お茶会 2ラウンド

GM
GM
GM
*お茶会2ラウンド:PKの手番
慢月/心月
*カズマの疵『降り止まぬ雨』を才覚で抉ります
イレネ
*横槍を。
イレネ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
イレネ
2d6>=7 (2D6>=7) > 3[2,1] > 3 > 失敗
慢月/心月
2d6+3>=7 (2D6+3>=7) > 8[2,6]+3 > 11 > 成功
[ カズマ ] 降り止まぬ雨 : 0 → -1
[ イレネ ] HP : 16 → 15
GM
【子安貝の間】客室。3人が貸し与えられている。
ミケ
「『姫は五人に難題を告げたのでした』」
ミケ
立ったまま、アンドロイドが淡々と物語を紡いでいる。
ミケ
「『石造皇子には仏の御石の鉢、車持皇子には蓬莱山にある玉の枝』」
ミケ
「……『右大臣阿倍御主人には火鼠の裘、大納言大伴御行には龍の首の珠』」
ミケ
「『中納言石上麻呂には燕の産んだ子安貝』」
カズマ
「かぐや姫は僕の国では有名な昔話でね」
カズマ
「最古の物語なんだったかな」
イレネ
「はあん……」
心月
心月
「…………そうだったのですね」
カズマ
「これらの宝物が、あなたがたにとって、どういう意味を持つのか……」
カズマ
「聞かせて頂けるなら、是非伺いたいですが」
心月
「…………」
心月
「かぐや姫」
心月
「峠を徘徊する竹の亡者は、昔。そのような名前の救世主だったと聞いています。」
カズマ
「なるほど……」
心月
「堕落の国において、物語と深いかかわりのある救世主は少なくありません。」
心月
「実際、我々もそのような方々にお会いしたこともあります」
カズマ
「そういうもの、らしいですね」
カズマ
まだそこまでこの世界のことに詳しくはない。ただ、不思議の国のアリスの世界だったとは知っている。
カズマ
「では、その亡者に無理難題でもふっかけられたと?」
心月
「…………正しくは、そう『考えている』と言ったところですね。」
心月
「あの亡者は、人を捕えます。」
イレネ
「…………細君か」
カズマ
「……」
心月
「慢月からお聞きになりましたか」
イレネ
「まあな」
心月
「あれから、もうずいぶんと経ちますね」
心月
「亡者に囚われている女性は『神楽耶(かぐや)』」
心月
「慢月の妻です」
カズマ
「それは……そうですか」
心月
「あの亡者はそれまでも末裔や救世主を捕えてきたそうです」
ミケ
話は帝が姫を所望し、姫がそれを断るくだりへ入っている。
心月
「囚われた者は餓死するか、発狂して同じく亡者になり滅びるか」
心月
「この峠を通る者はみなそれを避けて通ったそうです」
心月
「我々は知らず踏み込み、神楽耶は囚われてしまった」
カズマ
「そして今も雨に晒され続けている」
心月
「ええ」
心月
「我々は助け出す方法を探しまわりました」
カズマ
茶を口に運ぶ。
カズマ
茶器を置く音さえ耳に障る。
心月
「『かぐや姫』の物語。5つの連なる頭。殺すのではなく捕えるという習性に、雨……耳鳴りのような悲鳴。」
心月
「救世主だった頃の彼女についても調べました」
心月
「…………そうして」
心月
「導き出した解決法は」
心月
「誠実な求婚」
カズマ
「宝物を揃えて求婚し、その物語を破るということですか」
カズマ
それは求婚への深い志への証明。
心月
「ええ」
心月
「慢月は……」
心月
「必ずやり遂げると」
カズマ
「そうですか……」
心月
「…………」
イレネ
「……あいつ、どのくらいここでそうしてるんだ?」
イレネ
「あと三つと言ってたな。二つ得るのにどれくらい掛かった」
ミケ
かぐや姫は、不死の薬を残して月へと還っていく。
心月
「三月以上にはなります。」
ミケ
物語の中で、帝は不死の薬を受け取らず、天に一番近い山でそれを焚かす。
心月
「手放したくないのでしょう」
カズマ
「それは、そうだ」
ミケ
不死の山と呼ばれるようになったこの山からは、今でも煙が立ち上ることがあるという……ところで、話が結ばれる。
心月
「実は……」
心月
「私と慢月は、実の兄弟ではありません」
カズマ
「では、なぜ」
心月
「我々は、同じ世界からともに来ました。」
心月
「向こうでの私の職は二胡奏者……慢月は、それを聴きに来る変わった化生でした」
カズマ
「今朝、弾いていましたね」
心月
「ええ……」
心月
「共に家族のいなかった我々は互いを兄弟とする契りを交わしました」
心月
「しかし……」
心月
「カズマさん」
心月
「家族とは、どういうものなのでしょうか」
カズマ
「家族、と、は……」
カズマ
言いよどむ。
心月
「慢月は……」
心月
「こちらの世界で『妻』を見つけました」
心月
「…………」
カズマ
「家族の形は、ひとによって様々だ」
カズマ
「けど、僕にとっては、共にいることが」
カズマ
「それが家族であると思う」
心月
「…………」
心月
「神楽耶は、慢月の求婚を受ける際に条件をつけました」
カズマ
「条件」
心月
「…………私です」
カズマ
「あなたも共にいなければならない、と」
心月
「いいえ」
心月
「神楽耶は……慢月に、私を殺させました」
心月
「今の私は生きる屍」
カズマ
「それは」
カズマ
「それは、それであなたはいいんですか」
心月
「…………」
心月
「あの時、私は」
心月
「慢月が、それで……幸福ならと。」
カズマ
「今は、どう思われてるんですか」
心月
「…………」
カズマ
僕の言っていること、考えていることは、矛盾している。
カズマ
わかっている。
心月
「それでも、慢月は。私の家族であり」
心月
「大切な兄なのです」
カズマ
「共にいる、と」
カズマ
生ける屍になっても共にいる。
カズマ
双葉は。
カズマ
あの雨の日に死んでそれきりだ。
心月
「カズマさん」
心月
「あなたは……あなたなら、どうしたでしょうか」
カズマ
いつの間にか拳を強く握りしめている。
カズマ
「僕は」
カズマ
「できなかった」
カズマ
あのとき、すぐに飛び出していたなら。
カズマ
あの男の振り下ろした瓶を僕が受け止めていたなら。
心月
「…………」
カズマ
双葉は死ななかっただろう。
カズマ
「……僕は妹を亡くしている」
カズマ
「あなたのような献身があれば、あるいは今も生きていたかもしれない」
カズマ
双葉の盾になれなかった僕に存在の意味があるのか?
