慢月/心月
*カズマの疵『降り止まぬ雨』を才覚で抉ります
イレネ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
イレネ
2d6>=7 (2D6>=7) > 3[2,1] > 3 > 失敗
慢月/心月
2d6+3>=7 (2D6+3>=7) > 8[2,6]+3 > 11 > 成功
[ カズマ ] 降り止まぬ雨 : 0 → -1
[ イレネ ] HP : 16 → 15
GM
【子安貝の間】客室。3人が貸し与えられている。
ミケ
立ったまま、アンドロイドが淡々と物語を紡いでいる。
ミケ
「『石造皇子には仏の御石の鉢、車持皇子には蓬莱山にある玉の枝』」
ミケ
「……『右大臣阿倍御主人には火鼠の裘、大納言大伴御行には龍の首の珠』」
カズマ
「これらの宝物が、あなたがたにとって、どういう意味を持つのか……」
カズマ
「聞かせて頂けるなら、是非伺いたいですが」
心月
「峠を徘徊する竹の亡者は、昔。そのような名前の救世主だったと聞いています。」
心月
「堕落の国において、物語と深いかかわりのある救世主は少なくありません。」
心月
「実際、我々もそのような方々にお会いしたこともあります」
カズマ
まだそこまでこの世界のことに詳しくはない。ただ、不思議の国のアリスの世界だったとは知っている。
カズマ
「では、その亡者に無理難題でもふっかけられたと?」
心月
「…………正しくは、そう『考えている』と言ったところですね。」
心月
「亡者に囚われている女性は『神楽耶(かぐや)』」
心月
「あの亡者はそれまでも末裔や救世主を捕えてきたそうです」
ミケ
話は帝が姫を所望し、姫がそれを断るくだりへ入っている。
心月
「囚われた者は餓死するか、発狂して同じく亡者になり滅びるか」
心月
「この峠を通る者はみなそれを避けて通ったそうです」
心月
「我々は知らず踏み込み、神楽耶は囚われてしまった」
心月
「『かぐや姫』の物語。5つの連なる頭。殺すのではなく捕えるという習性に、雨……耳鳴りのような悲鳴。」
心月
「救世主だった頃の彼女についても調べました」
カズマ
「宝物を揃えて求婚し、その物語を破るということですか」
イレネ
「……あいつ、どのくらいここでそうしてるんだ?」
イレネ
「あと三つと言ってたな。二つ得るのにどれくらい掛かった」
ミケ
かぐや姫は、不死の薬を残して月へと還っていく。
ミケ
物語の中で、帝は不死の薬を受け取らず、天に一番近い山でそれを焚かす。
ミケ
不死の山と呼ばれるようになったこの山からは、今でも煙が立ち上ることがあるという……ところで、話が結ばれる。
心月
「向こうでの私の職は二胡奏者……慢月は、それを聴きに来る変わった化生でした」
心月
「共に家族のいなかった我々は互いを兄弟とする契りを交わしました」
心月
「神楽耶は、慢月の求婚を受ける際に条件をつけました」
カズマ
僕の言っていること、考えていることは、矛盾している。
心月
「あなたは……あなたなら、どうしたでしょうか」
カズマ
あの男の振り下ろした瓶を僕が受け止めていたなら。
カズマ
「あなたのような献身があれば、あるいは今も生きていたかもしれない」
カズマ
双葉の盾になれなかった僕に存在の意味があるのか?
