OP BGM:魔王魂ピアノ38

魔王魂

通常BGM:Certain morning

Presence of Music

ED BGM:全てに終わりがあるように

DOVA-SYNDROME

GM
窓のない部屋は、いつ来ても夜のように暗い。
GM
亡者から取った脂が燃える、どこか饐えた匂い。
GM
闇の中で小さな火がぼんやりと揺らめいている。
GM
隅には使い古した、清潔とは言い難い小さなベッド。
GM
それが、この部屋のすべてだ。
マリー
「よかった」
マリー
音を遮るとは思えない扉を開けて、女はあなたを振り返り、どこかほっとした顔をしている。
マリー
「あなたを待っていたんです」
マリー
「もう来てくれなかったら、どうしようかと思ってた」
マリー
手を引いて、招き入れる。
GM
はじまるのは、二人だけの親密な行為。
GM
マリー
公爵夫人の末裔、マルガレーテと言います。キャラクターシート。
マリー
呼びづらいかと思うので、できればマリーとお呼びください。
マリー
マルガレーテは公爵夫人の末裔と名乗っていますが、それに相応しい行儀のよい振る舞いや豊富な知識にはいささか欠けているように見えます。
マリー
それもそのはずで、本人は記憶を失って何も覚えていない、と主張しています。マルガレーテという名前も、行倒れていた彼女を拾った娼館の主人につけられたものです。
マリー
そのため、本当に公爵夫人の末裔かは分かりませんが、その整った容貌と美しい黒い髪、人間と変わらないからだのつくりを確かめれば、あまり疑う余地はないと思えるでしょう。
マリー
亡者に襲われたか、あるいは救世主に襲われたか。
マリー
公爵家は救世主の存在に懐疑的です。救世主に対して無礼な振る舞いをして、それに相応しい応報を受けたのかもしれません。
マリー
いずれにせよ、マリーはすべてを覚えておらず、何も知らない、と言うように振る舞っています。
マリー
この国のものの誰もが知っているルールにさえ時に曖昧です。
マリー
──もちろん、その経歴は偽り。
マリー
マリーはコインを喪った救世主です。
マリー
堕落の国に呼ばれ、右も左も分からなかった彼女を拾ったのは、彼女よりも少し早くこの世界にやって来ていた救世主でした。
マリー
救世主はマリーに対して最初は親切に振る舞っていましたが、三十日ルールの期限が迫ると余裕をなくし、マリーを襲ってコインを奪いました。
マリー
のしかかられて犯された時、殺されるものだとマリーは思っていましたが、救世主はコインを奪うだけにとどまりました。理由は分かりません。
マリー
情が湧いて、コインを奪って力を増せばほかの救世主を見つけやすいだろう、と思ったのかもしれません。
マリー
いずれにせよマリーは責務の迫った状態で放り出されることになりました。
マリー
どうにかして、残りの日数で誰かひとり、救世主を殺さなければいけません。
マリー
心の疵は『おんな』と『こども』です。この世界に来る前には夫がいました。
マリー
マリーの説明は以上です。
マリー
次に、あなたのことを話してください。

どこにでも居る、少し悪い救世主です。キャラクターシート

末裔には優しくなく、ーー気まぐれに施しもするが、概ね小さな害を振りまいて、落ちて1ヶ月にも満たないこの世界を生きてきました。

それを反映するように、元の世界でも良い人間ではなく、ついには他人の罪を被されて収監されていたところをこの世界に堕ちてきた男です。

亡者に襲われ、救われ、この世界の有様を知りましたがーーつまりやることはこの国でも変わらない"暴力"であるとわかれば気楽なもの。

債務の話を教えられ、選んだのはその場に居る2人と共謀して自分を助けた救世主の少女を殺すことでした。

救世主なのだとのたまう子供を見て腹が立ったのかもしれません。

その心中を誰かに教えることはありませんでしたので、どうでもいいことですが。

2人から逃げるように別れ、辿り着いたのがこの娼館のある街。

どこの世界でも人間?が集まればやることは同じなのだと感心しました。

けれどこの世界には末裔という、救世主なんてものをただ崇める生き物がいる分、なんなら元いた所よりやりやすいかもしれないーー道行きで末裔から金銭を"分けてもらい"ながら男はそう思いました。

自分にはまだ債務までの期日があるーーそういう余裕のある男の足が、娼館に向かうのは自然なことでした。

疵の話でもしていきましょう。

母。

娼婦の元で産まれましたが、その生は一切望まれたものではありませんでした。

孤独。

放置され、捨て子になるも同然で生きた男の行く道はストリートチルドレンか、色々な死に方をひとつふたつ選ぶか。

そういった世界で生きていくには、誰かを信用するなんてことをしていてはなりません。

本心を見せず、虚勢を張って、誰も信じずに。

まあ今はそれが苦でもないみたいですね。孤独を満喫しています。

そのためソロの殺しやすい男となっております。よかったですね。

おおよそ紹介はこんなところです。
GM
ありがとうございます。
GM
誰も信じるべきではなく、できかけた仲間に背を向けて一人を選んだあなたですが、街の娼館でひとり、お気に入りの娼婦を作りました。
マリー
その娼婦に会いに来るのは、何度目か、少なくとも初めてではありません。
マリー
手を差し出して、マリーはあなたを部屋の中に招き入れます。
マリー
口元には客に媚びる女としてはややぎこちない笑み。
GM
あなたの背後で、薄い扉が軋んだ音を立てて閉まりました。
マリー
「こんばんは、救世主さま」
マリー
「それとも、こんにちはかな」
マリー
「おはようってことはないと思うんですけど、ここにいると時間がちょっとわからなくなって」

「そうだろうな、今外は真っ昼間だぜ」

笑って、くたびれたベッドに座る。
マリー
隣に寄り添うように腰を下ろして、部屋に視線を巡らせる。

暗くて陰気な部屋。
GM
ふたりの体重を受けたベッドも、あまりよろしくはない音を立てている。

どこかこの女の雰囲気に似通ったものがある。
マリー
笑みを浮かべていても、娼婦らしい振る舞いをしても、マリーの振る舞いはどこか暗い。辛気臭いと言っていい。

女のいまいち不慣れな媚び方に、その空気の中心にある暗さに。

この部屋の暗さは合っていた。
マリー
まるで、世界で一番自分が不幸だとでも言いたいような。
マリー
「調子はいかがですか」

「俺ぁいつだって絶好調よ。ってもまー、なんかスゲー遠くから来た末裔にさ、俺の村の亡者を倒してくれなんっつわれたけど、それを倒すぐらい絶好調ってワケじゃねーな!」
マリー
「あはは」

末裔の決死の思いを受け取ることもなくぽいと捨てた話を笑いながら。
マリー
あなたに追従するように笑う。

他の救世主の気配に過敏になり、ドブネズミのように逃げ回っている話はせず。
マリー
「亡者はねえ、僕たち──末裔にとっては大変だけれど、救世主さまたちには斃してもしょうがないですからね」

末裔という生き物は都合がいい。
マリー
「次から次へと湧いてくるし、殺しても、……ルール、でしたっけ? それが満たせるわけじゃない」

「そうそう」

「まっ、その末裔クンには悪いけど!」
マリー
女は記憶を失っていることを公言し、あなたにもそれを伝えている。

悪いなんて思っても居ない声色。
マリー
この国のことを話すとき、どこか自信がなさそうにする。

「俺ぁここに来るっつー責務があるからさぁ~」

世界を茶化す。
マリー
「うれしいな」

女が何も知らないことが都合がよかった。
マリー
話を逸らすような冗談に乗って笑う。

末裔というやつは他の救世主と比べて軽蔑するようなこともない。
マリー
男の話を聞いて、女もどこか居心地の悪さを感じていたから、ちょうどよかった。
マリー
だれかに頼らなければいけない、救世主に助けを求めなければいけない。
マリー
縋る手を振り払われて踏みつけにされたとしても、何の文句も言えないのだ。

弱い生き物だ。

今もどこかで死んでいく。弱いからだ。

自分を深く知ろうとはせず、抉ろうとはせず、舐めようともしない、ただ救世主を崇めるーー力のない末裔というやつは、自分にとってちょうどいい生き物だった。
マリー
末裔の娼婦なんてものは、──特にこんな、ろくに洗われてもいないようなシーツの上で男と話す娼婦というのは、ことさら弱い存在と言える。

陰気で、変に明るくも眠りネズミのようにマグロでもなく、ちょうどいい。

昔自分のいた世界で見た見たアジア人のような容姿が郷愁でも思い起こしたのだろうか?

