ED

神楽耶
「…………あぁ」
神楽耶
「やりおったわ」
ルディ=ホワイト
「うん」
グライ
「ルーちゃあん!!」駆け寄る。
ルーパート
「いってえ」
ルディ=ホワイト
「生きているな、ルーパート」
ルーパート
「いきてまーす……なんとか……」
ルディ=ホワイト
「大した働きようだった」
グライ
「おれっ、おれっ、ごめんなあ!」
GM
さわ、さわ。
GM
周囲の竹が枯れていく。
ルディ=ホワイト
「そなたがいなくては勝てなかったろう。むろん、グライもな」
グライ
「……兄貴ィ……」
GM
水は涸れ、大地は乾き。
ルディ=ホワイト
ぐるりを見渡す。
GM
亡者の臓腑がしみこんでいく。
ルーパート
「あー……」
グライ
「………………」ぐすぐす鳴らす鼻を拭う。
ルディ=ホワイト
「定めよな」
神楽耶
「畜生が……妾の力まで持っていきおったわ」
ルディ=ホワイト
神楽耶へ目を向ける。
神楽耶
血の流れる大地の真ん中に座り込み
神楽耶
立ち上がれずにいる。
神楽耶
「喰ろうてやろうと思ったによ……」
ルディ=ホワイト
「それは良かった」
神楽耶
真っ赤な砂を両手で掬い
神楽耶
「ふん……これでは喰えまいよ」
ルディ=ホワイト
「そなたに後釜に座られては、いささか困ったろう」
ルディ=ホワイト
剣を手に、近づいていく。
神楽耶
「ちぃ」
ルディ=ホワイト
「そなたはこれで、檻より解き放たれ自由となった」
ルディ=ホワイト
「だが、悪いな」
ルディ=ホワイト
「何か、言い残すことはあるか」
神楽耶
「…………」
神楽耶
「失う心があればよかったなぁ……」
神楽耶
「誰も」
神楽耶
「誰も……」
神楽耶
「…………」
神楽耶
嫉妬、強欲、憤怒。
神楽耶
「最後までは、共におらぬ」
ルディ=ホワイト
男の目が、神楽耶を見下ろしている。
神楽耶
「斬れよ」
ルディ=ホワイト
「うん」
ルディ=ホワイト
「さらば」
ルディ=ホワイト
剣が、首を刎ねる。
神楽耶
すぱりと、切れたその首から血は流れず。
神楽耶
玩具のように首が転がって。
神楽耶
身体は灰になる。
ルディ=ホワイト
それを見届けて、剣から手を離した。
ルディ=ホワイト
剣は瞬く間にヤドリギとなり、地に落ちる前に消え失せる。
ルディ=ホワイト
──そも亡者とは、生前を引きずるだけの心亡き者。
ルディ=ホワイト
語る言葉のすべてが、死んだ後まで続く遺言のようなものだ。
ルディ=ホワイト
それをあえて聞こうと思った理由について、男は少しだけ考えて、すぐにやめた。
ルディ=ホワイト
「これにて仕舞いだ、グライ、ルーパート」
ルーパート
「……お疲れさまです」
グライ
「……おわったんすねえ……」
GM
2d6>=7 (2D6>=7) > 4[1,3] > 4 > 失敗
GM
2d6>=7 (2D6>=7) > 6[4,2] > 6 > 失敗
GM
枯れ果てた竹の葉の下に、細い手首、長い尾。
GM
果たして何が現実で、何が夢だったのか。
GM
振り返れば、そこに道はなく。
グライ
「うわっ、ちょっと、えっ」
グライ
半ば飛ぶようにして駆け寄り、枯れ落ちた竹の葉に両手を突っ込んだ。
GM
そこには、幾年も前からそこにあったような
GM
干からびた末裔の死体。
グライ
葉の下から引きずり出す。
グライ
「……いやいやいや、」
グライ
「……」
ルディ=ホワイト
「死んでいるな」
ルーパート
「…………」
グライ
途方に暮れたように、その干からびた手をとって。
GM
魂とはどこにあるのか。
GM
あるいは、現実とは。
グライ
「…………こんな古びてたんじゃダシもとれねえなあ」
グライ
さみしそうに呟いた。
ルディ=ホワイト
「村へ戻る前に、弔おう」
ルディ=ホワイト
「もっとも、これでは、村も同様かもしれんな」
ルーパート
「……連れて帰ってあげたほうがいいんじゃないですか」
ルーパート
「最後、顔見れないの」
ルーパート
「結構」
ルーパート
「……つらいですからね」
ルディ=ホワイト
目を瞬かせる。
GM
辿る小川はなく、人の声もない。
グライ
「………………ん……おれっち、村のほうちょっと見てきますわ」
ルディ=ホワイト
「頼む」
グライ
言うが早いか、立ち上がって飛び上がる。