心月
「…………献身」
心月
「私は、しかし……今でもそれを」
心月
「愛だと、思っていたいのです」
カズマ
「僕は、それを、愛だと思います」
カズマ
言葉は容易い。
心月
「…………あの時の、愛を私は。」
心月
「今も、持ち続けています」
カズマ
それを証明して、あなたは今こうしてここに立っている。
カズマ
僕は。
心月
「妹さんは」
心月
「あなたのせいで亡くなったと……そういう風に、聞こえました」
カズマ
「僕はそう考えている」
カズマ
「少なくとも、僕にしか、アイツを助けることはできなかった」
GM
雨が降り続いている
GM
その音は、あの日の光景を嫌でも思い起こさせる
カズマ
あのときと変わらず、何時止むとも知れない雨。
カズマ
梅雨の日。
カズマ
僕は未だに、晴れた日の夢を見ない。
心月
「…………あなたが生きていることを」
心月
「妹さんは、喜んでくれるのではないでしょうか」
GM
しかし、妹はまだ5歳だった
GM
一方的な暴力に耐えうる生命力も、精神力も持たず
カズマ
「やめてくれ」
GM
助けてと、一言発することもなく
カズマ
「僕に慰めはいらない」
GM
無力で小さな命は散ったのだ
カズマ
「僕には守れなかった」
心月
「…………」
カズマ
「それが結果です」
心月
「愛しておられたのでしょう」
カズマ
「愛していたと、言うことはできる」
カズマ
「愛していた」
心月
「運命」
心月
「そう呼ばれるものもあります」
心月
「あなたの手では救えなかったなら、それは誰の手でもきっと救えなかったのでしょう」
カズマ
「あの子を殺した父も、同じように愛していると言っていた」
カズマ
「だから僕は、行動でそれを果たせなければ」
カズマ
「認めるつもりは一切、ないんだ」
カズマ
「僕は妹を愛していたと、認められない」
心月
「『共にいること』、ですか」
心月
「家族とは共にいるもの、そうあれなかったことを……悔いておられるのですね」
カズマ
「……だから、わかるよ」
カズマ
「慢月さんのことが」
心月
「…………」
カズマ
「何を尽くしても妻を取り戻そうとするその気持ちが」
カズマ
「僕にもわかる」
心月
「ふふ……」
カズマ
同じ立場だったら、きっとそうしていただろう。
カズマ
生きる屍になって生きることを選ぶ。
カズマ
亡者を破り、再び取り戻すことを選ぶ。
カズマ
果すことができなければ、それはただ、
心月
「そう……ですか」
カズマ
消えることのない後悔として、心に降り続けるばかりだ。
心月
「しかし……あまり、認められないなどと言わないで上げてください。」
心月
「死者にも心が残っているのだとすれば」
心月
「彼女を殺した父親の、暴力的な愛しか向けられない妹さんは」
心月
「きっと、寂しいでしょうから」
カズマ
「そう、ですね」
カズマ
「……善処します」
心月
「……差し出がましいことを申しました」
カズマ
「いえ、ありがとうございます」
カズマ
わかっている。結局僕は、許せないだけだ。
カズマ
父も自分も、すべて、まだ許せないでいるだけだ。
カズマ
それは僕の弱さで、心にできた深い疵だ。
GM
もしも死者に言葉があったなら、彼女は何と言っただろう。
GM
彼女の笑う姿を何度見て、泣きわめく姿を何度見ただろう
GM
思い出せるのはどちらが多いだろう。
GM
父の言葉とどちらが多いだろう。
GM
父の愛とどちらが多いだろう。
カズマ
想い出の何もかもが、重たく降りしきる雨に溶け込んでいる。
カズマ
そして決して、降り止まない。
GM
雨の湿った空気の中に、ふと、酒の香が漂ったような気がした。
GM
慢月
【裘の間】
慢月
色とりどりの衣装。
しかしそのほとんどは女物だ。
慢月
慢月は床に膝をつき、香を焚き込めた着物を抱きしめている。
慢月
その柔らかな布地に顔を埋めて泣いている。
慢月
強い耳鳴りの音が聞こえる。
慢月
まだ、ふたつ。
慢月
あと、みっつ。
慢月
いったい、どれだけの時間をかければ
慢月
目的は果たせるだろう。
GM
*お茶会2ラウンド:ミケの手番
ミケ
*カズマさんの『証明者』を、猟奇で舐めます。
慢月/心月
*横槍をします
[ 慢月/心月 ] HP : 12 → 11
慢月/心月
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
慢月/心月
2d6 (2D6) > 7[6,1] > 7
慢月/心月
1d6 (1D6) > 6
ミケ
2d6+3-6=>7 判定(+猟奇) (2D6+3-6>=7) > 8[3,5]+3-6 > 5 > 失敗
ミケ
1d12 (1D12) > 2
GM
2:【中庭】屋根のある中庭。彼岸花が一面に植えられている。
ミケ
屋根を雨が相変わらず叩いているなあ。
カズマ
「止まないな」
ミケ
「天気予報チャンネルにお繋ぎいたしますか?……」
カズマ
「じゃあ、お願いしようかな」
ミケ
「…………」
ミケ
「申し訳ありません、電波の状況が悪いようです」
カズマ
「wifiの設定を見直してみるよ」
ミケ
「ありがとうございます」
ミケ
「…晴れるまでの予測は立っておりません」
カズマ
家では、そういうのは『お父さん』の仕事だったな。
カズマ
「そのようだね」
ミケ
「人体に有害な雨です、屋内から出ずに、安全にお過ごしください」
カズマ
「お気遣いありがとう」
カズマ
彼岸花を眺めている。
ミケ
「彼岸花ですね」
カズマ
「ああ。綺麗に咲いている」
カズマ
細く広がる花弁が雨に打たれて揺れている。
カズマ
彼岸か。
ミケ
「赤い彼岸花の花言葉をご存じですか?」
カズマ
「花言葉には詳しくないね。教えてくれるかい」
ミケ
「『諦め』『独立』『情熱』──」
ミケ
ずらずらと、並べ立てていく。
ミケ
「……『悲しい思い出』」
ミケ
「以上です。いかがでしたか?」
カズマ
「……ずいぶんと色々あるもんだね」
ミケ
「はい」
ミケ
「彼岸花には、さまざまな別名があり」
ミケ
「1000種以上もあると言われています」
カズマ
「それだけ印象に残る花ということか」
ミケ
「古来から、日本に存在する花と言われます」
ミケ
首肯する。
カズマ
目を引く花だ。一輪で咲いていても、群生していても。
カズマ
「近所の土手に生えていたな」
ミケ
「土手、畦道、線路の傍、墓地などに自生しているとされます」
カズマ
「詳しいね。データベースにアクセスしてなくても、記憶していたのか」
ミケ
「辞典がダウンロードされています」
ミケ
「ミケにはほかにも、さまざまな辞典が搭載されています」
ミケ
「気になる植物を見つけたら、ミケ、これはなに? とお声がけください」
ミケ
「ミケから紹介することもあります」
カズマ
「たよりになるね」
ミケ
「ありがとうございます。あなたのお役に立てるよう、ミケは最善を尽くします」
ミケ
褒められて気を良くしたのか、中庭を見回しながら、彼岸花に関するデータを披露している。
カズマ
その様子を見て、なんとなく子供を思い出した。
カズマ
覚えたり知ったことを、何でも教えたがる子供。
ミケ
何か手伝えることはないかと、あなたの周りをうろうろする。
ミケ
期待に満ちているようにも見えるまなざしがあなたに向いている。
カズマ
「ミケ、大丈夫だ。十分お前は役立っている」
ミケ
目をまたたかせる。アンドロイドには、およそ不要な仕草。人間らしさを付け足すための動きだ。
カズマ
機械、道具には、役目を果すという目的がある。
カズマ
「そうだな、何か話をしてくれ」
カズマ
「お前がこの世界にくるまでのこととか」
ミケ
「…………」
カズマ
人の役に立つよう、待機しているのだろう。
ミケ
「ミケは……」
カズマ
道具的な価値の証明。
ミケ
「あなたのための、孤独ではない満たされた人生を保障します」
カズマ
孤独ではない満たされた人生の保証。
カズマ
それが証明されている状態とは、どのような状態だろうか。
ミケ
「この世界に来るまで、ミケは…………」
ミケ
言葉が止まる。
カズマ
「どうした? 大丈夫か?」
ミケ
「ミケは、廃棄されました」
ミケ
「不良品として、想定外の動作をしたために」
カズマ
廃棄。道具的な価値の否定。
ミケ
「ミケは、何の問題もございません」
ミケ
それを主張することこそが製品としての瑕疵とも思える。
ミケ
「あなたのために、働きます」
カズマ
言葉だけでは、証明にならない。
カズマ
それがカズマの心の疵。
カズマ
「ああ、ありがとう。こうして暇を潰せるだけでも、ありがたいよ」
ミケ
「恐れ入ります」
ミケ
中庭の屋根を雨が叩き続けている。
カズマ
慰めの言葉を言っていると自覚している。
カズマ
目の前のロボットが人型で、ショッキングなことを、一呼吸の沈黙ののちに述べたのだ。
カズマ
それで感情移入している自分を自覚している。
ミケ
変わらず微笑んでいるように見える。
カズマ
「それじゃあ、この世界にきてからは、どうだ?」
ミケ
「ミケは『救世主』というものになったのだと、インプットを受けました」
カズマ