カズマ
それを証明して、あなたは今こうしてここに立っている。
心月
「あなたのせいで亡くなったと……そういう風に、聞こえました」
カズマ
「少なくとも、僕にしか、アイツを助けることはできなかった」
GM
その音は、あの日の光景を嫌でも思い起こさせる
カズマ
あのときと変わらず、何時止むとも知れない雨。
心月
「妹さんは、喜んでくれるのではないでしょうか」
GM
一方的な暴力に耐えうる生命力も、精神力も持たず
心月
「あなたの手では救えなかったなら、それは誰の手でもきっと救えなかったのでしょう」
カズマ
「あの子を殺した父も、同じように愛していると言っていた」
カズマ
「だから僕は、行動でそれを果たせなければ」
心月
「家族とは共にいるもの、そうあれなかったことを……悔いておられるのですね」
カズマ
「何を尽くしても妻を取り戻そうとするその気持ちが」
カズマ
同じ立場だったら、きっとそうしていただろう。
カズマ
消えることのない後悔として、心に降り続けるばかりだ。
心月
「しかし……あまり、認められないなどと言わないで上げてください。」
心月
「彼女を殺した父親の、暴力的な愛しか向けられない妹さんは」
カズマ
父も自分も、すべて、まだ許せないでいるだけだ。
GM
もしも死者に言葉があったなら、彼女は何と言っただろう。
GM
彼女の笑う姿を何度見て、泣きわめく姿を何度見ただろう
カズマ
想い出の何もかもが、重たく降りしきる雨に溶け込んでいる。
GM
雨の湿った空気の中に、ふと、酒の香が漂ったような気がした。
慢月
色とりどりの衣装。
しかしそのほとんどは女物だ。
慢月
慢月は床に膝をつき、香を焚き込めた着物を抱きしめている。
ミケ
*カズマさんの『証明者』を、猟奇で舐めます。
[ 慢月/心月 ] HP : 12 → 11
慢月/心月
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
慢月/心月
2d6 (2D6) > 7[6,1] > 7
ミケ
2d6+3-6=>7 判定(+猟奇) (2D6+3-6>=7) > 8[3,5]+3-6 > 5 > 失敗
GM
2:【中庭】屋根のある中庭。彼岸花が一面に植えられている。
ミケ
「天気予報チャンネルにお繋ぎいたしますか?……」
ミケ
「申し訳ありません、電波の状況が悪いようです」
カズマ
家では、そういうのは『お父さん』の仕事だったな。
ミケ
「人体に有害な雨です、屋内から出ずに、安全にお過ごしください」
カズマ
「花言葉には詳しくないね。教えてくれるかい」
カズマ
目を引く花だ。一輪で咲いていても、群生していても。
ミケ
「土手、畦道、線路の傍、墓地などに自生しているとされます」
カズマ
「詳しいね。データベースにアクセスしてなくても、記憶していたのか」
ミケ
「ミケにはほかにも、さまざまな辞典が搭載されています」
ミケ
「気になる植物を見つけたら、ミケ、これはなに? とお声がけください」
ミケ
「ありがとうございます。あなたのお役に立てるよう、ミケは最善を尽くします」
ミケ
褒められて気を良くしたのか、中庭を見回しながら、彼岸花に関するデータを披露している。
カズマ
その様子を見て、なんとなく子供を思い出した。
カズマ
覚えたり知ったことを、何でも教えたがる子供。
ミケ
何か手伝えることはないかと、あなたの周りをうろうろする。
ミケ
期待に満ちているようにも見えるまなざしがあなたに向いている。
カズマ
「ミケ、大丈夫だ。十分お前は役立っている」
ミケ
目をまたたかせる。アンドロイドには、およそ不要な仕草。人間らしさを付け足すための動きだ。
カズマ
機械、道具には、役目を果すという目的がある。
ミケ
「あなたのための、孤独ではない満たされた人生を保障します」
カズマ
それが証明されている状態とは、どのような状態だろうか。
ミケ
それを主張することこそが製品としての瑕疵とも思える。
カズマ
「ああ、ありがとう。こうして暇を潰せるだけでも、ありがたいよ」
カズマ