まあその時は、公爵夫人の末裔なんていう気位の高そうな女を犯すのは面白そうだ。とかそんなことを思って選んだだけなんだが。

「本当にうれしいのか?」

へらへらと笑う。
マリー
「本当ですよ」
マリー
笑い返す。
マリー
「あなたを待っていたんです、ずっと」
マリー
あなたが前にこの娼館に来たのは、ほんの数日前だ。

「いやあモテちゃって困るなあ!」

困っちゃいない笑い声。
マリー
「ふふ」
マリー
「じゃあ、ほかの女の人のところに行ってたんですか?」

末裔相手にモテるなんて言っても虚しいだけだが。
マリー
何気なく笑って、あなたに少し体を寄せる。

行ってもお前はなんとも思わないだろう?とは言わず。

「そんなことないってぇ~」

軽快な言葉。
マリー
「ほんとう?」
マリー
うわべをなぞるだけのやりとりだ。

寄せられた体を受け止めるように、腰に手を回す。

娼婦なんていうのはそういうものだ。

「ほんとほんと」
マリー
「なら、よかったな」
マリー
「あなたがほかのひとのところへ行って、僕のところへもう来てくれなかったら」
マリー
「どうしようかと思うもの」

「そんときゃ俺を待ちながら他の客を取りな」

女の真実を考慮しない、悠長な言葉。
マリー
少し前から、この男には目をつけていた。
マリー
期日も迫っている。ふらっといなくなってもらっては困る、と言うのは、そこは本音だ。

典型的なチンピラで、誰の得にもならないつまらない男。
マリー
コインの枚数も、たぶん多くない。
マリー
この国に来て間もないことは、話を聞いて分かっていた。

そのような男がこの世界の役に立つのは、他の救世主の命を伸ばすことだけだろう。
マリー
「ひどいことを言うんですね」
マリー
そう言いながらも、女は笑っている。

「俺が優しく見えるか?」笑う。

笑って、腰に回した手が、胸に登る。
マリー
「見えますとも」

「ははっ」
マリー
「だから、勘違いする」
マリー
「もしかしたらあなたが僕を、ここから連れ出してくれる──」
マリー
「救世主さまなんじゃ、ないかって」

「ハハハッ」
マリー
男の指先を受け入れる。それが娼婦の仕事だから。

胸を温めるように弄びながら、末裔の妄想を笑い飛ばす。

「俺はだ~れも救いやしねえよ」

子供めいた妄想を嫌って、時折辛辣になる。
マリー
「ふふ」

このような荒野に夢などないばかりに。
マリー
男の言葉が棘を帯びたのを気取って、笑うにとどめる。

ここで泣いて悲しむ末裔だったらこの女のところに通いはしなかった。
マリー
自分から体を寄せて、男にしなだれかかる。
マリー
女の言葉は冗談めかして、笑い飛ばすのに気後れも気兼ねもする必要はない。

女の体を両手で抱き留めて、そのまま娼婦の服の下に滑り込ませて肌を楽しむ。

末裔は、救世主じゃない。

自分を殺す相手ではない。

この男はまだそう思っている。
マリー
軽い冗談も、警戒のない所作も。
マリー
自分が末裔だからに他ならない。
マリー
でも僕はこのひとと同じ救世主だ。

女が救世主なんてことも自分を殺そうと思っていることなんてことも気づきもせず、安いベッドの上に二人寝そべって、二人分の服を剥いでいく。
マリー
寝台に一緒にゆるやかに倒れ込みながら、残りの日数に思いを巡らせる。
マリー
三十日のあいだに、ひとりは救世主を殺さなければいけない。
マリー
そうでなければ、亡者になる。だから、殺さなければならないのは絶対だ。

あなたの横には、殺すに適した相手。
マリー
湿った息を吐き出し、手から少し逃れるように身じろぎをする。
マリー
それでも、チャンスはきっと、一度きりしかないだろう。
マリー
ちゃんと、準備をしなくちゃいけない。
マリー
もっと、信じてもらわなければいけない。
マリー
そうして、その時こそ、
マリー
あなたは僕を本当に救ってくれるし、ここから連れ出してくれる。

女の思惑に気づかない男は、女の体を存分に楽しむ。

この末裔のいいところが一つある。
声を我慢しようとするのが、なにかを取り繕おうとするのが面白い。
マリー
尊厳を守ろうとするように、矜持を保とうとするように。

末裔なんかにもこういうのがいるのだと。
マリー
こんな場所にいて、自分から男に体を開いて。
そんなもの持ちようがないのに。

小さな、コインの力でくしゃりと潰せそうなその矜持。

嫌々娼婦をやっているような女。

それを壊して、声を出させるのが面白かった。

女の心に残った、なにかを踏みつけにするのが。
マリー
最後は許しを乞うことになるのに。

取り繕った貞淑な体面が壊れて、乱れるところ。

過ぎた快楽が苦しみに変わり、助けを求めるところ。

そのような所を、楽しんで、好んでいた。
マリー
そういうところが怖かった。
マリー
自分が自分でなくなるようで恐ろしかった。
マリー
でも、だから、この人にしよう。
マリー
それは他愛のない妄想ではなく、もう少し血に塗れている。

この男はあなたを傷つけているのだから。

相応の贖いをさせてもかまわない。
マリー
そのはずだ。
GM
GM
GM
お茶会に入ります。お茶会の順番はPC①→②で固定となります。
GM
また、クエストがあるため、それを提示します。

クエストNo.1(PC1のみ) 心を奪う
概要 :魅了し、引きつけ、意のままに動かす
条件 :PC1であること・PC2を舐める行動にのみ組み合わせられる
目標値 :7
消滅条件 :お茶会終了と同時に消滅
成功 :PC2の次の行動のクエストを指示することができる
失敗 :PC1の心の疵を回復するか悪化することで、行動とクエストの両方を成功したことにしてよい。この決定はPC1が行い、PC2が内容を指示する
その際、心の疵についてPC1自ら相手に明かすこと

クエストNo.2(PC2のみ) 心付けを渡す
概要 :あなたは相手に気に入られたい。だから、贈り物をする。
条件 :PC2であること
目標値 :自動的に成功
消滅条件 :お茶会終了と同時に消滅
成功 :PC2は凶器以外の宝物を全て破棄し、PC1は合計価値10以下の衣装か小道具を獲得する。PC1が内容を指示する。

クエストNo.3(PC2のみ) 心を開く
概要 :あなたは相手をもっと内側に招きたい。だから、心の鍵を渡す。
条件 :PC2であること
目標値 :自動的に成功
消滅条件 :お茶会終了と同時に消滅
成功 :PC2はPC1に対し、技能による同意や許可を求められたときに拒否できなくなる。
(主に調律について。他には伝授、貢物、愛染など)

クエストNo.4(PC2のみ) 心を染める
概要 :あなたは相手を心から望む。だから、相手の望むままになりたい。
条件 :PC2であること
目標値 :自動的に成功
消滅条件 :お茶会終了と同時に消滅
成功 :自身のデッキから技能を一つ入れ替える。その際、PC1が内容を指示する。

クエストNo.5(PC2のみ) 心を解く
概要 :あなたは相手を信じ切っている。だから、装備を遠ざけても気づかない。
条件 :PC2であること
目標値 :自動的に成功
消滅条件 :お茶会終了と同時に消滅
成功 :凶器を『素手』に変更する

クエストNo.6(PC1のみ) すべてを明かす
概要 :すべてを明かし、救世主であることを認め、許しを得る
条件 :PC1であること
(このクエストを行う場合に限りに、PC1はお茶会終了時に追加の手番を得てもよい。
 GMはお茶会終了時に確認すること)
目標値 :PC2が成否を判断する
消滅条件 :成功するか、お茶会終了と同時に消滅
成功 :No.2を除くすべてのクエストで得た効果、心の疵MOD『逆棘』、裁判MOD『不意を突く(PC1)』を破棄し、裁判の相手を変更する
(PC2は6ペンスコインを3枚か6枚を融通し、能力値の合計が2、1の救世主としてそれぞれ作り直しても良い。GMの判断により、裁判を省略してもよい)
失敗 :No.2を除くすべてのクエストで得た効果、裁判MOD『不意を突く(PC1)』を破棄する

GM
お茶会について、お茶会MOD『セルフ横槍(PC1)』の効果によりPC①のみ、PC②から自分に対する舐め・抉りなどの行動に対して横槍が可能です。
さらに、心の疵MOD『逆棘』によって、裁判の際にはすべての○が●に変わります。
GM
GM
そういうわけで、最初はマリーの行動になります。
GM
マリー
ことが終わって、シーツの上に沈んでいる。
マリー
暗い部屋の中に女の白い体が浮かび上がっていた。

女の横に上体を起こして座り、女の体を見下ろしている。

サングラスももう着けている。

こんなに暗い部屋の中でも男はサングラスを掛ける。救世主だから見えるらしいが、奇妙なものだ。
マリー
涙の浮いた目が、ぼんやりとあなたを見上げている。
マリー
たぶん、疵にかかわることなんだろうな、と思う。

流石に情事の盛り上がって来たときには外すが、そうしてからこの男と目の合うことはない。

サングラス越しに視線が合う。笑う。
マリー
ぎこちなく笑い返す。

「落ち着いた?」
マリー
「──ええ、すっかり」
マリー
この堕落の国来た時、最初に会った救世主は、心の疵のことをあまり教えてくれなかった。
マリー
ただ、何人か救世主の客を取るうちに、よく分かってきた。
マリー
特にこんな場所に来て、わざわざ女を抱くような救世主は、分かりやすくさえある。
マリー
のろのろと体を起こして、指先が服を探す。
マリー
指先はまだ震えている。