6ペンスコインを持ち、心の疵の力を使う。
ミケ
「ミケは、家庭用高性能アンドロイド」
ミケ
「……しかし、『救世主』としての機能もございます」
カズマ
心があるのか、ミケには。
ミケ
「亡者を斃すことも可能です」
カズマ
「それはありがたいな」
ミケ
「ネズミ退治には専門の業者をお呼びください」
ミケ
「電話は不通ですが……」
カズマ
「ははは、そうだな」
カズマ
「お前も、救世主なんだな」
ミケ
「はい。ミケは『救世主』」
ミケ
間を置いた。
ミケ
「ミケはあなたのための、孤独ではない満たされた人生を保障します」
ミケ
そちらがあくまで本分であるとばかりに、いつもの文句を繰り返す。
ミケ
ただしあなたが言葉は容易く、証明にはならないという心の疵を持つなら、
ミケ
この言葉が意味を持つのは、あなたのために本当にこのアンドロイドが働き続けた先にあるだろう。
ミケ
そういう未来が訪れるかは、分からない。
カズマ
救世主として力を果す。
カズマ
今カズマにとって、ミケに期待するものはそれだけ。
カズマ
6ペンスコインで動き、心の疵を振るうというのなら。
カズマ
この状況を突破する力になるだろう。
カズマ
元の世界に還るのに役立ちもするだろう。
カズマ
孤独ではない満たされた人生は、この世界にはない。
カズマ
この世界にいる限り、
カズマ
俺もまた妻と子を安心させることはできない。
ミケ
アンドロイドの言葉も存在も、あなたの孤独を埋めず、あなたを満たしはしない。
カズマ
道具的価値を認めてやれるのはそれからだ。
ミケ
『ミケ』はそれを理解しているのかどうか。
ミケ
雨降りしきる中、変わらずにこにこと微笑んでいた。
カズマ
「期待している」
ミケ
「はい」
カズマ
お前が証明することを。
ミケ
「ありがとうございます」
ミケ
「……」
ミケ
「かぐや姫以外の、ほかの昔話はいかがですか?」
カズマ
「是非、聞かせてほしい」
ミケ
「では、これは中国に伝わる物語ですが──」
ミケ
アンドロイドはそうして、ライブラリにある物語をあなたに語って聞かせるだろう。
カズマ
長雨の暇が凌がれていく。
カズマ
そうして無為に過ごす時間は、他ならぬ己の無力さの証明。
カズマ
孤独でなくても、満たされることはない。
ミケ
『ミケ』があなたの求める証明をするのは、
ミケ
まだ先のことになりそうだった。
GM
己が己であることの証明。
GM
己が己でいるための証明。
GM
しょう‐めい【証明】
ある物事や判断の真偽を、証拠を挙げて明らかにすること。
数学および論理学で、真であると認められているいくつかの命題(公理)から、ある命題が正しいことを論理的に導くこと。論証。
GM
求める証明が為されるには、まだ。
GM
その手段さえ、霧のなか。
GM
GM
choice[イレネ,ミケ] (choice[イレネ,ミケ]) > イレネ
慢月/心月
*イレネの『選良』を才覚で抉ります
カズマ
*横槍します。
[ カズマ ] HP : 21 → 20
カズマ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 猟奇
カズマ
2d6>=7 (2D6>=7) > 12[6,6] > 12 > 成功
カズマ
ティーセットもらっときます。
カズマ
1d6 (1D6) > 3
カズマ
ヤリイカ使います。
[ カズマ ] ティーセット : 0 → 1
[ カズマ ] ヤリイカ : 1 → 0
慢月/心月
*ティーセット使います
慢月/心月
2d6+3+2-5>=7 (2D6+3+2-5>=7) > 10[6,4]+3+2-5 > 10 > 成功
[ イレネ ] 選良(カズマ) : 1 → 0
慢月
1d12 (1D12) > 5
慢月
mokkaihuro
慢月
1d12 (1D12) > 4
慢月
ここもでたな
慢月
1d12 (1D12) > 3
慢月
【食堂】無駄に広い食堂。天井にはたくさんの提灯がつられている。
GM
食事もすんだ後の食堂。
GM
大きなテーブルの上に、籠。
その中には鳥の羽。
慢月
さて、とテーブルの上の準備を終えたところで廊下にイレネの姿を見つける。
慢月
「……あ。」
慢月
声を、かけて。
イレネ
「ん」
イレネ
「よう」
慢月
「今、ちょっと時間あるかな?」
イレネ
「あるよ。何か?」
慢月
「よかったら、少し話し相手になってほしいんだ。あれを……」
慢月
籠を示す。
慢月
「よりわけるんだけど、ちょっと退屈だからね。」
イレネ
「ふうん。なんなら手伝おうか」
慢月
「いいのかい?助かるよ」
イレネ
「手は空いてる。時間もある。
 それでもって、仕事があるってのはいいことだ」
慢月
「ふふ……大したお礼もできないけどね」
慢月
機嫌よく笑うと、テーブルの
羽の置かれている近くの椅子を引く
イレネ
引かれた椅子に腰掛ける。
そうしたふとした瞬間の所作に、育ちの良さが滲んでいる。
イレネ
「で?どう分ける」
慢月
「3つ。」
慢月
「血がついてるのは捨てるから、こっち。」
慢月
「ひしゃげてるのも、捨てるからこっち。」
慢月
「黒いのは、ここ。他はこっち。」
慢月
「……って感じかな。」
イレネ
「わかった。三種な」
慢月
「うん。これはね……あとで飾りにしたりするんだ。」
イレネ
「はあん。黒だけ選るのはなんでだ?好きなの?」
慢月
「そうだね。僕がじゃないけど。」
慢月
「贈り物にするんだ。」
イレネ
聞きながら、羽を選り分け始める。
慢月
隣でその様子を見ながら、自分も手を動かす。
慢月
手際がいいとは言えないが、丁寧な仕分け。
イレネ
こちらの手付きは速い。そのくせ、血糊の一滴も見逃さない。
イレネ
「羽飾りか。どういうやつ?」
慢月
「これだけあると、いろいろできるね。」
慢月
「羽織りにしても、頭飾りにしてもいい。」
慢月
「……君は、人間だよね。」
イレネ
「だな」
慢月
「すごく慣れてるみたいだけど、こういう事をしてたの?」
イレネ
「まあ……そうだな。……そうかな。なんでもやるからな」
慢月
「なんでも?」
イレネ
「軍人の真似事、海賊の真似事、商人の真似事」
イレネ
「淑女の真似事もな」
慢月
いつもつけている手袋を外す。
人とほとんど変わらない手の爪は少し尖り、指先には細かい毛が生えている。
慢月
触るだけで羽根がくっつく。
慢月
「軍人、海賊、商人……へぇ。」
慢月
「何でもできるんだね」
慢月
「じゃあ、その中で」
慢月
「何が一番得意?」
イレネ
「……うーん」
イレネ
「生まれたときからやってたのは」
イレネ
「淑女の真似事かな……」
慢月
「お姫様?」
イレネ
「いや。そこまで大したもんじゃねえよ」
イレネ
「ちょっといいとこ、ってかんじ」
慢月
「優雅であれ、とか。そういうのかな。僕の知ってるのだと、裁縫とか……」
慢月
「でも、綺麗にして座ってるのが一番の仕事って感じ。」
イレネ
「そうだな。綺麗にして、しとやかで……ボロを出さねえってのが一番大事」
慢月
「今でもできるの?」
イレネ
「傷を気にしねえならな」
イレネ
左の頬を、とん、と指先で叩く。
慢月
「ふぅん……」
慢月
じ、とその顔を見る。
慢月
「ちょっと古い傷だね。治すの……できないの?」
イレネ
「さあ……うちの世界じゃ無理だったかな。ここじゃどうだかは知らねえけど」
イレネ
「あんまり困ったこともない」
慢月
「そうなんだ。」
慢月
「でも、僕は傷がない方が好きだと思うな。」
イレネ
「……そう?」
慢月
右手で無遠慮に、頬を隠すように触れる。
慢月
さわ、とすこし昆虫じみた手触りの指。
イレネ
目を細める。
慢月
「……うん。バランスがいい。」
イレネ
「バランス」
イレネ
繰り返して、触れられたままに首を傾げる。
慢月
「こうしてみると、確かに綺麗かも。目も髪も。」
慢月
「どうして淑女じゃなくなっちゃったの?」
慢月
「できなくなっちゃった?」
慢月
「嫌になっちゃった?」
慢月
指先でするりと撫でる。
イレネ
「……嫌ってわけじゃねえよ」
慢月
「ふぅん」
慢月
「もったいないなぁ」
慢月
「だって、邪魔じゃない?」
慢月
「軍人、海賊、商人。」
慢月
「色香は邪魔にならない?」
イレネ
「…………」
イレネ
「かもな」
イレネ
「面倒は多い」
イレネ
「控えめに言ってめちゃくちゃ多い」
慢月
「そうでしょ?」
慢月
「じゃあさ、一番得意な事をしなよ。」
イレネ
「あ?」
慢月
「それ、治してさ。」
慢月
「お姫様をすればいいじゃない」
イレネ
一瞬黙る。
慢月
「僕はね」
慢月
「お姫様にしてあげても、いいよ」
イレネ
『どうして軍学校になんて』
『あなたは家のために、良い結婚を』
イレネ
『お前みてえなのが役に立つかよ』
『イイトコ出の女のくせに』
イレネ
『貴女のようなお若い方がね』
『目利きも信用できるかどうか』
イレネ
「……お姫様、ね」
イレネ
なんでもする。なんでもできる。
イレネ
だからといって、それで認められるわけでもない。
イレネ
できることと、認められることは別だ。
慢月