目の前のロボットが人型で、ショッキングなことを、一呼吸の沈黙ののちに述べたのだ。
カズマ
それで感情移入している自分を自覚している。
カズマ
「それじゃあ、この世界にきてからは、どうだ?」
ミケ
「ミケは『救世主』というものになったのだと、インプットを受けました」
ミケ
「……しかし、『救世主』としての機能もございます」
ミケ
「ネズミ退治には専門の業者をお呼びください」
ミケ
「ミケはあなたのための、孤独ではない満たされた人生を保障します」
ミケ
そちらがあくまで本分であるとばかりに、いつもの文句を繰り返す。
ミケ
ただしあなたが言葉は容易く、証明にはならないという心の疵を持つなら、
ミケ
この言葉が意味を持つのは、あなたのために本当にこのアンドロイドが働き続けた先にあるだろう。
カズマ
今カズマにとって、ミケに期待するものはそれだけ。
カズマ
6ペンスコインで動き、心の疵を振るうというのなら。
カズマ
孤独ではない満たされた人生は、この世界にはない。
カズマ
俺もまた妻と子を安心させることはできない。
ミケ
アンドロイドの言葉も存在も、あなたの孤独を埋めず、あなたを満たしはしない。
ミケ
雨降りしきる中、変わらずにこにこと微笑んでいた。
ミケ
「かぐや姫以外の、ほかの昔話はいかがですか?」
ミケ
アンドロイドはそうして、ライブラリにある物語をあなたに語って聞かせるだろう。
カズマ
そうして無為に過ごす時間は、他ならぬ己の無力さの証明。
GM
しょう‐めい【証明】
ある物事や判断の真偽を、証拠を挙げて明らかにすること。
数学および論理学で、真であると認められているいくつかの命題(公理)から、ある命題が正しいことを論理的に導くこと。論証。
GM
choice[イレネ,ミケ] (choice[イレネ,ミケ]) > イレネ
[ カズマ ] HP : 21 → 20
カズマ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 猟奇
カズマ
2d6>=7 (2D6>=7) > 12[6,6] > 12 > 成功
[ カズマ ] ティーセット : 0 → 1
[ カズマ ] ヤリイカ : 1 → 0
慢月/心月
2d6+3+2-5>=7 (2D6+3+2-5>=7) > 10[6,4]+3+2-5 > 10 > 成功
[ イレネ ] 選良(カズマ) : 1 → 0
慢月
【食堂】無駄に広い食堂。天井にはたくさんの提灯がつられている。
GM
大きなテーブルの上に、籠。
その中には鳥の羽。
慢月
さて、とテーブルの上の準備を終えたところで廊下にイレネの姿を見つける。
慢月
「よかったら、少し話し相手になってほしいんだ。あれを……」
慢月
「よりわけるんだけど、ちょっと退屈だからね。」
イレネ
「手は空いてる。時間もある。
それでもって、仕事があるってのはいいことだ」
慢月
機嫌よく笑うと、テーブルの
羽の置かれている近くの椅子を引く
イレネ
引かれた椅子に腰掛ける。
そうしたふとした瞬間の所作に、育ちの良さが滲んでいる。
慢月
「うん。これはね……あとで飾りにしたりするんだ。」
イレネ
「はあん。黒だけ選るのはなんでだ?好きなの?」
イレネ
こちらの手付きは速い。そのくせ、血糊の一滴も見逃さない。
慢月
「すごく慣れてるみたいだけど、こういう事をしてたの?」
イレネ
「まあ……そうだな。……そうかな。なんでもやるからな」
イレネ
「軍人の真似事、海賊の真似事、商人の真似事」
慢月
いつもつけている手袋を外す。
人とほとんど変わらない手の爪は少し尖り、指先には細かい毛が生えている。
慢月
「優雅であれ、とか。そういうのかな。僕の知ってるのだと、裁縫とか……」
慢月
「でも、綺麗にして座ってるのが一番の仕事って感じ。」
イレネ
「そうだな。綺麗にして、しとやかで……ボロを出さねえってのが一番大事」
慢月
「ちょっと古い傷だね。治すの……できないの?」
イレネ
「さあ……うちの世界じゃ無理だったかな。ここじゃどうだかは知らねえけど」
慢月
「こうしてみると、確かに綺麗かも。目も髪も。」
