ED

アロイムリムリール
ハンスの上に立ち、睥睨する。
海獣
触手が血と粘液の尾を引いてばらりと離れる。
ナナギ
「ブラン!」ハンスが倒れたと同時に一目散にブランの元へと走る
GM
ハンスは動かない
アロイムリムリール
「幸福を生み出す美徳と知恵のなかったおまえには、土台無理なコトだったのさ」
GM
ブランとノワールの傍には既にイスカスが控え、その傷を癒やしている。
海獣
「お疲れ様です」
アロイムリムリール
「うむ」
ナナギ
「ん、おつかれ二人とも」
海獣
触手を腹の中に収め、ハンスの傍まで。
アロイムリムリール
「なあイスカスよ」
ブラン
意識こそ取り戻さないものの、死ぬ様子はない。
アロイムリムリール
「これはどのようにしてもよいのかな」
アロイムリムリール
足元を指差す。
イスカス
「勝者の権利ですから」
海獣
「皮、剥ぐんですか?」
アロイムリムリール
ハンスはもはや脅威ではないが……妹がわからんからな~と思っている。
イスカス
2人の容態が安定したのを見て、ハンスと悪魔の傍らに歩み寄る。
ナナギ
「ありがと、イスカス」
アロイムリムリール
口の中で静かに舌なめずりをして――「どうするかな」
海獣
…………
イスカス
「お礼を言われるようなことではありませんよ」
イスカス
ハンスの懐からコインの入ったケースを取り出して差し出す。
イスカス
「ひとまず、これは皆さんで」
アロイムリムリール
「うむ」
海獣
「恐れ入ります」
ナナギ
「ん」
GM
コインさえ奪ってしまえば、立場は逆転する。
海獣
もはや、この男は脅威ではない。
海獣
……ハンスを殺しても、街には市民である救世主たちがいて、街にあまねく魔女の力が行き渡っているけれども。
イスカス
「いかがします?」
アロイムリムリール
肉を裂くに容易い力の差。
海獣
ちらりとブランたちの方を見た。
ナナギ
「………」
アロイムリムリール
犬にして連れ歩くのもいいなあ~
アロイムリムリール
あと何日か余裕があるので、それまで地を這わせおさんぽさせるのだ……
イスカス
「殺さないのですか?」
海獣
「殺しておいた方がいいですよ」
ナナギ
「はい」ナナギは手をあげる
海獣
ナナギの方を見る。
アロイムリムリール
「起きてから殺すのはどうだ?優位をたっぷり見せつけて……」
ナナギ
「殺すなら殺す、解放するなら解放する…がいい」
アロイムリムリール
「そんな~」
ナナギ
「奴隷みたいに扱うのは、おんなじになっちゃうよ?」
アロイムリムリール
「しょうがないの~」
イスカス
「起こしますか?」
アロイムリムリール
「じゃあ殺すぞ」
海獣
「はい」
アロイムリムリール
「よい」
イスカス
「このままで?」
ナナギ
「あくまはつよいんだから」
ナナギ
「いじわるとかは似合わない」
アロイムリムリール
フフ~ン
アロイムリムリール
「そうであろうそうであろう……」
アロイムリムリール
「ま、殺し方は我に任せてもらおうか……」
ナナギ
「うん」じっと、見る
海獣
もしかして目を背けてた方がいいですか?
アロイムリムリール
「……ナナギは教育にわるいからほらあっちの白黒の娘っ子と遊んでなさい」
ナナギ
「やだ」
アロイムリムリール
「ええ……しょうがないの~」
ナナギ
「ちゃんとナナギも、責任的なあれがある」
海獣
「そうだね」
アロイムリムリール
「寝小便漏らしても知らぬぞ」
アロイムリムリール
ずるりん。
海獣
あっ!
