マリー
「おはようってことはないと思うんですけど、ここにいると時間がちょっとわからなくなって」
マリー
隣に寄り添うように腰を下ろして、部屋に視線を巡らせる。
GM
ふたりの体重を受けたベッドも、あまりよろしくはない音を立てている。
マリー
笑みを浮かべていても、娼婦らしい振る舞いをしても、マリーの振る舞いはどこか暗い。辛気臭いと言っていい。
男
女のいまいち不慣れな媚び方に、その空気の中心にある暗さに。
マリー
まるで、世界で一番自分が不幸だとでも言いたいような。
男
「俺ぁいつだって絶好調よ。ってもまー、なんかスゲー遠くから来た末裔にさ、俺の村の亡者を倒してくれなんっつわれたけど、それを倒すぐらい絶好調ってワケじゃねーな!」
男
末裔の決死の思いを受け取ることもなくぽいと捨てた話を笑いながら。
男
他の救世主の気配に過敏になり、ドブネズミのように逃げ回っている話はせず。
マリー
「亡者はねえ、僕たち──末裔にとっては大変だけれど、救世主さまたちには斃してもしょうがないですからね」
マリー
「次から次へと湧いてくるし、殺しても、……ルール、でしたっけ? それが満たせるわけじゃない」
マリー
女は記憶を失っていることを公言し、あなたにもそれを伝えている。
マリー
この国のことを話すとき、どこか自信がなさそうにする。
男
末裔というやつは他の救世主と比べて軽蔑するようなこともない。
マリー
男の話を聞いて、女もどこか居心地の悪さを感じていたから、ちょうどよかった。
マリー
だれかに頼らなければいけない、救世主に助けを求めなければいけない。
マリー
縋る手を振り払われて踏みつけにされたとしても、何の文句も言えないのだ。
男
自分を深く知ろうとはせず、抉ろうとはせず、舐めようともしない、ただ救世主を崇めるーー力のない末裔というやつは、自分にとってちょうどいい生き物だった。
マリー
末裔の娼婦なんてものは、──特にこんな、ろくに洗われてもいないようなシーツの上で男と話す娼婦というのは、ことさら弱い存在と言える。
男
陰気で、変に明るくも眠りネズミのようにマグロでもなく、ちょうどいい。
男
昔自分のいた世界で見た見たアジア人のような容姿が郷愁でも思い起こしたのだろうか?
男
まあその時は、公爵夫人の末裔なんていう気位の高そうな女を犯すのは面白そうだ。とかそんなことを思って選んだだけなんだが。
マリー
あなたが前にこの娼館に来たのは、ほんの数日前だ。
マリー
「じゃあ、ほかの女の人のところに行ってたんですか?」
男
末裔相手にモテるなんて言っても虚しいだけだが。
男
行ってもお前はなんとも思わないだろう?とは言わず。
男
寄せられた体を受け止めるように、腰に手を回す。
マリー
「あなたがほかのひとのところへ行って、僕のところへもう来てくれなかったら」
マリー
期日も迫っている。ふらっといなくなってもらっては困る、と言うのは、そこは本音だ。
男
典型的なチンピラで、誰の得にもならないつまらない男。
マリー
この国に来て間もないことは、話を聞いて分かっていた。
男
そのような男がこの世界の役に立つのは、他の救世主の命を伸ばすことだけだろう。
マリー
「もしかしたらあなたが僕を、ここから連れ出してくれる──」
マリー
男の指先を受け入れる。それが娼婦の仕事だから。
男
胸を温めるように弄びながら、末裔の妄想を笑い飛ばす。
マリー
男の言葉が棘を帯びたのを気取って、笑うにとどめる。
男
ここで泣いて悲しむ末裔だったらこの女のところに通いはしなかった。
マリー
女の言葉は冗談めかして、笑い飛ばすのに気後れも気兼ねもする必要はない。
男
女の体を両手で抱き留めて、そのまま娼婦の服の下に滑り込ませて肌を楽しむ。
男
女が救世主なんてことも自分を殺そうと思っていることなんてことも気づきもせず、安いベッドの上に二人寝そべって、二人分の服を剥いでいく。
マリー