羽音がいやに高く響いて。
GM
高くから見下ろせば、そこに村がある。
GM
竹藪のないのをのぞけば、出てきたころのままに。
GM
さりとて、人の動くのは見えない。
グライ
少し迷って、宿のあった場所へと降りて。
「……おかみさん、……?」
グライ
恐る恐る声をかけた。
GM
村は静けさに包まれている。
GM
走り回る子供のいたところ。
GM
門のところ。
GM
小川のあったところ。
GM
7日7晩とすこし。
GM
過ごしたそこに、だれもいない。
GM
宿の台所、鍋が噴きこぼれて消えた炎。
GM
足元に灰の積もる地面。
神楽耶
「誰も」
神楽耶
「最後までは」
GM
最後までは。
グライ
それ以上は見ていられなくなって、二人の元へと戻る。
そうして、力なく首を振ることしか出来なかった。
ルディ=ホワイト
「そうか」
ルーパート
「……そっすか……」
GM
亡者とは、生前を引きずるだけの心亡き者。
GM
おびえた様子の男も
GM
料理を振舞った女将も
GM
昔話を語る老婆も
GM
それを聞く子供も
神楽耶
親、兄弟。親戚。恋人、伴侶。
GM
竹藪。
GM
それは、いつからそこにあったのか。
GM
風が三人の頬を撫でる。
ルディ=ホワイト
「まぼろしか」
ルディ=ホワイト
「夢か──」
グライ
「ワリに合わね~……」
ルーパート
「死ななきゃ安いってやつじゃないですか?」
ルディ=ホワイト
「そなたは持ち帰るものがあろう」
ルディ=ホワイト
「言った通り、大学へは送っていこう」
グライ
「そだった。ルーちゃん帰るんだわ」
ルーパート
「サンプルは、そうすね、ある程度採れましたから」
ルーパート
「送っていただくのはありがたいんですけど……」
ルーパート
「ルディさん、ぼくの救世主さまと揉めないでほしいんですけど……そこんとこ大丈夫です?」
ルディ=ホワイト
「?」
ルーパート
「あの……ぼくの救世主さまとルディさんが揉めるとですね」
ルーパート
「たぶんすっげえやばいことになります」
ルディ=ホワイト
「すっげえやばいことに」
ルディ=ホワイト
「まあ、なろうな」
グライ
「あ~、いうね、すっげーやばいって」
ルーパート
「なりますね……やばいことに……」
グライ
「世界の終わりと再生のはじまりがなんとかとか」
ルディ=ホワイト
「余と同程度の救世主か」
ルディ=ホワイト
「確かに、出会う機会はほとんどなかろうな」
ルディ=ホワイト
「とはいえ、まだ剣を交えるつもりはない」
ルディ=ホワイト
「向こうがそのつもりでないなら、の話だが」
ルディ=ホワイト
「そなたの救世主は、それほど好戦的な男か」
ルーパート
「あのひとは研究馬鹿なんであんまそういうのはないすね」
ルーパート
「死人出るの好きじゃないと思いますよ」
ルディ=ホワイト
「ならば、問題なかろう」
グライ
「ま、ヤっても兄貴が勝つだろうしな~」
ルディ=ホワイト
「うん」
ルーパート
「そっすか~……」 深く突っ込まない。
ルーパート
ルディさんの剣か~。どんくらい耐えられっかな……
ルディ=ホワイト
「では、行こう」
グライ
「うーっす!」
ルーパート
「うい」
ルディ=ホワイト
乾いた死体を二人抱え、歩き出す。
GM
風が砂を巻き上げる。
GM
末裔の亡骸を抱いて救世主たちはゆく。
GM
後には、灰になった女の――
GM
GM
ああ、楽園は滅びた。
GM
それは、誰にとっての楽園か。
GM
灰になった末裔たち。
GM
埋められた亡骸。
GM
途絶えた川、永遠の渇き。
GM
GM
がさ
GM
がさ
GM
ずぼり
GM
土の下から末裔の干からびた手が這い出す。
GM
一晩の、のちに。
神楽耶
「……おのれ」
神楽耶
首が浮き上がる。
神楽耶
「いや……ふふ」
神楽耶
「キヒヒヒ」
神楽耶
「あははははは!」
神楽耶
「吸血姫である妾が首を刎ねられたくらいで死ぬかよ」
GM
灰の中からよみがえる。
神楽耶
「さあ、ここからが……」
神楽耶
「妾の悲願、月の御殿を今や再び」
GM
親、兄弟、恋人。
GM
宿の女将も、イモムシも蜥蜴も。
神楽耶
「最後に嗤うは妾のみ」
神楽耶
「キィーヒッヒッヒ!」
GM
GM
耳鳴り峠の吸血鬼Ⅱ
GM
 
GM
To Be Continued