ナナギ
「これは、あくまが殺すんじゃなくて…」
ナナギ
「ナナギたちが殺すんだか…ら………」わー
海獣
目を背けました。
イスカス
「…………」
アロイムリムリール
げしゃ、と音を立てて顎が開き、拷問具のような口が開く。
ナナギ
「わぁ」
アロイムリムリール
「この堕落の国において人間を食えるのは……アド!」
海獣
耳も塞いだ。
アロイムリムリール
4本の舌が四肢を絡め取り、持ち上げる。
ハンス
炎のように熱かった体液も今はただの血へ
ナナギ
ぞくり、冷や汗が出る
ハンス
目を覚ます様子もなく。
ただ、ぶらりと投げ出されたままの四肢が人形の様に持ち上がる。
アロイムリムリール
ただのソースとなった血を飲み干す器の中にハンスの肉体は放り込まれ、顎が閉じられる。
アロイムリムリール
口の中にびっしりと生えた数え切れぬ刃がアイアンメイデンの如くハンスの肉に殺到し、裂く。
海獣
耳を塞いでも、牙が肉を裂き、骨を砕く音が響く。
ハンス
突如走る激痛に目を覚ましたのか
ナナギ
「・・・・・・・・・・・・」
ハンス
それとも、ただの神経反射か
アロイムリムリール
すぐには咀嚼せず、新鮮な果実より溢れる血をごくごくと飲み下す。
ハンス
腕の先が、足の先が、びくりと跳ねる。
ハンス
骨の砕かれる音、肉の裂ける音、吹き出す血液。
ハンス
それは、まだ生きている人間の
海獣
視線を思わず上げて、そのさまを恐る恐るに見上げる。
アロイムリムリール
口の中にある生命の暖かさが、急速に液体となって胃の腑に流れ落ちる。
ハンス
「………―――」
ナナギ
「        」
ハンス
やがて、ただぶら下がるだけの肉塊と
ハンス
馳走となって飲み下されていく。
アロイムリムリール
もう一度口を開き、その姿が見えなくなるまで飲み込む。
アロイムリムリール
幾千のナイフがその身を肉に変えた。
ハンス
それは生きていた。
ハンス
咀嚼され、切り刻まれ、心臓の鼓動が止まるまで
ハンス
紛れもなく生きていた
海獣
今際の際にどれだけの激痛を受けたのか、想像を絶する。
ハンス
体温があり、脈動があり、呼吸をしていた
アロイムリムリール
骨を砕き、肉を裂き、肉体の機能を損壊する。
ハンス
悲鳴はあげられなかったのか、あげなかったのか
ハンス
それを知るは悪魔のみ
ナナギ
全身ががくがくと震えている
アロイムリムリール
胃の中に、大きなものが流れていく。
海獣
思わず口元を押さえて俯く。
イスカス
「…………」
アロイムリムリール
飲み込み終えた悪魔は、しゅる、と首を皆に向ける。
イスカス
男は動じることなくその様子を見ている。
アロイムリムリール
「人間たちさ~ドン引きしてない?」
アロイムリムリール
「でも人間とかたまに魚の踊り食いやるじゃん~?」
海獣
「…………」
アロイムリムリール
だから……お前らドン引きする権利なくないか……?みたいな顔をしている。人間全体に踊り食いの文化があるわけじゃないんだぞ。
ナナギ
すっ…、目を閉じる
ナナギ
「漏れちゃった」じょばー
海獣
「あっ」
アロイムリムリール
「ほら~!」
海獣
「ああ~~~」
イスカス
「おやおや」
アロイムリムリール
しかもわりかし大人しく食ったほうだと思うんだけど……?と思っているがバリッゴキ音してた。
海獣
ナナギを気遣うていでそちらに向かい、自然な動きで悪魔から目を背けました。
海獣
刺激が強すぎるので……
ナナギ
「おのれ、あくま…」まだ震えている
アロイムリムリール
「口んなかで一気に噛んだら血ブシャーって口もとよごれちゃうからお上品に食ったのだが!?」
海獣
教育に悪いです海獣とナナギはふたりとも見知った仲の相手を喰われ、形は違えどそれを心の疵にしているのだが、そんなことは悪魔には知ったことではない。
アロイムリムリール
逆にグロくなっていることを察さない悪魔
海獣
事前に通達はあった。
イスカス
「そうですねぇ」
アロイムリムリール
「そんな!」
ナナギ
「きょーいくにわるかった」
イスカス
「……裁判、お疲れさまでした」
アロイムリムリール
「ウム」
イスカス