寝台に一緒にゆるやかに倒れ込みながら、残りの日数に思いを巡らせる。
マリー
三十日のあいだに、ひとりは救世主を殺さなければいけない。
マリー
そうでなければ、亡者になる。だから、殺さなければならないのは絶対だ。
マリー
湿った息を吐き出し、手から少し逃れるように身じろぎをする。
マリー
それでも、チャンスはきっと、一度きりしかないだろう。
マリー
あなたは僕を本当に救ってくれるし、ここから連れ出してくれる。
男
女の思惑に気づかない男は、女の体を存分に楽しむ。
男
この末裔のいいところが一つある。
声を我慢しようとするのが、なにかを取り繕おうとするのが面白い。
マリー
尊厳を守ろうとするように、矜持を保とうとするように。
マリー
こんな場所にいて、自分から男に体を開いて。
そんなもの持ちようがないのに。
男
小さな、コインの力でくしゃりと潰せそうなその矜持。
男
過ぎた快楽が苦しみに変わり、助けを求めるところ。
マリー
それは他愛のない妄想ではなく、もう少し血に塗れている。
GM
お茶会に入ります。お茶会の順番はPC①→②で固定となります。
GM
また、クエストがあるため、それを提示します。
クエストNo.1(PC1のみ) 心を奪う
概要 :魅了し、引きつけ、意のままに動かす
条件 :PC1であること・PC2を舐める行動にのみ組み合わせられる
目標値 :7
消滅条件 :お茶会終了と同時に消滅
成功 :PC2の次の行動のクエストを指示することができる
失敗 :PC1の心の疵を回復するか悪化することで、行動とクエストの両方を成功したことにしてよい。この決定はPC1が行い、PC2が内容を指示する
その際、心の疵についてPC1自ら相手に明かすこと
クエストNo.2(PC2のみ) 心付けを渡す
概要 :あなたは相手に気に入られたい。だから、贈り物をする。
条件 :PC2であること
目標値 :自動的に成功
消滅条件 :お茶会終了と同時に消滅
成功 :PC2は凶器以外の宝物を全て破棄し、PC1は合計価値10以下の衣装か小道具を獲得する。PC1が内容を指示する。
クエストNo.3(PC2のみ) 心を開く
概要 :あなたは相手をもっと内側に招きたい。だから、心の鍵を渡す。
条件 :PC2であること
目標値 :自動的に成功
消滅条件 :お茶会終了と同時に消滅
成功 :PC2はPC1に対し、技能による同意や許可を求められたときに拒否できなくなる。
(主に調律について。他には伝授、貢物、愛染など)
クエストNo.4(PC2のみ) 心を染める
概要 :あなたは相手を心から望む。だから、相手の望むままになりたい。
条件 :PC2であること
目標値 :自動的に成功
消滅条件 :お茶会終了と同時に消滅
成功 :自身のデッキから技能を一つ入れ替える。その際、PC1が内容を指示する。
クエストNo.5(PC2のみ) 心を解く
概要 :あなたは相手を信じ切っている。だから、装備を遠ざけても気づかない。
条件 :PC2であること
目標値 :自動的に成功
消滅条件 :お茶会終了と同時に消滅
成功 :凶器を『素手』に変更する
クエストNo.6(PC1のみ) すべてを明かす
概要 :すべてを明かし、救世主であることを認め、許しを得る
条件 :PC1であること
(このクエストを行う場合に限りに、PC1はお茶会終了時に追加の手番を得てもよい。
GMはお茶会終了時に確認すること)
目標値 :PC2が成否を判断する
消滅条件 :成功するか、お茶会終了と同時に消滅
成功 :No.2を除くすべてのクエストで得た効果、心の疵MOD『逆棘』、裁判MOD『不意を突く(PC1)』を破棄し、裁判の相手を変更する
(PC2は6ペンスコインを3枚か6枚を融通し、能力値の合計が2、1の救世主としてそれぞれ作り直しても良い。GMの判断により、裁判を省略してもよい)
失敗 :No.2を除くすべてのクエストで得た効果、裁判MOD『不意を突く(PC1)』を破棄する