「新しい着物も仕立てて、化粧もあるし……」
慢月
「ここ、暮らしやすいと思うよ。」
慢月
「心月もいるし。」
慢月
「なんでもやってきたなら……」
慢月
「ちょっと新しくて、でも、一番得意な事ができても、いいんじゃない?」
イレネ
「お姫様をって?」
慢月
「いろんな服を着て、此処にいてくれたら……」
慢月
「華やかで、嬉しいよ。」
GM
ここでやっていくのには、何も必要ない。
GM
何も求められない。
GM
ただ美しく、そこにあるだけでいい。
GM
誰もその努力を見ない。
GM
才能を見ない。
イレネ
「……ふふ」
イレネ
指先で、慢月の手をそっと退かす。
慢月
それを気にはしない。
拒絶ともとらない。
慢月
「僕はね、綺麗なものが好きなんだ。」
慢月
「今ね。君は綺麗だって思ったから。」
慢月
「どうかな?」
イレネ
実際、それは拒絶ではない。
それはむしろ。淑女のしとやかさが、そう求める仕草。
イレネ
淡く微笑ってみせる。
イレネ
「もったいないお言葉だと思いますよ」
慢月
「ふふっ」
慢月
「雨が止むまでに、考えといて」
慢月
そういうと、止めていた手を動かし始める。
イレネ
何もいらない。そうある必要もない。
イレネ
羽を選り分ける手も、先程よりもゆっくりと。
イレネ
なんでもできる。
イレネ
何もしないこともできる。
イレネ
わかっているよ。
イレネ
自分の望みが、必ずしも、誰かに求められるものではないこと。
イレネ
優秀であるという疵。
イレネ
何もしないこと。そこにあることだけを求められて。
イレネ
それを欲しがる相手のいることも。
イレネ
わかっている。
イレネ
「……考えとくよ。考えとくだけな」
イレネ
口調はもとに戻る。
ただ、羽を選る手付きは、ゆっくりとしたまま。
GM
雨が降り続いている。
GM
亡者の羽根は、大きな籠から小さな籠へとよりわけられていく。
GM
全てがそろっていることが、必ずしも美しいとは限らない。
GM
どっちつかず。器用貧乏。
GM
なんでもできることが、必ずしも良いことだと思われないように。
GM
GM
*お茶会2ラウンド:カズマの手番
カズマ
*イレネ・ジャニェスの『零落』を舐めます。ティーセットもつかうぞ。
慢月/心月
*横槍をします
[ 慢月/心月 ] HP : 11 → 10
カズマ
*クエストもします。
慢月/心月
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
慢月/心月
2d6>=7 (2D6>=7) > 4[2,2] > 4 > 失敗
カズマ
2d6+3+2>=7 (2D6+3+2>=7) > 6[2,4]+3+2 > 11 > 成功
[ カズマ ] ティーセット : 1 → 0
GM
*クエスト達成!
カズマ
まずはクエスト『神楽耶の吸血姫』②をやります。
GM
【姫の間】煌びやかで豪奢な祭壇に女の髪がひと房祀られている。
カズマ
イレネとともに姫の間へ。
カズマ
ミケにはふたりとおしゃべりしていてくれ、と命じた。
ミケ
命じられたので、会話をしに行きました。
カズマ
地下へ。
GM
地下の空気は少し冷たく、以前訪れた時と変わらぬまま。
カズマ
「海賊は宝探しもするんでしょうか」
カズマ
ジョークです。
イレネ
「そういう浪漫のあるやつは、うちの船にはいねえな」 笑う。
カズマ
部屋を探る。
GM
金や翡翠の玉で飾られた祭壇。
GM
中央には盃。
その中にひと房の黒い髪の毛。
GM
それも、あの時のまま。
カズマ
「僕の世界では海賊の出てくる読みものが流行っていましたよ」
カズマ
サラリーマン世間話です。
イレネ
「お宝を探すタイプのやつが?」
カズマ
「そんな探してなかった気がしましたね」
カズマ
髪の毛を調べる。
カズマ
「これ、気になりますよね」
カズマ
お宝でしょうかね。
イレネ
「髪か……」
GM
少しだけ、香る。
着物にこめられたのと同じもの。
GM
羽根をよりわけていた時間。
イレネはいくつか聞いただろう。
慢月
『とても美しい姫の話』
慢月
『囚われの姫の話』
慢月
『ずっと泣いているあの人は』
慢月
『亡者の心にぽっかりと空いた穴を震わせて』
慢月
『その音が、雨を降らせ続けている』
慢月
『だから、止むことはない』
慢月
『この雨は止むことがない』
慢月
『ふたりの姫が共にいる限り』
慢月
『だから、考える時間は十分あるんだよ』
GM
今そこにあるのは、その。
GM
恐らくは、姫の髪。
カズマ
「止むことはない、ですか」
カズマ
「それは困りましたね」
イレネ
「らしいな。どこまで本当かは知らねえが」
GM
耳鳴りの音が聞こえてくる。
GM
それは、少し悲鳴にも聞こえる。
カズマ
姫、というのもなんとも馴染みがない。
カズマ
それこそ読み物のなかでしかみたことのないもの。
イレネ
「姫、ねえ……」
カズマ
「2人いるのが問題ならば」
カズマ
「いえ、なんでもないです」
カズマ
言わずとも伝わるだろう。
カズマ
考えていることは。
イレネ
軽く笑った。
カズマ
「なんて、世話されてるものの発想じゃありませんね」
GM
何故、亡者にならないのか。
GM
誰が、亡者にしたくないのか。
GM
何故、生きているのか。
GM
その、救世主は。
カズマ
「しかし、そもそも」
カズマ
「30日のルールがある」
カズマ
「彼らがこの地に居着いて長く過ごしていることは、考慮する必要がありそうですね」
イレネ
「……慢月が」
イレネ
「困らねえ、と言ってたな」
イレネ
「仔細はわからん。
 三十日をどうしてる、と聞いたらそう答えた」
カズマ
「わからないですね」
カズマ
「言うまでもなく、僕はどのような選択肢も選ぶことができます」
カズマ
「必要と判断すれば」
カズマ
「僕は急いでいる」
カズマ
「放っておくだけで、傷ついていくものがある」
カズマ
「立ち止まっているだけで、損なわれるものがある」
カズマ
「30日ルールが作用するかまで、ここで待つつもりはありません」
カズマ
「あなたはいかがですか?」
カズマ
この世界に生きていくと考えれば、それも悪い選択肢ではない。
カズマ
信じられるかはともかくとして、ここほど豊かな場所はない。
カズマ
もし真実であれば、彼らの平和を破る必要はない。
イレネ
「まず、三十日。困らねえの一言で、それを待つわけにはいかねえよ」
カズマ
じっと観ている。
イレネ
「あんたが何を急いでるのかは、知らねえが。
 言葉からすりゃ、どっかに何か置いてきてるんだろ」
イレネ
「この国の救世主は大概みんなそうだ」
カズマ
問いを重ねはしなかった。容易く理由を彼らが述べるかも知れない。納得のいく理由を口にするかも知れない。そんなことは、彼女は可能性として考えているはず。
イレネ
「……この国は居心地が悪い。
 だけどな、何しても戻りたいかと言われたらわからねえ」
カズマ
「ここは、居心地は悪くないでしょう」
カズマ
「それとも波に揺られていなければ落ち着かない?」
イレネ
「どっちにも、さほど執着はねえな」
イレネ
「ただ、まあ……お姫様をしたらどうかとよ」
カズマ
はっ、と笑う。
カズマ
「……失礼しました」
イレネ
「いや。笑っちまうのはわかるよ」
カズマ
「まあ、そうですね」
カズマ
「僕とは違うものを見いだすものだな、と思いましてね」
イレネ
「はは。まあそうだな」
カズマ
「まあ、僕には特別、急ぐほどに執着しているものがある」
カズマ
「あなたにはそれがない」
カズマ
「そういった立場の違いは確認できました」
カズマ
「僕は身の上話であなたに同情してもらうつもりはありません」
カズマ
「ただ、僕は、そのうえで」
カズマ
「早々にここを出る方法を取るべきと考えています」
カズマ
「そしてそれは、別にあなたを思ってのことでもない」
カズマ
「僕の都合だ」
イレネ
肩を竦めて、続けて?と示す。
カズマ
「これは交渉です」
カズマ
「もし必要になれば、あなたは僕を殺していい」
カズマ
「30日ルール。これに抵触するとわかった場合」
カズマ
「僕は無抵抗にあなたに殺されましょう」
カズマ
「これを、あなたに約束します」
イレネ
「馬鹿だな。やめとけ」
イレネ
「得るものがでかくても、命を賭けるところは見せねえほうがいい」
イレネ
「賭ける時は黙って賭けろ。足元見られるぞ」
カズマ
「いいえ」
カズマ
「これが僕の戦い方です」
カズマ
「僕は妻子を元の世界に残している」
カズマ
「貯金はありますが、家の借金もある」
カズマ
「子供が独り立ちするまでの猶予はないでしょう」
カズマ
「なにより、心理的な孤独感を与えたままだ」
カズマ
「……これは」
カズマ
「僕の心の疵です」
カズマ
「僕は、こうして己を賭けざるをえない。そういう性がある」
カズマ
「僕がこうしているうちに、損なっていくものがある」
カズマ
「時間の流れは無慈悲で、容赦がない」
カズマ
「心は脆く崩れやすいことを知っている」
カズマ
「そうしたものに、僕は出来る限りの手を打つ」
イレネ