イレネ
『どうして軍学校になんて』
『あなたは家のために、良い結婚を』
イレネ
『お前みてえなのが役に立つかよ』
『イイトコ出の女のくせに』
イレネ
『貴女のようなお若い方がね』
『目利きも信用できるかどうか』
イレネ
だからといって、それで認められるわけでもない。
慢月
「ちょっと新しくて、でも、一番得意な事ができても、いいんじゃない?」
慢月
「いろんな服を着て、此処にいてくれたら……」
イレネ
実際、それは拒絶ではない。
それはむしろ。淑女のしとやかさが、そう求める仕草。
イレネ
羽を選り分ける手も、先程よりもゆっくりと。
イレネ
自分の望みが、必ずしも、誰かに求められるものではないこと。
イレネ
何もしないこと。そこにあることだけを求められて。
イレネ
口調はもとに戻る。
ただ、羽を選る手付きは、ゆっくりとしたまま。
GM
亡者の羽根は、大きな籠から小さな籠へとよりわけられていく。
GM
全てがそろっていることが、必ずしも美しいとは限らない。
GM
なんでもできることが、必ずしも良いことだと思われないように。
カズマ
*イレネ・ジャニェスの『零落』を舐めます。ティーセットもつかうぞ。
[ 慢月/心月 ] HP : 11 → 10
慢月/心月
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 愛
慢月/心月
2d6>=7 (2D6>=7) > 4[2,2] > 4 > 失敗
カズマ
2d6+3+2>=7 (2D6+3+2>=7) > 6[2,4]+3+2 > 11 > 成功
[ カズマ ] ティーセット : 1 → 0
カズマ
まずはクエスト『神楽耶の吸血姫』②をやります。
GM
【姫の間】煌びやかで豪奢な祭壇に女の髪がひと房祀られている。
カズマ
ミケにはふたりとおしゃべりしていてくれ、と命じた。
GM
地下の空気は少し冷たく、以前訪れた時と変わらぬまま。
イレネ
「そういう浪漫のあるやつは、うちの船にはいねえな」 笑う。
カズマ
「僕の世界では海賊の出てくる読みものが流行っていましたよ」
GM
少しだけ、香る。
着物にこめられたのと同じもの。
GM
羽根をよりわけていた時間。
イレネはいくつか聞いただろう。
カズマ
それこそ読み物のなかでしかみたことのないもの。
カズマ
「なんて、世話されてるものの発想じゃありませんね」
カズマ
「彼らがこの地に居着いて長く過ごしていることは、考慮する必要がありそうですね」
イレネ
「仔細はわからん。
三十日をどうしてる、と聞いたらそう答えた」
カズマ
「言うまでもなく、僕はどのような選択肢も選ぶことができます」
カズマ
「放っておくだけで、傷ついていくものがある」
カズマ
「立ち止まっているだけで、損なわれるものがある」
カズマ
「30日ルールが作用するかまで、ここで待つつもりはありません」
カズマ
この世界に生きていくと考えれば、それも悪い選択肢ではない。
カズマ
信じられるかはともかくとして、ここほど豊かな場所はない。
カズマ
もし真実であれば、彼らの平和を破る必要はない。
イレネ
「まず、三十日。困らねえの一言で、それを待つわけにはいかねえよ」
イレネ
「あんたが何を急いでるのかは、知らねえが。
言葉からすりゃ、どっかに何か置いてきてるんだろ」
カズマ
問いを重ねはしなかった。容易く理由を彼らが述べるかも知れない。納得のいく理由を口にするかも知れない。そんなことは、彼女は可能性として考えているはず。
イレネ
「……この国は居心地が悪い。
だけどな、何しても戻りたいかと言われたらわからねえ」
カズマ
「それとも波に揺られていなければ落ち着かない?」
イレネ
「ただ、まあ……お姫様をしたらどうかとよ」
カズマ
「僕とは違うものを見いだすものだな、と思いましてね」
カズマ
「まあ、僕には特別、急ぐほどに執着しているものがある」
カズマ
「僕は身の上話であなたに同情してもらうつもりはありません」
カズマ
「早々にここを出る方法を取るべきと考えています」
カズマ
「そしてそれは、別にあなたを思ってのことでもない」