末裔というのはどいつもこいつも動物のようなやつだから、ただの性欲解消にちょうどいい。

その中でも少しでも面白いやつがいるなら、そいつで遊ぶだけだ。

女の手元に、服を寄せる。
マリー
「ありがとうございます」

おう、と小さな笑い声。
マリー
手を伸ばす途中で、うっそりとため息をついた。
マリー
「いつもこうなっちゃうな」
マリー
「あなたが上手だから」

まだ時間はある。これからどうするか、なんてことをぼんやり考えながら。

女の言葉にまた笑う。

「お褒めの言葉ど~も」
マリー
「ほんとうですよ」

荒れた人生にはそれなりの経験人数がある。

嫌がる女を無理やり絶頂させるような遊びを数人がかりでやる、そういった趣味の悪い仲間もいた。
マリー
…荒れた人生には、それなりの経験人数がある。
マリー
容姿がよかったからなのか、それとも生来の気弱な性格のせいなのか。

それとも両方か。
マリー
堕落の国に落ちてくる前、夫を持つ前にも、こういうことをされたことがあった。
マリー
商売ではない。恐ろしかったが、ずいぶん嫌がったと思う。
マリー
堕落の国に堕ちてきてからも。
マリー
けれど、運がよかったのか悪かったのか、そういう趣味の悪い相手にはあまり出会ってこなかった。
マリー
「僕ねえ」
マリー
「あなたと違って、あんまりモテないんですよ」

「末裔にモテるとかあるんだ?まあ末裔ってすぐくっついてそうだもんな」
マリー
「そうじゃなくて、ほら」

多産多死のネズミを想像する。
マリー
「昔のことは覚えてなくて」

「ああ」
マリー
「この店に来てからのことしか覚えてないから」
マリー
「でも、この店のほかの子は、僕よりたぶん、十も若い子ばかりでしょう」

まあ確かにあんまり客ウケしない女かもしれないな、なんてことを思いながら眼下の体に触れる。

「まあそうだな」
マリー
服をまだ着ないまま、あなたにまた体を寄せる。
マリー
「あんまりお客さんが来ないんですよ」

「けどどうも俺から見ると、ガキすぎるというか……」

……しかしそれでも、ちょうどいい相手はいたはずだ。

別にこの女でなくても良かったはずなのだが。
マリー
「だから、あなたが来てくれなくなったら」
マリー
「ひとりで待つことになるかも」
マリー
笑っている。

「……」

「まあそんときゃ、他の客を待ちな」

笑う。

自分を待つ、弱い娼婦の女。

そういった弱さが見えるたび、やんわりと突き放すようなことを言うクセがあった。
マリー
傍に寄るものを跳ねのけようとする動きがあった。
マリー
でも、強い拒絶ではない。

弱いものを恐れるような。

もっと精確に言えば、弱いこの女を、他の者に対するように扱ってしまう自分を。

自分は救世主で、相手が末裔なら、取り扱いは程々に気をつけなければいけないということを知っている。

この街に来る道すがらで、末裔を少し殺したことがある。

自分に頼ろうとする、弱いいきものを。

大事なものを取り上げて殺すのが楽しかった。
マリー
「でも、だから今日は、あなたが来てくれてよかったんです」
マリー
ぼんやりと笑っている。
マリー
手があなたの腕に触れる。
マリー
「あなたが来てくれなかったら、僕はきっと、今日ひとりだったから」

ただのしたたかな娼婦であれば、楽しみのために殺す必要もない。

この言葉も、心からの言葉ではなくて、セールストーク。
マリー
「客が取れないと、困るでしょう?」
マリー
弱ささえ売り物に過ぎない。

長く時間をとっても許される、都合のいい女。

そういうキャラクター。生き物。

だから安心してその手を取れる。少し荒れた、細い指先をただじっと見る。

「そうかいそうかい、感謝してくれや」

笑って、手慰みのように女の手を見つめている。
マリー
指が腕を撫でて、陰気な目があなたの顔を覗き込む。
マリー
*男の『孤独』を愛で舐めます。
マリー
*ティーセットを使用します。
マリー
2d6+2=>7 (2D6+2>=7) > 6[1,5]+2 > 8 > 成功
[ マリー ] ティーセット : 2 → 1
マリー
「ええ」
マリー
「……僕がこうしていられるのはあなたのおかげ」
マリー
「あなたのことを、ずっと待っていたんです」
マリー
視線が揺れて合わなくなり、それを誤魔化すようにあなたの肩へ口づけを落とす。
マリー
*あ。クエスト宣言忘れてた。

ぃぃょっ

サングラス越しに目が合えば、笑う。

笑う、笑ったはずだった。
マリー
*『心を奪う』を宣言しておきます。次のクエスト提示は『心を開く』

女の視線が震えるのにあわせて、目をそらす。

なんてことのない営業トーク。客が取れない女の泣き言。
マリー
ひとりの男をこんなにまでして引き留めなければいけない、哀れな娼婦。

ただ、誰にも望まれなかった人生だっただけで、このような言葉を掛けられただけで何か思ってしまうのは。

あんまりにもかっこ悪いんじゃないか。

けれど、何故かその日は何も言えなかった。

女が何を思ってそう言ったか、気づくこともなく。

自分の中に湧いた何かを誤魔化したくて、もう一度女を組み伏せる。
[ 男 ] 孤独 : 0 → 1
GM
そうして女はまた、少しのあいだ、声を堪え、身体を逃がして、あえかな抵抗をする。
マリー
最後には、泣きながら許しを乞うことになるにも関わらず。
GM
GM
GM
1d12 (1D12) > 1
GM
1:あなたは誰も客に取らなかった。脱がされるべき店のドレスと下着を自分で脱ぐ。
GM
GM
次はあなたの手番です。
GM

1日の間をおいて、男はやってくる。前と変わらない鷹揚なふりをした笑顔で。

ただまあ、この日はわずかに血の匂いも伴って。

救世主にはままあること。
マリー
女もいつものようにあなたを出迎える。
マリー
よくあることだから、血の匂いにもすぐには触れない。

「よう、元気かい」
マリー
けれど少しだけ、暴力の気配に怯えた気配がある。
マリー
「はい」
マリー
「お待ちしてました」

弱さを嫌いもするが、怯えられる分にはいくらか寛容であった。

そういった弱さは、自分の身をそれほど傷つけないように感じたから。
マリー
あなたの手を取って、部屋に招く。

薄暗い、シケた部屋に。
マリー
ベッドは冷たく、亡者から取った脂を燃やすランプの、どこか饐えた火の匂い。

それでも、地面よりはマシで、一人の部屋に冷たくそそぐ月光よりはマシだった。

暗くて、チンケなランプの灯りぐらいがあればいい。

来て早々冷たいベッドの上に、自分の部屋の如く乗り込んで寝そべる。

「疲れた」

「今日は疲れたから、ちょっと休んでからな」
マリー
「はい」
マリー
当然、文句もなく頷いて、あなたの寝そべるベッドの端に座る。
マリー
少なくともこの娼館では、金を払った以上、この部屋の主は今はあなただった。

女にとっても楽なのだから、何も言うことはないだろう。
マリー
あなたが救世主であれば、なおさらだ。
マリー
腰かけるだけで、茶どころか水さえ出ないけれども。

もともと上等な店には行けない男だ。

このぐらいがちょうどよかった。

……女にとってもちょうどいい、殺しやすい、孤独な男。

今は女と同じ部屋にいることを選んでベッドに寝そべっている。
マリー
いくらほかのひとのところに行ったっていい。
だれを殺したってだれを抱いたっていい。
マリー
なにをしても、あなたはどうせひとりだから。
マリー
僕と同じだ。

一時埋められた孤独は、後ほどより手ひどく裏切られることを考えようともせず、暗い部屋でぬるく人といる心地を味わっていた。

「でも何もしねーってのももったいねーな!膝枕とかしてくれよ」

ベッドの上に座れと手招き。
マリー
「はあい」
マリー
ゆるく返事をして、靴を脱いでベッドの上に足を上げる。
マリー
あなたが寝やすいように膝を畳んで座った。

女を脱がすでもなく、適当に座らせ、こいつも適当に頭を乗せる。
マリー
女は痩せて骨ばっている。脚にはまあ、肉がついているので、寝心地はまあまあだ。

貧相な女だ。

けれどまあ、かまわない。

それは疵の奥にある、母親というものを忌避する心から来ているのだが、それをこの男は見ないようにしている。
マリー
背は堕落の国のほかの末裔よりも少し高く手足も長いが、肉付きはよくない。
マリー
胸も大きくなく、尻も小さい。

母になるのに向いてない体。
マリー
年齢もあるが、客があまり取れないとしたら、そのあたりも理由だろう。

おまけに陰気だ。
マリー
母になれなかった。
マリー
母になれない。
マリー
でもそれは、この仕事をするには都合がいい。
マリー
娼館には、避妊具なんて上等なものは置いていない。
マリー
妊娠をして、堕胎のために休む娼婦や、生むためにやめる娼婦など珍しくない。
マリー
自分にはそれがない。もうない。