GM
お茶会について、お茶会MOD『セルフ横槍(PC1)』の効果によりPC①のみ、PC②から自分に対する舐め・抉りなどの行動に対して横槍が可能です。
さらに、心の疵MOD『逆棘』によって、裁判の際にはすべての○が●に変わります。
GM
そういうわけで、最初はマリーの行動になります。
マリー
暗い部屋の中に女の白い体が浮かび上がっていた。
男
女の横に上体を起こして座り、女の体を見下ろしている。
男
こんなに暗い部屋の中でも男はサングラスを掛ける。救世主だから見えるらしいが、奇妙なものだ。
マリー
涙の浮いた目が、ぼんやりとあなたを見上げている。
マリー
たぶん、疵にかかわることなんだろうな、と思う。
男
流石に情事の盛り上がって来たときには外すが、そうしてからこの男と目の合うことはない。
マリー
この堕落の国来た時、最初に会った救世主は、心の疵のことをあまり教えてくれなかった。
マリー
ただ、何人か救世主の客を取るうちに、よく分かってきた。
マリー
特にこんな場所に来て、わざわざ女を抱くような救世主は、分かりやすくさえある。
男
末裔というのはどいつもこいつも動物のようなやつだから、ただの性欲解消にちょうどいい。
男
その中でも少しでも面白いやつがいるなら、そいつで遊ぶだけだ。
マリー
手を伸ばす途中で、うっそりとため息をついた。
男
まだ時間はある。これからどうするか、なんてことをぼんやり考えながら。
男
嫌がる女を無理やり絶頂させるような遊びを数人がかりでやる、そういった趣味の悪い仲間もいた。
マリー
…荒れた人生には、それなりの経験人数がある。
マリー
容姿がよかったからなのか、それとも生来の気弱な性格のせいなのか。
マリー
堕落の国に落ちてくる前、夫を持つ前にも、こういうことをされたことがあった。
マリー
商売ではない。恐ろしかったが、ずいぶん嫌がったと思う。
マリー
けれど、運がよかったのか悪かったのか、そういう趣味の悪い相手にはあまり出会ってこなかった。
マリー
「あなたと違って、あんまりモテないんですよ」
男
「末裔にモテるとかあるんだ?まあ末裔ってすぐくっついてそうだもんな」
マリー
「この店に来てからのことしか覚えてないから」
マリー
「でも、この店のほかの子は、僕よりたぶん、十も若い子ばかりでしょう」
男
まあ確かにあんまり客ウケしない女かもしれないな、なんてことを思いながら眼下の体に触れる。
マリー
服をまだ着ないまま、あなたにまた体を寄せる。
男
「けどどうも俺から見ると、ガキすぎるというか……」
男
……しかしそれでも、ちょうどいい相手はいたはずだ。
男
そういった弱さが見えるたび、やんわりと突き放すようなことを言うクセがあった。
マリー
傍に寄るものを跳ねのけようとする動きがあった。
男
もっと精確に言えば、弱いこの女を、他の者に対するように扱ってしまう自分を。
男
自分は救世主で、相手が末裔なら、取り扱いは程々に気をつけなければいけないということを知っている。
男
この街に来る道すがらで、末裔を少し殺したことがある。
マリー
「でも、だから今日は、あなたが来てくれてよかったんです」
マリー
「あなたが来てくれなかったら、僕はきっと、今日ひとりだったから」
男
ただのしたたかな娼婦であれば、楽しみのために殺す必要もない。
男
この言葉も、心からの言葉ではなくて、セールストーク。
男
だから安心してその手を取れる。少し荒れた、細い指先をただじっと見る。
マリー
指が腕を撫でて、陰気な目があなたの顔を覗き込む。
マリー
2d6+2=>7 (2D6+2>=7) > 6[1,5]+2 > 8 > 成功
[ マリー ] ティーセット : 2 → 1
マリー
「……僕がこうしていられるのはあなたのおかげ」
マリー
「あなたのことを、ずっと待っていたんです」
マリー
視線が揺れて合わなくなり、それを誤魔化すようにあなたの肩へ口づけを落とす。