カズマ
「もし必要になれば、あなたは僕を殺していい」
カズマ
「30日ルール。これに抵触するとわかった場合」
イレネ
「得るものがでかくても、命を賭けるところは見せねえほうがいい」
イレネ
「賭ける時は黙って賭けろ。足元見られるぞ」
カズマ
「子供が独り立ちするまでの猶予はないでしょう」
カズマ
「なにより、心理的な孤独感を与えたままだ」
カズマ
「僕は、こうして己を賭けざるをえない。そういう性がある」
カズマ
「僕がこうしているうちに、損なっていくものがある」
カズマ
「そうしたものに、僕は出来る限りの手を打つ」
イレネ
「……自分一人じゃどうにもならねえことがあるってのは、わかるよ」
イレネ
「ま、だから自分をまるごと賭けるってのは、あんまり褒められたもんじゃねえが」
イレネ
「できねえことがある歯痒さってのは……どうしようもねえからな」
カズマ
「既に起きたことに対して、僕は何もできない」
カズマ
「あなたが失ったものについて、僕は何もできない」
カズマ
「僕のまだ、失いきっていないものを救う手助けをしてほしい」
カズマ
「さきほどお渡しした名刺を貸していただけますか」
カズマ
懐からボールペンを取り出し、文面を書き下す。
カズマ
『最後に救世主を裁判で殺害し、それより30日が経過する場合』
カズマ
『大網一真はイレネ・ジャニェスに無抵抗の殺害を許す』
カズマ
「これには、僕の心の疵の力が込められている」
カズマ
「あなたが、僕に協力してくれるのであれば」
カズマ
「……僕一人ではできないことに、協力していただけるのであれば」
イレネ
「まあ、お前に敬意を表して誠実に答えるが」
イレネ
「今この場で確約はできない。だからそれはまだお前が自分で持っとけ」
カズマ
「いつだって、僕たちができることは今とこれからのことです」
イレネ
「……わかるよ。わかるから軽々に付き合うとは言えねえ」
イレネ
「考えるよ。……ま、できることがあるってのは、いいことだからな」
カズマ
僕は、過去の傷つきを好意的に解釈しなおすようなことはしない。
イレネ
今、これから、できることがある。
できなかったことの代わりにはならないけれども。
カズマ
僕は、未だに過去のことを引きずり続けていることを認める。
カズマ
だから今もこの姫の間にて、糸口を探し続ける。
カズマ
あなたにも、この道に付き合っていただきたい。
ミケ
慢月と心月の気配を探して、屋敷を大股で歩いていく。
ミケ
二人を探しながら、ついでに屋敷の見取り図を完成させようというつもりだろう。
ミケ
そばに人がいないときのこのアンドロイドは静かなもので、すっかり口を噤んでいる。
ミケ
ひとりで歩いていて、ここに住む者たちや、あるいはほかの救世主の手伝いをするための計算をしたり、マッピングをしたりはしても。
ミケ
人間のように物思いにふけっているようには見えないだろう。
ミケ
長い廊下を抜けて、鳥人を縊り殺した御石の間を通り過ぎ、
ミケ
図書室や、衣装の収められた部屋を少し覗いて見て回る。
ミケ
ごく近くに寄れば、カメラがときおり焦点を絞ったり開いたりする音や、書き込み音が聞こえるが、遠目から見れば静かなものだ。
ミケ
一定のスピードで、館を回る。二人を探すのも忘れてはいないから、ときおり姿を探している。
心月
「ミケさんのいた場所のお話が、聞きたいですね。」
ミケ
「建物が積層を成し、人々が犇めき合う都市です」
ミケ
「アーコロジーとも呼ばれており、人々の生活をさまざまな場所で、ミケのようなアンドロイドが支えています」
ミケ
「すべての人々が幸福に、すべてのロボットが幸福に」
心月
「ミケさんの様な方も、たくさんいるんですね」
ミケ
「統一規格で生産されており、均一に高品質です」
ミケ
「2万台を売り上げているため、2万台の『ミケ』がいます」
ミケ
「『ミケ』は、そうして人々のお役に立っております」
心月
「そんなにたくさんの人に、喜ばれることができるんですね。」
ミケ
「これからも、喜んでいただけるように最善を尽くします」
ミケ