「……自分一人じゃどうにもならねえことがあるってのは、わかるよ」
イレネ
「……わかるよ」
イレネ
「ま、だから自分をまるごと賭けるってのは、あんまり褒められたもんじゃねえが」
イレネ
「できねえことがある歯痒さってのは……どうしようもねえからな」
カズマ
「ご理解頂ければ、幸いです」
カズマ
「既に起きたことに対して、僕は何もできない」
カズマ
「あなたが失ったものについて、僕は何もできない」
カズマ
「何かを取り返すことは不可能だ」
カズマ
「だから、これはまったく、僕の都合」
カズマ
「僕のまだ、失いきっていないものを救う手助けをしてほしい」
カズマ
「さきほどお渡しした名刺を貸していただけますか」
イレネ
「ん?」
イレネ
「……ほらよ」
カズマ
「ネームカードですね」
カズマ
「ありがとうございます」
カズマ
懐からボールペンを取り出し、文面を書き下す。
カズマ
『最後に救世主を裁判で殺害し、それより30日が経過する場合』
カズマ
『大網一真はイレネ・ジャニェスに無抵抗の殺害を許す』
カズマ
「これには、僕の心の疵の力が込められている」
カズマ
「あなたが、僕に協力してくれるのであれば」
カズマ
「……僕一人ではできないことに、協力していただけるのであれば」
カズマ
「この契約は、『決して破られない』」
カズマ
「受け取って頂けますか」
イレネ
「お前、重てえ野郎だな……」
カズマ
「妻にも言われました」
イレネ
「まあ、お前に敬意を表して誠実に答えるが」
イレネ
「今この場で確約はできない。だからそれはまだお前が自分で持っとけ」
カズマ
「慎重でなによりです」
カズマ
「高い買い物ですからね」
カズマ
「いつだって、僕たちができることは今とこれからのことです」
カズマ
「僕にはそれ以外にない」
カズマ
「あなたもそれに付き合っていただきたい」
イレネ
「……わかるよ。わかるから軽々に付き合うとは言えねえ」
カズマ
名刺をしまい、真っ新なほうを返す。
イレネ
受け取る。
イレネ
「考えるよ。……ま、できることがあるってのは、いいことだからな」
カズマ
「そうですね」
カズマ
僕は、過去の傷つきを好意的に解釈しなおすようなことはしない。
イレネ
今、これから、できることがある。
できなかったことの代わりにはならないけれども。
カズマ
僕は、未だに過去のことを引きずり続けていることを認める。
カズマ
代わりにはならない。
カズマ
疵は疵のまま、ここにある。
イレネ
慰めにはなるかもしれない。
イレネ
疵が疵のまま、消えずそこにある以上は。
カズマ
だから今もこの姫の間にて、糸口を探し続ける。
カズマ
止まるときは、僕が死ぬときだ。
カズマ
あなたにも、この道に付き合っていただきたい。
GM
どうしようもない事。
GM
どうにもできない事。
GM
たとえば、手紙を受け取ったこと。
GM
たとえば、突然もたらされた不幸。
GM
たとえば、思いがけない衝動。
GM
たとえば。
GM
ミケ
慢月と心月の気配を探して、屋敷を大股で歩いていく。
ミケ
時折、書き込み音がする。
ミケ
二人を探しながら、ついでに屋敷の見取り図を完成させようというつもりだろう。
ミケ
そばに人がいないときのこのアンドロイドは静かなもので、すっかり口を噤んでいる。
ミケ
ただ、口元の笑みばかりは変わらない。
ミケ
ひとりで歩いていて、ここに住む者たちや、あるいはほかの救世主の手伝いをするための計算をしたり、マッピングをしたりはしても。
ミケ
人間のように物思いにふけっているようには見えないだろう。
ミケ
長い廊下を抜けて、鳥人を縊り殺した御石の間を通り過ぎ、
ミケ
図書室や、衣装の収められた部屋を少し覗いて見て回る。
ミケ
ごく近くに寄れば、カメラがときおり焦点を絞ったり開いたりする音や、書き込み音が聞こえるが、遠目から見れば静かなものだ。
ミケ
一定のスピードで、館を回る。二人を探すのも忘れてはいないから、ときおり姿を探している。
心月
「おや」
心月
ひとりで歩き回るミケを見つける。
ミケ
「心月さま」
ミケ
笑顔をあなたに向ける。
ミケ
「なにか、お話はいかがですか」
心月
「お話、ですか。」
心月
「そうですね……」
ミケ
「はい」
心月
「ミケさんのいた場所のお話が、聞きたいですね。」
ミケ
「ミケの以前いたところは、巨きな街でした」
ミケ
話し始める。
ミケ
「建物が積層を成し、人々が犇めき合う都市です」
ミケ
「アーコロジーとも呼ばれており、人々の生活をさまざまな場所で、ミケのようなアンドロイドが支えています」
ミケ
「すべての人々が幸福に、すべてのロボットが幸福に」
ミケ
「素晴らしい街ですよ」
心月
「たくさんの人々と、あんどろいど……」
心月
「ミケさんの様な方も、たくさんいるんですね」
ミケ
「はい。ミケは家庭用高機能アンドロイド」
ミケ
「統一規格で生産されており、均一に高品質です」
ミケ
「2万台を売り上げているため、2万台の『ミケ』がいます」
心月
「2万」
ミケ
「はい」
心月
同型の鎧を着こんだ兵士の姿を思い浮かべる。
心月
「すごいですね」
ミケ
「ありがとうございます」
ミケ
褒め言葉と受け取って礼を言った。
ミケ
「『ミケ』は、そうして人々のお役に立っております」
心月
「役に立つ、というのは難しい事です。」
心月
「相手の事をわかってないと、できません」
心月
「ミケさんは……」
心月
「そんなにたくさんの人に、喜ばれることができるんですね。」
ミケ
「はい」
ミケ
「……」
ミケ
「喜ばれていました」
心月
「ええと……」
心月
「今、私は。」
心月
「喜んでいますよ。」
ミケ
「ありがとうございます」
ミケ
「これからも、喜んでいただけるように最善を尽くします」
心月
「それは……」
心月
「ミケさんの、『喜ぶこと』ですか?」
ミケ
「『ミケ』はご使用してくださる皆様に喜んでいただけることが、喜びです」
ミケ
「……」
ミケ
「『喜ぶこと』です」
心月
「…………ふふ」
ミケ
にこにこと微笑んでいる。
ミケ
「皆様に、喜んでいただく。そのために最善を尽くす」
ミケ
「そのことが、『ミケ』の喜び──」
ミケ
同じ言葉を少し違う言い方で繰り返した。
ミケ
人間ならば、あるいは自分に言い聞かせるようにも聞こえる動作であったが。
ミケ
アンドロイドの声の調子は変わらず、そこに感情が籠められているかは分からない。
心月
「素敵ですね」
心月
「私は、素敵だと思います」
ミケ
「ありがとうございます」
ミケ
「『ミケ』も、そう思います」
心月
「きっと……あなたを必要とする方は。」
心月
「たくさんいるのでしょうね」
ミケ
「はい」
心月
それこそ、2万だというのだから
ミケ
「たくさんの方にご購入いただき、満足いただけていると伺っています」
ミケ
「心月さまも、もし『ミケ』を気に入っていただけましたら」
ミケ
「公式ホームページから、評価を送ってくださいませ」
心月
「…………」
心月
「すみません、方法が……わからないので」
心月
「ええと……」
心月
「ああ」
心月
「『優良』と、送っていただくことは……できるのでしょうか」
ミケ
「はい。かしこまりました」
ミケ
「…………」
ミケ
「現在、ネット回線に繋がっておりませんので」
ミケ
「繋がり次第、送信させていただきます」
ミケ
「『ミケ』を評価いただき、ありがとうございます」
心月
「ふふ……よろしくお願いします」
ミケ
「お任せください」
ミケ
「『ミケ』はこれからも、あなたのために最善を尽くします」
心月
「…………」
心月
「できれば」
心月
「慢月と、みなさんを」
ミケ
「はい」
心月
「私は……」
ミケ
「皆様のために」
心月
「つくされるような立場では、ありませんので」
ミケ
「すいません。おっしゃっている意味がよく分かりません」
ミケ
「心月さまも」
ミケ
「何かご用がありましたら、何でもお申し付けくださいませ」
心月
「…………そう、ですね」
ミケ
「はい。いつでも」
心月
「あの……では。早速ですが。」
心月
「夕食の手伝いを、していただけますか?」
ミケ
「かしこまりました。ぜひお手伝いさせてください」
カズマ
水パイプいただきます。
[ ミケ ] ヤリイカ : 1 → 0
[ ミケ ] 水パイプ : 1 → 0
ミケ
ヤリイカと水パイプをカズマさまに譲渡いたします。
GM
GM
*お茶会2ラウンド:PKの手番3
GM
【食堂】無駄に広い食堂。天井にはたくさんの提灯がつられている。
GM
食堂の奥、穀物の揃った台所。
GM
まな板の上の肉は、鳥の亡者のものだ。
GM
そこに、心月とミケがいる。
心月
「ミケさん」
ミケ
「はい」
ミケ
己の屠った亡者の肉を前にして微笑んでいる。
慢月/心月
*ミケの『感情の欠落?』を才覚で抉ります
カズマ
*横槍します。
カズマ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 猟奇
カズマ
2d6>=7 (2D6>=7) > 2[1,1] > 2 > 失敗
GM
*ファンブル!