マリー
*『心を奪う』を宣言しておきます。次のクエスト提示は『心を開く』
男
なんてことのない営業トーク。客が取れない女の泣き言。
マリー
ひとりの男をこんなにまでして引き留めなければいけない、哀れな娼婦。
男
ただ、誰にも望まれなかった人生だっただけで、このような言葉を掛けられただけで何か思ってしまうのは。
男
女が何を思ってそう言ったか、気づくこともなく。
男
自分の中に湧いた何かを誤魔化したくて、もう一度女を組み伏せる。
[ 男 ] 孤独 : 0 → 1
GM
そうして女はまた、少しのあいだ、声を堪え、身体を逃がして、あえかな抵抗をする。
マリー
最後には、泣きながら許しを乞うことになるにも関わらず。
GM
1:あなたは誰も客に取らなかった。脱がされるべき店のドレスと下着を自分で脱ぐ。
男
1日の間をおいて、男はやってくる。前と変わらない鷹揚なふりをした笑顔で。
マリー
よくあることだから、血の匂いにもすぐには触れない。
マリー
けれど少しだけ、暴力の気配に怯えた気配がある。
男
弱さを嫌いもするが、怯えられる分にはいくらか寛容であった。
男
そういった弱さは、自分の身をそれほど傷つけないように感じたから。
マリー
ベッドは冷たく、亡者から取った脂を燃やすランプの、どこか饐えた火の匂い。
男
それでも、地面よりはマシで、一人の部屋に冷たくそそぐ月光よりはマシだった。
男
暗くて、チンケなランプの灯りぐらいがあればいい。
男
来て早々冷たいベッドの上に、自分の部屋の如く乗り込んで寝そべる。
マリー
当然、文句もなく頷いて、あなたの寝そべるベッドの端に座る。
マリー
少なくともこの娼館では、金を払った以上、この部屋の主は今はあなただった。
男
女にとっても楽なのだから、何も言うことはないだろう。
マリー
腰かけるだけで、茶どころか水さえ出ないけれども。
男
……女にとってもちょうどいい、殺しやすい、孤独な男。
男
今は女と同じ部屋にいることを選んでベッドに寝そべっている。
マリー
いくらほかのひとのところに行ったっていい。
だれを殺したってだれを抱いたっていい。
マリー
なにをしても、あなたはどうせひとりだから。
男
一時埋められた孤独は、後ほどより手ひどく裏切られることを考えようともせず、暗い部屋でぬるく人といる心地を味わっていた。
男
「でも何もしねーってのももったいねーな!膝枕とかしてくれよ」
マリー
ゆるく返事をして、靴を脱いでベッドの上に足を上げる。
男
女を脱がすでもなく、適当に座らせ、こいつも適当に頭を乗せる。
マリー
女は痩せて骨ばっている。脚にはまあ、肉がついているので、寝心地はまあまあだ。
男
それは疵の奥にある、母親というものを忌避する心から来ているのだが、それをこの男は見ないようにしている。
マリー
背は堕落の国のほかの末裔よりも少し高く手足も長いが、肉付きはよくない。
マリー
年齢もあるが、客があまり取れないとしたら、そのあたりも理由だろう。
マリー
でもそれは、この仕事をするには都合がいい。
マリー
娼館には、避妊具なんて上等なものは置いていない。
マリー
妊娠をして、堕胎のために休む娼婦や、生むためにやめる娼婦など珍しくない。
男
ともすれば他の男なんてものは都合よく、ないからしょうがないと中に吐き捨てていく。
男
膝の上に頭を乗せた男は、女から見えない方に顔を向け、サングラスを外し、ベッドの隅に置く。
男
犯し倒しても、何もしなくてただ寝たって、何ならこの女の体を傷つけたって。
男
元の世界に居る時から、この男を縛るものは極端に少なかった。
男
それは自由というだけではなく、何も与えられなかっただけだ。
男
この娼館に来た時だって、男は名前を言わず、はぐらかしてきた。
男
『どうせ明日は来ないかもしれない客の名前なんて覚えててもしょうがねえよ、お兄さんとか適当に言っとけ』
マリー
恋人のように名前を呼ばれたがる客はいるから、少し不思議だった。