ともすれば他の男なんてものは都合よく、ないからしょうがないと中に吐き捨てていく。

末裔だって救世主の子は喜ぶ。

けれどこの男は、いつも外に捨てていく。

女がどのような体であろうとも。
マリー
こどもができないから大丈夫、などと。
マリー
女は男に言ったことはなかった。
マリー
言えなかった。

たとえ言われても男は。

膝の上に頭を乗せた男は、女から見えない方に顔を向け、サングラスを外し、ベッドの隅に置く。
マリー
「眠りますか」

「それもいいな」
マリー
「お疲れなんでしょう」

自由だ。

この部屋では何をしてもよかった。

犯し倒しても、何もしなくてただ寝たって、何ならこの女の体を傷つけたって。
マリー
殺したって。

自由とは、縛られないということだ。

縛られていない、何にも。

名前すら。

元の世界に居る時から、この男を縛るものは極端に少なかった。

それは自由というだけではなく、何も与えられなかっただけだ。

この娼館に来た時だって、男は名前を言わず、はぐらかしてきた。

『別にいいだろ名前なんて』

『どうせ明日は来ないかもしれない客の名前なんて覚えててもしょうがねえよ、お兄さんとか適当に言っとけ』

なんて。
マリー
恋人のように名前を呼ばれたがる客はいるから、少し不思議だった。

「俺は」

静かな、女に言っているのか定かでもない声。

「俺の名前はさ……アーユスって呼ばれてんだけどさ」

「それってなんつうの、仲間内で言われてるだけで」
マリー
目を瞬かせる。

「ここに来た以上、なんかなんも名前……アーユスって言われる筋合いもなくなっちゃって」

「どうしよっかなって」
マリー
「どうしようかな、なんです?」

「他に名前ないから」
マリー
「その名前、嫌いでしたか」
マリー
問いながら、思い出す。
マリー
名前。
マリー
名前を、考えていた。
マリー
男の子だったら。女の子だったら。

「コードネームみたいなもんで、あんまりいい思い出もないし」

「親に着けられた名前もないし」
マリー
そうだ、あのひとにやめろって言われたんだ。
マリー
死んだ子供の名前を呼ぶのなんかやめろって。怖い顔で。

親に呼ばれた事もない。
マリー
どんな名前で呼ぶはずだったんだっけ。
マリー
ちゃんと考えたのに。

名前を貰って死ぬ子供と、名前もなくただ打ち捨てられて生きる子供のどちらが良いのか。
マリー
女からの相槌は途絶えている。

少なくとも後者が前者に羨みを持つことは確かだった。

女の顔を見上げることはしない、できない。

「なあ、適当になんか、それっぽい名前を言ってくれよ」

「今日からそれでやってくわ」
マリー
「…………」
マリー
「え」

「嫌ならいい」

笑って、さっと引いていく。
マリー
頭が動かなくなる。

傷つけられた飼い犬の、手を差し伸べられて逃げる様に似ている。
マリー
男が引いていくのを、それらしい言葉で引き留めることができない。
マリー
てきとうに名前ぐらい、いくらでも、つけてあげればいい。
マリー
自分がつけた名前をあなたが名乗って、それで、裏切られて、その名前が呪わしいものになるのは、
マリー
きっと僕にとってはいいことだから。
マリー
なのにできない。

きっとどんな意味のある名でも、この男は喜んだだろう。

暗い部屋と身に残る戦いの疲労。それらが少しずつ警戒心をぼんやりとふやかしていく。
マリー
そのことにさえ気が付かず、硬直している。

親に名を与えられず、野良犬のように生きて、今は見下せる娼婦の膝の上で安らいでいる。

末裔が動物だというのなら、それは野を彷徨うけものの自分も同じで、人未満であるのなら。

自分の事を話してもよいのではないか。

にんげんと話すことはできなくても、どうしようもない畜生同士。

「俺は」

「まあ、親が間違えて産んだみたいなんだ」
マリー
「…………」
マリー
回らない頭に、男の言葉が染み入ってくる。

「産むつもりなんてなかったって」

他人事のような、淡々とした、いつもと変わらない声。
マリー
はいとか、そうですかとか、返せないままただ聞いている。

「だから、名前もつけらんなかった、それだけで」

さほど広くないベッドの上で緩く丸まるような姿勢。

「名前をつけるってどういう気持なんだろうな」

ぼんやりとした言葉。
マリー
こちらへ向けられた丸まった背を、流れる派手な髪の色を見つめている。

姿かたちは大人の男であるはずだ。
マリー
でもその姿勢はまるで、子供のように。

誰にも望まれなかった子供があなたの膝の上にいる。

*マリーの『こども』をなんかします

*クエスト3 心を開く

ティーセット使用
マリー
*横槍します
[ マリー ] HP : 15 → 14
マリー
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
マリー
*ティーセット使用
マリー
2d6+2>=7 (2D6+2>=7) > 5[2,3]+2 > 7 > 成功
マリー
1d6 (1D6) > 2

*才覚で判定 ティーセットで打ち消し

2d6+3>=7 (2D6+3>=7) > 6[3,3]+3 > 9 > 成功
[ マリー ] こども : 0 → 1
マリー
「…………」
マリー
相変わらず、返事はない。
マリー
ただ暗い部屋、膝の上にあなたを乗せて、吐息が震えている。

末裔には難しかったかな、と諦めを持って思う。
マリー
どういう時に、こういう風に息が乱れるか、あなたはきっと知っている。

ただ、なぜ女がそういう反応をするのかわからなかった。
マリー
「──ご、」
マリー
ごめんなさい、と、ごく小さく女が言葉を紡ぐ。

「ーー」
マリー
しゃくりあげている。

口を開くが、言葉にならなかった。
マリー
「ごめんなさい」

無理やり息を吸い、心臓と一緒に暴れる肺を強引に動かす。

「ど、うじょう、なら、そんな」
マリー
「ちゃんと考えた」
マリー
「考えたんです、考えて」

可愛そうな話に泣いた末裔、に落ち着けることも出来ない。

やめてくれ。
マリー
「かん、がえて、男の子なら、女の子なら」
マリー
男に教えるべきではない。こんなことは。

自分が膝を置いている女が、ひどくおそろしいものに変わってしまう心地だった。
マリー
言葉が止まらない。
マリー
「その名前で、ちゃんと呼ぶはずだった」
マリー
「なのに」

首を横に振る。
マリー
「思い出せなくて」
マリー
「思い出せない……」
マリー
「なんで」
マリー
「ちがう」
マリー
「僕……」

自分の膝を抱え、身を守るように蹲る。

それなのに未だに女から離れる事ができない。
マリー
男を膝の上に置いたまま、頭を抱えて泣いている。

「どうして……」

女への問いではない。
マリー
「忘れろって、死んだ子供の名前、なんか、呼ぶなって」

ただ、触れ合ってはいけない疵がふれ合ってしまったことへの困惑。

「死んだのか」
マリー
「うめ、なかった」
マリー
「ぼくか、こどもか、どっちかだって」
マリー
弱々しい声で応える。

そうして、産める方を残すのは、末裔にあっては自然なことに思えた。

「忘れたのか」
マリー
女が縮こまる。
マリー
記憶を失っている、とあなたに伝えている。
マリー
でもそれは、全てうそだ。
マリー
「思い出せない……」
マリー
「思い出せない」

「俺は、そんな風に思われたことも、ない」

「……だから……」

「きっと、名前を考えられたんなら、その、子供は……」

「よかったと、思う」
マリー
首を横に振る。

慣れていない、不器用な慰め。
マリー
「ごめんなさい……」

「……お前が、いた事を覚えているのなら……」

「こんな世界に産まれるより、ずっといい」
マリー
「で、も、」
マリー
「生まれてきて、ほしかったんです……」
マリー
あなたに追い詰められて、暴かれて、最後には許しを乞う時のように。

胸を押さえるようにして蹲る。
マリー
乱れた息の下で、女が言葉を吐いている。

人を暴き、泣かせることを喜んでいた男の姿はどこにもない。

捨て子が一人、寒さに震えるように見を丸めているだけだ。
マリー
何の意味もない言葉を吐いている。
マリー
自分の子供は死んでいる。何の意味もない。

何の関係もない。

他人の流産と、他人の望まれない子に、何の関係もない。
マリー
本当は殺したくないとか、こんなことはしたくないとか言われたって、犯してコインを奪って放り出したなら、死んでくれと言ってるようなものだ。
マリー
この人だって同じ。

望まれたかった、なんて願望は子を失った女には何の関係もない。
マリー
自分だって同じ。
マリー
殺さないと生きていけないのだ。

誰かを殺さなければ生きていけない。
マリー
誰かを殺さないといけない。
マリー
そう思って、殺す相手を慎重に選んだ。

殺すには、この弱い男は余りにも都合がいい。都合がいいはずだろう?
マリー
わからない。
マリー
顔を覆って泣いている。
[ マリー ] ティーセット : 1 → 0
[ 男 ] ティーセット : 2 → 1
マリー
泣き続けることしかできなかった。

吹きすさぶ風から身を守るように、風の吹かない窓のない部屋の中、蹲ってただ耐えている。
マリー
ただの嗚咽が、部屋の中を満たしている。
GM
GM
1d12 (1D12) > 7
GM
7:帽子屋の末裔だ。ムードを求める。お洒落を解かせても、その帽子までは脱がせない。
GM
GM
お茶会1ラウンド目終了です。

フー
GM
次から2ラウンド目、マリーの行動に入っていきます。
GM
マリー
部屋は変わらない。
マリー
ランプの火が揺れ、心もとない明かりが照らす暗い部屋だ。

男が部屋に来ることも、サングラスをしてやってくることもかわらない。
マリー
ベッドは多少の手入れはされて、客を迎える準備はされているけれど、清潔ではない。
マリー
そこにほかの人間のにおいが薄っすらと漂うのも。
マリー
「……」
マリー
女があなたの手を引いて、狭い部屋に招き入れるしぐさも。
マリー
「よかった」
マリー
「来てくれた」