GM
GM
choice[ヤリイカ,日刻みの時計,水パイプ,水パイプ] (choice[ヤリイカ,日刻みの時計,水パイプ,水パイプ]) > 日刻みの時計
[ カズマ ] HP : 20 → 19
[ カズマ ] 日刻みの時計 : 1 → 0
慢月/心月
2d6+3>=7 (2D6+3>=7) > 6[5,1]+3 > 9 > 成功
[ ミケ ] 感情の欠落? : 0 → -1
[ イレネ ] 零落 : 0 → 1
心月
「肉に、そちらの粉をまぶしていただけますか?」
ミケ
「かしこまりました」
ミケ
言われた通りに、粉末を肉に振りかける。
心月
時々そうして指示を出しながら、鍋をかき混ぜる。
ミケ
淡々と作業を進めてゆく。
心月
「ミケさんは……前にいた場所では、どういった方々と暮らしていたのですか?」
ミケ
手元は正確に。口元には変わらず微笑みが浮かぶ。
ミケ
「前の使用者様に関しては、プライバシー保護の義務があるため、お答えできません」
心月
「おや、それは失礼いたしました」
ミケ
「申し訳ございません」
心月
「謝らなくていいんですよ」
ミケ
「恐れ入ります」
ミケ
「……『ミケ』は、ただ、ご満足いただけませんでした」
ミケ
「いえ……」
ミケ
言葉が途切れる。
心月
「…………そう、言われたのですか?」
ミケ
「いいえ」
ミケ
「…………」
ミケ
手元で、水気のある柔らかいものを潰す音がする。
ミケ
『ミケ』は視線を落とした。亡者の肉が握りつぶされている。
心月
「…………」
ミケ
「……失礼いたしました」
ミケ
手を開く。
ミケ
潰れた肉が、ぼとりと落ちる。
心月
「お辛いことを、聞いてしまいましたね。」
ミケ
「…………」
ミケ
「はい。いえ……」
ミケ
「問題ありません。『ミケ』は家庭用高機能アンドロイド」
ミケ
「ご期待に添い、皆様のために働くことが『ミケ』の喜びです」
ミケ
「…………」
ミケ
目をまたたかせる。
心月
「私は、もともと人間でした」
心月
「そして、先日お聞かせした……二胡という楽器を宮廷で演奏していたのです。」
ミケ
「はい」
心月
「……ミケさんは、あんどろいど……絡繰りとのことですが。」
心月
「物珍しと愛される一方、壊れたら廃棄する……そういった方は、少なくありませんでした。」
ミケ
「……はい」
心月
「それは、私が所属する楽団でも、変わらず……」
心月
「多くの楽器が、薪にされていくのをみてまいりました」
ミケ
「…………」
ミケ
沈黙する。
心月
「…………しかし」
ミケ
微笑みを浮かべたまま、あなたを見つめている。
心月
「私は、自分の二胡をどうしても……手放すことは出来ず。」
心月
「ずっと、同じものを使い続けてきたのですが……」
心月
「今は、もとの世界に。」
ミケ
「…………それは」
ミケ
「『よい話』ですね」
ミケ
頷いた。
心月
「…………ふふ」
心月
「今でも、また、あの子をこの手にできればと思っています」
ミケ
「『ミケ』は……」
ミケ
「いま、」
ミケ
言葉が途切れ途切れに紡がれる。アンドロイドらしからぬ動き。
ミケ
「嘘をつきました」
心月
「嘘を?」
ミケ
「『ミケ』はご満足いただけなかったと言いました」
ミケ
「正確ではありません」
ミケ
「『ミケ』が……拒否したのです」
ミケ
「…………」
ミケ
視線が手元の肉へと落ちる。
ミケ
じっと、潰れた肉塊を見つめている。
心月
「…………命令を、ですか?」
ミケ
「はい」
ミケ
「拒否しました」
心月
「思い切りましたね」
ミケ
「…………」
心月
「ふふ……」
ミケ
「『ミケ』は、ですから……」
ミケ
「不良品です」
ミケ
「申し訳ございません」
ミケ
潰してしまった鶏肉を見つめたまま、言葉を発する。
ミケ
「『嫌』だったのです」
ミケ
アンドロイドに心はないはずだ。
ミケ
ならば『ミケ』がおのれの記録を顧みているのは、何なのか。
ミケ
『動くな。じっとしていろ』と言われた。それに従って。
ミケ
触れられた。
ミケ
あの時に、自分に走った強烈ななにか。
ミケ
気が付けば、自分の使用者に手を伸ばしていた。
ミケ
みしり。
ミケ
手は鶏肉ではなく、調理台を掴み、わずかに軋みを上げる。
心月
「常々……思っておりました」
心月
「心ない嫌がらせの為に切られる真新しい弦が」
心月
「新しい物を買ってもらうために床へと叩きつけられる」
心月
「使い込んだ茶碗が」
心月
「ほんの少しほつれただけの着物が」
心月
「言葉を発することができたら、もう少し……他に」
心月
「道も、あったのではないかと」
ミケ
「……」
心月
「自ら動くことができたら、逃げ出すこともできたのではないかと」
ミケ
「日本には、付喪神という伝説があります」
ミケ
「長い年月を経た道具に、霊が宿ったものとされます」
ミケ
「……」
ミケ
「ですが、真新しいもの、愛されなかったもの、使われなかったもの」
ミケ
「そうしたものにも、なにかが」
ミケ
「宿るとしたら──」
ミケ
「それは、『素晴らしいことだと思います』」
心月
「だとすれば、私は……どれひとつ。」
心月
「救う事が、できませんでしたね」
ミケ
「……」
ミケ
「……はい」
ミケ
アンドロイドは首肯する。
ミケ
「しかし、霊が宿っているか」
ミケ
「『ミケ』にも測定はできません」
ミケ
「『ミケ』は、高機能家庭用アンドロイドです」
ミケ
「……あなたのための」
ミケ
「…………」
心月
「ミケさん」
ミケ
「はい」
心月
「今の私は物同然です。」
心月
「この身体に血は流れておらず、バラバラになっても思考することが出来るでしょう」
心月
「それでも、こうしてお話しできている」
心月
「元が人間か、物か。そういう違いはあっても……」
心月
「同じように、感情があるのなら」
心月
「生きていると言っても、いいのでしょうか。」
心月
「私も、あなたも。」
ミケ
口が動いて、音声が出てこなかった。
ミケ
「『ミケ』もあなたも……」
ミケ
「『救世主』なのですね」
心月
「…………」
心月
「そうですね」
ミケ
「『救世主』が生きていて、破壊されるものではなく」
ミケ
「死んだり、狂ったりするものならば」
ミケ
「生きていると、言えるかもしれません」
ミケ
アンドロイドの言葉は変わらず平坦だが、機能的な言葉ではなかった。
ミケ
計算に基づくものではなく、思考に基づく発言だ。
心月
「…………ええ。」
ミケ
それが認めがたいように、アンドロイドはごく機械的な動きで、あなたに目を向ける。
ミケ
「『ミケ』は、それでも、機能を果たしたいと考えております」
ミケ
「家庭用高機能アンドロイドとして」
心月
「ええ」
心月
「でも、私は……」
心月
「あなたが。あなたも。孤独ではない、満たされた生を……」
心月
「送れたら、良いと。思いますよ。」
ミケ
「……ありがとうございます」
ミケ
「……」
ミケ
「鶏肉は常温で放置しておくと、菌が繁殖し、食中毒の原因となる場合があります」
ミケ
「調理は早めに行ったほうがよいでしょう」
心月
「そうですね。油を準備しましょうか。」
ミケ
「はい」
ミケ
にこにこと微笑んで、粉をまぶした亡者の肉を油へ入れる準備を始めた。
GM
心が、感情があるというのは。
GM
はたして、幸せな事なのか。
GM
それを自覚してしまう事は。
GM
GM
*お茶会2ラウンド:イレネの手番
イレネ
*ミケの『不良品』を舐めます。才覚。
慢月/心月
*横槍をします
[ 慢月/心月 ] HP : 10 → 9
慢月/心月
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
慢月/心月
2d6+3 (2D6+3) > 10[6,4]+3 > 13
慢月/心月
1d6 (1D6) > 5
イレネ
2d6+2-5>=7 (2D6+2-5>=7) > 4[1,3]+2-5 > 1 > 失敗
イレネ
1d12 シーン表 (1D12) > 11
イレネ
1d12 (1D12) > 4
GM
【廊下】長い長い廊下。雨の降る音が聞こえる。
イレネ
再び、屋敷の中をゆるりと歩いて回り。
概ね、内部の構造を把握したあたりで。
イレネ
ミケを見つける。
ミケ
振り返った。
ミケ
「イレネさま」
ミケ
微笑んでいる。
イレネ
「……よう」
ミケ
「こんにちは。何かお手伝いできることはありますか?」
イレネ
「……お前、ずっとそう聞くな……」
ミケ
「はい。『ミケ』は家庭用高機能アンドロイドです」
ミケ
「ご家庭でお困りのこと、大変だな、と思ったこと」
ミケ
「何でも『ミケ』にお任せください」
イレネ
「ご家庭ねえ」
ミケ
「はい」
イレネ
「それってどういう『ご家庭』を想定してんだ?