「『ミケ』はご使用してくださる皆様に喜んでいただけることが、喜びです」
ミケ
「皆様に、喜んでいただく。そのために最善を尽くす」
ミケ
人間ならば、あるいは自分に言い聞かせるようにも聞こえる動作であったが。
ミケ
アンドロイドの声の調子は変わらず、そこに感情が籠められているかは分からない。
ミケ
「たくさんの方にご購入いただき、満足いただけていると伺っています」
ミケ
「心月さまも、もし『ミケ』を気に入っていただけましたら」
ミケ
「公式ホームページから、評価を送ってくださいませ」
心月
「『優良』と、送っていただくことは……できるのでしょうか」
ミケ
「現在、ネット回線に繋がっておりませんので」
ミケ
「『ミケ』を評価いただき、ありがとうございます」
ミケ
「『ミケ』はこれからも、あなたのために最善を尽くします」
心月
「つくされるような立場では、ありませんので」
ミケ
「すいません。おっしゃっている意味がよく分かりません」
ミケ
「何かご用がありましたら、何でもお申し付けくださいませ」
ミケ
「かしこまりました。ぜひお手伝いさせてください」
[ ミケ ] ヤリイカ : 1 → 0
[ ミケ ] 水パイプ : 1 → 0
ミケ
ヤリイカと水パイプをカズマさまに譲渡いたします。
GM
【食堂】無駄に広い食堂。天井にはたくさんの提灯がつられている。
慢月/心月
*ミケの『感情の欠落?』を才覚で抉ります
カズマ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 猟奇
カズマ
2d6>=7 (2D6>=7) > 2[1,1] > 2 > 失敗
GM
choice[ヤリイカ,日刻みの時計,水パイプ,水パイプ] (choice[ヤリイカ,日刻みの時計,水パイプ,水パイプ]) > 日刻みの時計
[ カズマ ] HP : 20 → 19
[ カズマ ] 日刻みの時計 : 1 → 0
慢月/心月
2d6+3>=7 (2D6+3>=7) > 6[5,1]+3 > 9 > 成功
[ ミケ ] 感情の欠落? : 0 → -1
[ イレネ ] 零落 : 0 → 1
心月
「肉に、そちらの粉をまぶしていただけますか?」
心月
時々そうして指示を出しながら、鍋をかき混ぜる。
心月
「ミケさんは……前にいた場所では、どういった方々と暮らしていたのですか?」
ミケ
手元は正確に。口元には変わらず微笑みが浮かぶ。
ミケ
「前の使用者様に関しては、プライバシー保護の義務があるため、お答えできません」
ミケ
「……『ミケ』は、ただ、ご満足いただけませんでした」
ミケ
手元で、水気のある柔らかいものを潰す音がする。
ミケ
『ミケ』は視線を落とした。亡者の肉が握りつぶされている。
ミケ
「問題ありません。『ミケ』は家庭用高機能アンドロイド」
ミケ
「ご期待に添い、皆様のために働くことが『ミケ』の喜びです」
心月
「そして、先日お聞かせした……二胡という楽器を宮廷で演奏していたのです。」
心月
「……ミケさんは、あんどろいど……絡繰りとのことですが。」
心月
「物珍しと愛される一方、壊れたら廃棄する……そういった方は、少なくありませんでした。」
心月
「それは、私が所属する楽団でも、変わらず……」
心月
「多くの楽器が、薪にされていくのをみてまいりました」
ミケ
微笑みを浮かべたまま、あなたを見つめている。
心月
「私は、自分の二胡をどうしても……手放すことは出来ず。」
心月
「ずっと、同じものを使い続けてきたのですが……」
心月
「今でも、また、あの子をこの手にできればと思っています」
ミケ
言葉が途切れ途切れに紡がれる。アンドロイドらしからぬ動き。
ミケ
「『ミケ』はご満足いただけなかったと言いました」
ミケ
潰してしまった鶏肉を見つめたまま、言葉を発する。
ミケ
ならば『ミケ』がおのれの記録を顧みているのは、何なのか。
ミケ
『動くな。じっとしていろ』と言われた。それに従って。
ミケ
気が付けば、自分の使用者に手を伸ばしていた。
ミケ
手は鶏肉ではなく、調理台を掴み、わずかに軋みを上げる。