「皆様はこれからどうされるおつもりで?」
アロイムリムリール
ズロロ~ンと戻る。
海獣
ふう。
アロイムリムリール
こいつヤバいのって顔をスキュラにしている。
海獣
しょうがないくないですか? という顔をしている。
アロイムリムリール
「そういえばここの主人が居なくなった今……ここはどうなるのだ?」
ナナギ
「奴隷が勝っちゃた場合、なんか色々があったりしちゃうのか…?」
イスカス
「新しい管理者が必要になります」
海獣
「そうですよね」
アロイムリムリール
「妹……にはできんかの?」
イスカス
「ええ、此処は街の『裁判所』ですから」
ナナギ
「なるほど?」
イスカス
「新たな管理者がよこされるか……」
海獣
この街の奴隷制を支えているのは魔女であって、ハンスはその管理者に過ぎなかった。
イスカス
「まあ、私が引き継いでも構わないと思っています」
アロイムリムリール
「そのほうが面倒がなさそうだな」
海獣
「……」
ナナギ
「すきゅらはともかく、あくまとナナギには無理だからな」
アロイムリムリール
「それとも誰か、やりたいかね?支配者」
イスカス
「ええ。皆さんに引き継ぐ意思があるのでしたら、私からグレーテ様に推薦いたしますよ。」
海獣
「人を管理するのには向かないですよ、私は」
ナナギ
「すきゅら、頭がいいからいけると思った」
海獣
「……この街は、恩恵を受ける者たちにとっては、堕落の国では考えられないぐらいいい場所なんでしょうが」
イスカス
「市民権……は、難しいと思いますが」
海獣
「正直、あまり好きにはなれません」
イスカス
「私が管理者となれば『皆さんだけそのように』することはできる」
アロイムリムリール
「ひっそりと裁判をして、生き残ることができる……と」
イスカス
「ええ」
ナナギ
「…うーん」
海獣
「奴隷を殺して、ですか」
イスカス
「もちろん粉も融通します」
イスカス
「ええ」
海獣
「そういうことが、必要な救世主もいるでしょうね」
イスカス
「ここから出ても……救世主を殺さなければ生きてはいけません」
海獣
ブランの方を見る。
イスカス
「それを良しとするかはわかりませんが……貴方がたには『贔屓』をする権利もある」
海獣
例えば彼女は、いくらコインを持っていても、街の外に出れば死ぬだけだろう。
海獣
救世主として戦うのに向いていないものにも、責務は同じように降りかかる。
海獣
「……この街から出て、対等な救世主と裁判をし」
海獣
「負けたとしたら、この街にとどまっておけばよかった、と」
海獣
「後悔をするかもしれませんね」
イスカス
「出会う相手が対等とも限りませんからね」
ナナギ
「………」
イスカス
「私は何も強制はしません」
イスカス
「ただ、貴方がたの望みを最大限叶えたいとは思っています」
海獣
「悪魔さんはどうされます?」
アロイムリムリール
「我は正直たまに肉が食えればなんでもよい」
アロイムリムリール
そしてストックは持っておきたい……
海獣
「なら、街から出ませんか」
イスカス
「裁判で必ず『死体』は出ますから、それでよければご用意は出来ます」
アロイムリムリール
「…………」
アロイムリムリール
「いやっ ちょっと待て」
海獣
「はい」
アロイムリムリール
「街からは……出んとまずいかも!」
アロイムリムリール
エミリオがおった!!!!!
海獣
「…………」
ナナギ
「?」
アロイムリムリール
「我にとってハンス以外にヤバいやつがおるんじゃ!」
海獣
あ~、という顔をしました。
イスカス
「?」
アロイムリムリール
「あのエミリオってカス!」
イスカス
「ああ……あの方」
アロイムリムリール
「あいつと出会うとヤベーのだ!」
海獣
無償契約させられたんだな、と思ってます。
海獣
「私はもともと街を出る予定です」
イスカス
「流石に市民を殺すことは難しいですね、貴方を死んだことにすることは出来ますが」
ナナギ
「………」むーん、と考え込んでいます
アロイムリムリール
「出る!街を出て我はスキュラについていくぞ!!」
アロイムリムリール
肉のストックも確保!