女の言葉も、同じ。
マリー
「…もう」
マリー
「来てくれないんじゃないかと、思ってたんです…」
マリー
娼婦らしいセールストークをなぞるまま、声は弱々しく闇に溶ける。

視線の合わないサングラスの向こうで、変わらない笑顔を差し出そうとして、やめた。

「……やめようかと思ったよ」
マリー
「……」

「けれどお前にはそんなに客もつかないだろうしな、来てやらないと」

薄く笑って冗談を言う。

本当に、来るのをやめてしまえばよかった。
マリー
「──」

けれどそうすることはできなかった。
マリー
「……ありがとう、ございます」
マリー
もう来ないでほしいと思っていた。
マリー
そうすれば、ほかのだれかを探せる。
マリー
嘘だ。ほかのだれかなんていない。
マリー
「どうぞ」
マリー
「座って」
マリー
この人を逃がしたら、たぶんもうおしまいだ。

この男はあなたに心を開き、許している。

殺すのにこれほど適した相手はないだろう。

あなたに言われるままに座る。
マリー
やり直しなんてする日数は、ほかの誰かを殺すための日数はない。

娼館の中にいては、なおさら。
マリー
隣に、腰を下ろした。

この男もあなたも、行くあてなんてないのだ。
マリー
「この前は」
マリー
「ごめんなさい」
マリー
「ちゃんとできなくて」

「さあ」

「昨日は、俺が疲れてたから寝てただけだ」

謝ることじゃない、と素直に言えはしない。

「別にいい」
マリー
「……はい」

「今日はその分すればいい」

言いながら、ぼんやりとした言葉だと何故か思った。
マリー
「……はい」

あのような話をした後で?
マリー
女は従順に返事をする。
マリー
女の手は、あなたの手を握ったまま動かない。
マリー
あのような話をした後で。
マリー
このひととどんな話をすればいいのかわからない。

それでも、抱かなくてはならない。

あのような話をして、あのようなことを聞いては。

そこに、居てはいけない者を見出してしまったなら。

抱いて、こいつは唯の娼婦なのだと自分が思い直さなければならない。

少し美人なだけで、要領が悪そうで、胸も尻も小さい、格安娼婦の、ただの末裔だと。
マリー
いつものように抱けば、いつものように最後には乱れるだろう。
マリー
そして、最後にはあなたに許しを乞う。

ただの娼婦として!

そうしなければいけない、そうしなければ、何もできなくなる。

そうでなければ、愛てしまったら、愛を求めてしまったら。

そんなものを抱えてどこに行けるっていうんだ?救世主の責務を抱えて、この荒野を、2人で?

女の手を強く引いて、抱きしめる。

いつものように女の体を準備するでも、押し倒すでもなく、ただ抱きしめる。
マリー
「…………」
マリー
あなたがここから連れ出してくれる。
マリー
あなたが、僕を救ってくれる。
マリー
あなたを待っていた。
マリー
されるがままに抱かれている。

客に出来るのはただ金を置いて去る事。

子供に出来ることは親を置いて死ぬこと。

この男がなんだったとしても、あなたの手を引いて連れていくような夢物語は、ここにはないように思えた。

ここにいるのは、そういうふたりだからだ。
マリー
もし本当に、僕がただの、記憶を失った公爵夫人の末裔で。
マリー
僕には責務なんかなくて、だれも騙す必要も、だれを殺す必要もなかったら。
マリー
なんて無意味な想像だろう。
マリー
「なまえ、」
マリー
「考えられなくて」
マリー
あなたの腕の中で、覚束ない声を上げる。

抱きしめた女に、体温がある事が煩わしい。

女が声を発するのが煩わしい。

胸がかきむしられて、どうしようもなく苦しくて耐えられない。
マリー
苦しい。

「別にいい」
マリー
「でも、僕」

「俺にはいらないんだ、そんなもの」
マリー
「あなたに名前を付けられたらって」

「いらないんだ……」
マリー
「僕の考えた名前で、あなたが呼ばれてくれたらって」
マリー
「思っ、て」

幸せだっただろう。

「いやだ」
マリー
「そうできたらいいなって」

そんな物をもらってしまえば、もうどこにもいけなくなる。
マリー
「あなたがそれで、喜んでくれたらうれしいって」

喜んでしまう、求めてしまう。
マリー
「なのに」

「俺みたいなやつに」

「名前をつけたって」

「お前の知らないとこで野垂れ死んじゃうんだぜ」

「俺は救世主だからな」
マリー
「いやだ……」
マリー
名前をつけることができない。
マリー
自分の言うことはすべて嘘だから。
マリー
公爵夫人の末裔ではない、コインを奪われた弱くて愚かな救世主の女で、身体を売って言葉を騙ることしかできないから。

末裔だと思っているから真実を語ることができる。

弱くて愚かで哀れな末裔だと思っているから。
マリー
すべてが嘘から始まっているのだ。
マリー
すべて、嘘から始まっている。ずっと騙している。
マリー
騙して、心を開かせて、殺すつもりで話している。
マリー
ぜんぶ嘘だ。

あなたの目論見通りに、この男は騙され、心を開いている。
マリー
あなたを待っていたのも、あなたに体を開いたのも、あなたにこうして抱かれているのも。
マリー
ぜんぶ殺すための嘘。
マリー
嘘なら。
マリー
名前だって付けられるはずで。
マリー
でもできない。

きっと名前をつけたなら、この男は心からの笑顔すら見せてしまっただろう。

そしていつかその時が来れば、きっとあなたが騙された時のように、この男も信じられないって顔をして。

あの時と違うのは、今度は殺すということだ。

男はというものの、きつく抱き締めて、それだけだ。

何かに苦しんで、耐えるように。
マリー
*男の『孤独』を愛で抉り、クエスト1を行います。
マリー
*指定のクエストは『心を染める』
マリー
2d6=>7 (2D6>=7) > 8[5,3] > 8 > 成功
[ 男 ] 孤独 : 1 → 0
マリー
あなたの胸を女が押す。
マリー
拒むように。
マリー
「ごめんなさい」
マリー
「やっぱり今日も」
マリー
「うまくできないかも」

「 」

その力に反して、あっさりと男の腕は解かれる。
マリー
「お店に、言って」
マリー
「僕も、ついていきますから」
マリー
「おかね、返してもらって」

「出ていけって?」
マリー
「…………」
マリー
俯いている。

する、と立ち上がる。
マリー
「ごめんなさい」

何も言わず、歩き出す。
マリー
立ち上がって、あなたの後ろに続こうとする。

「ついてこないでいい」

そう言ったきり、女が立ち上がる暇も与えずに、狭い部屋を出ていく。

他の客が来ればいいな、とか今日1日暇でいたいのか?とか、言える皮肉があったはずだ。昨日までは。
マリー
呆然とあなたを見送る。

男はさっさと出ていって、店主に笑って嘘を語り、結局金を置いていった。

外に出て、陽の光の眩しさに立ちすくむ。

どこにも行くところなんて、ない。
マリー
どこにも行けない人間は、どこに行けばいい?
マリー
自分の語る言葉はすべて嘘で。
マリー
あなたから得た愛はまぼろしで。
マリー
この部屋の中でふたりでいるなんて錯覚で。
マリー
ひとりだ。
マリー
あなたも、ひとり。

ひとり、人の目を避けるように路地裏に入り、他の救世主の目を避ける。

この世界のどこにも行きたいところなんてない。
マリー
あなたの話をいくらか聞いたけど、あなたが外でどうしているか見たことないから。

救世主さま、と声を上げた末裔を殴り倒す。
マリー
本当のことは知らない。
マリー
あなたが僕に語る言葉も、抱きしめる腕も、差し出された感情も。
マリー
ぜんぶぜんぶ、嘘だったら。

ドブネズミのようにコソコソと生きて、故郷よりひどい曇天の元で、ひとり。

考えるのはあの末裔の娼婦のことだった。

どこかに行ければ、2人でどこか遠くに。

そんな場所はない。

その日の宿を探す。
GM
GM
1d12 (1D12) > 4
GM
4:白兎の末裔だ。あなたを救世主だとは気づかないため、その敬いが差し向けられることはない。
GM
GM
次はあなたの手番です。
GM

翌日も、やはり行くのはこの娼館だった。

受付の人間に、マリーは今空いてるか、とわかりきったことを問う。

いっそ客がいればいい、そう思っていた。

それか、ここで断ってくれれば。
GM
末裔の男から向けられる、もの好きだな、という目。

それを受けてへらへらと笑う。
GM
マリー、と投げやりな声が奥へかかる。

安いしな、宿の代わりに女もついてくる、と変わらずに適当なことを。
マリー
女はいつも通りに、奥から出てくる。

「よぉ!」
マリー
どこか不思議そうな顔であなたを見ている。
マリー
「……こん、にちは」
マリー
立ち尽くして、それ以上言葉が続かない。
GM
「何してるんだ。早くお客様をご案内しなさい」