男
「俺の名前はさ……アーユスって呼ばれてんだけどさ」
男
「それってなんつうの、仲間内で言われてるだけで」
男
「ここに来た以上、なんかなんも名前……アーユスって言われる筋合いもなくなっちゃって」
男
「コードネームみたいなもんで、あんまりいい思い出もないし」
マリー
そうだ、あのひとにやめろって言われたんだ。
マリー
死んだ子供の名前を呼ぶのなんかやめろって。怖い顔で。
男
名前を貰って死ぬ子供と、名前もなくただ打ち捨てられて生きる子供のどちらが良いのか。
男
少なくとも後者が前者に羨みを持つことは確かだった。
男
「なあ、適当になんか、それっぽい名前を言ってくれよ」
男
傷つけられた飼い犬の、手を差し伸べられて逃げる様に似ている。
マリー
男が引いていくのを、それらしい言葉で引き留めることができない。
マリー
てきとうに名前ぐらい、いくらでも、つけてあげればいい。
マリー
自分がつけた名前をあなたが名乗って、それで、裏切られて、その名前が呪わしいものになるのは、
男
きっとどんな意味のある名でも、この男は喜んだだろう。
男
暗い部屋と身に残る戦いの疲労。それらが少しずつ警戒心をぼんやりとふやかしていく。
男
親に名を与えられず、野良犬のように生きて、今は見下せる娼婦の膝の上で安らいでいる。
男
末裔が動物だというのなら、それは野を彷徨うけものの自分も同じで、人未満であるのなら。
男
にんげんと話すことはできなくても、どうしようもない畜生同士。
男
他人事のような、淡々とした、いつもと変わらない声。
マリー
はいとか、そうですかとか、返せないままただ聞いている。
男
「だから、名前もつけらんなかった、それだけで」
男
さほど広くないベッドの上で緩く丸まるような姿勢。
マリー
こちらへ向けられた丸まった背を、流れる派手な髪の色を見つめている。
男
誰にも望まれなかった子供があなたの膝の上にいる。
[ マリー ] HP : 15 → 14
マリー
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
マリー
2d6+2>=7 (2D6+2>=7) > 5[2,3]+2 > 7 > 成功
男
2d6+3>=7 (2D6+3>=7) > 6[3,3]+3 > 9 > 成功
[ マリー ] こども : 0 → 1
マリー
ただ暗い部屋、膝の上にあなたを乗せて、吐息が震えている。
マリー
どういう時に、こういう風に息が乱れるか、あなたはきっと知っている。
男
ただ、なぜ女がそういう反応をするのかわからなかった。
マリー
ごめんなさい、と、ごく小さく女が言葉を紡ぐ。
男
無理やり息を吸い、心臓と一緒に暴れる肺を強引に動かす。
男
可愛そうな話に泣いた末裔、に落ち着けることも出来ない。
男
自分が膝を置いている女が、ひどくおそろしいものに変わってしまう心地だった。
マリー
男を膝の上に置いたまま、頭を抱えて泣いている。
マリー
「忘れろって、死んだ子供の名前、なんか、呼ぶなって」
男
ただ、触れ合ってはいけない疵がふれ合ってしまったことへの困惑。
男
そうして、産める方を残すのは、末裔にあっては自然なことに思えた。
男
「きっと、名前を考えられたんなら、その、子供は……」
マリー
あなたに追い詰められて、暴かれて、最後には許しを乞う時のように。
男
人を暴き、泣かせることを喜んでいた男の姿はどこにもない。
男
捨て子が一人、寒さに震えるように見を丸めているだけだ。
男
他人の流産と、他人の望まれない子に、何の関係もない。
マリー
本当は殺したくないとか、こんなことはしたくないとか言われたって、犯してコインを奪って放り出したなら、死んでくれと言ってるようなものだ。
男
望まれたかった、なんて願望は子を失った女には何の関係もない。
男
殺すには、この弱い男は余りにも都合がいい。都合がいいはずだろう?