海獣
「ナナギはどうする」
ナナギ
「…ナナギは、多分」
アロイムリムリール
「ここでブランやノワールと共に戦うのもいいかもしれんが……」
ナナギ
「外に出たら一人で生きていけない…」
ナナギ
ナナギに戦う力はない
ナナギ
「ここにいた方が、長生きできるって思う」
アロイムリムリール
「ふむ」
ナナギ
「でも…」
ナナギ
「でもぉ…」うーん、と唸る
イスカス
「…………」
ナナギ
「すきゅらとあくまとも、一緒にいたいし…」
ナナギ
「ここは、ずっといたら苦しくなっちゃう…気がする…」
海獣
「……ん」
アロイムリムリール
「……」
イスカス
眠ったままの二人を見る
イスカス
正直に言うと、ハンスが死ぬところを見なくてよかったと思う
GM
怪我を治療された2人は、寄り添うようにして眠っている。
アロイムリムリール
「そうだな、2,3日ぐらいしてから行くか~?」
ナナギ
「………」
アロイムリムリール
「ナナギも我らと行くとしてもブラノワ~とちったあ話したいんじゃろ」
GM
花園育ちのお嬢様と、盗賊ギルドの始末屋。
海獣
略した。
GM
救世主は皆、心の疵を抱えている。
ナナギ
「…あくまが優しいの、なんか変な感じ」
GM
残ったとして、離れたとして。
GM
出会いと別れ、死は等しく訪れる。
海獣
その形を選べるのは、この堕落の国においては稀有なことだ。
アロイムリムリール
「我は寛容だからな」
アロイムリムリール
客観的に見ればメチャクチャ狭量だが本人の自覚は……寛容!
海獣
「もし街を出るなら、もちろん一緒に行こう」
海獣
「短い間だけど、私たちはともに旅をしてきたわけだからね」
アロイムリムリール
「ナナギの救世主としての力、我は評価しておるからなあ」
海獣
「ああ」
ナナギ
「………ん」
イスカス
「どうしても、困った時……」
海獣
「私たちはナナギを頼りにしてるし、必要としている」
イスカス
「戻ってくれば、おもてなしいたしますよ」
イスカス
「その時私が生きていればの話ですが」
ナナギ
何かが、すとんと落ちた気がする
ナナギ
「行く」
ナナギ
「ナナギも、一緒に行く」
海獣
「……いいのかい」
アロイムリムリール
「よしよし」
ナナギ
「うん」
ナナギ
「最初にナナギを信じてくれたのはすきゅらだし、あくまは知らんけどなんかおもしろいから」
ナナギ
「一緒にいたい」
海獣
「……ありがとう」
アロイムリムリール
「イエ~イ」
海獣
知らんけどなんかおもしろいかあ。
イスカス
微笑む
ナナギ
自覚ないけどナナギはあくまも大好き
イスカス
「今の貴方がたならコインも15枚ずつありますし、大丈夫でしょう。」
海獣
「何とか、やっていきますよ」
イスカス
「では、今晩街の外に出られるよう、手配しますね」
アロイムリムリール
フフ~ン
海獣
「よろしくお願いします」
ナナギ
「うん」
アロイムリムリール
「うむ、頼んだぞ」
イスカス
「『粉』は街から出れば消えてしまいます。」
イスカス
「出発前に、お食事だけでも準備いたしましょう」
アロイムリムリール
「つまり贅沢な飯も今晩までと」
イスカス
「しっかり食べていってくださいね」
イスカス
「きっと……」
イスカス
「末裔たちも張り切るでしょうから」
ナナギ
「ん」ナナギはそう言って倒れているブランとノワールの元へ向かう
ナナギ
柱時計から、閉まってあった"粉"を取り出す
ナナギ
祈り、願いを込めて…"粉"を握りしめる
ナナギ
「お別れだよ、ブラン。ノワール。」
ナナギ
開かれた手のひらには、花のブローチ。
ナナギ
魔法も、救世主の力も、何もかかっていないただのブローチ。
ナナギ
