも来るから気を付けろ」
ディエス
「へえーっ!?でも辛いとたべられないんじゃないですか!?」
ショチ
「なんせ、末裔なんて近づくだけで爆散するからな」
ショチ
「お前は特別よ!コインの力があるだろうが~!」
ショチ
「だがお前の言う通り、相手はクソ辛い唐辛子だ。もちろんそのままじゃ、辛すぎて食えたもんじゃねえ」
ショチ
「しかしこいつはな。死ぬと辛味がスッと抜けるんだ」
ディエス
「でもスッとぬけたものっておいしいんですか?」
チトセ
「ジューシーなパプリカみたいになるらしいです」
チトセ
そのパプリカよりお前の桃のほうが美味いよ……ってベッドで言われた気がするけどあいつ何だったんだろうな。
ショチ
「量も採れるし味もいいし、なんか健康にも良さそう、ってワケ!」
ディエス
「それはすばらしい!」この世界はおいしいものに飢えているからね。
ショチ
「お前らもどうせロクなもん食ってねえんだろ~? そうだと言えッ」
ディエス
「最近は……なに食べました!?」2人の方を向く。
ロルドゥラ
「まあ、いつもの……三月兎の亡者ジャーキーとか……」
ディエス
末裔が葉っぱと呼ぶ枯れ草の事。砂がついてスパイシーだ。
ロルドゥラ
「亡者化しててめちゃくちゃ苦い麦のスープとか……」
チトセ
「いいですねえ! 多少は長生きできそう!」
ロルドゥラ
「ゴーストペッパー、っていう亡者を、倒せばいいんだよね」
チトセ
「それはそれはもう地獄のような恐ろしい手順が」
ショチ
「踊るんだよ! 体を動かして舞うアレだ!」
チトセ
「元世界でやったら死んでしまいますからね」
チトセ
「堕落の国だからギリギリ助かるみたいなアレです」
ディエス
体を動かす……?ととりあえずウニョウニョ動いてみている
チトセ
私はギリギリまで踊りませんよ。健康な人だと思われそうですからね。
チトセ
いつも男の腹の上で踊ってる? うるせえな。
ショチ
「全身使って場を沸かせるんだ。あのババア亡者がやってたみてーにな」
ディエス
あんな速度……出せるのか!?末裔のわたしに!?
ロルドゥラ
ショチにあの時のことを言うタイミングをすっかり逃し続け、さりとて言い出せもせず、知らない振りもできずに縮こまっている。
チトセ
「やったらドクターストップかかったり死んだりしますからね」
ショチ
「一番活躍したヤツには豪華景品をプレゼントしようと思ったんだがなあ」
チトセ
セックスネットワークでも知らん情報ですね。
ディエス
馬鹿な……あのセックスにもわからない事が!?
ロルドゥラ
このコマに記入されている貢献度は、もしかして……?
ショチ
「いいか。ゴーストペッパーは踊りが大好きだ。ヤツらは踊りに惹かれてやってくる」
ショチ
「ハデに楽しく踊って亡者を集めてメシとして有活用しちゃおうってわけだ!」
ショチ
先ほどからぎこちないロルドゥラの元へと近づく。
ディエス
楽しく踊る?っていうのはよくわかりませんが……踊ればいいんですね!
ショチ
「いいか、オメーら! 踊りが終わりゃその次は亡者戦だ!」
ショチ
「オレのかわりにその手を汚せ! このショチさまの腹を満たすためになァ!」
ショチ
「今日一日はダンスパーティーだ! 再会を楽しんで行こうじゃねーか!」