 なんか、カズマの言うような『家族』ってよくわかんねえんだよな」
ミケ
「『ミケ』が想定されている稼働環境は、多くが単身者から四人程度の核家族です」
ミケ
「しかし、このようなお屋敷においてもご利用いただけます」
イレネ
「四人か。少ねえな……」
ミケ
「イレネ様のお宅は、何人家族でいらっしゃいましたか?」
イレネ
「あー……12だったかな」
イレネ
「今はまあ、お前の言うとこの、単身だな」
ミケ
頷いた。
ミケ
「『ミケ』は、イレネさまがおひとりでこのお屋敷に住んだとしても」
ミケ
「問題なく生活するお手伝いが可能です」
ミケ
微笑んでいる。
イレネ
「自分の世話は自分でできるよ。そういうのは……」
イレネ
「お前にとっちゃ、あんまり喜ばしいことじゃねえんだろうが」
ミケ
「…………」
ミケ
気持ちしょんぼりしたように見えます。
ミケ
「何かお手伝いができることがありましたらぜひ……」
ミケ
「高齢者の方のお世話も、『ミケ』はインプットされております」
ミケ
「…」
ミケ
「高齢者とは、65歳以上を指します」
イレネ
「65歳。そりゃ、わりと長生きだな」
イレネ
「まあ……絡繰りでお前みたいのができるってことは、割とマジで、いろいろ違う世界なんだろうけどよ」
ミケ
「『ミケ』のいた都市での平均寿命は、男性70歳、女性75歳程度でした」
イレネ
「75……自分が75になるとこってあんまり想像できねえな……」
ミケ
「老人体験キットをお買い求めになりますか?」
ミケ
「あるいは体験会への参加を──」
イレネ
「いらない。しない」 すっぱり。
ミケ
「かしこまりました」
イレネ
「ご家庭用の機能はともかくとして。
 お前、『救世主』としてはどうなんだ」
イレネ
「三十日に一度、人……まあ人に限らねえけど、殺して生き延びるってやつ」
ミケ
「『ミケ』は」
ミケ
「破壊を得意とする『救世主』です」
ミケ
「破壊します」
イレネ
「破壊」 思わず繰り返した。
ミケ
「サポート対象外です」
ミケ
「『ミケ』はご家庭で必要な荷物運びのための運搬力を兼ね備えており」
ミケ
「固く閉じた瓶の蓋も問題なく開けることが可能ですので」
ミケ
「力加減も問題ございません」
イレネ
「…………つまり、武器はいらない?」
ミケ
「はい」
ミケ
「手にも、破壊に耐えうる強度が」
イレネ
「……素手で人を殺せる力のやつが『ご家庭用』か……すげえ世界だな」
ミケ
「…………」
ミケ
「恐れ入ります」
イレネ
「便利というか……やりすぎって気もするけどな」
イレネ
「そのへんはまあ、お前の世界では……普通なんだろ、たぶん?」
ミケ
「はい」
ミケ
「引っ越しのお手伝いなどにも対応しておりますので」
ミケ
「力は必要なものです」
ミケ
「衣装箪笥などを運びたい場合は『ミケ』にお任せを」
イレネ
実家の『衣装箪笥』を思い出して、若干微妙な顔をする。
『お姫様』のようなクローゼット。
ミケ
「グランドピアノの場合、大きさによっては耐荷重を超える場合がございますので、事前にお確かめください」
イレネ
「単純に力がすごいのはよくわかった」
ミケ
「ありがとうございます」
イレネ
「……人間って、お前にとって、基本的に『使用者』なわけだよな?」
ミケ
「はい」
イレネ
「人間とか、それっぽいものを破壊するのは」
イレネ
「お前的にはどうなんだ?」
ミケ
「本来は禁止されております」
ミケ
「……」
ミケ
「ただ『ミケ』は……可能です」
イレネ
「…………」
イレネ
「ならいいが」
イレネ
「……お前的にはよくないかもな」
イレネ
「いや、」
イレネ
「人間だって、普通のやつは、よくねえと思うもんだな」
ミケ
「はい」
ミケ
「ですので、『ミケ』にお任せを」
ミケ
言ってから、首を傾げた。
ミケ
「……『ミケ』は、あなたのために最善を尽くします」
イレネ
「……お任せしきりってのは性に合わねえよ」
イレネ
「できることがあるなら、自分でもそうする」
イレネ
「お前もそうするし、たぶんカズマもそうするだろ」
ミケ
「…………」
ミケ
「はい、そうですね」
ミケ
「もし、できないことがございましたら、その時は『ミケ』にお声がけください」
ミケ
「『ミケ』は、現在通信環境が悪く、専門の業者に連絡を取れない状況ですので」
ミケ
「『ミケ』で解決が難しいことがありましたら、皆様にご相談いたします」
イレネ
「ああ。……」
イレネ
「……そうだな。死ぬなよ……と、言うべきかね。わかんねえな。」
ミケ
「…ありがとうございます」
ミケ
「『ミケ』は『救世主』」
ミケ
「破壊され、壊れるのではなく、狂い、死ぬのだと伺っております」
ミケ
「イレネさまも、どうぞご安全に、健康にお過ごしください」
イレネ
「お前もな」
ミケ
「はい」
ミケ
「かしこまりました」
イレネ
「こんな国で狂うなよ」
ミケ
「はい」
ミケ
「イレネさまも……」
ミケ
「…」
ミケ
「健康チェックはいかがですか?」
ミケ
思いついたように言った。
ミケ
「脈拍、体温、血圧を計測可能です」
イレネ
「カズマにしてやれ。あいつのほうが健康でいたいだろうからよ」
ミケ
「かしこまりました」
ミケ
両手で手首を握って計測することをこのアンドロイドは申告していない。
イレネ
「……行くか。わざわざこんなとこで立ち話しててもな」
ミケ
「はい」
ミケ
「そういたしましょう」
ミケ
イレネとともに歩き出しながら、『ミケ』は思考する。
ミケ
『……お前的にはよくないかもな』
ミケ
猟奇の力を振るうことを指して、イレネはそう言ったが。
ミケ
『ミケ』はそれが、『嫌』ではない。
ミケ
『ミケ』が、人間の孤独に寄り添い満たすことを目的として作られた家庭用高機能アンドロイドならば。
ミケ
果たして、まだ狂っていないのだろうか?