それを、眠っているブランの手の中に。
ナナギ
「お花、とっても綺麗だった」
ナナギ
ナナギは、それだけ言うと…ゆっくりと立ち上がり
ナナギ
すきゅらとあくまの元へと歩き出す。
GM
ぼろぼろになって疲れ切って、ぐっすりと眠っているふたり。
GM
虐げられ、命令されることから開放されたふたり。
GM
目をさますことはなかったけれど
GM
ブランの手はそっとブローチを握る。
GM
安らかな寝顔は、ありがとうと伝えるように。
GM
GM
それから、それから。
GM
混乱を避けるため、ひっそりと。
GM
この街で食べる最後の晩餐が振る舞われた。
GM
食べきれないほどの野菜や肉に、きらびやかなお菓子たち。
GM
末裔たちが泣きながら作ったご馳走だ。
GM
そうして、そうして夜は更けて。
GM
あっという間に別れの時はやってくる。
GM
GM
警備がいくらか立つだけ、静かな街。
GM
仮面をつけた亡者馬の繋がれた荷馬車に、僅かな水と食料をのせて。
イスカス
「すみません、『本物』はこれだけしか準備できませんでした」
海獣
「……いえ、何から何までありがとうございます」
イスカス
「あとは……」
イスカス
後方から白い毛皮の敷物を取り出す。
イスカス
「よろしければ、こちらも」
海獣
「え」
海獣
取り出されたものに、戸惑いの表情を浮かべる。
海獣
「これは……だって、イスカスさんの……」
イスカス
「あたたまるでしょうし、売ることもできるでしょうし……きっとお役に立ちます」
アロイムリムリール
「いいのか?」
イスカス
「ええ」
ナナギ
「…いいの?」横からひょっこり、顔を出す
ナナギ
「…じゃあ、もらう」毛皮に手を伸ばす
イスカス
「遺品がなくとも、彼を……忘れることは、ありませんから」
海獣
「……」
ナナギ
「大事にする」
イスカス
微笑む
海獣
「お預かりします」
アロイムリムリール
豪華なものが増えて嬉しいあくま。
海獣
「……私たちがハンスに勝つことができたのは、あなたのおかげです」
海獣
「こうして街から出してくださったことも含めて、感謝しています」
イスカス
瞬く。
海獣
「ハンスを倒したのは我々ですが、あなたは私たちを助けてくれた」
海獣
「……あなたはきっと、ハンスよりもいい『管理者』になるでしょう」
イスカス
「…………」
イスカス
「彼は、決して自分の手を汚しませんでした」
イスカス
「私は、彼の命令で何人も、何人も、何人も」
イスカス
「死ぬ必要のない救世主を殺めました」
イスカス
「それを知っても、貴方は……」
イスカス
「そう言って、くださいますか?」
海獣
「これからは、違います」
海獣
「……いや、もしかしたら、変わらないかもしれない」
海獣
かぶりを振って、あなたを見つめる。
海獣
「……私たちは救世主。この堕落の国を救うために呼ばれたそうですね」
海獣
「でもきっと、この街からは堕落の国を救うような救世主は生まれないでしょう」
海獣
「ハンスもそう。心の疵の力を、恐らくはろくに使えていなかった。堕落の国に来たばかりの私たちと同程度の実力しか持ってなかった」
海獣
「この街で暮らして、勝ちの決まった裁判しかしていなければ、みんなそうなっていく」
海獣
「でもあなたは、そのルールから少し外れて、私たちを助けてくれた」
海獣
「……それを覚えていてください」
イスカス
「…………」
イスカス
「口説いてるんですか?」
海獣
「そういうつもりはありませんが、次のセリフを言うと言い訳がきかなくなるかもしれません」
海獣
「あなたは私たちが街に来たら、もてなしてくれると言いましたが……」
海獣
「もしあなたが、この街を出て、旅に出ようと思ったなら」