心月
「心ない嫌がらせの為に切られる真新しい弦が」
心月
「新しい物を買ってもらうために床へと叩きつけられる」
心月
「言葉を発することができたら、もう少し……他に」
心月
「自ら動くことができたら、逃げ出すこともできたのではないかと」
ミケ
「長い年月を経た道具に、霊が宿ったものとされます」
ミケ
「ですが、真新しいもの、愛されなかったもの、使われなかったもの」
ミケ
「『ミケ』は、高機能家庭用アンドロイドです」
心月
「この身体に血は流れておらず、バラバラになっても思考することが出来るでしょう」
心月
「元が人間か、物か。そういう違いはあっても……」
心月
「生きていると言っても、いいのでしょうか。」
ミケ
「『救世主』が生きていて、破壊されるものではなく」
ミケ
アンドロイドの言葉は変わらず平坦だが、機能的な言葉ではなかった。
ミケ
計算に基づくものではなく、思考に基づく発言だ。
ミケ
それが認めがたいように、アンドロイドはごく機械的な動きで、あなたに目を向ける。
ミケ
「『ミケ』は、それでも、機能を果たしたいと考えております」
心月
「あなたが。あなたも。孤独ではない、満たされた生を……」
ミケ
「鶏肉は常温で放置しておくと、菌が繁殖し、食中毒の原因となる場合があります」
ミケ
にこにこと微笑んで、粉をまぶした亡者の肉を油へ入れる準備を始めた。
[ 慢月/心月 ] HP : 10 → 9
慢月/心月
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
慢月/心月
2d6+3 (2D6+3) > 10[6,4]+3 > 13
イレネ
2d6+2-5>=7 (2D6+2-5>=7) > 4[1,3]+2-5 > 1 > 失敗
イレネ
1d12 シーン表 (1D12) > 11
GM
【廊下】長い長い廊下。雨の降る音が聞こえる。
イレネ
再び、屋敷の中をゆるりと歩いて回り。
概ね、内部の構造を把握したあたりで。
ミケ
「こんにちは。何かお手伝いできることはありますか?」
ミケ
「はい。『ミケ』は家庭用高機能アンドロイドです」
ミケ
「ご家庭でお困りのこと、大変だな、と思ったこと」
イレネ
「それってどういう『ご家庭』を想定してんだ?
なんか、カズマの言うような『家族』ってよくわかんねえんだよな」
ミケ
「『ミケ』が想定されている稼働環境は、多くが単身者から四人程度の核家族です」
ミケ
「しかし、このようなお屋敷においてもご利用いただけます」
ミケ
「イレネ様のお宅は、何人家族でいらっしゃいましたか?」
ミケ
「『ミケ』は、イレネさまがおひとりでこのお屋敷に住んだとしても」
イレネ
「自分の世話は自分でできるよ。そういうのは……」
イレネ
「お前にとっちゃ、あんまり喜ばしいことじゃねえんだろうが」
ミケ
「何かお手伝いができることがありましたらぜひ……」
ミケ
「高齢者の方のお世話も、『ミケ』はインプットされております」
イレネ
「まあ……絡繰りでお前みたいのができるってことは、割とマジで、いろいろ違う世界なんだろうけどよ」
ミケ
「『ミケ』のいた都市での平均寿命は、男性70歳、女性75歳程度でした」
イレネ
「75……自分が75になるとこってあんまり想像できねえな……」
ミケ
「老人体験キットをお買い求めになりますか?」
イレネ
「ご家庭用の機能はともかくとして。
お前、『救世主』としてはどうなんだ」
イレネ
「三十日に一度、人……まあ人に限らねえけど、殺して生き延びるってやつ」
ミケ
「『ミケ』はご家庭で必要な荷物運びのための運搬力を兼ね備えており」
ミケ
「固く閉じた瓶の蓋も問題なく開けることが可能ですので」
イレネ
「……素手で人を殺せる力のやつが『ご家庭用』か……すげえ世界だな」
イレネ
「便利というか……やりすぎって気もするけどな」
イレネ
「そのへんはまあ、お前の世界では……普通なんだろ、たぶん?」
ミケ
「引っ越しのお手伝いなどにも対応しておりますので」
ミケ
「衣装箪笥などを運びたい場合は『ミケ』にお任せを」