「ああ!立ち話も疲れちまったからなあ~」

最初会った時と同じように、何事もなかったように、明るく。
マリー
「は」
マリー
「はい」
マリー
「こちらへ」
マリー
そうだ。最初に会った時。
マリー
まだあなたが、僕を警戒していた時。
マリー
きっと、昨日あなたを拒んだから。
マリー
伸ばされた手を跳ねのけたから。
マリー
あなたは僕を、心を分けるのに値しない相手だと。

全て振り出しに戻ったような態度。
マリー
そう思い直して。
マリー
女があなたを招く部屋も変わらない。

女に手を取られ、部屋に向かう足取りでさえ、軽く。
マリー
夜のように暗い部屋。清潔でないベッド。心もとなく揺れるランプの火。

ありきたりな、三月兎のような通りすがりの客のように。

何を好き好んでこのような場所に来て、こんな女を選ぶのか。

いっときの気まぐれでしかありえない。
マリー
「…………」
マリー
女の言葉だけが、うまく出てこない。

「どうした」

「いつものように、言ってくれよ」

男の笑顔もまた、すっかりと遠のいて。
マリー
「…………」

店のものには見せない顔を。あなたに抉られられたばかりの疵を晒した顔をしている。
マリー
「どうして?」

「今日も帰ったほうがいいか?」
マリー
「……」

女の質問に答えない。
マリー
「いい、え」
マリー
「どうぞ」
マリー
最初と同じなら、自分も最初と同じように振る舞わなければいけない。

けれど、部屋の中では時が戻ったように。
マリー
ただの客と娼婦で、あなたに抱かれて一時の愉しみを提供して、それで、あなたを送り返して、

それだけだったらどんなに楽だったか。
マリー
そうして、あなたを殺す相手だと目をつけて、機を窺う。
マリー
そんな時間はもう残されていない。
マリー
自分がこの国に落ちてから、まともに日数を数えていなかった。
マリー
でもたぶん、あともう数日か、それぐらい。
マリー
この人を殺すしかない。
マリー
だから、
マリー
あなたが来てくれてうれしい。
マリー
あなたをいつも待っていた。
マリー
あなたの手を取って、ベッドへ誘う。
マリー
この部屋には椅子さえない。
マリー
ただそのためだけの部屋だから。

導かれて、座る。
マリー
隣に座れず、あなたの前にただ立っている。

「座らないのかい」

「座りたくなかったら、それでもいい」
マリー
「あなたの隣に」
マリー
「座る資格がないんです」

「……」

「なんで」

「俺は、」

どうすればいい、そう言いそうになって口を閉じた。
マリー
「あなたが来てくれて嬉しかった」
マリー
「ずっとあなたを待ってた」
マリー
「あなたが来てくれなかったら、どうしようかと思った」
マリー
「だから」

嘘だ、そんな言葉。
マリー
そう思っていたなら、あなたを拒絶するはずなどない。
マリー
あなたが今日現れた時、ただ不思議そうな顔をしたはずはない。

「……なあ、たまには外に出てみないか。金を多めに渡しゃ店外もできるだろ」

俯いて、ランプの灯も当たらぬ顔で。

「どこか行きたいところはないか」
マリー
「…………」

「俺は救世主なんだから」

「どこにだって行ける……」
マリー
マリーは、記憶喪失の公爵夫人の末裔で。
マリー
この店の外のことを、何も知らない。

この男は、この国に落ちたばかりで。

知る場所もこの街とありすの屋敷と荒野ぐらいで。

「二人でさ、適当に街に出て……」

どこに行けるというのか。
マリー
自分もコインを持っていた、救世主だから分かる。
マリー
どこにも行く場所などありはしない。
マリー
堕落の国では、救世主はだれかを殺さなくては生きていけない。
マリー
三十日経てば、亡者という心を持たない化け物になって。
マリー
それで、みんな心に深い疵を持っていて。

末裔にコインを渡して戦わせる事ができるというのを聞いたことがある。
けれど、この女に、戦わせる?
そうでなければ、戦えもしない女を連れて、この世界を歩くというのか?

自分の疵に深く食い込んだ女を連れて、この国を。
マリー
こんな国を。

どこにも連れていけない。
二人の安全な場所はここしかない。そのように思う。

「それでも、どこか、……」

自問自答。
マリー
「……どこか」
マリー
「ここじゃない場所」

ただの客なのにこんな事を言うのは馬鹿げている。
マリー
ただの娼婦が、こんなことを言うのは愚かしい。
マリー
「ここじゃない場所だったらいいなって」
マリー
「ここではない場所であなたに会えたら、どんなに……」
マリー
「どんなに……」

「……」

「犯してポイだよ、そんなの」

自嘲して笑う。
マリー
「……そうですね」

何も背負えない。何も持ったことがないから。
マリー
女も笑った。
マリー
そうされたから知ってる。

サングラスを外して、手元で弄ぶ。

俯いたまま、何事かを考えて。

「なあ、俺はどうすれば」

「どうすればいいかな……」

首を横に振る。

「いや、こんな事を言いたいんじゃない……」
マリー
「……救世主さまは、みんな」
マリー
「この世界を救うために、呼ばれたんだと聞きました」

鼻で笑う。

「どうだっていいよ、そんなもの」
マリー
「この国を助けるただひとりの救世主、を」
マリー
「だから、殺し合わせる……」

手を差し出す。握ってほしいと言いたげに。

「こっちに来てくれよ」
マリー
「……」
マリー
躊躇って、あなたに体を寄せる。
マリー
「なら、ただひとりの救世主になれないなら」
マリー
「どんなひとだって、死ぬしかない」

「そうだな」

「けどよお、人間なんてどうせ、皆死ぬんだ」
マリー
僕を殺せなかったあの人も、きっと、あの三十日を越せなかった。

「死ぬまで好きなことしたっていいだろ」

「こんな国救っても」

俺は救われない。

女の肩に頭を預ける。
マリー
されるがままに受け止める。
マリー
でもあと、たった数日しかないんですよ。
マリー
何日かは分からないけど、そうなんです。

「なあ、一緒に行かないか」

「どこか遠くへ」

「行った先に何もなくっても……」

「こんな暗い湿気った部屋で一生を終えるぐらいならさ」
マリー
「……僕なんて、連れて行ったって」
マリー
「足手まといですよ」

*マリーの『おんな』を舐めます

*クエスト 心を染める

「さあ、どうだろう」
マリー
*横槍しません

*ティーセット使用

2d6+3+2>=7 (2D6+3+2>=7) > 5[1,4]+3+2 > 10 > 成功
[ マリー ] おんな : 0 → 1
マリー
*8910妨害を 鋭気に変更してください

*変更

「それとも、毎日ここに来ようか」

「外でなんか買ってさ、そうだなあ、なんか珍しい食べ物とか」

「二人で食って」

「それとも二人で外に出て、グッシャグシャの殺し合いに巻き込まれるか」

「なあ、なんでもするよ」
マリー
笑って、首を横に振る。
マリー
「ごめんなさい」

「……」

肩越しに、男の体が少しこわばるのがわかる。
マリー
どこにも行けやしない。
マリー
きっと足手まといになる。

「どうして」

みっともない問いだ。
マリー
この娼館には救世主の客はいるけど。
マリー
自分がいてうまく殺せるとは思えない。
マリー
この人の邪魔になる。
マリー
「僕が……」
マリー
「僕が弱いから」
マリー
あなたも。

「別にいい」

「俺も強くない」
マリー
知っている。
マリー
「そんなことはないですよ」
マリー
「あなたは強い」

「そんなことはさ、ないんだよ」
マリー
「……」
マリー
唇が震える。
マリー
迷いが目に滲む。

「俺はまだ1人しか殺したことがない」

「元いたとこより少ないぐらいだ」

だから明日には死んでいるかもしれない。

「コインもそんなにない」
マリー
知っている。

「お前に持たせればニュービーと同じぐらいで、弱っちー救世主の出来上がり」
マリー
知っている。
マリー
「……僕は、」
マリー
「ずっと、あなたが来てくれるのを待ってた……」

だから殺す相手に選んだということを、この男は知らない。
マリー
「あなたが、僕をここから、連れ出してくれるって」
マリー
「そう思って」

顔を上げて、女を見る。

意外そうな顔で。
マリー
僕が知っているのは、あなたが教えてくれたから。
マリー
あなたが教えてくれたのは、僕が末裔だから。
マリー
でもそれは、ぜんぶ嘘だ。
マリー
「だから、」
マリー
指先があなたに伸びる。
マリー
手が、あなたの胸を押して、緩やかに押し倒す。

その指先が何をするのか、このような場にあって子供のように不思議そうに見ていた。
マリー
ここでなされる、当たり前のことをするように。

その力に沿って、湿っぽいベッドに沈む。
マリー
「だから……」
マリー
いつも、そこへ押し倒されるのはマリーのほうだった。
マリー
声を堪え、押さえつけられて逃げるように体をよじって、
マリー
最後には、
マリー
「……ごめんなさい」

そのように許しを乞わせた。
マリー
手が枕の下へさっと入る。

そのようにするのが、正しい関係だったから。
マリー
指先がナイフを掴んで、金属音を立てる。
マリー
女は、
マリー
そして、あなたにナイフを振り下ろした。
GM
GM
裁判に入ります。
GM
心の疵MOD『逆棘』の効果によって、○の疵がすべて●になります。
[ マリー ] おんな : 1 → -1
[ マリー ] こども : 1 → -1
[ 男 ] ティーセット : 1 → 0
GM
マリー
ランプのわずかな光を受けて刃が煌めく。
マリー
あなたの頭へ向けて。