[ マリー ] ティーセット : 1 → 0
[ 男 ] ティーセット : 2 → 1
男
吹きすさぶ風から身を守るように、風の吹かない窓のない部屋の中、蹲ってただ耐えている。
GM
7:帽子屋の末裔だ。ムードを求める。お洒落を解かせても、その帽子までは脱がせない。
GM
次から2ラウンド目、マリーの行動に入っていきます。
マリー
ランプの火が揺れ、心もとない明かりが照らす暗い部屋だ。
男
男が部屋に来ることも、サングラスをしてやってくることもかわらない。
マリー
ベッドは多少の手入れはされて、客を迎える準備はされているけれど、清潔ではない。
マリー
そこにほかの人間のにおいが薄っすらと漂うのも。
マリー
女があなたの手を引いて、狭い部屋に招き入れるしぐさも。
マリー
「来てくれないんじゃないかと、思ってたんです…」
マリー
娼婦らしいセールストークをなぞるまま、声は弱々しく闇に溶ける。
男
視線の合わないサングラスの向こうで、変わらない笑顔を差し出そうとして、やめた。
男
「けれどお前にはそんなに客もつかないだろうしな、来てやらないと」
マリー
この人を逃がしたら、たぶんもうおしまいだ。
マリー
やり直しなんてする日数は、ほかの誰かを殺すための日数はない。
男
言いながら、ぼんやりとした言葉だと何故か思った。
マリー
女の手は、あなたの手を握ったまま動かない。
マリー
このひととどんな話をすればいいのかわからない。
男
あのような話をして、あのようなことを聞いては。
男
そこに、居てはいけない者を見出してしまったなら。
男
抱いて、こいつは唯の娼婦なのだと自分が思い直さなければならない。
男
少し美人なだけで、要領が悪そうで、胸も尻も小さい、格安娼婦の、ただの末裔だと。
マリー
いつものように抱けば、いつものように最後には乱れるだろう。
男
そうしなければいけない、そうしなければ、何もできなくなる。
男
そうでなければ、愛てしまったら、愛を求めてしまったら。
男
そんなものを抱えてどこに行けるっていうんだ?救世主の責務を抱えて、この荒野を、2人で?
男
いつものように女の体を準備するでも、押し倒すでもなく、ただ抱きしめる。
男
この男がなんだったとしても、あなたの手を引いて連れていくような夢物語は、ここにはないように思えた。
マリー
もし本当に、僕がただの、記憶を失った公爵夫人の末裔で。
マリー
僕には責務なんかなくて、だれも騙す必要も、だれを殺す必要もなかったら。
男
胸がかきむしられて、どうしようもなく苦しくて耐えられない。
マリー
「僕の考えた名前で、あなたが呼ばれてくれたらって」
男
そんな物をもらってしまえば、もうどこにもいけなくなる。
マリー
「あなたがそれで、喜んでくれたらうれしいって」
男
「お前の知らないとこで野垂れ死んじゃうんだぜ」
マリー
公爵夫人の末裔ではない、コインを奪われた弱くて愚かな救世主の女で、身体を売って言葉を騙ることしかできないから。
男
末裔だと思っているから真実を語ることができる。
マリー
すべて、嘘から始まっている。ずっと騙している。
マリー
騙して、心を開かせて、殺すつもりで話している。
男
あなたの目論見通りに、この男は騙され、心を開いている。
マリー
あなたを待っていたのも、あなたに体を開いたのも、あなたにこうして抱かれているのも。
男
きっと名前をつけたなら、この男は心からの笑顔すら見せてしまっただろう。
男
そしていつかその時が来れば、きっとあなたが騙された時のように、この男も信じられないって顔をして。
男
男はというものの、きつく抱き締めて、それだけだ。
マリー
*男の『孤独』を愛で抉り、クエスト1を行います。
マリー
2d6=>7 (2D6>=7) > 8[5,3] > 8 > 成功
[ 男 ] 孤独 : 1 → 0
マリー
立ち上がって、あなたの後ろに続こうとする。
男
そう言ったきり、女が立ち上がる暇も与えずに、狭い部屋を出ていく。
男
他の客が来ればいいな、とか今日1日暇でいたいのか?とか、言える皮肉があったはずだ。昨日までは。
男
男はさっさと出ていって、店主に笑って嘘を語り、結局金を置いていった。