イレネ
実家の『衣装箪笥』を思い出して、若干微妙な顔をする。
『お姫様』のようなクローゼット。
ミケ
「グランドピアノの場合、大きさによっては耐荷重を超える場合がございますので、事前にお確かめください」
イレネ
「……人間って、お前にとって、基本的に『使用者』なわけだよな?」
イレネ
「人間とか、それっぽいものを破壊するのは」
イレネ
「人間だって、普通のやつは、よくねえと思うもんだな」
ミケ
「……『ミケ』は、あなたのために最善を尽くします」
イレネ
「……お任せしきりってのは性に合わねえよ」
イレネ
「できることがあるなら、自分でもそうする」
イレネ
「お前もそうするし、たぶんカズマもそうするだろ」
ミケ
「もし、できないことがございましたら、その時は『ミケ』にお声がけください」
ミケ
「『ミケ』は、現在通信環境が悪く、専門の業者に連絡を取れない状況ですので」
ミケ
「『ミケ』で解決が難しいことがありましたら、皆様にご相談いたします」
イレネ
「……そうだな。死ぬなよ……と、言うべきかね。わかんねえな。」
ミケ
「破壊され、壊れるのではなく、狂い、死ぬのだと伺っております」
ミケ
「イレネさまも、どうぞご安全に、健康にお過ごしください」
イレネ
「カズマにしてやれ。あいつのほうが健康でいたいだろうからよ」
ミケ
両手で手首を握って計測することをこのアンドロイドは申告していない。
イレネ
「……行くか。わざわざこんなとこで立ち話しててもな」
ミケ
イレネとともに歩き出しながら、『ミケ』は思考する。
ミケ
猟奇の力を振るうことを指して、イレネはそう言ったが。
ミケ
『ミケ』が、人間の孤独に寄り添い満たすことを目的として作られた家庭用高機能アンドロイドならば。
GM
3人は、屋敷を震わせる大きな揺れで目を覚ます。
GM
それは、屋敷の地下。
『安息の間』から聞こえてくるようだった。
ミケ
「『仏の御石の鉢』『龍の首の珠』『燕の産んだ子安貝』『蓬莱山にある玉の枝』」
イレネ
「……火鼠の様子を見る限りじゃ、どれも穏やかに手に入りそうもねえからな……」
GM
3人が部屋を出て、廊下を……階段の方へ向かう途中。
GM
【玄関】玄関。靴を脱ぐような作りになっている。
GM
服から、ハリネズミのようにとがった体毛があちこちに突き出ている。
イレネ
「先日のあれには、屠殺にゃ向かねえ時間だと言ったが」
イレネ
「誰がどういう亡者になるかなんて分かるはずがねえ」
慢月
「こないだの『火鼠の皮衣』は、本当に嬉しかった。」
慢月
「もともと、鼠みたいな種族でね。だから……『寝かせる』前に火刑にしたんだ。」
ミケ
慢月の呼びかけに対する返答を聞こうと、心月を見つめる。
慢月
「僕が欲しいのは、『蓬莱の玉の枝』『龍の首の珠』『燕の産んだ子安貝』」
カズマ
彼の気持ちは理解できる。彼の行動は共感できる。彼の行動を否定するつもりはない。
慢月
「うん、いいよ。別に代わりはたくさんあるし。」
慢月
「君たちが手伝ってくれるっていうなら、ここに残ってくれるなら……」
カズマ
と、同時に、末裔への憐憫がないわけではない、のだろう。涙にしなければ、表情にしなければ、行動に移さなければ、それが証明されないだけ。
カズマ
よかったな、と思う。この男が、本当に憐れで、常軌を逸しておらず、倫理に反していないならば、僕の判断は支持されないかもしれない。
カズマ
「イレネ、僕は彼をここで殺すべき相手だと考えている」
イレネ
「ま……出て行かせてくれねえって言うからにはなあ……」
カズマ
「末裔が憐れでもない、君たちからの取り扱いに不服があるわけでもない」
カズマ
「ここでのことは心から感謝を述べます。どうもありがとうございます」
慢月
「心月に咬まれたら、みんな……全部忘れて眠れるから。」
ミケ
忘れさせられるのは。メモリを消去されるのは。
慢月
そうして、金の鱗粉を舞わせながら花の上に降り立つ。
カズマ
「この世界にいる限り、『救世主』はそれを避けられない」
イレネ
「……ったく、血の気の多いこった。……しょうがねえな」