慣れ親しんだ暴力の音が暗い部屋の中で聞こえてもまだ、子供のように目を開いたまま。

だから、反応が遅れた。刃物のきらめきをもってようやく反応でき、頬が裂ける。
マリー
皮膚とわずかな肉を切りながら、ナイフがベッドに突き立てられる。

暴力に親しんだ男らしく、女の顔を掴むように手が伸ばされ、ベッドの外へ追い払うように振るわれる。
マリー
あっさりと女は振り飛ばされて、床を這う。
マリー
ナイフは握りしめたまま、離さない。
マリー
「はあっ、はっ……はっ……」
マリー
もう、息が上がっている。

どうして。

末裔の恨みを買いはしていたけど、それでも。

女が救世主であるという事なんて、思いもしないまま、頬の痛みすら感じられず。
マリー
女の力は大したことはなかった。そのあたりの末裔の力と、そう変わりない。
ナイフの振るい方も、手慣れていなかった。

「俺は」

「そんなにひどいことをしたのか?」
マリー
首を横に振る。
マリー
「ずっと」
マリー
「こうするつもりで、」
マリー
「僕は、」
マリー
「だから、」

女の言葉が、理解できない。

「俺に恨みがあったのか?」
マリー
ひとつひとつ、あなたが差し出す言葉に飛びつきそうになる。
マリー
そういえば、あなたが許してくれて、殺されてくれそうな気がしたから。
マリー
でも、できない。
マリー
首を横に振って、ナイフを構え直し、あなたへ向かっていく。
GM
*裁判開廷

じゃあ、どうして、と問うこともできないまま、体が慣れ親しんだ暴力に順応する。
GM
裁判MOD『不意を突く(PC1)』
GM
行動順はマリーが決定します。
マリー
*先手を取ることを宣言します。
GM
裁判開廷前に使用する技能や宝物はないようなので、このままカードを引いていきます。
GM
裁判MODの効果によって、最初のラウンドだけマリーは15枚カードを引きます。

*s2,d2,c3,sQ,cQ
マリー
*d3,s5,c10,h8,cK
マリー
*マリーの手番
マリー
*d3 精確 cK 調律 対象は男
GM
クエスト効果によって、あなたは調律に同意しなければいけません。
マリー
1d6 (1D6) > 2
マリー
2d6+3=>7 (2D6+3>=7) > 7[1,6]+3 > 10 > 成功
マリー
*h8とh5を渡し、d2を受け取ります
マリー
*5枚から溢れた分だけ捨てておいてください。

*cQ捨て
マリー
女はあなたへ向かっていく。
マリー
人を刺したり、傷つけたりしたことのない人間の動き。

同情すら湧く。とろくさい、御しやすい、

足手まといな女の動き。
マリー
覚束ない手つきで、ナイフを振るう。

手で払い、ナイフのない女の手を掴もうとする。
マリー
あっさりと掴まれる。

「俺に恨みがないのなら」

「誰かに頼まれたのか」
マリー
首を横に振る。
マリー
「嘘を」

「やめろ」
マリー
「嘘を、ついて」
マリー
女の顔は引き攣って、笑っているようにも見える。

女を弾き飛ばす。

せっかく掴んだ手を、振り払う。
マリー
弾き飛ばされる。
マリー
哀れなまでに何もない。

殺す理由が、それでもあるというのなら。

嘘をついていたというのなら。
GM
*あなたの手番です

*鋭気h8 精確c3 暗器s5
マリー
*回避 c10 精確 d2
マリー
1d6 (1D6) > 3
マリー
2d6+4=>7 (2D6+4>=7) > 8[6,2]+4 > 12 > 成功

1d6 (1D6) > 1

2d6+3+1>=7 (2D6+3+1>=7) > 7[2,5]+3+1 > 11 > 成功

*回避されました

手に心の疵が溢れて、形になる。慣れ親しんだ、折りたたみナイフの形に。
マリー
怯えた目があなたに向けられる。

大股に近寄る男の手の中でナイフがランプの灯りでひらめいて、掲げられる。

このナイフをどこに突き立てればいいのかわからなかった。

振り上げたまま、止まる。

*カード全捨て
マリー
息を乱し、あなたから逃げる。
マリー
*捨てるものなし
GM
*第2ラウンド
マリー
*c5,d7,d10,dK,cA

*h3,s4,d6,c7,dA
マリー
*dK 調律
マリー
2d6+1=>7 (2D6+1>=7) > 7[1,6]+1 > 8 > 成功
マリー
*d10を渡し、cAとh3をもらいます
マリー
「嘘を、ついてたんです」
マリー
ナイフを持つ手は震えている。
マリー
「あと、もう、何日かしかない」
マリー
「そうしたら、亡者になって」
マリー
「なにも、分からなくなる」

「お前は、救世主だったんだな」

犬や猫のように、末裔には俺のことなんて何もわからないと思っていたから全てを明かした。

お前も同じ救世主で、同じ、人間だったなんて。
マリー
頷く。
マリー
「殺さないと」
マリー
「いけなくて」
マリー
「コインもなくて」
マリー
「だから」

「俺は、さぞかし、ちょうどよかっただろう」

勝手に懐いて、信じて、心を許して。
マリー
「ええ、そう」
マリー
「あなたをずっと、殺すつもりだった」
マリー
「あなたを、」

「ナメやがって、コインもない娼婦ごときが」

「俺を殺すだと」

ナメられたなら殺さなきゃいけない。

俺はずっとそうしてきた。

なんだか夢の中にいるような心地だ。
マリー
「は、はは」

どうしてこんな事をしているのかわからない。
マリー
「そう」
マリー
「僕が言ってたことは、ぜんぶ嘘」
マリー
「ぜんぶ……」

*精確s4 暗器c7 鋭気d10
マリー
*割り込み行動ありません どうぞ

1d6 (1D6) > 6

2d6+3+6>=7 (2D6+3+6>=7) > 6[3,3]+3+6 > 15 > 成功

Choice[《封印》,《猛毒》,《指切り》,《衰弱》] (choice[《封印》,《猛毒》,《指切り》,《衰弱》]) > 《猛毒》

猛毒と10点。
[ マリー ] HP : 14 → 4
マリー
血がしぶく。

ナイフの振り下ろし方と、どこをどうすれば人が死ぬかはわかっている。

だから、それに従って振り下ろす。
マリー
今度は避けることもできずに、もろに斬りつけられる。

自分を殺そうとしたのだから、そうすべきだ。

とろくさい女を殺すなんて、容易い。

*捨てなし
マリー
*c5,d7捨て
GM
*第3ラウンド
マリー
*(h3),h6,sJ,(cA,dA)

*(d6),h5,d8,d9,hJ
マリー
*マリーの手番
マリー
*h3 精確 dA 終幕

*妨害 hJ

2d6+3+1>=7 (2D6+3+1>=7) > 4[2,2]+3+1 > 8 > 成功
マリー
1d6 (1D6) > 2
マリー
2d6+2+1=>8 (2D6+2+1>=8) > 6[3,3]+2+1 > 9 > 成功
マリー
1d6+2 (1D6+2) > 6[6]+2 > 8
マリー
悲鳴も上がらなかった。
マリー
痛みも分からない。手は固くナイフを握りしめている。
マリー
腕から垂れた血が、ナイフを汚している。

手負いのとろくさい女にも、一撃を狙えるぐらいのスキがこの男にはあった。
マリー
殺さなきゃ
マリー
殺さなければ
マリー
でも、どうやって?
マリー
分からない。
マリー
分からないまま、闇雲にナイフが振るわれる。

あなたを見て、未だに戸惑って、怯えたようにすら見える男の腹にナイフが吸い込まれるように刺さった。
マリー
「っあ」
マリー
そこではじめて、驚いたような声が上がる。

暗い室内と、男の黒いスウェットはその血をいくらか見えなくするけども。
押さえきれない血しぶきが、女の肌を汚した。
マリー
「あ、あ」
マリー
恐れて、縮こまって、動揺して後ろに下がる。

腹を押さえて、たたらを踏む。
[ 男 ] HP : 15 → 7
GM
*あなたの手番です
[ マリー ] HP : 4 → 2

ボタボタと溢れる血の音を聞きながら、ぼんやりと武器を握る。

ああ、いっそ自分の親もこんな風に。

産まれた自分に始末をつけていればよかったのにな。

*鋭気d8 暗器h5
マリー
*どうぞ

2d6+3+1>=7 (2D6+3+1>=7) > 6[2,4]+3+1 > 10 > 成功
[ マリー ] HP : 2 → 0

Choice[《封印》,《猛毒》,《指切り》,《衰弱》] (choice[《封印》,《猛毒》,《指切り》,《衰弱》]) > 《指切り》
GM
*マリーのHP0 判決表
GM
2d6 (2D6) > 4[2,2] > 4
GM
3~5 〈昏倒〉する。

手に握るのは使い古されたフォーク。

家の中にあったものをそのままもってきたような、スチールのフォーク。

「俺は」

男が自分の何かに気づいたころには遅く、男は腕を振り下ろしていた。
マリー
女は避けられない。

がむしゃらに、ただ自分に振るわれる暴力を避けるために。
マリー
フォークは女に突き立てられる。
マリー
それで終わりだ。
マリー
女の体は力を喪って、血の海に沈む。