海獣
「その時もし私たちが生きていたら、一緒に旅をしましょう」
イスカス
「…………」
イスカス
「光栄です」
アロイムリムリール
「ってかなんなら今出ちゃってもいいんじゃないか?代わりなら出てくるじゃろ」
イスカス
「お誘いは嬉しいのですが……」
イスカス
「ええ、私は……残される者たちを見捨てることが出来ません」
アロイムリムリール
「律儀よのお」
イスカス
「ですから……」
イスカス
「あの『裁判所』が、もう少しだけよくなって」
イスカス
「任せられる人ができた、その時は……」
イスカス
「皆さんの噂を頼りに追いかけましょう」
海獣
「はい」
ナナギ
「うん、待ってる!」
アロイムリムリール
「せいぜい生き延びるがよい」
イスカス
「皆さんも」
海獣
「……お元気で」
イスカス
「ゆく先々で良い話が残ることを期待しています」
イスカス
「お元気で」
イスカス
「ああ、悪魔さん」
イスカス
そっと寄って
アロイムリムリール
「何じゃ」
イスカス
「良くない噂が耳に入ったら、口が滑るかもしれませんので」
アロイムリムリール
「…………」
イスカス
「お二人のこと、よろしくおねがいしますね」
アロイムリムリール
「……!!!!!」
アロイムリムリール
「しょーがないのー!!!」
イスカス
にこにこ
アロイムリムリール
「我優しいから~!!!!!」
アロイムリムリール
嘘。
イスカス
「っふふ」
ナナギ
「どうしたあくま、突然叫んで」
アロイムリムリール
「なんでもないが~!」嘘
海獣
なにかあったんだなあ。
ナナギ
「そっか〜〜〜」
アロイムリムリール
「ええい!行くぞ行くぞ!」
海獣
「はい、それでは」
ナナギ
「ん!」むんっ、と力こぶ
イスカス
「ええ、名残はつきませんが」
アロイムリムリール
「バーカ!くたばれエミリオ!」
アロイムリムリール
今居ない顔に向かって悪態を吐きながら馬車に乗り込む。
海獣
イスカスを、その背後にある街をちらと振り返ってから、馬車に乗り込んだ。
GM
遠くにランタンの明かり。
ナナギ
柱時計を開く、その中から取り出したのは一枚の花弁
ナナギ
ブランの救世主の力によって生み出されたもの、いつ消えるかもわからない
ナナギ
でもナナギの脳裏には、あの綺麗な花吹雪がしかと残っている
ナナギ
「・・・・・」
GM
3人をのせて、走り出す馬車。
ブラン
「ナナギちゃん……!」
ブラン
遅れて、声が響く
ブラン
「ナナギちゃん!」
ナナギ
「!?」ばっと、振り返る
ブラン
その手には、花のブローチ。
ブラン
それを、高く上げて
ナナギ
「…ブラン!」
ブラン
「ありがとう!」
ブラン
「ありがとうーーー!」
ナナギ
「………」
瞳の奥から何かが込み上げてくる
ブラン
走りゆく馬車に向かって少女は叫ぶ
ナナギ
「………」ぶわっ
アロイムリムリール
「あっナナギ泣いとる!」
ナナギ
「ブランーーー!!!」大きく、大きく手を広げる
ナナギ
「うるさいあくま!」
ナナギ
「ありがとーーー!!!ブランーーー!!!」
ナナギ
ぶんぶん、と小さな手を振る
GM
少女の後方からパステルカラーの鮮やかな花吹雪。
GM
旅の無事を祈るように、別れを惜しむように。
海獣
「……きれいだ」
ブラン
「…………」
ナナギ
「ブランーーー!!!!ブランーーーーー!!!!!」何度も何度も名前を呼ぶ
ブラン
「ありがとう……」
ブラン
少女の頬を涙が一筋つたって落ちた。
GM
柔らかな春の香の追い風は、亡者馬の足を軽やかに包み
GM
救世主たちを運んでいく。
GM
Dead or AliCe
『エルヴンミオレの奴隷商』
GM
fin