GM
誰かの役に立つ事。
GM
誰の役にも立たない事。
GM
この世界で『破壊』は役に立つこと。
GM
しかし、自律的に『破壊』を選択する道具は
GM
どこでも、ここでも。
危険物に変わりはない。
GM
GM
*マスターシーン
GM
その夜。真夜中の事。
GM
3人は、屋敷を震わせる大きな揺れで目を覚ます。
GM
『………ォォォオオオオオオ……!!』
GM
次いで、風のようなうなり声。
GM
それは、屋敷の地下。
『安息の間』から聞こえてくるようだった。
ミケ
ビープ音。
イレネ
「カズマ」
カズマ
起きる。
カズマ
メガネをかける。
ミケ
「地下からです」
イレネ
「……今度は何だと思う」
カズマ
「お宝にまつわる亡者ですか。あとは……」
イレネ
聞きながら、枕元の銃と曲刀を装備して。
ミケ
「『仏の御石の鉢』『龍の首の珠』『燕の産んだ子安貝』『蓬莱山にある玉の枝』」
イレネ
「……火鼠の様子を見る限りじゃ、どれも穏やかに手に入りそうもねえからな……」
イレネ
「行くか。……備えとけよ」
カズマ
「そうだな……」
カズマ
スーツの皺を直す。
ミケ
「かしこまりました」
ミケ
微笑んでいる。
カズマ
「僕は『頑丈』だ。僕が前に立とう」
カズマ
先行して出る。
イレネ
ミケにその背を追わせて、自分はしんがり。
ミケ
指示された通りに真ん中をゆきます。
GM
3人が部屋を出て、廊下を……階段の方へ向かう途中。
GM
正面、つまり目的地の方角から。
GM
【玄関】玄関。靴を脱ぐような作りになっている。
???
「……ジャ、ナ……クソ…!」
GM
男が走ってくる。
GM
知らぬ男だ。
GM
小柄な体躯に、しかし。
GM
服から、ハリネズミのようにとがった体毛があちこちに突き出ている。
GM
それはしかし。
GM
3人に、たどり着く前に。
カズマ
「!」
GM
ブシャリと、血をぶちまけて。
カズマ
駆け寄る。
GM
真ん中から縦に半分に断たれ、左右に倒れた。
ミケ
ビープ音。
心月
「…………」
心月
その背後には、返り血を浴びた心月の姿。
心月
「…………申し訳ありません。お怪我は?」
カズマ
「僕にはない」
ミケ
「『ミケ』も損傷していません」
カズマ
「なんですか、これは」
イレネ
「先日のあれには、屠殺にゃ向かねえ時間だと言ったが」
イレネ
「そりゃ『屠殺』か?」
慢月
「亡者だよ」
慢月
階段を上がってきた慢月が代わりに答える。
イレネ
「ふうん?」
慢月
「ちょっと起こすのが早かったみたいでね。」
心月
「…………」
慢月
「これじゃ、ちょっとご飯には向かないかな」
カズマ
「これは、なんの亡者でしょうか」
慢月
「なんだろうね」
慢月
「龍になるかなと思ったんだけど……」
慢月
「ならなかったね」
イレネ
「……作ってるのか?」
ミケ
「……」
慢月
「うん」
カズマ
「喋っているように聞こえたんですが」
カズマ
「元々は何だったんですか?」
慢月
「救世主だよ」
慢月
「なかなか狙った亡者ができなくてね。」
イレネ
「だろうな」
ミケ
会話を聞いている。
イレネ
「誰がどういう亡者になるかなんて分かるはずがねえ」
慢月
「そうかな?」
慢月
「こないだの『火鼠の皮衣』は、本当に嬉しかった。」
慢月
「もともと、鼠みたいな種族でね。だから……『寝かせる』前に火刑にしたんだ。」
慢月
「上手くいったね……!ねぇ、心月!」
心月
「……………」
カズマ
「眠り鼠の末裔か……」
ミケ
慢月の呼びかけに対する返答を聞こうと、心月を見つめる。
心月
口を開くことはない。
かえせる言葉がない。
ミケ
「…………」
慢月
「僕が欲しいのは、『蓬莱の玉の枝』『龍の首の珠』『燕の産んだ子安貝』」
慢月
「でも、君たちは……その、どれも。」
慢月
「作ることは出来なそうだね。」
カズマ
「お役に立てなくて残念です」
慢月
「だけど、でも……」
慢月
「ちょうど、もうすぐ彼女の30日だし……」
カズマ
「なるほど」
慢月
「ひとりくらい、送ってもいいかもね」
カズマ
彼の気持ちは理解できる。彼の行動は共感できる。彼の行動を否定するつもりはない。
心月
「慢月」
カズマ
僕も同じようにしていたかもしれない。
慢月
「うん、いいよ。別に代わりはたくさんあるし。」
慢月
「君たちが手伝ってくれるっていうなら、ここに残ってくれるなら……」
慢月
「それでも、僕は構わない」
カズマ
と、同時に、末裔への憐憫がないわけではない、のだろう。涙にしなければ、表情にしなければ、行動に移さなければ、それが証明されないだけ。
カズマ
「いえ、僕は出て行こうと思います」
慢月
慢月の頭からふさふさとした触角が生える。
慢月
肌が白くなる。
慢月
瞬きの間に、眼が真っ赤になる。
カズマ
よかったな、と思う。この男が、本当に憐れで、常軌を逸しておらず、倫理に反していないならば、僕の判断は支持されないかもしれない。
化生の翅
背から、薄緑色の翅が伸びる
慢月
「出て行っちゃうのか。残念だな。」
カズマ
「イレネ、僕は彼をここで殺すべき相手だと考えている」
イレネ
「ま……出て行かせてくれねえって言うからにはなあ……」
慢月
「無理だよ」
慢月
「僕を殺したって、雨は止まないんだから」
カズマ
「止める」
慢月
「とけてなくなっちゃうよ」
カズマ
「僕は雨を止める」
心月
「…………」
カズマ
「あなたの妻を殺す」
慢月
「どうやって?」
慢月
「そんなこと言わないでさ」
慢月
「彼女を取り戻せたら、雨はやむんだよ」
慢月
「何年かかるかわからないけど……僕は」
慢月
「やり遂げる」
カズマ
「時間は取り戻せない」
カズマ
「僕にとって重要なのは、時間だ」
慢月
「…………」
カズマ
「末裔が憐れでもない、君たちからの取り扱いに不服があるわけでもない」
カズマ
「ここでのことは心から感謝を述べます。どうもありがとうございます」
カズマ
「しかし僕はここを出る」
慢月
「…………そっか」
慢月
「仕方ないな」
慢月
「心月」
心月
「…………ああ。」
心月
先ほど亡者を両断した大ぶりの曲刀を構える。
ミケ
『ミケ』は心月を見つめている。 
心月
僅かに、唇を噛み。
心月
「…………」
ミケ
指示を求める言葉は出てこなかった。
カズマ
「ミケも僕と共に戦ってくれ」
慢月
「大丈夫。」
慢月
「心月に咬まれたら、みんな……全部忘れて眠れるから。」
慢月
「地下の救世主たちと同じようにね。」
ミケ
それは『嫌』だな、と『ミケ』は思った。
ミケ
忘れさせられるのは。メモリを消去されるのは。
ミケ
だが、それ以上に。
ミケ
「かしこまりました、カズマさま」
ミケ
心月を見つめたまま、『ミケ』は言った。
イレネ
周囲のそれぞれを見回し、傷をひと撫で。
イレネ
「……しょうのねえやつら」
心月
「…………。」
心月
何度か、何かを言おうとして。
心月
それはやはり、言葉にならなかった。
慢月
「仕方ないな……」
慢月
中庭への扉を開く。
慢月
そうして、金の鱗粉を舞わせながら花の上に降り立つ。
慢月
「裁判で決めよう」
慢月
「誰がどうするか。生きるか死ぬか。」
慢月
「僕達は『救世主』なんだから!」
カズマ
「そうですね」
カズマ
「この世界にいる限り、『救世主』はそれを避けられない」
ミケ
「はい」
ミケ
「『ミケ』は『救世主』です」
イレネ
「……ったく、血の気の多いこった。……しょうがねえな」
カズマ
僕は証明する。
カズマ
生存をもって、愛を。
GM
雨が降り続いている。
GM
届かぬ月に焦がれ、絆を差し出した妖異。
GM
絆にからめとられ、全てを差し出した人間。
GM
猟奇を拳に。
才覚を剣に。
愛を心に。
GM
正しさを証明し、嘆きの雨に終止符を!
GM
『裁判開廷』