少し湿った音を立てて、フォークが床に落ちる。

ランプの弱々しい灯りに、血まみれの女の体が照らされていた。
マリー
身体が動かない。
マリー
今さら痛みが襲ってきて、女の体が床の上で身もだえる。

深呼吸して、血の匂いがするなあとただ思う。
マリー
「っ、う……」
マリー
「ううう……」

女の上に立ち、見下ろす。
マリー
縮こまって、頭を抱えて泣いている。

「なあ」
マリー
首を横に振る。

「聞いてくれよ 最後なんだから」

手には包丁。
マリー
しゃくりあげている。
マリー
「もういや」
マリー
「もういや……」

女の涙を見ながら、穏やかで、酷く寒い心地だった。
マリー
「あなたが、来てくれなかったら、どうしようって思ってた」

女の前にしゃがみ込む。

「来てよかった」
マリー
何度も繰り返した言葉を、あなたに言う。
マリー
「来てほしくなかった」
マリー
「来て、ほしかった」

「俺に行けるところなんてなかった」
マリー
「あなたを殺さなきゃいけなかった。あなた以外にいなかった」
マリー
「殺す? そんなこと」
マリー
「そんなことできるわけない……」

「でもお前は」

「生きたかったんだろう」

「ならしょうがないよ」

動けなくなるまで弱らせた女の手を取り、疵で作った包丁を持たせる。
マリー
首を横に振る。

料理もしない母親のもとでキッチンに掛けられて、少し錆びた包丁を、女の手に。

こんないつでも殺せる道具があったのに、母親に向けられることはなかったと思い出す。

それは母親に残った愛ではなく、向けるほどの興味すらなかったということ。

「俺はさ、もういいんだ」

包丁を握らせた手を自分の首元に添える。

「裁判ってこれでもセーフなのかな、わかんねえや」
マリー
「いやだ」
マリー
「やめて」

「俺にはね、」
マリー
「もう」
マリー
「もうむり」

「行きたい場所なんてなかった」
マリー
「もう、むりだから」

「お前が生きたいのなら代わりに生きてくれよ」
マリー
「いや」

「俺だってもう無理なんだ」
マリー
「いや」
マリー
「ひとりにしないで」

軽い調子で笑う。取り繕ったものでもなく、困ったように。
マリー
「ひとりはいや」

「じゃあお前は、一緒に行ってくれるのか?」

「こんな地獄みたいな国を、お前を殺そうとした男と一緒に」
マリー
答えられない。
マリー
いや、答えはもう決まっている。
マリー
そんなことはできない。

わかっている。
マリー
そんなことはできないから、こうするしかなかった。

もう立ってはいられない。

ずっと逃げて走り続けてきたのに、こんなしみったれたベッドの上に座ってしまったから。

もう立ち上がれない。

ここで終わりだ。

一度与えられたものを取り上げられてしまっては、もう立っていられない。

たとえそれが嘘でも、殺す気がなくったって。

愛してしまった相手に殺されようとしたのに、そこから立つ理由もないことに気づいてしまったから。

この世界も、この命も、生きるほどの価値はない。

この生命の軽さに耐えられなくなってしまった。
マリー
耐えられないのに。

それなのに、自分を殺して生きろと迫る。
マリー
同じなのに。

そんなことができないとわかっているのに。
マリー
あえかな抵抗がある。

弱くて、要領が悪くて、足手まといの女を一人残すなんて。
マリー
何の力もない、ただの女の力だ。

「俺は先に降りる」

「こんなクソみたいな世界から、」

「こんなくだらない人生から」

「だから、」

(だから、あんたが母親なら)

(俺に母親らしいことをわけてくれないか)

(どこか遠くに連れていってくれ)

(もう二度とこんな辛いことのない場所に)

女の手を引く。横に。
マリー
「あ」

錆びた包丁はすうっと喉に入る。
マリー
「あ、あ」

男の空虚な人生を、余りにも軽い命を表すかのように、あまりにも軽い手応え。
マリー
やめて。
マリー
置いて行かないで。

心の疵の力で出来た凶器は、その目的を果たすためにある。

致死の傷口から吹き出す熱。命。

「初めて人を、好きに」
マリー
唇が動いた。
マリー
でも、そこから言葉は出てこない。
マリー
あなたを呼ぶ名前が女にはない。

あなたの刺した傷よりもよっぽど大量の血が、あなたに降り注ぐ。
マリー
女の本当の名前も、あなたは知らない。

何もしらない、嘘ばかりがあった。
マリー
嘘ばかりついた。

それでもよかった。
マリー
助けてほしかった。
マリー
助けてもらえないなんてわかっていた。

この男は弱かったから。
マリー
弱いから、選んだ。

とても強い救世主になれるような男ではなかったから。
マリー
一緒に死んでくれるような気がしていたから。

死んでくれるかもしれない男だった。

けれど、どうしても。
マリー
嘘でもいいなんて思えなかった。

女の死ぬところを見たくなかった。
マリー
殺してくれると思ってた。
マリー
僕はうそつきだから。

愛してしまった以上、心を奪われてしまった以上。好きな人が死ぬところを見たくなかった。そんな単純な思いで。

名前、

名前をねだってから死ねばよかったかもしれない。

血を失った体が支える力を無くして落ちる。

口は動けど、声は出ない。
マリー
女の弱々しい腕が、あなたを抱く。
マリー
今さら。

温かい。

母さん。

口がかすかに動いた。
マリー
「あなたのことが、好きだった」

口の端がわずかに動く。大量の失血で目の焦点は既に合わない。
マリー
「あなたを、ずっと待ってた……」

今度は嘘じゃないといいな、と笑おうと思ったけど出来ない。
マリー
「来てくれなかったら、どうしようかと思って」

陽の光の下でお前を見てみたかった。
マリー
「怖くて」
マリー
「怖くて」

お前はとろくさいから、他のやつを殺そうとして殺されるのが関の山だぜ。

ああ、来てよかったなあ。
マリー
「なのに、僕を」
マリー
「一人にしないで……」

女の手に握らせる力はとっくになくなっていて、錆びた包丁も血の中に沈んで消えた。

自分には何もなかったから、せめて。

自分の存在を誰かに覚えていてほしかった。

体温と命が失われていく中、女にただ抱かれて。

置いていく罪深さなんて考えもせずに、男はあなたを置いて死ぬ。

あんなに欲しかったコインを残して。
マリー
部屋には、ただ嗚咽が。
GM
*裁判閉廷
GM
マリーは発狂しているため、亡者化判定があります。
マリー
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 才覚
マリー
2d6=>7 (2D6>=7) > 8[4,4] > 8 > 成功
GM
*成功
GM
GM
GM
マリー
そうして裁判が終わり、ひとりの救世主が死んで、女は最初の三十日を終えた。
マリー
女は身分を明かして、血まみれのまま娼館を出る。
マリー
どこにも行けないことを知っていた。
マリー
もう歩けないことが分かっていた。
マリー
けれど足は動いて、立って歩いていく。
マリー
切り裂かれ、あれだけ溢れていた傷口も、今は半ば塞がっている。

名前のない男が一人死んでも、誰もあなたを責めるものは居なかった。

それどころか、あんた救世主だったのかと喜ぶ声すらある。
マリー
何もかもが嫌だった。
マリー
あそこにいたくなかった。
マリー
どこにもいたくなかった。
マリー
だからどこか、遠くへ、
マリー
遠くへ行きたがっていたから
マリー
遠くへ行こうと言って、
マリー
僕は断って、
マリー
だって、どこにも行けないのを知っていて、
マリー
あなただって、分かっていた。

誰も二人を傷つけない場所へ行きたかった。

そんな場所なんてないとわかっていた。
マリー
そんな場所なんてなかった。

生半可に賢いばっかりに。
マリー
もっと愚かなら、もっと弱かったら、もっと要領が悪かったら、

無闇に信じる愛も持たなければ、全てを切り伏せようとするような猟奇もなく。
マリー
あなたを信じて、どこかに行けただろうか。
マリー
そうしてもっと、もっとなにか、いいことがあったかもしれない。

どこかで二人、もっとひどい死に方をしたかもしれない。
マリー
意味のない空想だった。

いつか離れ離れになるのなら、と男はこういう選択をして、あなたを置き去りにした。

せめて疵になって、そばに居られたらと。
マリー
疵になって、そばにいたかった。
マリー
あなたに忘れられたくなかった。
マリー
忘れられたくなかったから、
マリー
ひとりになっても、こうして歩いている。

好きな人にただ思われ、覚えていてほしかった。

それでよかった。
マリー
あなたはもう、あの部屋に来てくれない。
マリー
どこにもいない。

あの部屋にはもう誰もいない。
マリー
あんなにあなたを待っていたのに。

血の跡だけがずっとそこにあって、死体はそのうち捨てられて。

他の誰も二人を引き止めなかったから。
マリー
だから、あとは、ひとりで、
マリー
どこかへ。

二人出会って一人になった。

どこか遠いところへ。
マリー
二人を誰も傷つけない場所へ行くことを夢見ながら、
マリー
ひとりで歩いている。
GM
GM
In The Dark, Small And Wet Room
GM